無痛分娩への関心が高まる一方で、実施できる医療機関はまだ十分に整っていません。また、費用面での負担が大きいことも課題です。日本における無痛分娩の普及率は世界的に見ても低く、出産方法の選択肢が限られているのが現状です。
こうした状況のなかで、いち早く補助制度を導入する自治体が出てきています。2025年(令和7年)10月からは、東京都でも無痛分娩費用の助成が始まっています。
今回は無痛分娩の基本的な情報や、補助制度などをまとめました。
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この記事の目次
無痛分娩とは?
無痛分娩は、出産時の痛みを和らげるために麻酔を使用する分娩方法です。特定の場所に細い管を入れ、そこから麻酔薬を投与することで、おなかから太ももにかけての痛みを抑えます。
意識がはっきりしているので出産の様子もよく分かり、赤ちゃんが生まれた瞬間も体験できます。身体への負担が少なく、出産後の回復も早いことから、世界で広く普及している出産方法のひとつです。
無痛分娩の希望は多い
東京都が実施した調査によると、無痛分娩を希望する方は少なくありません。本調査では、結果的に無痛分娩を選択したかどうかは別として、無痛分娩を希望する産婦の割合は6割を超えています。また、次の出産では無痛分娩を希望する方の割合も6割を超える結果となりました。このように、無痛分娩のニーズは高いといえます。
無痛分娩の費用
東京都が実施した医療機関向けの調査によると、無痛分娩の平均費用は123,533円ということです。無痛分娩費用の割合は、以下の順となりました。
| 無痛分娩の費用 | |
|---|---|
| 15万円以上20万円未満 | 40.00% |
| 10万円以上15万円未満 | 38.80% |
| 5万円以上10万円未満 | 15.30% |
同調査では、正常分娩の平均費用を660,885円としています。無痛分娩では、正常分娩費用に無痛分娩費用が上乗せされます。基本的に、出産費用は保険適応外ですが、出産育児一時金として50万円が支給されるため、正常分娩の場合は自己負担額を抑えられます。しかし、出産育児一時金では、正常分娩費用に上乗せされる無痛分娩費用まで賄えず、産婦側の費用負担が大きいといえます。
※医学的な理由で無痛分娩が必要と判断された場合は保険適応となるケースもあります。
無痛分娩の課題
厚生労働省が3年ごとに実施する「医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」からは、無痛分娩に対するニーズの推移と課題が伺えます。無痛分娩(帝王切開を除く)を実施した施設は、2020年9月が234件、2023年同月が282件と若干の増加を見たものの、ほとんど横ばい状態でした。しかし、無痛分娩が分娩全体に占める割合は下表の通り、一般病院では13.2%(2020年は9.4%)、一般診療所では14.6%(2020年は7.6%)と大きく伸びています。無痛分娩を実施できる施設がなかなか増えない一方で、妊婦側のニーズは高まっているのが現状です。

出典:厚生労働省
無痛分娩の実施はフランスでは8割、アメリカでも7割を超えると言われます。日本では妊婦本人からの需要は高い反面、「痛みを感じなければ愛情もわかない」といった偏見があることも課題のひとつです。
出産時の母体の負担を減らすことは、その後の回復にも大きな影響を及ぼします。2018年、イギリスのキャサリン妃が出産翌日に退院したことが話題となりましたが、無痛分娩が主流の国では珍しいことではありません。
出産時の選択肢を増やすことは、母体の健康と生活を守るためにも、重要なことなのです。
東京都無痛分娩費用助成等事業【2025年10月から】

出典:令和7年度(2025年度)東京都予算案の概要 主要な施策より抜粋
東京都は、2025年10月より、安心して無痛分娩を選べるようにするための助成制度を導入しました。
この制度は、小池都知事が2024年の知事選で掲げた公約の一つで、少子化対策と出産環境の整備を目的としています。全国の都道府県では初めての試みとなったことで大きな注目を集めました。助成額は以下のとおりです。
| 【助成額】 |
|---|
| 最大10万円 |
助成の要件
東京都無痛分娩費用助成等事業における助成要件は以下のとおりです。
| 項目 | 要件 |
| 出産日 | 2025年10月1日以降に出産した方 ※ただし、2025年10月1日以降に無痛分娩を予定していた方が、2025年9月30日以前に出産した場合、必要書類により確認できれば対象となります。 |
| 分娩方法 | 硬膜外麻酔または脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔による無痛分娩を受けた方 |
| 医療機関 | 東京都が指定する「対象医療機関」で出産した方 |
| 居住地 | 都内自治体で妊娠の届出を行い、母子健康手帳の交付を受け、以後助成金の申請日まで継続して都内に住民登録がある方 ※都外自治体で、妊娠の届出を行い、母子手帳の交付を受け、その後、都内に住民登録を移した場合は対象外となります。 |
| 申請期限 | 出産日の翌日から起算して1年以内(厳守) |
なお、申請は指定のフォームによる電子申請です。
助成対象となる費用
本助成では、硬膜外麻酔の手技や管理費用等、麻酔の薬剤費や無痛分娩に係る一連の医療行為に要した費用が対象です。なお、助成対象外として以下の費用が挙げられます。
- 室料差額・個室料・食事料等
- 文書料など医療行為に直接関係しない費用
- 保険適用となった費用
このように、あくまでも無痛分娩に直接関わる処置や行為が助成対象です。
現在、出産費用は全国平均で50万円程度かかり、医療保険の適用外で全額自己負担となるため、無痛分娩の高額な費用がハードルとなっていました。この助成制度により、妊婦の経済的負担を軽減し、安心して出産できる環境を整えることを目指しています。
全国の自治体による無痛分娩の助成
無痛分娩に対する助成は、全国のさまざまな自治体で実施されています。ここでは、自治体による具体的な助成金をご紹介します。
群馬県下仁田町 無痛分娩費用助成
下仁田町では、町に定住している人が無痛分娩を選択した際、要する費用の一部を助成します。医療保険各法の被保険者または被扶養者であり、町税等に滞納がない者が対象です。
| 【助成額】 |
|---|
| 保険適応外の無痛分娩費用のうち、自己負担額の1/2 ※上限10万円 |
【助成要件】
本助成では、以下を要件として定めています。
(2)医療保険各法の被保険者または被扶養者である方
(3)町税等に滞納がない方
【申請】
申請は、出産後90日以内に以下の書類を提出して行います。
- 申請書
- 医療機関証明書
- 同意書
- 通帳表紙裏面のコピー
- 領収書・明細書
本助成を申請する場合、医療機関から受けた十分な説明を理解した上、自分の意思で申請する必要があります。また、診察の結果などにより、無痛分娩の適応にならない方もいる点にご注意ください。
群馬県みなかみ町 無痛分娩費用助成金
水上町では、町では無痛分娩により出産した方の経済的負担を軽減するためにその費用の一部を助成しています。
| 【助成額】 |
|---|
| 1回の分娩につき最大10万円 |
無痛分娩の費用が10万円以下の未満の場合、医療機関に支払った費用が助成されます。
【助成要件】
本助成金の要件は以下のとおりです。
・無痛分娩で出産した日にみなかみ町に住民登録があり、引き続き定住の意思があること
・夫婦ともに町税等に滞納がないこと
【申請】
出産した日から3か月以内に、以下の書類をそろえて子育て健康課に申請してください。出生届の手続きの際に同時に申請できます。
- みなかみ町無痛分娩費用助成金交付申請書
- 領収書・明細書原本
- みなかみ町無痛分娩費用助成事業医療機関証明書
- 口座振込先がわかるもの
千葉県いすみ市 無痛分娩費助成金
いすみ市では、無痛分娩を希望する妊婦に対し、無痛分娩に要する費用の一部を助成しています。
| 【助成額】 |
|---|
| 自己負担額の1/2 ※上限10万円 |
助成対象となるのは、保険適応にならない無痛分娩費用の一部です。
【助成要件】
対象となるのは以下のすべてに当てはまる方です。
・医療保険各法の被保険者または被扶養者
・市税等に滞納がない方
【申請】
出産後90日以内に、以下の必要書類を用意した上で、費用助成を受ける本人(産婦)が大原保健センターで申請してください。
- 領収書と診療明細書
- いすみ市無痛分娩費用助成事業医療機関証明書
- いすみ市無痛分娩費用助成交付金に関する同意書
- 夫婦それぞれの納税証明書
- 母子健康手帳
- 申請者(産婦)の金融機関の口座番号がわかるもの(通帳またはキャッシュカード)
- 申請者(産婦)の本人確認書類
なお、本人以外が申請する際には、委任状の提出が必要です。
茨城県取手市 無痛分娩費用助成
茨城県取手市では、無痛分娩を選んだ妊婦の経済的な負担を軽減するため、2025年度から新たに助成制度を導入しました。
| 【助成額】 |
|---|
| 自己負担額の1/2 ※上限10万円 |
【助成要件】
本助成における要件は以下のとおりです。
| 項目 | 要件 |
| 出産日 | 2025年4月1日以降に無痛分娩により出産した方 |
| 分娩方法 | 無痛分娩(麻酔薬を用いた方法)を実施した方 ※医療機関の診察結果によっては無痛分娩の適応外となる場合があります。 |
| 医療機関 | 無痛分娩を取り扱う医療機関で出産した方 |
| 居住地 | 出産日に取手市内に住所を有し、継続して定住の意思がある方 ・市税等に滞納がない方 ・暴力団員でない方 |
【申請】
申請は、一時的に自己負担した上で出産日の翌日から起算して3か月以内に行います。以下の必要書類を、役所窓口への持参または郵送にて提出してください。
- 取手市無痛分娩費用助成金交付申請書兼請求書医療機関が発行する無痛分娩費用の領収書(または支払証明書)及び明細書の写し
- 取手市無痛分娩費用助成事業医療機関証明書
- 助成金の振込先口座を確認することができる通帳やキャッシュカード等の写し
岡山県備前市 無痛分娩費用助成事業
備前市では、出産時の痛みに対する不安等の軽減等、安心して出産できる環境を整備するため無痛分娩に係る費用を助成しています。
| 【助成額】 |
|---|
| 無痛分娩費用の合計の2/3以内 ※最大20万円 |
本助成事業は、一般的なほかの自治体等よる助成よりも助成額が大きい点が特徴です。
【助成要件】
本助成における要件は以下のとおりです。
・無痛分娩費用について、他の地方公共団体から補助金等の交付を受けていないこと
・市税等に滞納がないこと
【申請】
申請では、以下の書類を無痛分娩後2か月以内に申提出します。
- 備前市無痛分娩費用助成金交付申請書兼請求書
- 備前市無痛分娩費用助成事業医療機関証明書
- 振込希望先金融機関の通帳又はキャッシュカードのコピー(口座確認のため)
無痛分娩を選ぶ際に考慮すべきポイント
出産時の痛みに対する不安を抱える人もいる中、無痛分娩は費用面での負担が大きい選択肢であり、リスクに備える必要もあります。
無痛分娩のメリットとデメリット、医療機関の選び方をまとめました。
無痛分娩のメリット・デメリット
【メリット】
無痛分娩のメリットには以下のような点が挙げられます。
- お産の痛みや産後の疲労を緩和
- 麻酔によって産科処置がしやすい
- 必要と判断された際に帝王切開への移行がしやすい
- 産後の体力の回復が早い
このように、無痛分娩は母体にさまざまなメリットがあります。
【デメリット】
無痛分娩は、メリットがある一方で、デメリットもあります。
具体的なデメリットは以下のような点です。
- 麻酔の副作用が出ることもある
- 麻酔の効き具合によっては痛みが軽減されないケースもある
- 陣痛促進剤や吸引分娩が必要になることもある
- 麻酔ができない場合もある
無痛分娩を選択する際には事前に医師とよく相談し、十分に情報を集めたうえで、検討する必要があるでしょう。
参考:厚生労働省 無痛分娩を考える妊婦さんとご家族のみなさまへ
医療機関の選び方
無痛分娩を希望する際には、まずは無痛分娩を行っている施設を探さなくてはいけません。厚生労働省の「出産なび」では、無痛分娩を行っている施設を探すことが可能です。
ただし、この情報では無痛分娩の種類や方法についてはわかりません。場所や費用などで候補を絞ったら、各施設に問い合わせて希望通りの手術が受けられるかどうか確認してください。
また出産費用は、入院期間や部屋、食事などのオプションによっても大きく差が出ます。各施設に問い合わせ、総合的な費用感をつかんでおきましょう。
まとめ
無痛分娩は、出産時の痛みを和らげることで母体への負担を軽減する出産方法です。妊婦からの関心が高まる一方、費用や周囲の偏見など、またまだ課題も残ります。
また、すべての人が無痛分娩に適しているとは限りません。メリットやデメリットを十分に理解し、医師と相談しながら、総合的に判断することが重要です。
群馬県下仁田町や東京都、茨城県取手市など、自治体による補助制度も徐々に広がりつつあります。希望の形での出産が叶うよう、まずは自分が利用できる制度や施設を探してみましょう。
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