11月8日に閣議決定された令和4年度補正予算では、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的とするIT導入補助金の対象拡大等が盛り込まれました。補助金額の見直し等が行われたことで、2023年10月からはじまるインボイス制度への対応にもさらに活用しやすくなっています。
今回はIT導入補助金の概要と、令和4年度補正予算での変更点をご紹介します。
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この記事の目次
IT導入補助金とは
IT導入補助金は中小企業・小規模事業者等を対象に、ITツールの導入や取引のデジタル化による生産性の向上やインボイス制度への対応等を支援する制度です。
PCなどのハードウェアを含めたITツールの導入経費の補助のほか、労働者の賃上げ等によって加点も受けられます。
通常枠のほか、令和元年度補正予算にてセキュリティ対策推進枠が、令和3年度補正予算でデジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型・複数社連携IT導入類型) が追加され、現行の支援枠は4つになりました。
まずは従来の支援枠の概要を、簡単に確認しましょう。
通常枠(A・B類型)
ITツールを導入する経費の一部を補助します。起業の抱える課題やニーズにあったツールの導入によって、業務効率や売り上げの向上を支援します。
A類型は30万円~150万円未満、B類型は150万円~450万円以内で申請可能です。なおA類型の下限額は、今回の補正予算で変更になりました。
補助率は1/2以内、補助額は最大450万円です。
セキュリティ対策推進枠
国際情勢の緊張などによりサイバー攻撃の潜在リスクが高まったことを踏まえて、2022年8月から公募が開始された支援枠です。サイバー攻撃被害等によるリスクを低減させることを目的にしています。
独立行政法人情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されたサービスの利用料の一部が、最大2年間補助されます。
補助率は1/2以内、補助額は最大100万円です。
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
企業間取引のデジタル化を推進することを目的とした支援枠です。インボイス対応にも活用できます。
新たに導入する会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの経費の一部やクラウド利用費を補助します。ソフトウェアのほか、PC・タブレット・レジ・券売機等のハードウェアの購入も補助の対象です。
補助率は3/4から1/2以内、補助額は最大350万円です。(あわせてハードウェア購入費 PC・タブレット等:上限10万円、レジ・券売機等:上限20万円も補助)
デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)
複数の中小・小規模事業者が連携してITツールやハードウェアを導入する際に活用できる支援枠です。地域DXの実現や、生産性の向上を図る取り組みにおいて、複数の企業へのITツール等の導入を支援します。
また、外部専門家への謝金やコーディネート費も補助の対象です。
補助率は3/4から1/2以内、補助額は最大3,000万円(+事務費・専門家費 最大200万円)です。
IT導入補助金 令和4年度補正予算の概要
令和4年度補正予算では、「生産性革命推進事業」として2,000億円の予算が計上されました。国庫債務負担含めた総額では、4,000億円です。これらの予算はIT導入補助金のほか、「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」「事業承継・引継ぎ補助金」に使用されます。
これらの事業は、中小企業・小規模事業者の設備投資、販路開拓、IT導入、事業承継等を支援するものです。また、大きな賃上げやグリーン分野への投資の加速化、2023年10月からはじまるインボイス制度への対応支援のため、補助金や上限率の引き上げが行われました。
IT導入補助金では、デジタル化基盤導入枠における2年分のクラウド利用料やハードウェア購入の補助対象化と補助率の引上げが継続されるほか、より安価なツールも購入できるよう、補助金の下限金額の見直しや撤廃が行われました。
各枠の変更点は、以下のとおりです。
通常枠(A・B類型)の変更点
■クラウド利用料の補助対象期間が、最大2年まで延長されました。
■A類型の下限額が5万円に引き下げられ、より安価なツール等も補助の対象となりました。
デジタル化基盤導入類型(デジタル化基盤導入枠)
■会計・受発注用のソフトウェア等に設定されていた下限額が撤廃され、より安価なツール等も補助の対象となりました。
変更後の各枠の補助内容等については、以下の表も参考にしてください。
出典:中小企業庁 IT導入補助金
IT導入補助金のスケジュール
IT導入補助金の最終締め切りは、現行では以下のとおりです。
【通常枠(A・B類型)】
2022年12月22日(木)17:00
【セキュリティ対策推進枠】
2023年2月16日(木)17:00
【デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)】
2023年1月19日(木)17:00
【デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)】
2022年11月30日(水)17:00
なお、変更後の公募開始時期は、予算成立後に発表されます。
申請のためには、事前にg BizID プライムのアカウントを取得が必要です。また、申請者だけでなくIT導入支援事業者が行う手続きもあります。
申請を検討している事業者は、早めに準備を進めましょう。
IT導入補助金活用のメリット
2021年9月にデジタル庁が発足され、政府は「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」を目指して企業のDX化等の促進を支援しています。今回の補正予算でも「新しい資本主義の加速」として、デジタル社会形成の推進等に関する経費に932億円が計上されるなど、DX化を加速する項目に大きな予算が割り振られています。
こうしたDX化促進の動きには、導入まで1年を切ったインボイス制度への対応なども含まれます。しかし日本・東京商工会議所が10月に発表した調査結果では、インボイス制度は規模の小さい企業ほど対応が遅れているという傾向が明らかになりました。
新しい制度や社会的ニーズへの対応には、予算的な問題が大きな負担となります。特にコロナ禍や物価上昇の影響を受ける中小企業にとって、DX化に向けた変革は簡単なことではありません。今回の補正予算では、IT導入補助金の対象が広がっています。これまで対象外だった安価なツールの購入も補助対象となったことで、より多くの企業が使いやすい補助金となりました。
IT導入補助金は、変化する社会の動きをチャンスに変え、少しでも早い経済の復興を目指す企業にこそ活用してほしい制度です。
まとめ
社会情勢や生活様式の変化を背景に、企業にはさまざまな新しい取り組みが求められています。またインボイス対応をはじめとして、DX化への要請も強まってきています。これまで使ってきたツールを一新することは、中小企業にとって苦しい選択です。予算的な問題以外にも、新しい技術の習得など、人的な支援を必要とする課題が多く残されています。
その反面、新しい技術の導入は業績や生産性を向上させ、将来的な企業の成長に繋がります。IT導入補助金は技術導入に際して、支援事業者の助けを借りることができるのも大きな特徴のひとつです。
人々のニーズの変化は、企業のとってはチャンスでもあります。IT導入補助金を上手に活用し、負担を軽減しながら、期を逃さない改革を進めていきましょう。