カタログに登録された人手不足解消に効果がある製品の導入を支援する「中小企業省力化投資補助事業(省力化補助金)」は、物価上昇への対策と並行して、生産性を向上させるための省力化をサポートする新制度として注目を集めました。しかし、この支援策には課題も存在するのではないでしょうか。それは、制度に関わる事業者の数が多いことです。
多くの補助金事務局のウェブサイトでは、申請を行う中小企業等へ向けた情報が主ですが、省力化補助金では「中小企業等」だけでなく「販売事業者」「製造事業者」「工業会」のそれぞれに向けたページがあります。このことから本補助金が、それだけ多くの者が関わる事業であり、事業スキームや登録の流れも単純ではないと推察できます。
カタログ登録手続きがよくわからないから、と省力化製品メーカーが今回の省力化補助金への参加を躊躇しているのなら、それは非常に"もったいない"ことです。登録された省力化製品は補助金の対象となり、販路拡大のチャンスとなります。そこで、今回は省力化補助金のカタログ登録をしたいと考えている事業者様へ向けて、登録手順や要件、スケジュールなどをお伝えします。ぜひ本記事を参考にして、登録申請を進めてください。このチャンスを活用し、販路拡大につなげましょう!
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この記事の目次
省力化投資補助金 カタログ登録の重要性
省力化補助金は、あらかじめ補助の対象として登録された製品のリストである「カタログ」から、中小企業等が製品を選択して導入するという形をとります。つまり、該当する業種や購入したい製品がカタログにないと、中小企業は補助金を活用できません。
そのため、製品カタログがいかに充実したものであるかが重要になるわけですが、この省力化製品がカタログに登録される流れがなかなか複雑です。
カタログ登録の流れ |
① 工業会が製品カテゴリの登録を申請 |
② ①で登録されたカテゴリごとに製造事業者が製品登録を申請 |
③ ②を経て登録された製品について、製造事業者がカタログ申請を行い製品カタログに掲載 |
④ 販売店等が販売事業者登録を申請し、外部の有識者委員会の承認を経た上で販売事業者として登録 |
⑤ 販売事業者がカタログ登録を申請 |
こういった申請・承認が行われて、製品がカタログから選べるようになるのです。今回は、この中から製造事業者が行う登録部分についてみていきます。
省力化製品・製造事業者の登録手順
製造事業者(※)の登録を希望する製品メーカー等の手続きは、まず「製品登録審査」を受けることから始まります。そして「製品製造事業者登録」を経て、最終的に「カタログ登録申請」をします。
中小企業等の人手不足解消に効果があるIoT、ロボット等の省力化製品を製造している事業者、または国内における総代理店(日本国内における独占販売権を保持している事業者)として、当該製品を扱う事業者のこと
①工業会へ登録申請を提出
まず、製品カテゴリごとに指定された工業会等に、電子データで書類を提出し審査の申請を行います。工業会のメンバーでなくても、製品の登録は可能です(よくあるご質問 No.20 参照)。
提出書類一覧 |
製品・製造事業者審査申請書 |
当該製品の詳細が分かる資料(申請する業務領域が確認できるもの、プランごとの価格が確認できるもの、製品の仕様がわかるもの等) |
省力化機能根拠資料(製品カテゴリごとに設定され、入力が必要となる省力化指標の数値の根拠となる書類) |
当該製品の納品実績を示す書類(納品書) |
製造事業者に関する書類(申請するカテゴリでの初回の製品登録時のみ必要) ・履歴事項全部証明書 ・税務署の発行する法人税の直近の納税証明書(その1またはその2) ・決算書(損益計画書及び貸借対照表) ・保守・サポートが分かる資料 ・<販売総代理店が申請する場合>当該海外メーカの国内販売総代理店であることを示す書類 |
このほか、省力化製品の導入環境や省力化製品の生産環境、生産工場、在庫等について追加で提出する場合があります。
②工業会、事務局等による審査
工業会等は、製品が省力化の基準を満たしているかを審査した後、結果を事務局に報告します。事務局では、製品の登録要件や製造事業者の申請要件、提出書類を確認し、問題がなければ外部有識者委員会の意見を聞いて中小企業庁に報告します。最終的に、中小企業庁が他の関連部署と協議し、要件を満たすものを省力化製品および製造事業者として承認します。
③工業会より証明書発行
承認されると、工業会等から証明書が発行され、事務局へ製造事業者としての登録が行われます。これで、省力化製品と製造事業者の登録が完了します。なお、製造事業者の登録申請は、初回の製品登録時のみ必要で、登録が1度完了されたら、2回目以降の申請は必要ありません。
④カタログ申請提出
カタログ登録を希望する製造事業者は、事務局へ省力化製品のカタログ登録の申請を行います。事務局が製品を承認すると、その製品は補助金の対象としてカタログに登録されます。
省力化製品・製造事業者の要件
製品登録、製造事業者登録の際、満たすべき要件が細かく定められています。以下に主な要件をまとめました。
省力化製品の要件
① 概要事項 |
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・定義や概要、業務範囲や業務機能等の仕様、外縁が明確化されており、事前に登録された製品カテゴリに属することが分かること ・汎用製品であり、開発等を前提としないものであること ・販売が開始されており、製造・販売された実績を5社以上有していること 等 |
② 製品性能及び価格に関する事項 |
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・当該製品が属する製品カテゴリにおいて、中小企業の業種や規模に応じて定められた省力化基準を超える効果を持つこと ・製品本体の価格は50万円以上であること。また、本補助金の補助上限金額に比して著しく高額のものでないこと 等 |
③ 供給体制に関する事項 |
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製造事業者により以下の体制が整えられていること ・供給と生産の体制が整備されており、中小企業等への納入が遅滞なく行える ・本事業を適切に実施するために、調達及び供給の現状把握や安定供給の体制構築等に向けた取り組みが行われている |
④ サポート体制に関する事項 |
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製造事業者により以下の体制が整えられていること ・登録申請を行う省力化製品が生産性向上、省力化に資するよう、最大限の効果を発揮するための環境・体制等の構築を行う ・全国でのサポート体制が整っていることを示す資料を提出し、製品の耐用年数中に問題が発生した際には販売代理店も含めて修理・サポートを提供することを宣誓する |
省力化製品に関して対象外となる要件
登録に必要な要件だけでなく、登録できない製品の要件も定められていますので、必ず事前に確認しましょう。
たとえば、製品が完成されておらず、開発が必須となると想定されるものや、ソフトウェアのみで専用の製品等を必要としないもの、緊急時等の一時的利用を目的とし恒常的に利用されないことが想定されるものなどは対象になりません。
製造事業者登録の要件
省力化製品の登録ができる製造事業者の主な要件は以下のとおりです。
① 基本的事項 |
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・登録申請時点において、日本国内で法人登記され、国内で事業を営む法人であること。 ・経済産業省または中小機構から補助金等停止措置又は指名停止措置を受けていないこと。 ・パートナーシップ構築宣言について、登録申請時点においてポータルサイトにおいて宣言を公表している事業者であることまたは速やかに宣言を実施すること。 等 |
② 経営基盤に関する事項 |
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・登録期間中、製品の生産を継続して行えると判断するに足る十分な経営基盤を有していること。 |
③ 供給・サポート体制に関する事項 |
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・登録した省力化製品は「登録要領」に基づく供給とサポート体制を整えること。受注状況の予期せぬ変動により体制が整わない場合は、事務局に連絡し、カタログ掲載の一時取りやめを行う等の措置をとること。 |
④ 事業実施時等の対応に関する事項 |
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・公募要領等に記載の内容を遵守することができること。 ・登録申請に必要な情報を入力し、添付資料を必ず提出すること。 ・本事業にかかる政策評価のため、販売開始以降(5年以上前の場合は5年前から)から効果報告期間の省力化製品の製造個数・売上額、及び経営状況に関する指標(決算書記載の事項)を提出することに同意すること 等 |
要件の詳細は、省力化製品・省力化製品製造事業者登録要領をご確認ください。
省力化投資補助金の登録スケジュールと登録カテゴリ
省力化製品の登録に関して、ホームページで公開されている製品カテゴリにあてはまる製品は随時登録可能です。該当申請様式に必要事項を記載して、該当工業会へ申請してください。
承認カテゴリ一覧を確認すると現在承認されているカテゴリ名やその定義、対象業種や審査担当工業会名などがわかります。たとえば、製品カテゴリ名「清掃ロボット」の審査担当工業会名は、一般社団法人日本ロボット工業会です。
省力化製品のカテゴリ・対象業種について
製品カテゴリは製品カタログに掲載されている製品の分類です。工業会などが中小企業庁に製品カテゴリの登録を申請し、中小企業庁が関連省庁と協議して認定しています。8月2日時点で「券売機」や「配膳ロボット」など19のカテゴリがあり、新しいカテゴリが随時追加されています。
【対象業種】
製品カテゴリに登録される製品が使われる業種はあらかじめ決められています。製品の対象業種設定は、製品が属する製品カテゴリで登録された業種のなかから行うこととし、それ以外の業種の登録は認められません。
【カテゴリと対象業種一覧】
製品カテゴリ | 対象業種 |
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券売機 | 飲食サービス業 |
自動精算機 | 飲食サービス業、小売業 |
自動チェックイン機 | 宿泊業 |
スチームコンベクションオーブン | 宿泊業、飲食サービス業、小売業 |
無人搬送車(AGV・AMR) | 製造業、倉庫業、卸売業、小売業 |
検品・仕分システム | 製造業、倉庫業、卸売業、小売業 |
自動倉庫 | 製造業、倉庫業、卸売業、小売業 |
清掃ロボット | 飲食サービス業、宿泊業 |
配膳ロボット | 飲食サービス業、宿泊業 |
タブレット型給油許可システム | 小売業(ガソリンスタンド) |
オートラベラー | 製造業、倉庫業、卸売業、小売業 |
飲料補充ロボット | 小売業 |
デジタル紙面色校正装置 | 印刷・同関連業 |
測量機 | 建設業、専門・技術サービス業(測量業) |
丁合機 | 製造業、倉庫業、卸売業、小売業 |
印刷用紙高積装置 | 印刷・同関連業 |
印刷用インキ自動計量装置 | 印刷・同関連業 |
段ボール製箱機 | 製造業 |
近赤外線センサ式プラスチック材質選別機 | 製造業、廃棄物処理業、卸売業 |
省力化製品・製造事業者登録(カタログ登録)のメリット
製品が補助金のカタログに掲載されることは、製品の信頼性と認知度の向上に役立ちます。また、カタログに載ることによって、中小企業が補助金を使ってこれらの製品を買うことが増え、売上を直接増やすことにつながります。このように、カタログ登録は製造事業者にとって有意義なマーケティング戦略になり、メリットは大きいと言えます。
製造事業者のための申請サポートの窓口の開設※11月6日更新
製品を登録申請しやすい体制を整えるため、製造事業者の申請を支援する新たなサポート窓口の開設が11月1日にアナウンスされました。これにより、事前(および申請後)の相談や手続き支援が希望に応じて可能となり、申請手続きがよりスムーズになることが期待されます。WEB面談(東京のみ対面も可)で以下のような相談ができます。
【申請前のフロー確認】
手続きや申請の流れを事前に確認し、安心して準備が進められます。
【申請書や添付書類の記入方法の相談】
申請書記入方法や必要な証拠書類について、具体的なアドバイスを受けられます。
【申請全般の相談対応】
製品登録の申請全般の相談や問い合わせが可能です。
面談の申し込みは予約フォームから行います。予約フォームは、11月中旬に公開予定です。
参考:製造事業者向け製品申請サポート窓口の開設について
まとめ
省力化投資補助金は、補助金を活用する企業が自由に製品を選ぶのではなく、カタログに掲載された製品の中から選択する方式をとっています。
カタログに掲載されることは、製品メーカーにとって大きなチャンスです。なぜなら、公式に認められた製品としてカタログに載ることで、自社製品の認知度が上がり、販売機会が増えるからです。登録の手続きには手間がかかるかもしれませんが、製品を市場に広げ、売り上げを伸ばすためこの機会を最大限に利用してみてはいかがでしょうか。