事業再構築補助金の「産業構造転換枠」とは、第10回公募より新設された申請類型です。この類型では国内市場縮小等を原因とする産業構造の変化により、事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者に対して補助金を支給します。
産業構造転換枠では補助対象経費として「廃業費」が追加されており、廃業費がある場合は補助上限額に上乗せされるため、事業者の負担はより軽減されるでしょう。
今回の記事では事業再構築補助金の「産業構造転換枠」の概要や補助率、具体的な対象要件、対象経費などを解説します。
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この記事の目次
事業再構築補助金 産業構造転換枠の補助金額・補助率
産業構造転換枠の補助金額は、従業員数によって以下のように異なっています。
従業員数 | 補助金額 |
従業員数20人以下 | 100万円~2,000万円 |
従業員数21~50人 | 100万円~4,000万円 |
従業員数51~100人 | 100万円~5,000万円 |
従業員数101人以上 | 100万円~7,000万円 |
なお、廃業を伴う場合は、廃業費が最大2,000万円上乗せされます。
補助率は、中小企業者等は2/3、中堅企業等は1/2となります。
事業再構築補助金 産業構造転換枠の申請要件について
まず、全類型共通の補助対象要件を確認しましょう。以下の両方を満たすことが、共通要件です。
(1)経済産業省が示す「事業再構築指針」に沿った3~5年の事業計画書を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けている
(2)補助事業終了後3〜5年で、付加価値額を年率平均3.0%〜5.0%(事業類型により異なる)以上増加させている。あるいは、従業員一人当たり付加価値額を年率平均3.0%〜5.0%(事業類型により異なる)以上増加させている
産業構造転換枠の補助対象要件
次に、産業構造転換枠の補助対象要件を確認します。
(1)事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業である【事業再構築要件】 |
(2)事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けている。補助金額が3,000万円を超える案件は、認定経営革新等支援機関および金融機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみでも可)の確認を受けている【認定支援機関要件】 |
(3)補助事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均3.0%以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定する【付加価値額要件】 |
(4)現在の主たる事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態から別の業種・業態に転換する【市場縮小要件】 |
以下は第1回~第9回公募で採択、あるいは交付決定を受けている場合の要件です。第1回~第9回公募で採択された者であっても、以下の(5)(6)を満たす場合は産業構造転換枠に申請できます。
ただし、第1回~第9回公募でグリーン成長枠で採択されている事業者は、応募できません。なお、補助金額は、第10回公募締切時点における1回目採択分の採択額、交付決定額、あるいは確定額のいずれか最も低い金額と第10回公募の産業構造転換枠の補助上限額との差額分を上限とします。また、支援を受けられる回数は2回が上限です。
(5)既に事業再構築補助金で取り組んでいる、あるいは取り組む予定の補助事業と異なる事業内容である【別事業要件】 |
(6)既存の事業再構築を行いながら、新たに取り組む事業再構築を行うだけの体制や資金力がある【能力評価要件】 |
産業構造転換枠の補助対象者
日本国内に本社を有する中小企業者等(下記アの要件を満たす「中小企業基本法」第2条第1項に規定する者、および下記イの要件を満たす者)および、中堅企業等(下記ウの要件を満たす者)が補助対象です。対象となる法人格については、公式サイトの一覧も参照してください。
ただし、経済産業省または中小企業庁から補助金等指定停止措置、あるいは指名停止措置が講じられている事業者は補助対象となりません。
また、中小企業等がリースを利用して機械装置、またはシステムを導入する場合に、中小企業等がリース会社に支払うリース料から補助金相当分が減額されることなどを条件に、中小企業等とリース会社の共同申請を認め、機械装置あるいはシステム購入費用について、リース会社を対象に補助金を交付できます。この場合のリース会社については、中小企業者等、または中堅企業等に限りません。
補助対象者の要件は、本事業の公募開始日において満たしている必要があります。また、事業実施
期間に限って資本金の減資や従業員数の削減を行い、事業実施期間終了後に再度、資本金の増資や従業員数の増員を行うなど、対象事業者となることを目的として資本金・従業員数・株式保有割合等を変更していると認められた場合は、申請時点にさかのぼって補助の対象外となる場合があります。
ア【中小企業者】
イ【「中小企業者等」に含まれる「中小企業者」以外の法人】
中小企業等経営強化法第2条第1項第6号~第8号に定める法人(企業組合等)または法人税法別表第二に該当する法人、農業協同組合法に基づき設立された農事組合法人、労働者協同組合法に基づき設立された労働者協同組合、もしくは法人税法以外の法律により公益法人等とみなされる法人(従業員数が300人以下に限る)である
ウ【中堅企業等】
1:会社、もしくは個人、または法人税法別表第二に該当する法人、農業協同組合法に基づき設立された農事組合法人、もしくは法人税法以外の法律により公益法人等とみなされる法人であり、下記の(1)~(3)の要件を満たす。
(1)上記「ア」または「イ」に該当しない
(2)資本金の額または出資総額が10億円未満の法人である
(3)資本金額、または出資総額が定められていない場合は、従業員数(常勤)が2,000人以下である
2:中小企業等経営強化法第2条第5項に規定するもののうち、以下(1)~(4)のいずれかに該当しており、上記「イ」に該当しないもの
(1)生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会
その直接、または間接の構成員の2/3以上が常時300人(卸売業を主たる事業とする事業者については、400人)以下の従業員を使用する者であって、10億円未満の金額をその資本金額、あるいは出資総額とするものである
(2)酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会(酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会の場合)
その直接、または間接の構成員である酒類製造業者の2/3以上が常時500人以下の従業員を使用しており、10億円未満の金額をその資本金額、あるいは出資総額とするものである
(酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会の場合)
その直接、または間接の構成員である酒類販売業者の2/3以上が常時300人(酒類卸売業者については400人)以下の従業員を使用しており、10億円未満の金額をその資本金額、あるいは出資総額とするものである
(3)内航海運組合、内航海運組合連合会
その直接、または間接の構成員である内航海運事業を営む者の2/3以上が常時500人以下の従業員を使用しており、10億円未満の金額をその資本金額、あるいは出資総額とするものである
(4)技術研究組合
直接、または間接の構成員の2/3以上が以下の事業者のいずれかである。
・中小企業等経営強化法第2条第5項第1号~第4号に規定するもの
・企業組合、協同組合
ただし、次の(1)~(5)のいずれかに該当する者は、大企業とみなします(みなし大企業)。同様に、次の(1)~(5)で「大企業」とされている部分が「中堅企業」である場合は、みなし中堅企業の扱いとなります。また、(6)に定める事業者に該当する者は中小企業者等から除き、中堅企業として扱います。みなし中堅企業および(6)に定める事業者は、中堅企業等として申請できます。
(1)発行済株式の総数、または出資価格総額の1/2以上を同一の大企業が所有している中小企業者等
(2)発行済株式の総数、または出資価格総額の2/3以上を大企業が所有している中小企業者等
(3)大企業の役員、または職員を兼ねている者が役員総数の1/2以上を占めている中小企業者等
(4)発行済株式の総数、または出資価格総額を(1)~(3)に該当する中小企業者が所有している中小企業者等
(5)(1)~(3)に該当する中小企業者の役員、または職員を兼ねている者が役員総数のすべてを占めている中小企業者等
(6)応募申請時点において、確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年、または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者等
事業再構築補助金 産業構造転換枠の対象経費
補助対象経費は、事業拡大につながる事業資産(有形・無形)への相応の規模の投資を含むものであり、本事業の対象として明確に区分できる必要があります。
対象経費は必要性およ金額の妥当性を証拠書類によって明確に確認できる、以下の区分で定める経費です。
区分 | 詳細 |
建物費(建物の新築に関しては必要性が認められた場合のみ) | ・専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設・改修に必要な経費 ・補助事業実施のために必要となる建物の撤去に必要な経費 ・補助事業実施に必要な賃貸物件等の原状回復に必要な経費 ・貸工場や貸店舗等に一時的に移転する際に必要な経費(貸工場・貸店舗等の賃借料、貸工場・貸店舗等への移転費等) |
機械装置・システム構築費 | ・専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工 具・検査工具等)の購入、製作、借用に必要な経費 ・専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用に必要な経費 ・上記のいずれかと一体で行う、改良・修繕、据付けまたは運搬に必要な経費 |
技術導入費 | 本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に発生する経費 |
専門家経費 | 本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費 |
運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料等に必要な経費 |
クラウドサービス利用費 | クラウドサービスの利用に関する経費 |
外注費 | 本事業遂行のために必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費 |
知的財産権等関連経費 | 新製品・サービスの開発成果の事業化にあたり必要となる、特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用や、外国特許出願のための翻訳料など知的財産権等取得に関連する経費 |
広告宣伝・販売促進費 | 本事業で開発、または提供する製品・サービスに係る広告(パンフレット、 動画、写真等)の作成、および媒体掲載、展示会出展(海外展示会を含む)、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用等に係る経費 |
研修費 *上限額=補助対象経費総額(税抜き)の1/3 |
本事業の遂行のために必要な教育訓練や講座受講等に係る経費 |
廃業費(産業構造転換枠に申請し、既存事業の廃止を行う場合のみ) *上限額=補助対象経費総額の1/2、または2,000万円の小さい額 |
・廃止手続費(既存事業の廃止に必要な行政手続を司法書士、行政書士等に依頼するための経費) ・解体費(既存の事業所や事業において所有していた建物・設備機器等を解体する際に支払われる経費) ・原状回復費(既存の事業所や事業において借りていた土地や建物、設備機器等を返却する際に原状回復するために支払われる経費) ・リースの解約費(リースの途中解約に伴う解約・違約金) ・移転・移設費用(既存事業の廃止に伴い、継続する事業を効率的・効果的に運用するため、設備等を移転・移設するために支払われる経費) |
対象経費は、原則として交付決定を受けた日付以降に契約(発注)を行い、補助事業実施期間内に支払いを完了したものとなります。
事業再構築補助金 産業構造転換枠の実施期間
交付決定日~12ヶ月以内(ただし採択発表日から14ヶ月後の日まで)
交付決定後、自己責任によらないと認められる理由により、補助事業実施期間内に完了できないと見込まれる場合は、事故等報告を提出してください。補助事業実施期間の延長が認められる場合があります。
事業再構築補助金 申請手続き
【手続きの流れ】
申請は電子申請システムでのみ受け付けています。入力については、電子申請システム操作マニュアルに従って作業してください。入力情報については、必ず申請者自身がその内容を理解、確認してください。
本事業の申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要です。本アカウントは、事業者情報の再入力の手間を省くため、採択後の手続きにおいても利用します。本アカウントおよびパスワードを外部支援者等の第三者に開示することは、GビズIDの利用規約第10条に反する行為であるためご注意ください。
【注意事項】
事業計画作成における注意事項は以下のとおりです。
・事務局が公表する電子申請システム操作マニュアルの指示に従い入力漏れがないよう申請する
・事業計画書については(1)〜(4)の項目に言及する
(1)補助事業の具体的取組内容
(2)将来の展望(事業化に向けて想定している市場および期待される効果)
(3)本事業で取得する主な資産
(4)収益計画
・A4サイズで計15ページ以内(補助金額1,500万円以下の場合は計10ページ以内)で作成する・
・会社名を事業計画書の1ページ目に記載し、各ページにページ数を記載する
・図表はA4サイズで内容が読み取れるサイズで貼り付けする
・事業計画書は、必ず申請者自身で作成する
【提出書類】
産業構造転換枠の提出書類は以下のとおりです。
書類 | (あれば)備考 |
事業計画書 | ー |
認定経営革新等支援機関・金融機関による確認書 | ー |
決算書 | 直近2年間の貸借対照表、損益計算書(特定非営利活動法人は活動計算書)、製造原価報告書、販売管理費明細、個別注記表 |
ミラサポplus「電子申請サポート」の事業財務情報 | ー |
従業員数を示す書類 | 労働基準法に基づく労働者名簿の写し |
収益事業を行っていることを説明する書類 | 法人の場合:直近の確定申告書別表一及び法人事業概況説明書の控え 個人事業主の場合:直近の確定申告書第一表及び所得税青色申告決算書の控え |
建物の新築が必要であることを説明する書類 | 建物の新築に係る費用を補助対象経費として計上している場合 |
市場縮小要件を満たすことを説明する書類 | ー |
廃業費を計上することの妥当性を説明する書類 | 産業構造転換枠に申請し廃業費を計上する場合 |
別事業要件及び能力評価要件の説明書 | 過去の公募回で採択されている事業者が産業構造転換枠、またはグリーン成長枠に申請する場合 |
リース料軽減計算書 | リース会社と共同申請する場合の追加提出書類 |
リース会社が適切にリース取引を行うことについての宣誓書 | ー |
連携の必要性を示す書類(代表申請者が提出) | 複数の事業者が連携して事業に取り組む場合の追加提出書類 |
連携体の構成員それぞれが事業再構築要件を満たすことを説明する書類(連携体の構成員が提出) | 複数の事業者が連携して事業に取り組む場合の追加提出書類 |
組合特例の要件を満たしていることの確認書 | 組合特例を用いる場合の追加提出書類 |
審査における加点を希望する場合に必要な追加書類等 | 加点関係の追加提出書類 |
事業再構築補助金 産業構造転換枠 公募スケジュール
公募開始:令和5年3月30日(木)
申請受付:調整中
応募締切:令和5年6月30日(金)18:00
採択発表:令和5年8月下旬~9月上旬頃(予定)
まとめ
事業再構築補助金の「産業構造転換枠」は、事業再構築に取り組む必要がある事業者を資金面で支援してくれる制度です。この申請類型では、廃業をともなう場合、廃業費を最大 2,000 万円上乗せするという措置があり、国内市場縮小等の構造的な課題に直面している企業の事業再構築を強力に支援します。
事業再構築補助金の第10回からは産業構造転換枠も含めて多数の新設枠が増えているため、自社の状況にマッチする枠があるかをチェックしておきましょう。