厚生労働省の令和7年度予算案は、一般会計総額で前年度比1.4%増となる34兆2904億円を計上しました。社会的課題の解決に取り組む施策が多く盛り込まれ、助成制度の拡充や教育訓練休暇給付金や共働き・共育て推進給付の新設なども行われる予定です。
今回は厚生労働省の予算案と注目施策について、見ていきましょう。
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この記事の目次
厚生労働省 令和7年度予算の概要
厚生労働省の令和7年度予算案では、一般会計の総計で34兆2904億円となり、令和6年度当初予算額の33兆8189億円と比べて、4715億円増加しました。
また年金特別会計に72兆1786億円、労働保険特別会計に3兆3158億円、子ども・子育て支援特別会計(育児休業等給付勘定)に1兆616億円、東日本大震災復興特別会計に82億円が計上されています。
そのほかの予算案の全体像は、以下のとおりです。
出典:厚生労働省 予算案の主要事項
それぞれの重点項目や施策を見ていきましょう。
令和7年度予算案における重点事項
厚生労働省の予算案では、以下の3つが重点事項として挙げられました。
①全世代型社会保障の実現に向けた保健・医療・介護の構築 |
- 創薬力強化に向けたイノベーションの推進と医薬品等の安定供給確保 |
- 医療・介護におけるDX、地域医療・介護の基盤強化の推進等 |
- 国際保健への戦略的取組、感染症対策の体制強化 |
- 予防・重症化予防、女性の健康づくり、認知症施策の推進等 |
②持続的・構造的な賃上げに向けた三位一体の労働市場改革の推進と多様な人材の活躍促進 |
- 最低賃金・賃金の引上げに向けた支援、非正規雇用労働者への支援等 |
- リ・スキリング、ジョブ型人事(職務給)の導入、労働移動の円滑化 |
- 人材確保の支援の推進 |
- 多様な人材の活躍促進と職場環境改善に向けた取組 |
- 女性の活躍促進 |
③一人一人が生きがいや役割を持つ包摂的な社会の実現 |
- 地域共生社会の実現等 |
- 戦没者の慰霊、年金、被災地支援等 |
保健・医療・介護の構築や包摂社会の実現と、持続的・構造的な賃上げに向けた改革や多様な人材の活躍促進を重視する施策が盛り込まれました。
社会課題解決に向けた厚生労働省の主な施策・助成金
各項目のうち、主な施策や助成金などの事業は、以下のとおりです。()は予算案額です。
①全世代型社会保障の実現に向けた保健・医療・介護の構築
■次世代バイオ医薬品等創出に向けた人材育成支援事業医(1億4000万円)
国内のバイオ医薬品の安定的供給を確保するため、人材育成や製造能力強化に関する支援を実施します。
■小児医薬品開発支援体制強化事業(3000万円【新規】)
小児領域の医薬品開発を促進するため、国立成育医療研究センターにおける小児医薬品開発支援の体制を強化し、小児用医薬品開発のサポートを強化します。
■かかりつけ医機能研修事業(1000万円【新規】)
病院勤務医や、地域のかかりつけ医機能を担っている医師等が研鑽を積む研修体制の整備等を支援します。
②持続的・構造的な賃上げに向けた三位一体の労働市場改革の推進と多様な人材の活躍促進
■教育訓練休暇給付金の創設(78億円【新規】)
雇用保険被保険者が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、基本手当に相当する給付として、賃金の一定割合を支給する給付制度が新設されます。
■教育訓練期間中の生活を支えるための融資制度の創設(8100万円【新規】)
雇用保険被保険者以外の者がスキルアップ等を実現できるようにするため、教育訓練費用を融資する制度が新設されます。
さらに教育訓練受講後に賃金が上昇した場合には、残債務の一部が免除されます。
■人材開発支援助成金(545億円)
職業能力開発推進者を選任し、職業訓練や教育訓練の実施等を行う事業主等に対する助成です。令和7年度は賃金助成の引き上げ等の拡充が予定されています。
■両立支援等助成金(358億円)
働き続けながら子育てや介護を行う労働者の雇用の継続を図るため、就業環境整備に取り組む事業主に助成金を交付します。仕事と育児・介護の両立支援に関する事業主の取組を促進し、労働者の雇用の安定を図る制度です。
■共働き・共育て推進のための給付の創設(792億円)【新規】
特に男性の育児休業取得の更なる促進の観点から、子の出生後一定期間内に被保険者とその配偶者がともに育児休業をした場合に、新たな給付を行います。また、時短勤務中に賃金が低下した場合においても、新たな給付を行います。
③一人一人が生きがいや役割を持つ包摂的な社会の実現
■重層的支援体制整備事業における住まい支援の強化(55億円)【新規】
既存事業では対応が難しい狭間のニーズがある者(世帯)に対して、参加支援事業およびアウトリーチ等を通じた継続的支援事業を活用した入居継続支援を行います。
■家計改善支援事業の補助率引上げ(760億円の内数)
家計改善支援事業の国庫補助率を1/2から2/3に引き上げます。
■女性支援を担う者の人材育成の強化(2700万円の内数)
国の研修体系について、女性支援機関や民間団体、都道府県担当者など関係者全てに研修の機会を設けるとともに、心理職員の専門性向上のための研修を追加する等の見直し等を行い、女性支援を担う者の育成及び支援の強化を図ります。
このように、令和7年度の予算には多様な働き方への対応や、スキルアップを目指す労働者を支援する施策などが盛り込まれました。また、かかりつけ医をはじめとする地域医療への支援事業も取り上げられています。
令和7年度概算要求との違いは?
厚生労働省の概算要求は、一般会計の総額が34兆2763億円と過去最大になりました。この数字は予算案では34兆2904億円と、さらに増額されています。少数与党となり、野党側からは税金の使い道について厳しい意見も挙がる中で、提示した予算案がどこまで承認されるかが注目されます。
厚生労働省の令和7年度概算要求については以下のコラムをご覧ください。
まとめ
令和7年度の厚生労働省予算案は、前年度から4715億円増の34兆2904億円となりました。全世代型社会保障の実現に向けた保健・医療・介護の構築や持続的な賃上げ改革、包摂的な社会の実現を重点項目として、緊急度の高い課題の解決に取り組みます。
また教育訓練休暇給付金や共働き・共育て推進給付など、社会のニーズに沿った支援制度も新設されました。こうした施策がどの程度来年度の支援政策に反映されるのか、しっかりチェックしていきましょう。