リスキリングとは、新たな職業に就くため、もしくは社内の新たな業務にあたるために「仕事の進め方を大幅に変えるスキルを習得する」ことをいいます。政府は成長分野への労働移動や賃上げを促すために「リスキリング支援」を行っていく方針です。
リスキリングを上手に導入すれば、従業員が時代の変化に適したスキルを保有でき、また企業にもさまざまなメリットをもたらします。
この記事では、リスキリングの内容や背景を解説するとともに、リスキリング環境を整えるために役立つ助成金をご紹介します。DX時代に生き残るための仕組みを構築したい対象事業者は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
リスキリングとは?
リスキリングとは、新たな職業に就く、もしくは現職で必要とされるスキルの大幅な変化に対応できるよう、従業員に新たな知識・スキルを学んでもらう取り組みのことです。現在は、特にDX(デジタル技術を活用し競争優位性を構築すること)のためのスキル習得を指すケースが増えています。
リスキリングは単なる学び直しではなく、今後の業務で価値を創出し続けるために必要なスキルを習得する、という点が重要視されています。
リスキリングという言葉が広がっている理由
リスキリングの内容を理解したら、なぜリスキリングという言葉が広がりを見せているのか、確認しておきましょう。
DXの普及
リスキリングという言葉が広がっている理由として挙げられるのが、DX推進が浸透してきた点です。スマーフォンの普及やリモートワークの増加により、政府はDX推進に向けたあらゆる対策を実施しています。このような競争社会で企業が生き残るためには、従業員がDX関連の知識・スキルを習得することが急務であり、結果としてリスキリングが注目を浴びるようになりました。
総合経済対策に組み込まれる
2022年10月、政府はリスキリングのための支援制度を総合経済対策に組み込む方針を発表しました。生産性を向上させ、さらなる賃金アップを生む仕組みが重要であるとの考えにより、働く人のリスキリング支援に5年間で1兆円を投入する意向です。この支援策によって、リスキリングのさらなる拡大が見込まれるでしょう。
社内のリスキリングを行う3つのメリット
社内でリスキリングを実施した場合、主に3つのメリットが考えられます。
業務効率化
リスキリングにより従業員がスキルアップすることで、新たな業務に時間を割けたり、採用・残業コストを削減できたりなど、業務効率化が望めます。また、既存の人材をより有効活用すれば従業員側も雇用が安定するため、企業と従業員双方にメリットがあります。
新規事業案の創出
リスキリングによって従業員が新たな知識・スキルを身に着ければ、その分新規事業案が生まれやすくなります。新規事業案の創出は変化していく時代にも対応でき、また既存事業のマンネリ化を抑制できるでしょう。
社内文化の再構成
新規事業立ち上げの際など、配属された人材によっては、既存事業のノウハウや企業の伝統を継承できない恐れがあります。しかし、社内文化を熟知した人材がリスキリングに取り組んだ場合、社風を継承しつつ新たな企業文化を構成し、より強みのある事業展開を目指せます。
リスキリング環境を整える時に使える助成金3選
ここでは、従業員のスキルアップ環境を整えるのに役立つ助成金を3つご紹介します。なお、令和4年10月18日から追加募集が始まった助成金もあるので、対象事業者の方はぜひこの機会に検討してみてください。
1.人材開発支援助成金(人への投資促進コース)
【人への投資コースの概要】
人材への投資を加速させるため、国民からの提案をもとに設けられたコースです。事業者が労働者へ訓練を実施した際に、訓練経費や訓練期間中の費用の一部等を助成します。訓練内容は下記の5種類です。
①高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練
②情報技術分野認定実習併用職業訓練
③長期教育訓練休暇等制度
④自発的職業能力開発訓練
⑤定額制訓練
◆訓練の要件
基本的には「職務に関する専門知識やスキルを習得させるための訓練」であることが要件です。ただし訓練次第では、IT分野未経験者に限られたり、対象となるOFF-JTが定められていたりします。詳細は人材開発支援助成金 人への投資促進コースのご案内(詳細版)のP.6~をご確認ください。
【助成率、助成額】
訓練メニューごとの助成率・助成額は下記の通りです。
訓練メニュー | 対象者 | 経費助成率 | 賃金助成額(1人1時間当たり) | OJT実施助成額(1人1訓練当たり・定額) |
高度デジタル人材訓練 | 正規/非正規 | 中小企業:75% 大企業:60% |
中小企業:960円 大企業:480円 |
ー |
成長分野等人材訓練 | 正規/非正規 | 中小企業/大企業:75% | 国内大学院の場合960円 | ー |
情報技術分野認定実習併用職業訓練 | 正規 | 中小企業:60%(+15%) 大企業:45%(+15%) |
中小企業:760円(+200円) 大企業:380円(+100円) |
中小企業:20万円(+5万円) 大企業:11万円(+3万円) |
長期教育訓練休暇等制度 | 正規/非正規 | 中小企業/大企業:制度導入経費20万円(+4万円) | 中小企業/大企業:1日当たり6,000円(+1,200円) 〈対象訓練:長期教育訓練休暇制度〉 |
ー |
自発的職業能力開発訓練 | 正規/非正規 | 中小企業/大企業:30%(+15%) | ー | ー |
定額制訓練 | 正規/非正規 | 中小企業:45%(+15%) 大企業:30%(+15%) |
ー | ー |
※()内の助成率・助成額は、生産性要件を満たした場合のものです。
2. 東京都 DXリスキリング助成金(令和4年10月18日から追加募集を開始)
【概要】
民間の教育機関等が提供するDX関連の職業訓練に、都内中小企業等が従業員を派遣したり、eラーニング等を利用したりする際の経費を助成します。DXの専門知識や技能を習得するための経費を支援することで、企業内のDX人材育成を促進させるのが目的です。
【申請者】
- 中小企業等(都内に本社又は事業所の登記がある)
- 個人事業主(都内の税務署へ開業の届け出が済んでいる)
【助成対象となる訓練の要件】
- 民間の教育機関等が提供するDX関連の訓練、もしくはeラーニング等によって実施するものである。
- DX関連の専門知識・技能の習得や向上を目的としている。
- 訓練時間が20時間以上である。(複数講座の組み合わせも認められます)
- 教育機関等の受講案内に加え、受講に関する経費(受講料等)がホームページやパンフレット等で一般公開されている。並びに、1講座及び受講者1人あたりの講座期間(時間)や受講料が前もって規定されている。
- 助成対象事業者が受講者の受講履歴等を確認可能である。
- 助成対象期間の初日以降からスタートし、助成対象期間内に完了するものである。
【助成対象経費】
- 単講座の受講料(税抜価格)
※教育機関等が提供価格を公表しており、かつ1講座あたりの対象期間・受講料が規定されているものとします。 - 教科書代、教材費
- eラーニング実施に関するID登録料や管理料
※振込手数料や送料は対象外です。
【助成額、助成限度額】
助成額:助成対象経費の2/3
助成限度額:64万円
【申請期間(令和4年度追加募集)】
申請期間 | 助成対象期間 | 実績報告書提出期限 | |
第6回 | 10月18日(火)~11月17日(木) | 12月1日(木)~2月28日(火) | 令和5年3月15日(水) |
第7回 | 11月18日(金)~12月19日(月) | 令和5年1月1日(日)~2月28日(火) | 令和5年3月15日(水) |
3. 東京都 オンラインスキルアップ助成金(令和4年10月18日から追加募集を開始)
【概要】
都内中小企業等が従業員に対し、民間の教育機関等が提供するeラーニングの職業訓練を実施する際の経費を助成します。職務に必要な知識やスキル習得に関する経費を支援し、従業員の職業能力向上を促進させるのが目的です。
【申請者】
- 中小企業等(都内に本社又は事業所の登記がある)
- 個人事業主(都内の税務署へ開業の届け出が済んでいる)
- 団体(都内に本社又は事業所の登記がある、任意団体は事務局の所在地が都内である、共同事業主は代表事業主の本社もしくは主たる事業所の登記が都内である)
【助成対象となる訓練の要件】
- 教育機関等が提供するeラーニング等によって実施するものである。
- 受講者の職務に要する知識・技能の習得や向上、もしくは資格取得を目的としている。
- 中小企業や団体が受講者の受講履歴等を確認可能である。
- 教育機関等の受講案内に加え、受講に関する経費(受講料等)がホームページやパンフレット等で一般公開されている。
【助成対象経費】
- 単講座の受講料(税抜価格)
※教育機関等が提供価格を公表しており、かつ1講座あたりの受講料・一定期間の受講料が規定され、期間内に複数講座の受講が可能であるものとします。 - 訓練に伴うID登録料や管理料
※振込手数料や送料は対象外です。
【助成額、助成限度額】
事業者区分 | 助成額 | 助成限度額 |
小規模事業者 | 助成対象経費の2/3 | 27万円 |
その他中小企業等 | 助成対象経費の1/2 | 20万円 |
【申請期間(令和4年度追加募集)】
申請期間 | 助成対象期間 | 実績報告書提出期限 | |
第9回 | 10月18日(火)~11月17日(木) | 12月1日(木)~2月28日(火) | 令和5年3月15日(水) |
第10回 | 11月18日(金)~12月19日(月) | 令和5年1月1日(日)~2月28日(火) | 令和5年3月15日(水) |
まとめ
デジタル化が進むと、AIやロボットによる代替業務増加が見込まれる一方で、それらを管理する新たな業務も必要となります。リスキリングを活用し、DX時代に対応できる人材を育成できるかどうかが、今後の企業成長の行く末を決めると言っても過言ではありません。
またリスキリングは、企業内に新たな風を吹き込むきっかけにもなります。自社の強みや優位性を活かしつつ、新たなDX人材により企業の持続的成長を望む対象事業者は、ご紹介した助成金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。