▼第10回公募の申請受付を6月9日から開始しました。
ウィズコロナ時代に対応するための、企業の事業再構築を支援する「事業再構築補助金」。この補助金はよく聞くけど、どういう企業が申請できるのか、申請要件を満たせるかわからない、といった疑問ををお持ちの事業者様も多いのではないでしょうか。
第10回公募から、新たな枠の創設やグリーン成長枠の拡充など「事業再構築補助金」が大きく変わります。そこで、今回は事業再構築補助金の概要と、10回からの変更点についてまとめました。
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▶︎変更点のポイントを解説
▶︎【成長枠】について
▶︎【グリーン成長枠】について
▶︎【産業構造転換枠】について
▶︎【サプライチェーン強靱化枠】について
▶︎【物価高騰対策・回復再生応援枠】について
▶︎【最低賃金枠】について
この記事の目次
そもそも事業再構築補助金とは?
事業再構築補助金は、コロナに負けずに経済社会の変化に対応するため、これまでの事業とは違った新しい分野に思い切ってチャレンジする事業者を支援する補助金です。
例えば、衣料品の店舗販売のみ行っていた小売業がネット販売を始めて、全国に商品販売を展開したり、オフィス勤務の方向けの弁当販売を行う事業者(飲食業)が、高齢者向けの食事宅配事業を開始したりといった、さまざまな業種が行う多様な取り組みを補助する制度です。
事業再構築補助金の補助金額
事業再構築補助金の補助金額は、申請類型や従業員規模によって異なります。最少の金額は100万円、補助額の一番大きい類型では5億円までとなっています。
事業再構築補助金には、「成長枠」、「グリーン成長枠」、「卒業促進枠」、「大規模賃金引上促進枠」、「産業構造転換枠」、「サプライチェーン強靱化枠」、「最低賃金枠」および「物価高騰対策・回復再生応援枠」の8つの事業類型があります。同一法人・事業者での各事業類型への応募は1回の公募につき1申請となります。
なお、「卒業促進枠」と「大規模賃金引上促進枠」は、「成長枠」または「グリーン成長枠」の上乗せ枠です。卒業促進枠または大規模賃金引上促進枠の申請は、成長枠またはグリーン成長枠の申請と同時に行う必要があります。
申請類型ごとの補助金額・補助率
下表は、各事業類型の上限額・補助率をまとめたものです。(上乗せ枠である「卒業促進枠」と「大規模賃金引上促進枠」を除く)
申請類型・対象 | 上限額 (下限額は100万円) | 補助率 |
---|---|---|
【成長枠】 成長分野への大胆な事業再構築に取り組む事業者 | 2,000万円、4,000万円、5,000万円、7,000万円(※) | 中小1/2 中堅1/3 |
【グリーン成長枠】 研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決のための取組を行う事業者 | <エントリー> 中小:4,000万円、6,000万円、8,000万円(※) 中堅:1億円 | 中小1/2 中堅1/3 |
<スタンダード> 中小:1億円、中堅:1.5億円 | ||
【産業構造転換枠】 国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者 | 2,000万円、4,000万円、5,000万円、7,000万円(※) 廃業を伴う場合2,000万円上乗せ | 中小2/3 中堅1/2 |
【サプライチェーン強靱化枠】 海外で製造する部品等の国内回帰を進めて国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を行う事業者 | 5億円 | 中小1/2 中堅1/3 |
【物価高騰対策・回復再生応援枠】 業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者、物価高騰等の影響を受ける事業者 | 1,000万円、1,500万円、2,000万円、3,000万円 (※) | 中小2/3(一部3/4) 中堅1/2(一部2/3) |
【最低賃金枠】 最低賃金引上げの原資の確保が困難な事業者 | 500万円、1,000万円、1,500万円(※) | 中小3/4 中堅2/3 |
(※)従業員規模により異なる
対象経費
補助対象経費の例は以下のとおりです。
補助対象経費 |
建物費(建物の建築・改修等) |
機械装置・システム構築費 |
技術導入費(知的財産権導入に要する経費) |
外注費(加工、設計等) |
広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等) |
研修費(教育訓練費等) |
なお、製造業が対象となる「サプライチェーン強靭化枠」の対象経費は、建物費と機械装置・システム構築費のみで、他の枠とは異なります。
事業再構築補助金の申請要件
必須要件は以下の2つです。後ほど新しい事業類型の説明で、何回も出てきますので把握しておきましょう。
【必須要件】
(1)事業再構築指針※に沿った事業計画について認定経営革新等支援機関や金融機関の確認を受けること。
(2)補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3~5%(申請枠により異なる)以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3~5%(申請枠により異なる)以上増加の達成。
(※)事業再構築指針とは
「事業再構築指針」とは、事業再構築補助金の対象となる事業再構築がどのようなものかを定義したものです。
事業再構築とは、「新市場進出(新分野展開、業態転換)」、「事業転換」、「業種転換」、「事業再編」または「国内回帰」の5つを指します。補助金を申請するためには、これら5つのうち、いずれかの類型に該当する事業計画を認定支援機関と策定することが必要になります。
事業再構築指針 5つの事業再構築の定義
それぞれどのような事業再構築を指すのか、5つの事業再構築の定義を簡単にご紹介します。
「新市場進出(新分野展開、業態転換)」…新たな製品等で新たな市場に進出すること
「事業転換」…主な「事業」を転換すること
「業種転換」…主な「業種」を転換すること
「事業再編」…事業再編を通じて新市場進出(新分野展開、業態転換)、事業転換、又は業種転換のいずれかを行うこと
「国内回帰」…海外で製造等する製品について、その製造方法が先進性を有する国内生産拠点を整備すること
事業再構築補助金 第10回からの変更点
ここからは令和4年度第二次補正予算にかかる公募、すなわち第10回からの変更点についてみていきます。
ポイントは以下の8つです。
1.成長枠の創設
2.グリーン成長枠の拡充
3.大幅賃上げ・規模拡大へのインセンティブ
4.産業構造転換枠の創設
5.サプライチェーン強靱化枠の創設
6.業況が厳しい事業者への支援
7.一部申請類型における複数回採択
8.事前着手制度の対象類型の見直し
一つずつ確認しましょう。
成長枠の創設
これまでの「通常枠」はなくなり、成長分野に向けた大胆な事業再構築に取り組む事業者に対する支援として「成長枠」ができます。これに伴い必須要件の見直しが行われ、売上高減少要件が撤廃となります。
【成長枠の対象事業者は?】
必須要件に加え、以下のいずれも満たすことが要件となります。
(1)取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属している
(2)事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させる
※(1)に関して、対象となる業種・業態は、事務局が指定します。
グリーン成長枠の拡充
グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を対象とした「グリーン成長枠」を継続して、要件を緩和した類型(エントリー)を創設し使い勝手の向上を図ります。
【グリーン成長枠の対象事業者は?】
必須要件に加え、以下の要件を満たすことが求められます。
≪エントリー≫
(1)グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当し、その取組に関連する1年以上の研究開発・技術開発又は従業員の5%以上に対する年間20時間以上の人材育成をあわせて行う
(2)事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させる
≪スタンダード≫
(1)グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当し、その取組に関連する2年以上の研究開発・技術開発又は従業員の10%以上に対する年間20時間以上の人材育成をあわせて行う
(2)事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させる
大幅賃上げ・規模拡大へのインセンティブ
成長枠とグリーン成長枠のみを対象に、上乗せ枠を設けて更なる支援措置を行います。
【卒業促進枠】
補助事業終了後3~5年で中小・中堅企業等から中堅・大企業等へと規模拡大する事業者の上限上乗せ
【大規模賃金引上促進枠】
(1)継続的な賃金引上げ及び従業員の増加に取り組む事業者の上限上乗せ
(2)補助事業期間内に賃上げ要件を達成した場合、補助率を中小2/3、中堅1/2に引上げ
卒業促進枠または大規模賃金引上促進枠の申請は、成長枠またはグリーン成長枠の申請と同時に行わなければなりません。また、上乗せ枠の両方に追加申請することはできません。
産業構造転換枠の創設
国内市場の縮小等の産業構造の変化等で事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者を対象に、補助率を引き上げる等により重点的に支援する枠を新設します。対象経費に廃業費を追加し、廃業費がある場合、補助上限額を2,000万円上乗せします。
【産業構造転換枠の対象事業者は?】
必須要件に加え、以下のいずれかを満たすことが要件となります。
(1)過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属している
(2)地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域に属しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占める
サプライチェーン強靱化枠の創設
海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靱化と地域産業の活性化に取り組む事業者を対象に「サプライチェーン強靱化枠」を新設します。補助上限額を最大5億円まで引き上げて支援します。
【サプライチェーン強靱化枠の対象事業者は?】
必須要件に加え、以下の要件を満たす、生産拠点を国内回帰する事業であることが求められます。
(1)取引先から国内での生産(増産)要請がある。
(2)取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属している。
(3)下記の要件をいずれも満たしている。
①経済産業省が公開するDX推進指標を活用し、自己診断を実施し、結果を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対して提出している。
②IPAが実施する「SECURITY ACTION」の「★★ 二つ星」の宣言を行っている。
(4)下記の要件をいずれも満たしている。
①交付決定時点で、設備投資する事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高いこと。ただし、新規立地の場合は、当該新事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高くなる雇用計画を示すこと。
②事業終了後、事業年度から3~5 年の事業計画期間終了までの間に給与支給総額を年率2%以上増加させる取組である。
(5)「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにて、宣言を公表している。
※(2)に関して、対象となる業種・業態は、事務局で指定します。(HPで公開)また、指定された業種・業態以外であっても、応募時に要件を満たす業種・業態である旨データを提出して認められた場合には、対象となることがあります。
業況が厳しい事業者への支援
第9回公募までの、回復・再生応援枠と緊急対策枠を統合し、新たに「物価高騰対策・回復再生応援枠」として措置します。コロナや物価高等の影響で依然として業況が厳しい事業者に対する支援を引き続き行います。
【物価高騰対策・回復再生応援枠の対象事業者は?】
必須要件に加え、以下のいずれかを満たすことが要件となります。
(1)2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019~2021年と比較して10%以上減少している
(2)中小企業活性化協議会等から支援を受け、再生計画等を策定している
なお、最低賃金引上げの影響を強く受ける事業者を支援する「最低賃金枠」も継続します。こちらは要件に変更ありません。
一部申請類型における複数回採択
事業再構築補助金では、原則として1事業者につき採択は1回ですが、グリーン成長枠は過去に採択された事業者でも、再度申請し採択されることが可能になっています。
今回から、これに加えて産業構造転換枠とサプライチェーン強靱化枠についても、一定の条件下で過去採択された事業者の再申請・採択を可能とします。ただし、支援を受けることができる回数は2回が上限です。産業構造転換枠・サプライチェーン強靱化枠は、1回目の採択額(交付決定を受けている場合は交付決定額または確定額)との差額分が補助上限になります。
事前着手制度の対象類型の見直し
交付決定前に事業に着手できる「事前着手承認制度」の対象期間を、令和4年度第二次補正予算の成立日である2022年12月2日以降に見直します。また、この制度を活用できる事業類型を最低賃金枠、物価高騰対策・回復再生応援枠、サプライチェーン強靱化枠に限定します。
事業再構築補助金 第10回公募スケジュール
第10回公募のスケジュールは以下のとおりです。
公募開始:令和5年3月30日(木)
申請受付:令和5年6月9日開始
応募締切:令和5年6月30日(金)18:00
再構築補助金全体としては、令和5年度末までに3回程度の公募の実施を予定していて、サプライチェーン強靱化枠については、1~2回程度の実施を予定しています。
事業再構築補助金の申請の流れ
最後に申請の流れを確認しましょう。申請は、電子申請システムでのみでの受け付けとなっています。
本事業の申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要です。未取得の場合、速やかに利用登録を行うようにしましょう。手続きの注意点として、申請の前に事務局が実施する説明会への参加が必要です。説明会の詳細は、事務局HPを確認するようにしてください。
第10回の採択発表は、8月下旬~9月上旬頃を予定しています。
まとめ
今回は事業再構築補助金の概要と、第10回公募における変更点についてご紹介しました。
第10回から「成長枠」「産業構造転換枠」「サプライチェーン強靭化枠」の創設や、これまでの枠組みの見直しや拡充が行われています。また、必須要件から売上高減少要件がなくなった点も大きな変更といえるでしょう。一部の類型では、2回目の申請・採択が可能になっています。
今後はこれらの変更を受けて、過去の公募で要件を満たさず対象外だった方や、過去に採択を受けた方にも活用のチャンスがあります。「業況が厳しい」、「物価高騰等の影響を受けている」、「成長分野への事業再構築に取り組みたい」、「賃上げへのインセンティブが欲しい」等お考えの事業者の皆様は、募集要項等を確認して自社に合った類型がないかを調べてみてはいかがでしょうか。補助金活用について迷うときは、補助金ポータルまでお気軽にお問い合わせください。