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令和4年度第2次補正予算より特定求職者雇用開発助成金の見直しを解説

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令和4年度の第二次補正予算案において、特定求職者雇用開発助成金を見直す内容が盛り込まれました。本助成金は、就職困難者を雇用し人材育成に取り組む企業を支援するための制度です。

見直しの対象である「成長分野人材確保・育成コース」は、通常コースに比べ高額の助成が適用されます。コストを抑えつつ人材不足を解消したい、もしくは即戦力となる人材を確保したいとお考えの事業主は、ぜひ参考にしてください。
令和5年補正予算【厚生労働省】

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この記事の目次

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新しい資本主義の中核をなす「人への投資」とは

「人への投資」とは、企業の価値や創造性を生み出すための人的資本への投資のことです。この取り組みは、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の重点項目の一つであり、世間から注目を集めています。

「人への投資」が注目されている背景には、企業の生産性に直結するIT人材不足の問題があります。少子化によって進んでいる人口減少に伴い、近年ではデジタル化に対応できる人材が不足しているのが現状です。

出典:IPA DX白書2021

さらには、中小企業では資金的に限度があるため、人材育成への取り組みも十分には行えません。そこで政府は、人への投資を抜本的に強化するため、3年間で4,000億円規模を投入する施策パッケージを打ち出しました。

新しい資本主義に向けた、人への投資と分配の内容は下記の5項目です。

スキルアップ(人的資本投資)
多様な働き方の推進
質の高い教育
賃上げ、最低賃金の引き上げ
資産所得倍増プラン

この施策によって企業の新たな付加価値創出を強化し、またデジタルのような成長分野への労働移動を円滑化することで、人材育成を推進するのが目的です。

特定求職者雇用開発助成金(成長分野人材確保・育成コース)とは

このコースではデジタル・グリーン分野並びにこれに関する分野(以下、成長分野等)の業務に、就職困難者を従事させる事業主をサポートします。就職困難者を継続的に雇用する労働者として採用し、人材育成や職場定着に取り組む場合に、本助成金の他コースよりも高額の助成金を支給する制度です。

【対象労働者】
下記のいずれかに該当する方とします。

コース名 対象労働者種別
特定就職困難者コース ・60歳以上の方
・身体障害者
・知的障害者
・精神障害者
・母子家庭の母等
・父子家庭の父(児童扶養手当を受給している方に限る)
・中国残留邦人等永住帰国者
・北朝鮮帰国被害者等
・認定駐留軍関係離職者(45歳以上)
・沖縄失業者求職手帳所持者(45歳以上)
・漁業離職者求職手帳所持者(45歳以上)
・手帳所持者である漁業離職者等(45歳以上)
・一般旅客定期航路事業等離職者求職手帳所持者(45歳以上)
・認定港湾運送事業離職者(45歳以上)
・その他就職困難者
生涯現役コース 65歳以上の方
被災者雇用開発コース ・被災離職者
・被災地求職者
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース ・発達障害者
・難治性疾患患者
就職氷河期世代安定雇用実現コース 就職氷河期世代長期不安定雇用者
生活保護受給者等雇用開発コース ・生活保護受給者
・生活困窮者

【対象事業主】
下記①~④の条件を全て満たすこととします。

対象労働者別に応じた、特定求職者雇用開発助成金の他のコースの支給要件全てに該当する。
※コースの詳細は厚生労働省 特定求職者雇用開発助成金(成長分野人材確保・育成コース)の「主な支給要件」をそれぞれご参照ください。

対象労働者を成長分野等の業務(※)に従事させる事業主である。

対象労働者に対し、雇用管理改善もしくは職業能力開発に関する取り組みを実施する。

上記②と③についての計画書と報告書を提出する。

(※)デジタル、DX化やグリーン、カーボンニュートラル化に寄与する業務を指します。これに該当するかどうかの判断基準は下記の通りです。

該当する 「成長を新しく生み出す」
デジタル等の製品や技術を新しく生み出すために不可欠な業務
〈主な例〉
■デジタル等の製品・技術開発
■製造等(ウェブ制作・ウェブデザインなどを含みます)や、これと繋がる業務(実験、テスト等)
「成長に直接寄与する」
デジタル等の製品や技術を新しく生み出すものではないものの、デジタル化等の拡大に寄与するものとみなされる業務
〈主な例〉
■デジタル等の製品・技術のインフラ整備
■メンテナンス、営業・販売等の業務
該当しない デジタル等の製品・技術を用いるが、主な業務内容が成長分野と関わりが低い等(デジタル化等の拡大に関連しないため該当しません)
〈主な例〉
■デジタル製品を用いた事務業務
■デジタル製品・技術を使う会社の警備・清掃業務
■電気自動車を使用した配送業務等

該当する業務の代表的な例は下記の通りです。

・デジタル化
・DX化
■ソフトウェア・アプリの設計開発業務
■ネットワークの設定・デジタル機器の運用保守業務
■自社デジタル製品の営業販売業務
■自社業務のDX化業務 等
・グリーン化
・カーボンニュートラル化
■次世代太陽光電池の技術開発業務
■バイオマス素材製品の製造業務
■ZEHの建設業務
■電気自動車の販売業務 等

【助成対象期間】
対象労働者の区分や企業規模により、起算日から1~3年間と異なります。

【支給申請の流れ】
①ハローワーク等から紹介を受ける。
②対象者を雇用する。
③計画書を提出する。
④助成金第1期の支給申請する。
⑤支給申請書の内容について調査・確認が行われる。
⑥支給・不支給が決定される。
⑦助成金が支給される。

※第2~6期支給申請時も同様の手続きを要します。

〈支給申請の手続きについての注意点〉

  • 計画書は雇い入れ日(対象労働者がトライアル雇用労働者の場合は、継続雇用に移行した日とします)から1か月以内に、紹介したハローワークもしくはそのハローワークを管轄している労働局へ提出してください。
  • 助成金は支給対象期ごとに2~6回に分けて支給されます。
  • 支給申請は、支給対象期ごとに「事業所の所在地を管轄する労働局」もしくは「ハローワーク」へ行います。
  • 支給申請期間は、各支給対象期の末日の翌日から2か月以内とします。
  • 支給申請時は報告書などの提出が必要です。

特定求職者雇用開発助成金の見直しの内容

就職困難者の賃上げに関連する労働移動等の実現を目指し、一定の技能が必要な未経験分野への労働移動希望者を雇用する事業主へ、高額助成を実施します。

〈現行〉
成長分野(デジタル、グリーン)の業務に携わる労働者として雇用する事業主に対し、高額助成(通常コースの1.5倍)を行います。
 ↓
〈新規〉
就労未経験の職業への従事を希望する就職困難者を雇用し、人材育成計画策定・人材育成を実施した上で賃金を引き上げる事業主に対し、高額助成(通常コースの1.5倍)を行います。なお、現行の成長分野以外の分野も対象に追加します。また一定の訓練期間・時間数に達する訓練を行う場合に限ります。

施策の実施要件

対象労働者 支給額
高年齢者(60歳以上65歳未満)
母子家庭の母等
生活保護受給者等
45〈30〉万円×2期
(37.5〈22.5〉万円×2期)
就職氷河期世代不安定雇用者 45万円×2期
(37.5万円×2期)
65歳以上の高年齢者 52.5〈37.5〉万円×2期
(45〈30〉万円×2期)
身体・知的障害者
発達障害者、難治性疾患患者
45〈30〉万円×4期
(37.5〈22.5〉万円×2期)
重度障害者等(重度障害者、45歳以上の障害者、精神障害者) 60〈30〉万円×6〈4〉期
(50〈22.5〉万円×3〈2〉期)

※〈〉内は短時間労働者を雇い入れた場合の支給額です。
※()内は中小企業以外の企業に対する支給額です。

事業スキーム

①ハローワーク等からの紹介
②対象者の雇い入れ
③人材育成計画(※1)並びに賃金引き上げ計画(※2)の作成
④助成金の第1期(6ヶ月)支給申請(賃金引き上げ計画・報告書の提出)
⑤支給申請書の内容における調査・確認
⑥支給・不支給決定(申請事業主に通知書送付)
⑦助成金の支給

(※1)対象者を雇い入れたあと、助成対象期間内に訓練を実施することが求められます。
(※2)「賃金引き上げ計画」の計画期間(最大3年)終了後の「報告書」提出をもって高額支給します。
なお④~⑦については、第2~6期支給申請においても同様の手続きが必要です。

特定求職者雇用開発助成金活用のメリット

就職困難者の中には、職務経験が豊富など優秀な人材も多く存在しています。そんな中、本助成金で今回見直される「成長分野人材確保・育成コース」については、他のコースに比べ助成金が高額に設定されています。本助成金を活用すれば、企業の人材不足を最低限のコストで解消でき、かつ即戦力となる人材を雇用できる可能性が期待できるでしょう。

また「雇用関連の助成金受給が可能な安定した企業」と国から認定されることになるため、本助成金を取り入れれば自社のイメージアップにも繋がります。

まとめ

デジタル化の発展に伴い、今後はより一層人材不足が深刻化すると懸念されています。大企業に比べ人材不足が起きやすい中小企業にとって、特定求職者雇用開発助成金は人材確保の良いきっかけになります。

就職困難者を積極的に雇用することは、社会的意義を果たせる上に、企業価値の向上にも結び付きます。金銭的なサポートを受けながら人材不足を解消したい事業主は、ぜひ本助成金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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