北海道や東北地方等では、冬季期間に多くの労働者が離職を余儀なくされます。通年雇用助成金は、指定地域の事業者がこうした季節労働者をさまざまな就業形態で継続して雇用した場合に助成が受けられる制度です。
今回は通年雇用助成金の要件や申請のスケジュールをお伝えします。
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この記事の目次
通年雇用助成金とは
通年雇用助成金は、積雪や寒冷の度が特に高い地域において、季節の影響を強く受ける事業を行う事業主が季節労働者の通年雇用化や労働移動を促進する際に活用できる支援制度です。
通年雇用助成金の7種類
通年雇用助成金では、以下の7種類の支援が設置されています。
①事業所内就業 |
②事業所外就業 |
➂休業 |
④業務転換 |
⑤職業訓練 |
⑥新分野進出 |
⑦季節トライアル雇用 |
通年雇用助成金は全国利用できる?
通年雇用助成金では、対象となる地域と業種が指定されています。指定の地域と業種は、以下のとおりです。
【指定地域】
■全市町村指定
北海道、青森、岩手、秋田
■一部の市町村指定
宮城、山形、福島、新潟、富山、石川、福井、長野、岐阜
通年雇用助成金はどんな業種が対象?
【指定業種】 |
■林業 |
■採石業および砂、砂利または玉石の採取業 |
■建設業 |
■水産食料品製造業 |
■野菜缶詰、果実缶詰または農産保存食料品の製造業 |
■一般製材業 |
■セメント製品製造業 |
■建設用粘土製品の製造業 |
■特定貨物自動車運送業 |
■建設現場において据付作業を行う以下のもの ・造作材製造業 ・建具製造業 ・鉄骨製造業 ・建設用金属製品製造業 ・金属製サッシ・ドア製造業 ・鉄骨系プレハブ住宅製造業 ・建設用金属製品製造業 ・畳製造業 |
■農業 |
なお、季節トライアル雇用の場合は、指定地域内に所在する指定業種以外の事業主が対象です。
季節雇用と通年雇用の違いとは
一般に季節労働者とは、季節の影響により、操業度の変動が著しい産業に就労する労働者のことです。閑散期には仕事が減ったり、なくなったりします。
総務省の「就業構造基本調査」では、年間就業日数が200日未満で、ある季節だけ仕事をしている者が「季節的就業者」と定義されています。こうした労働者は一定の要件を満たせば短期雇用特例被保険者となり、失業時には特例一時金を受給できます。本事業における季節労働者の主な要件は以下のとおりです。
当該年度の9月16日以前から雇用され、1月31日において雇用保険の特例一時金の受給資格を得て、支給を受けることが見込まれる
なお、次のいずれかに該当する人は対象外です。
■管理監督的業務に従事する人 |
■事務など季節の影響を直接受けない業務に従事する人 |
■出稼就労を常態とする人 |
通年雇用助成金はだれがもらえる?|対象者の条件
通年雇用助成金ではどのような労働者が対象になるのでしょうか。それぞれの詳細は、以下のとおりです。
1.事業所内就業
事業主が対象労働者を、12月16日から翌年の3月15日までの対象期間中、事業所内で就業させて継続雇用する場合、常用労働者の増加に応じて支払った賃金額の一部を助成します。
【申請対象労働者】
申請の対象となる労働者は、支援回数ごとに、以下の2つです。
①新規継続労働者(第1回目の助成金の申請対象労働者) |
届出年度の1月31日において特例一時金の支給を受けることが見込まれる人のうち、次のいずれかに該当する労働者 ■前年度の2月1日から前年度3月15日までの間、該当の事業主に継続雇用されていなかった ■前年度の10月1日から前年度の1月31日までの間に失業給付を受けたことがある ■前年度に初めて当助成金を申請する事業主の申請対象労働者のうち、前年度の3月16日以後離職した |
②継続労働者(第2回目の助成金の申請対象労働者)・再継続労働者(第3回目の助成金の申請対象労働者) |
前年度に同じ事業主の下で助成金の申請対象労働者となり、その後も継続して雇用されている労働者 |
【支給対象労働者】
支給対象労働者とは、助成金の支給の対象となる申請対象労働者のうち、①支給額の高い者②申請回数の少ない者の順に、次の式により求められた「支給対象労働者の数」に達するまで選択した労働者のことです。
支給対象労働者の数=申請対象労働者の数-(基礎数-届出年度の3月15日現在の継続雇用労働者の数)
ただし、(基礎数-継続雇用労働者の数)については、(基礎数-継続雇用労働者の数)が負になる場合(マイナスになる場合)は0とし、(基礎数-継続雇用労働者の数)が申請対象労働者の数を越える時は、申請対象労働者の数とします。
2.事業所外就業
事業主が対象労働者を12月16日から翌年の3月15日までの対象期間中、事業所外で就業させて継続雇用する場合、常用労働者の増加に応じて支払った賃金額の一部を助成します。
対象となる労働者は、事業所内就業助成と同じです。
3.休業
事業主が対象労働者を12月16日から翌年の3月15日までの対象期間中、事業所内外で就業させて継続雇用した場合に、当該労働者を一時的に休業させ休業手当を支払った際に対象となります。
なお、これは令和7年4月30日までの暫定制度です。常用労働者の増加に応じて、休業手当と賃金額の一部が助成されます。対象となる労働者は、事業所内就業助成と同じです。
4.業務転換
事業主が労働者を季節的業務以外の業務へ転換させ継続して雇用する場合、冬期間に支払った賃金等やかかった経費の一部が助成されます。
【申請対象労働者】
業務転換に関する申請対象労働者の要件は、業務転換を開始する日によって違います。業務転換を開始する日が「今年度の12月16日~3月15日」の場合はその年度の1月31日において、「前年度の3月16日~今年度の12月15日」の場合は今年度の3月31日において特例一時金の支給を受けることが見込まれる人が対象です。
そのほか、以下のいずれかに該当することが必要です。
①前年度の2月1日から3月15日までの間、該当の事業主に継続雇用されていない |
②前年度の10月1日から前年度の1月31日までの間に失業給付を受けたことがある |
③前年度に初めて助成金の支給を受けようとする事業主の下で、助成金の申請対象労働者となった人であって、何らかの理由で前年度の3月16日以後離職した |
【支給対象労働者】
支給対象労働者は、次の式により求められた支給対象労働者の数に達するまで選択した労働者です。なお、業務転換助成の申請対象労働者は、優先順位に関わらず任意に選択をすることが可能です。
支給対象労働者の数=申請対象労働者の数-(基礎数-助成金の支給を受けようとする年の3月15日現在の継続雇用労働者の数)
なお、業務転換助成の支給申請日が事業所内・外就業助成・休業助成の支給申請より後の期間になる場合は、別式での算出となります。
5.職業訓練
事業主が、対象となる労働者を対象期間中、事業所内・外就業等させ、業務に必要な知識および技能を習得させるために職業訓練を実施した場合が対象です。
訓練にかかった費用が、事業所内・外就業助成等に加算されて助成されます。
【対象となる職業訓練】
12月16日~翌年3月15日の間に実施したもので、「事業主自ら運営する職業訓練」または「施設に委託して行う職業訓練」が対象です。
そのほか、主な要件は以下の通りです。
①訓練時間が10時間以上の訓練 |
②業務の遂行の過程外で行われる訓練 |
③職業訓練指導員免許を有する者等により行われる訓練 |
④職業に必要な専門的な知識や技能を習得させるために適切な方法であるもの等、キャリア形成に資する訓練 |
6.新分野進出
事業主が、季節労働者を通年雇用することを目的として新分野の事業に進出するため、必要な事業所を設置・整備した場合が対象です。労働者2人以上を継続して雇用する必要があります。
7.季節トライアル雇用
指定地域内に所在し、指定業種以外に属する事業主が季節労働者を試行雇用し終了後も引き続き、常用雇用として雇い入れた場合が対象です。
通年雇用助成金はいつ申請できる?
次に、支援ごとの申請のタイミング等を確認しましょう。
事業所内就業
【支給手続期間】
通年雇用届等の提出期限 | 届出年度12月16日~翌年1月31日 |
支給申請書等の提出 | 届出年度3月16日~翌年度6月15日 |
※提出期間中に支給申請書等の提出がないと、助成金は支給されません。
なお、事業所外就業と休業の支給手続き期間は、事業所内就業助成と同じです。
業務転換
【支給手続期間】
通年雇用届(業務転換用)等の提出期間は、業務転換の開始日から起算して1か月以内です。
職業訓練
【支給手続】
職業訓練実施計画書の提出期間 | 職業訓練開始日の前日まで |
支給申請書等の提出期間 | 届出年度3月16日~翌年度6月15日 |
新分野進出
【支給手続期間】
支給申請書等の提出は、以下のとおりです。
【1回目の提出期間】 |
■設置・整備した施設の引渡 ■設置・整備にかかった費用の支払い ■新分野事業所に係る雇用保険適用事業所設置届の提出 ■対象労働者の新分野事業所への雇用保険被保険者転勤届の提出 上記の全て完了した後、最初の対象となる労働者を雇い入れた日から起算して18か月を経過する日までが提出期限です。 |
【2・3回目の提出期間】 |
■2回目 完了日の1年後の日の翌日から起算して2か月以内 ■3回目 完了日の2年後の日の翌日から起算して2か月以内 |
また、通年雇用助成金新分野進出事業所設置・整備および雇入れ計画書の提出は、対象労働者を雇入れた後から設置・整備した施設の引渡前までです。
季節トライアル雇用
【支給手続期間】
申請書等の提出期間は、賃金締切日の翌日から2か月以内です。
通年雇用助成金はいつ受給できる?
通年雇用助成金は、取組の内容によって申請回数と支給額が異なります。
各取組の申請回数は、以下のとおりです。
■事業所内就業・事業所外就業 |
労働者1名につき継続して3回まで ・1回目 支払賃金額の2/3(上限71万円) ・2回目 ・3回目 支払賃金額の1/2(上限54万円) |
■業務転換 |
6カ月間の賃金額の1/3(上限71万円) |
■休業助成 |
労働者1名につき事業所内・外就業の申請回数3回のうち、2回まで ・1回目 休業期間中の支払休業手当と対象期間中の支払賃金額の合計額の1/2 ・2回目 休業期間中の支払休業手当と対象期間中の支払賃金額の合計額の1/3 |
■職業訓練助成 |
対象労働者1名につき事業所内・外就業の助成に加えて、3回まで ・季節的業務の訓練 1/2(上限3万円) ・季節的業務以外の訓練 2/3(上限4万円) |
■新分野進出 |
1/10(500万円を限度に継続して3回まで) |
■季節トライアル雇用 |
労働者1人につき1回 指定の6か月の期間の賃金2分の1から、支給されたトライアル雇用助成金の額を減額した額 |
なお、助成金は「通年雇用届」と「支給申請書」の提出後に支給されます。事業全体の流れは以下の図も参照してください。
参考:通年雇用助成金のご案内
まとめ
季節労働者にとって、閑散期における仕事の減少・喪失は、大きな課題です。労働者が安定した生活を維持し、また、意欲はあるのに働けずにいる人材を活用するためには、通年雇用助成金をはじめとした支援制度を利用するのも良い方法のひとつです。
季節労働者の安定した雇用と人材の有効活用を両立させる好循環を目指し、労働環境を整えていきましょう。