2020年から爆発的に拡大した新型コロナウイルスの感染拡大は、ワクチンや治療薬の開発によってようやく落ち着きを見せつつあります。「ウィズコロナ」のフレーズとともに、新しい生活様式も定着してきました。
社会的ニーズの変化は企業にとってはチャンスになる反面、負担にもなります。変革の時期を乗り越えるために中小企業に必要なこととは、どんなことでしょうか。
今回はウィズコロナ時代の中小企業の在り方を考えるとともに、時代の変化を乗り越えるために知っておくべきことについてまとめました。
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この記事の目次
ウィズコロナとは
ウィズコロナとは、新型コロナウイルスと共に生きることを目指す言葉です。コロナウイルスに限らず、わたしたちの社会には多くの病原菌やウイルスが蔓延しています。感染予防を重ね、時に罹患しながらも、治療によって完治することが難しくない状態を保つことで、わたしたちは正常な社会活動を維持できるのです。
一般的なウイルスと同等に、新型コロナウイルスもワクチンや治療薬の開発・使用が世界的に進んでいます。新型コロナウイルスとの戦いはまだ予断を許さない側面がある一方で、「ウィズ」の時代への移行は確実に進んでいると言えるでしょう。
また内閣官房が発表した「Withコロナに向けた政策の考え方」 では、諸外国ではすでに社会・経済活動の正常化の動きが進んでいることなどから、今後の新型コロナウイルス対策が新たな段階に移行することが示されています。
政府の方針が変更されることにより、今後、緊急支援として設置されていた事業等が変更になることも予想されます。コロナ禍による業績悪化からの回復が万全でない現状では、こうした行政の動きにも敏感になっておく必要があります。
ウィズコロナとは、感染予防と経済活動の正常化との両立が求められる、難しい時代でもあるのです。
ウィズコロナとアフターコロナの違い
ウィズコロナと混同されやすい単語として、「アフターコロナ」もしくは「ポストコロナ」があります。
アフターコロナとは、「コロナ禍後の世界」という意味で使われる言葉です。現状、新型コロナウイルスの治療法は確立の兆しが見えてきています。しかし世界経済はまだ回復期にあり、感染者数も安心できる水準にまでは達していません。
本当の意味で新型コロナウイルスの問題が終息するには、まだまだ時間がかかります。
コロナ禍において、わたしたちの生活は大きな変化を遂げました。「アフターコロナ」は、コロナ禍以前に戻ることを意味しているわけではありません。ウィズコロナもアフターコロナも定義のある言葉ではありませんが、「新しい社会のありかた」を指すという意味では同じです。
「ウィズ」を経て「アフター」へ至るというよりも、「ウィズ」時代の成熟をもって「アフター」とする、と考えるのが正しいのかもしれません。
ウィズコロナ時代の中小企業
感染予防と経済の活性化の両立が求められるウィズコロナ時代は、すでに始まっています。政府は重症化リスクの低い罹患者には検査やシステム登録を自分で行うことを呼び掛ける一方、全国旅行支援やGo to eatキャンペーンをはじめとする支援事業を開始しました。これは医療施設の負担を軽減しながら、社会活動の正常化を目指す動きです。
しかし、まだウィズコロナに向けた準備が整っていない企業もあります。ここではウィズコロナが中小企業に及ぼす影響や、必要な準備について考えていきましょう。
ウィズコロナが中小企業に及ぼす影響
消毒設備や換気、マスク着用の呼びかけといった感染対策は、企業の本来の業務とは別のものです。設備の導入には予算的な課題もあります。中小企業の多くは、こうした「本業以外」の業務に大きな負担を強いられています。
さらにウィズコロナの時代には、コロナ禍で被った業績悪化の影響も残っています。活発化する経済活動を支えるには、一時的な事業縮小によって削減した人員も再び確保しなくてはなりません。
損失を補填しつつ新たなニーズに応えるには、業務の効率化が必須となります。
中小企業のDX化には課題も
日本のデジタル社会実現を目指し、政府は2021年9月にデジタル庁を設置しました。それに先立って2018 年に経済産業省から発表された「DX レポート」では、企業がデジタル技術を活用して社会のデジタル化に対応していくことの必要性が提唱されています。
業務のデジタル化は新しい生活様式に関するニーズ対応のみならず、時代に即した新しい企業の在り方として期待されているのです。
しかし令和4年5月に独立行政法人中小企業基盤整備機構が発表した「中小企業のDX推進に関する調査」では、DXについて「理解していない」または「あまり理解していない」と答えた企業は46.8%に上る一方、「理解している」または「ある程度理解している」と回答した企業はわずか37%でした。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査」
また、DXに関する取り組みに関しては、34.1%が「必要だと思うが取り組めていない」と回答しています。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査」
中小企業においては、DX化に課題を抱える企業も多いことがわかります。
観光業ではDX対応が急務
10月、日本の入国制限が見直され、個人の海外旅行客の受け入れが再開されました。これまで「コロナ鎖国」などと揶揄されてきた規制が緩和されたことで、街中でも海外からの旅行客の姿が見られるようになってきました。円安も後押しとなって、観光業界ではインバウンドへ期待が高まっています。
しかし、長引くコロナ禍において人員の削減を行っていた観光業界では、いま、人員不足が深刻な問題となっています。帝国バンクの調査では、業種別の正社員の人不足の割合は「旅館・ホテル」が66.7%とトップです。
人員確保が課題となるなか、予約や空き室管理などの業務をDX化によって軽減させる動きが広まっています。業務のデジタル化は、人と人との接触を減らす感染症対策としても役立ちます。
観光業界では、観光客の急増によるインバウンドのチャンスを逃さないために、DXの導入が急務となっているのです。
今後の中小企業支援の方向性
これまで、コロナ禍において打撃を受けた中小企業を支援する取り組みには、大きな予算が計上されてきました。ウィズコロナでは、新たな日常を前提にした新分野への進出・転換を促す「事業再構築補助金」が引き続き注目されています。
また、ものづくり、小規模事業者持続化、IT導入といった中小企業生産性革命推進事業に関する補助金では、時勢に応じた特別枠が設けられてきました。
その一方、現在は世界的に不安定な社会情勢を背景にした原油価格高騰や物価高という新たな問題も浮上しています。
コロナ禍では「事業再構築」に力をいれていた中小企業への補助は、賃上げなどの物価高騰に対する支援へ移行しつつあります。さらにエネルギーや食料の危機に負けない経済構造への転換として、省エネ投資支援(脱炭素)も強化されています。
11月の第二次補正予算では、賃上げやグリーン関連の補助金に大きな拡充が行われました。各補助金の拡充に関しては、こちらの記事も参考にしてください。
企業に対する支援は、社会情勢の変化とともに移行します。事業再構築関連の支援もずっと続くものではありません。企業はウィズコロナに対応しつつも、賃上げや脱炭素などの新しい時代を見据えた取組みを考えていかなくてはならない時代なのです。
まとめ
最後に、これまでの内容を簡単におさらいしましょう。「ウィズコロナ時代に中小企業が知っておきたいこと」は、以下の4つです。
①ウィズコロナ時代には、感染予防対策と経済活動の活発化を両立させなくてはいけない
②負担軽減のため、DX化による業務改善急務
③現在の行政の支援は、永遠に続くものではない
④企業は、変化する社会の在り方に対応する必要がある
社会的な課題や行政の支援は、日々変化しています。こまめに情報を入手し、臨機応変に対応していくことが大切です。
自分たちだけでは難しい、と感じたら、専門家の助言を仰ぐことも有効です。補助金ポータルでは、企業を支える専門家をご紹介しています。
専門家や行政支援を活用し、変化の時代を乗り越えていきましょう。