全面的な物価上昇は、私たちの生活に大きな影響を及ぼしています。
生活が苦しくなった、と話す声も、あちこちで聞こえてくるのではないでしょうか。
今年、物価高騰への対応として「賃上げ」が求められています。今回の記事では、政府が「構造的な賃上げ」の実現を目指すためにどのような支援策を行っているのかを調べてみました。
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この記事の目次
今後の見通し
コロナ禍からの経済活動の正常化が進みつつある中、世界的なエネルギー・食料価格の高騰や、世界的な景気後退懸念などにより、経済を取り巻く環境は厳しいものになっています。
それに対し、政府は昨年10月に策定した物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策の裏付けとなる令和4年度第2次補正予算を着実に実行し、経済を持続的な成長経路に乗せていく考えです。
経済対策を受けて新設・拡充が行われた助成金は、以下大きく3つのグループに分けることができます。
- 労働者の賃上げ支援
- 人材の育成・活性化支援
- 賃金上昇を伴う労働移動の円滑化支援
一つずつみていきましょう。
労働者の賃上げ支援
まずは、物価上昇に負けない賃上げを促進するための助成金を紹介します。
業務改善助成金(通常コース)の拡充
「業務改善助成金」は中小企業・小規模事業者等が事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を30円以上引き上げて、設備投資等を行った場合の費用を助成する制度です。
令和4年12月から改定された助成上限額・助成率は以下のとおりです。
出典:業務改善助成金(通常コース)リーフレットより抜粋
事業場規模30人未満の事業者について、助成上限額が引き上げられたのがポイントです。また、利益率が一定数以上低下している事業者などの「特例事業者」の助成対象経費が拡大されました。
※申請期限※
令和5年3月31日(事業完了期限:令和5年3月31日)
キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の拡充
非正規雇用労働者(有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者を含む)の賃金アップを図るなら活用したいのが「キャリアアップ助成金」の賃金規定等改定コースです。
このコースは、非正規雇用労働者の基本給を定める賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を適用した事業主に対して助成するものです。
令和4年9月1日以降に、5%以上の賃金引き上げを行う場合の助成額が大幅に拡充され、賃金規定等改定コースの一人当たりの助成額は、企業規模と賃金引き上げ率によって次のように定められました。
【中小企業】
引き上げ率 3%以上5%未満:5万円
引き上げ率 5%以上:6万5,000円
【大企業】
引き上げ率 3%以上5%未満:3万3,000円
引き上げ率 5%以上:4万3,000円
助成金の受給条件は以下のとおりです。
(1)賃金規定等を増額改定する前日までに「キャリアアップ計画」を作成し、最寄りの労働局へ提出していること。
(2)有期雇用労働者等の基本給を賃金規定等に定めていること。
(3)(2)の賃金規定等を3%以上増額改定し、改定後の規定に基づいて6か月分賃金を支給していること。
人材の育成・活性化支援
次に、個人の主体的なキャリア形成や人材育成を促進する助成金を紹介します。
人材開発支援助成金の拡充
企業内で人材育成を行った場合に使えるのが「人材開発支援助成金」です。訓練経費と訓練期間の賃金が助成されます。
経済対策で、人への投資を強化するために企業による労働者のリスキリング支援を強化していくとされたことを踏まえ、人材開発支援助成金の「人への投資促進コース」において、サブスク型の研修サービスを活用した「定額制訓練」と、労働者が自発的に受講する「自発的職業能力開発訓練」の助成率の引き上げなどが行われました。
出典:別冊リーフレット集より抜粋
【事業展開等リスキリング支援コースの設置】
また、以下の事業主を対象に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を高い助成率で支援する、人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」が新たに設置されました。
(1)既存事業にとらわれず、新規事業の立ち上げ等の事業展開に伴う人材育成
(2)業務の効率化や脱炭素化などに取り組むため、デジタル・グリーン化に対応した人材の育成
助成率・助成額は以下のとおりです。
出典:人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース リーフレットより抜粋
【主な支給対象訓練要件】
(1)助成対象とならない時間を除いた訓練時間数が10時間以上であること
(2)OFF-JT(企業の事業活動と区別して行われる訓練)であること
(3)職務に関連した訓練であって以下のいずれかに該当する訓練であること
ⅰ 事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要な専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
ⅱ 事業展開は行わないが、企業内のデジタル・グリーン化を進めるにあたり、関連業務に必要な専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
この助成金を活用して人材育成を行う場合は、訓練開始日から起算して1か月前までに、管轄の都道府県労働局に計画届を提出する必要があります。
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)の創設
労働者のスキルアップを在籍型出向で行って、条件を満たした場合に出向元事業主に対して助成金が支給される「産業雇用安定助成金 スキルアップ支援コース」ができました。
助成率 | 中小企業 2/3(中小企業以外 1/2) |
助成額 | 以下のいずれか低い額に助成率をかけた額(最長1年まで) a 出向労働者の出向中の賃金のうち出向元が負担する額 b 出向労働者の出向前の賃金の1/2の額 |
助成率 | 1人1日当たり8,355円※ (1事業所1年度あたり1,000万円まで) |
※雇用保険の基本手当日額の最高額(令和4年8月1日時点 8,355円)は、毎年8月に改正されます。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の拡充
非正規雇用労働者(有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者を含む)を正規雇用労働者に転換または直接雇用する場合に活用できるのが「キャリアアップ助成金」です。
人材開発支援助成金の特定の訓練を修了した後に正規雇用労働者に転換すると、助成金額が加算されます。対象の訓練コースは以下のとおりです。
- 「特別育成訓練コース」
- 「特定訓練コース」(うちITSSレベル2訓練)
- 「人への投資促進コース」
- 「事業展開等リスキリング支援コース」※令和4年12月新設
出典:キャリアアップ助成金 正社員コース リーフレットより抜粋
人材開発支援助成金を活用した特定の訓練修了後に正社員化した場合、加算額が引き上げられますので、この順番が逆だと加算の対象になりません。
賃金上昇を伴う労働移動の円滑化支援
最後に、安心して挑戦できる労働市場を創り出すための助成金を紹介します。
労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)の見直し
労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)は、事業主の経済的事情により離職を余儀なくされた労働者で「再就職援助計画」の対象となった方を、早期に雇い入れた事業主に対して助成するものです。
今回の見直しで、雇い入れ前賃金比5%以上の「より高い賃金」で雇い入れた事業主は、1人あたり20万円が加算されます。
中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)の見直し
中途採用者の雇用管理制度を整備した上で中途採用の拡大を図る時に活用できるのが「中途採用等支援助成金」です。
45歳以上の賃金を前職より引き上げる中途採用を推進するため、助成対象や助成額の見直しが行われました。
出典:中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)助成対象・助成額の見直しより抜粋
特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)の拡充
特定求職者雇⽤開発助成⾦において、未経験職種への転職を希望する「就職が困難な方」を採⽤し、⼈材育成を⾏い、賃⾦を引き上げることで助成⾦の額が通常より上がります。
※訓練や賃⾦引き上げが⾏われない場合は、通常コースの助成⾦が⽀給されます。
【成長分野等人材確保・育成コースの助成額】
出典:特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)リーフレットより抜粋
助成開始対象は、令和4年12月2日以降の採用です。まずは求人提出が必要となっていますので詳細は管轄のハローワークへお問い合わせください。
まとめ
今回は、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を受けて、新設・拡充が行われた支援策を賃上げに関連する助成金を中心に紹介しました。
各助成金制度の詳細は、厚生労働省のホームページ等で確認ができます。
「どの支援策が自社に合うのかわからない」「専門家に相談したい」という場合は、補助金ポータルでお近くの専門家を探すことができますので、ぜひご活用ください。