ものづくり補助金は、令和3年度補正予算の成立を前提に、10次締切より見直し・拡充を予定しています。現在は9次締切が応募受付中で、感染リスク低減のための投資を支援する「低感染リスク型ビジネス枠」はこの9次締切をもって終了することになっています。
コロナ禍では、感染防止と生産性向上を両立するビジネスモデルへの支援にスポットライトが当たっていましたが、社会経済活動の再開にあたり、これからどのような取り組みが支援されるのでしょうか?今回は、ものづくり補助金の見直し・拡充内容を調べてみました!
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この記事の目次
ものづくり補助金のスケジュール
【9次締切】
公募開始:令和3年11月11日(木)
応募締切:令和4年2月8日(火)17時
採択発表:令和4年3月末予定
ものづくり補助金の9次締切は、11月11日に公募開始、12月1日から申請開始となっています。前述のとおり、一般型の「低感染リスク型ビジネス枠」は9次締切をもって終了しますので、対人接触機会の減少のための製品開発、サービス開発、生産プロセス改善に必要な設備投資に取り組む場合は、2月8日までにご応募ください。
ものづくり補助金の見直し・拡充内容
令和3年度補正予算案におけるものづくり補助金の見直し・拡充の内容は以下のとおりです。10次の公募(令和4年2月中旬)からの実施が予定されています。
【見直し・拡充予定】
- 補助対象事業者の見直し・拡充
- 従業員規模に応じた補助上限額の設定
- 回復型賃上げ・雇用拡大枠の新設
- デジタル枠の新設
- グリーン枠の新設
補助対象事業者の見直し・拡充
補助対象となる事業者について、追加と拡充が行われます。
【資本金10億円未満の「特定事業者」の追加】
政府は、中小企業について、経営基盤を強化することで中堅企業へと成長し、海外で競争できる企業を増やしていきたい考えで、令和3年8月に一部が施行された「産業競争力強化法等の一部を改正する法律」において、中小企業から中堅企業への成長途上にある企業群の支援を目的とした、中小企業等経営強化法等に新たな支援対象類型(特定事業者)を創設しました。
資本金によらない新たな支援対象類型ができたことで、規模拡大のための支援策について、これまで支援施策の対象にならなかった企業も対象に含まれるようになります。
規模拡大のための支援策は、計画認定に紐付く金融支援や一定の補助金を指し、コロナ対応の支援策等については、対象を変更しないとのことです。
これにともなって、ものづくり補助金の補助対象事業者に資本金10億円未満の特定事業者が追加されます。以下の図は、これまでの補助対象事業者(中小企業者)と、今回追加される対象者(特定事業者)をあらわしたものです。
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業令和3年度補正予算案の概要
【再生事業者を対象とした加点等】
再生事業者(中小企業再生支援スキームに則り再生計画を策定する事業者を想定)を対象に、加点により採択を優遇し、補助率を2/3に引き上げて支援する予定です。また、要件未達の場合に補助金の一部返還を求める「返還要件」を一定の場合に免除するとしています。(詳細な要件は検討中)
従業員規模に応じた補助上限額の設定
これまで一律1,000万円としていた通常枠の補助上限額が変わります。
限られた政策資源で、最低賃金引上げを含めた賃上げの原資となる付加価値を創出する事業者を支援するため、従業員の規模に応じて上限額が設定されます。従業員数5人以下は上限750万円、6~20人は上限1,000万円、従業員数21人以上になると、上限1,250万円になります。
現在受付中の9次締切と、2月以降の10次締切の補助上限額・補助率をあらわしたものが下の図です。再生事業者も小規模事業者と同じく補助率2/3になっています。
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業令和3年度補正予算案の概要
回復型賃上げ・雇用拡大枠の新設
業況が厳しい事業者に対して、賃上げ・雇用拡大に取り組むための生産性向上を支援する申請類型を創設し、補助率を2/3に引き上げて支援する予定です。
通常枠の主な要件は以下の3つですが、回復型賃上げ・雇用拡大枠の対象となる事業者は追加の要件が求められます。それぞれ確認しましょう。
【通常枠の基本要件】
次の要件を全て満たす3~5年の事業計画を策定していること
(1)事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加すること
(2)給与支給総額 を 年率平均1.5%以上増加すること
(3)事業場内最低賃金 (事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること
【追加要件】
回復型賃上げ・雇用拡大枠の対象となる事業者には、上記(1)~(3)に加え、
(4)補助金への応募申請時に、前年度の事業年度の課税所得がゼロであること
を求めるとしていますが、詳細な要件は検討中とのことです。
なお、ものづくり補助金では、補助金の返還要件として、基本要件の(2)給与支給総額、または、(3)事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合に補助金額の全額返還を求めることで、賃上げ・雇用拡大の実効性を確保しています。
デジタル枠の新設
DXに資する革新的な製品・サービスの開発やデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善等を行う事業者を対象に、補助率を2/3に引き上げた新たな申請類型を創設する予定です。
デジタル枠の対象となる事業者は、前述の基本要件(1)~(3)に加え、以下の要件が求められる予定です。
【デジタル枠の追加要件】
(4)DXに資する革新的な製品・サービスの開発やデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善等を行う事業計画を策定していること
(5)経済産業省が公開する「DX推進指標」を活用して、DX推進に向けた現状や課題に対する認識を共有する等の自己診断を実施するとともに、自己診断結果を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対して提出すること
また、DX戦略の策定やCIO等の設置をしている事業者にあっては、審査において加点されますが、こちらも詳細な要件は検討中です。
グリーン枠の新設
温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発や炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善等を行う事業者を対象に、補助上限額と補助率を引き上げた新たな申請類型を創設するとしています。
グリーン枠の対象となる事業者は、前述の基本要件(1)~(3)に加え、以下の要件が求められる予定です。
【グリーン枠の追加要件】
(4)3~5年の事業計画期間内に、事業場単位での炭素生産性を年率平均1%以上増加すること
(5)これまでの温室効果ガス排出削減に向けた詳細な取組状況がわかる書面を提出すること
グリーン枠は従業員数ごとの上限額の設定が高めに設定されています。
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業令和3年度補正予算案の概要
ものづくり補助金の上限額と補助率
これですべての申請類型が出そろいました。申請類型の上限額と補助率をまとめると下図のようになります。
出典:令和3年度補正予算案の事業概要(PR資料)
まとめ
ものづくり補助金は、中小企業の革新的な製品・サービスの開発または生産プロセス等の改善に必要な設備投資等を補助する役割を担っています。令和3年度の補正予算案では、そこにグリーン・デジタルなど成長投資の加速化に対応する特別枠や、賃上げ等の事業環境変化に対応するための特別枠が加わります。
成長投資の加速化は、これからの大きなテーマになるでしょう。また賃上げ原資の確保等のため、設備投資を促進して、引き続き生産性の向上が推し進められます。こういった特別枠では、補助率や上限額が引き上げられていますので通常よりも手厚い支援を受けることが可能です。
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