特定求職者雇用開発助成金という制度をご存じでしょうか。
この助成金は、就職が困難であるとされる方を雇用することで事業主がもらえる助成金制度です。
少子化が進み、労働人口が減少していくと考えられる日本では、学校中退者や第2新卒の雇用についても積極的に採用・定着に取り組んでいくことが求められています。
今回は、既卒者や中退者(卒業後・中退後おおむね3年以内)が応募できる申込、または募集を行い、新卒求人と同じ扱いで雇用し一定期間定着させた事業主が受給できる「三年以内既卒者等採用定着コース」についてご紹介します。
この記事の目次
1.特定求職者雇用開発助成金とは
「特定求職者雇用開発助成金」とは、高年齢者や障害者などの就職が特に困難な方々を、ハローワークなどの紹介により継続して雇用する労働者として新たに雇入れる事業主が受け取ることができる助成金制度です。
「特定求職者雇用開発助成金」には、以下8コースがあります。
①特定就職困難者コース
②生涯現役コース
③被災地雇用開発コース
④発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
⑤三年以内既卒者等採用定着コース
⑥障害者初回雇用コース
⑦長期不安定雇用者開発コース
⑧生活保護受給者等雇用開発コース
今回は、この中の「三年以内既卒者等採用定着コース」について詳しく見ていきたいと思います。
2.どんな助成金なの?
「三年以内既卒者等採用定着コース」は、学校等の既卒者や中退者の応募機会拡大や、採用・定着を図るためにできた奨励金制度です。
支給要件にあう求人募集をハローワークの紹介などを通して行い、対象者を一定期間定着させた事業主は、最大80万円を3年間に渡って受給することができます。
参考:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金」(三年以内既卒者等採用定着コース)
3.受給対象者の要件とは
以下の学校等を卒業または中退した者で、これまで通常の労働者として同一の事業主に引き続き12カ月以上雇用されたことがない者が対象です。
①学校(小学校および幼稚園は除く)、専門学校、各種学校、外国の教育施設の卒業者または中退者
②公共職業開発施設や職業能力開発総合大学校の職業訓練の終了者、または中退者
4.支給要件
「三年以内既卒者等採用定着コース」には次の2コースあり、コース毎に支給要件が異なります。
(1)既卒者等コース
既卒者とは、すでに学校を卒業した人、すなわち第2新卒など新卒でない人のことを言います。
「既卒者コース」の場合には、以下2つの要件を満たす必要があります。
①既卒者が新卒者と同じように働ける制度があること
既卒者・中退者が応募できる新卒求人※の申込、または募集を行い、その求人・募集に応募した既卒者・中退者を通常の労働者※2として雇用したこと
少なくとも卒業、または中退後3年以内の者が応募可能であることが必要です
※新卒求人とは
学校(小学校および幼稚園を除く)等に在学する者で、卒業もしくは修了することが見込まれる者であることを条件とした求人をいいます。なお、高校中退者が応募可能な高卒求人は除きます。
※2通常の労働者とは
直接雇用であり、期間の定めが無く、社内の他の雇用形態の労働者(役員を除く)に比べて高い責任を負いながら業務に従事する労働者をいいます。
②これまで既卒者を新卒枠で雇入れしたことがないこと
その求人の申込、または募集前3年度の間に、既卒者などが応募可能な新卒求人の申込または募集を行っていないこと
簡単にまとめると、
・今回はじめて、または3年度の間を空けて既卒者を新卒枠で雇い入れて、
・第2新卒が新卒者と同様に働ける制度を整えて求人を行った企業が、
・卒業後3年以内の者を対象として応募していることが条件
ということになります。
(2)高校中退者コース
①高卒者が新卒者と同じように働ける制度があること
高校中退者が応募できる高卒求人の申込または募集を行い、この求人・募集に応募した高校中退者を通常の労働者として雇用したこと
少なくても中退後3年以内の者が応募可能であることが必要です。
②これまで高校中退者を高卒枠で雇入れしたことがないこと
この求人の申込、または応募前3年度の間において、高校中退者が応募可能な求人の申込または募集を行っていないこと
簡単にまとめると、
・今回はじめて、または3年度の間を空けて高卒者を新卒枠で雇入れて、
・高校中退者が新卒者と同様に働ける制度を整えて求人を行った企業が、
・高校中退後3年以内の者を対象として応募していることが条件
ということになります。
5.対象となる事業主とは?
「三年以内既卒者等採用定着コース」を申請する事業主は、平成31年3月31日までに募集等を行い、平成31年4月30日までに対象者を雇入れた事業主が受けることができます。
また、雇用系の公的助成金には共通した事業主要件があります。雇用関係助成金の共通要件は、
分かりやすくまとめた記事がありますので是非読んでみてくださいね。
≪関連記事≫
助成金をもらうための要件とは?助成金申請前に見ておきたい共通要件について調べてみた
6.支給額
事業主が対象者を雇入れて各コース要件を満たした場合、企業区分・対象者および定着期間ごとに各コース1名を上限として、最大3回に分けて下表支給額が支給されます。
中小企業の範囲については、業種毎に下表に該当するものをいいます。
7.認定をうけると支給額を10万円加算!
三年以内既卒者等採用定着コースでは、若者促進法にもとづく認定企業「ユースエール認定制度」を活用することができます。
この制度は、人材育成方針を策定することや所定外労働時間の抑制に努めるなど、若者の雇用管理状況が優良な中小企業(常時雇用者300人以下)が求職者に対して、労働環境面でアピールできる制度です。認定企業の場合は、いずれも10万円が加算されます。
≪関連記事≫
若者の採用・育成に積極的な中小企業を応援!「ユースエール認定」と加算される助成金制度について調べてみた
8.三年以内既卒者等採用定着コースの申請メリットとは?
特定求職者雇用開発助成金(三年以内既卒者等採用定着コース)は、少子化が進み、労働人口が減少していくと考えられる日本で、学校中退者や第2新卒の雇用についても積極的に採用・定着に取り組んでいきましょう!という流れの中でできた助成制度です。
ここでは、同じ雇用関係の助成制度との比較と、申請メリットについてご紹介します。
(1)就業規則の作成や変更する必要がない
例えば、キャリアアップ助成金(諸手当制度共通化コース)では、就業規則に有期契約労働者と正規雇用労働者との共通の諸手当制度を新た規定・設置が必要なため、申請以前に就業規則の作成・変更費用や時間がかかっていました。
その点では今回の助成金は、新たな規定を作る手間もかからないので取り組みやすいです。
(2)卒業後3年以内の若年層や、高校中退者も対象
新卒に次ぐ若手である第2新卒は、早いうちから即戦力となりうる貴重な人材です。
新卒人材の多くが大手へと集まっていく中で、中小企業にとってニーズの高い第2新卒や高校中退者に国から支援がでるというのは、企業の採用コスト削減の手助けにもなります。
(3)雇用する労働者は正社員として採用することができる
例えば、トライアル雇用奨励金では、雇入れ当初からの正社員雇用は認められず原則3か月間の試用期間を設けることが要件です。またキャリアアップ助成金(正社員化コース)では最低6カ月間、非正規労働者として採用が必要です。
その点では今回の助成金は、最初から正規雇用で採用を行うことができ、労働者の安定雇用が期待できます。
(4)「ユースエール認定」でさらに加算を受けることができる
ユースエール認定制度とは、若者の採用・育成に積極的で、所定外労働時間の抑制に努めるなど、「離職率」「労働時間」「有給休暇」などの認定基準をクリアした中小企業が求職者に対して労働環境面でアピールできる制度です。
認定を受けた企業は、「若者」をキーワードに採用育成を支援する助成金から加算を受けることができます。
(例)キャリアアップ助成金、トライアル雇用助成金、人材開発支援助成金など
9.手続きの流れ
Step1:新卒求人の申込、または募集
次の書類を労働局へ提出します。
①この求人・募集に係る求人票または募集要項など
②この求人・募集前3年度の間の新卒者を対象とした求人票、または募集要項など
≪!チェックポイント!≫
期間の異なる求人票・募集要項の提出は、既卒者・高校中退者が応募可能な申込・募集を過去行っていないという確認のために必要な書類です。3年度の間に既卒者の申込がある場合には助成金の対象外になるため、注意してください。
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Step2:採用者の選考
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Step3:対象者の雇入れ
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Step4:(1年定着後)第1期支給申請※労働局またはハローワーク
支給申請期間は、雇入れの日から起算して12カ月ごとに区切った期間を設定します。
第1期支給申請は、1年定着後の末日の翌日から起算して2カ月以内です。
※2期・3期の考え方も同じです
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Step5:(2年定着後)第2期支給申請※労働局またはハローワーク
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Step6:(3年定着後)第3期支給申請※労働局またはハローワーク
10.まとめ
いかがでしたか?
特定求職者雇用開発助成金(三年以内既卒者等採用定着コース)とは、労働人口が減少していくと考えられる中で、学校中退者や第2新卒の雇用についても積極的に採用・定着に取り組んでいこう!という社会情勢を反映した助成金制度です。
今回の支給対象である第2新卒とは、中途より若手であり、また新卒より社会経験があるものとして企業から重宝されることが多いです。
第2新卒の雇入れを行ったことがない企業の方は、新卒者と同様に働ける制度を整えて求人を行い、助成金を活用して第2新卒の雇用を進めてみてはいかがでしょうか。