「DX化を進めたいが、従業員の育成にかけるコストが重荷になっている」——そう感じている都内の中小企業は少なくないのではないでしょうか。経済産業省の調査によると、日本企業のDX推進における最大の障壁の一つが「人材不足・育成コスト」であると回答した企業が過半数を超えています。AIやデータ活用、業務自動化が当たり前になりつつある今、従業員のデジタルスキル習得は、もはや先送りにできない経営課題です。
そこで注目されているのが、東京都が実施する「DXリスキリング助成金」です。都内の中小企業や個人事業主がDX推進のために従業員に研修を受けさせた場合、受講費用の3/4(最大75,000円/人1研修)、年間最大100万円が助成される制度です。
本記事では、令和8年度募集要項(PDFソース)をもとに、対象企業・対象研修の要件・補助率・申請手続きの流れ・注意点まで、実務に役立つ情報をわかりやすく解説します。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
DXリスキリング助成金とは
DXリスキリング助成金は、公益財団法人東京しごと財団が運営する助成金で、都内の中小企業等がその従業員に対してDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する研修を実施した際の費用の一部を助成することで、企業におけるDX人材の育成を促進することを目的としています。
AI・データ活用、業務改善ツールの導入、ITスキル習得など、自社のDX推進のために必要な研修が幅広く対象となります。外部の教育機関が提供する公開研修(レディメイド研修)のほか、自社の従業員向けに教育機関に委託するオーダーメイド研修も対象です。eラーニングにも対応しており、忙しい現場でも活用しやすい制度設計になっています。
- 実施主体:公益財団法人東京しごと財団
- 対象:都内中小企業・個人事業主
- 助成率:対象経費の3/4
- 上限:1人1研修あたり75,000円 / 年間1社あたり100万円
- 交付申請受付期間:令和8年3月1日〜令和9年2月28日
- お問い合わせ:03-5211-0391(平日9〜17時、12〜13時除く)
DXリスキリング助成金の対象企業
助成金の申請日から実績報告日までの期間を通じて、以下の要件をすべて満たしていることが必要です。中小企業の規模要件
まず「中小企業等」に該当することが必要です。業種ごとに資本金額または常時使用する従業員数のいずれか一方(または双方)を満たす必要があります。
| 業種分類 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|---|
| 小売業・飲食業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 100人以下 | |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
※資本金のない企業等については「常時使用する従業員数」の要件のみで判定します。
※みなし大企業(大企業が実質的に支配する企業)は対象外です。大企業が発行済株式の1/2以上を保有する場合などが該当します。
その他の対象要件(全10項目)
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① | 都内で事業を営む中小企業等または個人事業主であり、みなし大企業でないこと |
| ② | 都内に本社または主たる事業所(支店・営業所等)があること |
| ③ | 東京都政策連携団体・事業協力団体または東京都が設立した法人でないこと |
| ④ | 過去5年間に重大な法令違反等がないこと(同一代表者の別法人の違反も対象) |
| ⑤ | 労働関係法令の遵守(最低賃金・割増賃金・36協定・有休取得義務・ハラスメント防止等) |
| ⑥ | 都税(法人事業税・法人都民税等)の未納がないこと |
| ⑦ | 風営法に規定する風俗営業・性風俗関連特殊営業・接客業務受託営業等を行っていないこと |
| ⑧ | 連鎖販売取引・催眠商法・霊感商法など公的資金の助成先として不適切な業態を営んでいないこと |
| ⑨ | 暴力団員等でないこと |
| ⑩ | 交付申請日から遡り過去5年間に、不正等による交付決定の取り消しがないこと |
DXリスキリング助成金の助成額・補助率
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成率 | 対象経費の4分の3(75%) |
| 1人1研修あたりの上限 | 75,000円 |
| 1社あたりの年間上限 | 100万円 |
| 複数回申請 | 上限額(100万円)に達するまで複数回に分けて申請可能 |
| 1人が複数研修受講 | 同一従業員が複数回の研修を受講することも可能 |
たとえば、受講費用が1人あたり10万円の研修を10名が受講した場合、対象経費の合計は100万円。3/4の75万円が助成対象となります(1人あたり75,000円の上限内であれば全額対象)。年間上限の100万円まで複数回申請できるため、計画的に複数の研修を組み合わせることで最大限の活用が可能です。
助成対象となる研修の要件
研修が助成対象となるには、以下の12の要件をすべて満たす必要があります。
研修の種類(レディメイド・オーダーメイド)
②オーダーメイド研修:申請企業の従業員を対象として計画し、教育機関に委託して実施する研修。集合研修(同時双方向のオンライン研修を含む)のみが対象(eラーニングは不可)。
12の要件一覧
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① | レディメイド研修またはオーダーメイド研修のいずれかであること |
| ② | 受講経費が受講者1人1研修単位であらかじめ定められていること |
| ③ | 申請企業等のDX推進に必要な知識・技能の習得・向上を目的とする研修または専門資格取得のための研修であること |
| ④ | 通常の業務と区別できるOFF-JTであること |
| ⑤ | 研修費用の全額を申請企業等が負担していること |
| ⑥ | 業務命令として労働時間内に研修を行い、所定の賃金を支払っていること |
| ⑦ | 助成を受けようとする研修について国または地方公共団体から助成を受けておらず、今後受ける予定もないこと |
| ⑧ | 交付申請時に提出した計画のとおりに実施すること |
| ⑨ | 令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始し、令和9年8月31日までに終了する研修であること |
| ⑩ | 1研修あたりの総研修時間数が3時間以上10時間未満であること(休憩時間は含めない)。eラーニングは標準学習時間数が同範囲内であること。集合研修で複数日程に分ける場合は1回あたり30分以上であること |
| ⑪ | 1研修あたり総研修時間数の8割以上を受講すること |
| ⑫ | 受講者の受講状況について、教育機関の証明を受けられること(受講証明書または8割以上受講を明記した証明書) |
実績報告時に教育機関が発行する受講証明書が必要ですが、研修によっては発行していない場合があります。交付申請前に必ず教育機関に証明書の発行が可能かどうかを確認してください。研修日程の記載(例:8月10日 9:00〜16:00)だけでは代用できません。「総研修時間の8割以上を受講した」または「研修の全過程を受講した」という内容の記載が必要です。
助成対象外となる研修
以下の研修は、内容や実施方法を問わず助成対象になりません。申請前に必ず確認してください。
実施方法が対象外となるもの
- 通信(添削方式)による研修
- 国または地方公共団体が主催・委託する研修
- 申請企業と資本関係等のある教育機関が提供する研修(親会社・グループ企業・顧問契約先等が該当)
- サブスクリプション形式(定額制)で提供される研修(令和8年度より対象外として明記)
内容が対象外となるもの
- 趣味・教養を身につけることを目的とするもの(例:日常会話程度の語学)
- 通常の業務に付随する内容のもの(例:業務連絡会・自社商品の説明・マニュアル作成)
- 法令等で実施が義務付けられているもの(例:労働安全衛生法に基づく特別教育)
- 見学会・研究会など研修とみなせないもの
- 技能・知識の習得を目的としないもの(例:経営理念の浸透・意識改革)
- 適性検査や試験問題のみで構成されているもの
- 資格試験(講習なしで単独受験して取得できるもの)
- 医業行為・医業類似行為を行うもの
- 交付決定前に実施されるもの(申請・審査が完了する前に研修を開始することはできません)
Udemyなどのサブスクリプション型の学習サービスは、令和8年度から明示的に対象外とされています。1研修単位で費用が明確に定められている形式の研修を選んでください。
助成対象受講者の要件
研修を受講する従業員が以下の4要件をすべて満たしていることが必要です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①申請企業の従業員であること | 申請企業の代表者および個人事業主本人は対象外。役員は雇用保険に加入している場合のみ従業員として扱います |
| ②常時勤務する事業所が都内であること | 受講者の勤務先事業所が都内に所在していること |
| ③研修ごとに総研修時間数の8割以上を受講した者であること | 8割未満の受講では助成対象外となります |
| ④過去の申請で同様の研修を受けていない者であること | 同一の従業員が過去に本助成金を使って同じ研修を受講している場合は対象外。異なる内容の研修であれば複数回受講可能 |
取締役など役員は原則として助成対象外ですが、雇用保険に加入している役員(使用人兼務役員など)に限り従業員として扱われます。役員を受講させたい場合は、雇用保険加入状況を事前に確認してください。
助成対象経費と支払いの注意点
対象となる経費
| 経費の種類 | 備考 |
|---|---|
| ①受講料 | 受講者1人1研修単位で金額算出できるものに限る |
| ②教科書・教材代 | 同上 |
| ③研修に付随する登録料・管理料 | 同上 |
| ④研修を計画するためのヒアリング料 | オーダーメイド研修のみ |
| ⑤会場費 | オーダーメイド研修のみ |
対象外となる経費
- パソコン・オンライン機器類等の設備購入費用
- インターネット回線使用料・通信料
- 食事代・交通費・宿泊費(昼食込みの研修は昼食代を差し引いて申請)
- 消費税
- 振込手数料・送料
- ポイント還元を受けた場合のポイント分
支払い方法の注意点
助成対象経費は、申請企業等の口座から金融機関による振込払いで支払うことが必須です。現金払いやクレジットカード払いは認められません。また、従業員個人が立て替えて支払った場合も助成対象外となります。実績報告時には振込の控えや通帳のコピーが必要ですので、支払いの証拠書類を必ず保管しておきましょう。
申請手続きの流れとスケジュール
手続きのステップ
| ステップ | 内容 | 期限・注意事項 |
|---|---|---|
| ① | 交付申請書の提出 | 研修開始日の1か月前まで(電子申請:23時59分、郵送:当日消印有効) |
| ② | 審査・交付決定通知 | 審査通過後、Jグランツまたは郵送で通知 |
| ③ | 研修計画の変更(必要な場合) | 変更事項・申告期限は変更事項ごとに異なる(研修開始時間まで) |
| ④ | 研修の実施 | 交付決定後に実施すること(決定前の実施は対象外) |
| ⑤ | 実績報告書の提出 | 研修最終日から2か月以内 |
| ⑥ | 審査・額の確定通知 | Jグランツまたは郵送で通知 |
| ⑦ | 口座振替依頼書の提出・助成金振込 | 確定通知後1か月以内に手続き。受領・確認後おおむね1か月で振込 |
申請方法:電子申請(Jグランツ)が原則
申請書類の提出はデジタル庁が運営する「Jグランツ」(電子申請システム)での提出が原則です。電子申請が利用できない場合のみ、紙申請(郵送)も可能です。
Jグランツの利用にはGビズIDプライムアカウントが必要です。GビズIDの発行には2〜3週間程度かかる場合があるため、申請を検討している場合は早めに取得手続きを始めてください。
- 交付申請書受付期間:令和8年3月1日〜令和9年2月28日
- ただし研修開始日の1か月前までに申請が必要
- 令和8年4月1日〜4月14日開始の研修は、令和8年3月15日までに申請
- 予算の範囲を超えた場合は、受付期間内でも受付を終了することあり
- 書類送付先(紙申請):〒102-0072 東京都千代田区飯田橋3-8-5 住友不動産飯田橋駅前ビル11階 公益財団法人東京しごと財団「スキルアップ助成金」事務局
代理申請について
代理人による申請は可能ですが、申請に関わる教育機関による代理申請は認められません。社内の担当者または社会保険労務士等の専門家が代理申請を行う場合はこの限りではありません。
申請時の注意点
研修計画の変更・中止
交付決定後にやむを得ない事情で研修計画を変更する場合は、変更承認申請書を定められた期限(研修開始時間)までに提出する必要があります。変更可能な主な事項は「研修日時」「助成対象受講者(追加は不可)」「研修場所(オーダーメイドのみ)」です。期限までに申請がない場合は、計画通り実施されなかったものとして助成対象外になりますので注意してください。
研修を全部または一部中止する場合は、実績報告書で未実施の旨を報告してください(全部中止の場合も実績報告額0円の報告書提出が必要です)。
実績報告の期限厳守
実績報告書の提出期限は研修最終日から2か月以内です。この期限を過ぎると助成金の交付決定が取り消される場合があります。期限に間に合わない事情がある場合は、事前に事務局に相談してください。
オーダーメイド研修の実施時に必要な書類
オーダーメイド研修を実施する場合は、研修当日に以下の書類を準備する必要があります。実績報告時に提出が求められます。
- 出席簿:受講者本人の自筆の署名で毎回確認。遅刻・早退も記載。オンラインの場合は事務担当者が確認し記入
- 研修風景の写真:1研修につき1枚以上。全受講者・講師・撮影日時が入ったもの。集合写真ではなく実施中の風景を撮影。オンラインの場合はスクリーンショット
DXリスキリング助成金に関するよくある質問
UdemyやYouTubeなどのオンライン学習サービスは対象になりますか?
Udemyのようなサブスクリプション(定額制)形式で提供される研修は、令和8年度から明示的に対象外とされています。また、YouTubeなど無料の動画コンテンツも対象外です。対象となるのは、受講者1人1研修単位で費用が明確に定められており、教育機関が受講証明書を発行できる研修です。単発の有料講座として個別に費用が定められているeラーニングであれば対象になる可能性があります。
eラーニングでも助成対象になりますか?
はい、レディメイド研修に限りeラーニングも対象です。ただし、標準学習時間数が3時間以上10時間未満であること、8割以上受講すること、教育機関が受講状況を証明できることが条件です。オーダーメイド研修の場合はeラーニングは対象外です(集合研修のみが対象)。
役員も受講者として申請できますか?
役員は原則として助成対象受講者に該当しませんが、雇用保険に加入している役員(使用人兼務役員など)に限り、従業員として扱われ助成対象となります。また、申請企業の代表者および個人事業主本人は雇用保険加入の有無にかかわらず対象外です。
1人の従業員が同じ年度に複数の研修を受講できますか?
はい、可能です。同一の従業員が異なる内容の研修を複数受講する場合は、それぞれの研修について助成対象となります。ただし、「過去の申請で同様の研修を受けていない」ことが条件ですので、まったく同じ研修の再受講は対象外です。また、1人1研修あたり75,000円の上限と、1社あたり年間100万円の上限の範囲内で申請してください。
研修の受講証明書を発行していない教育機関の研修は申請できますか?
受講証明書(または総研修時間数の8割以上受講を明記した証明書)の提出が実績報告時に必須のため、発行できない教育機関の研修は実質的に申請できません。交付申請前に必ず教育機関に証明書の発行可否を確認してください。「研修日程の記載のみ」の書類では代用できません。
申請は電子申請でないといけませんか?
原則として電子申請(Jグランツ)での提出が求められます。電子申請が利用できない場合のみ紙申請(郵送)も可能です。電子申請にはGビズIDプライムアカウントが必要で、発行には2〜3週間程度かかるため、早めに取得手続きを進めることをお勧めします。
申請できる研修の時間数に上限はありますか?
1研修あたりの総研修時間数は3時間以上10時間未満(休憩時間を除く)でなければなりません。10時間以上の研修は対象外です。また、集合研修で1研修を複数日程に分ける場合は、1回あたりの時間数が30分以上である必要があります。eラーニングの場合は標準学習時間数が同様の範囲内であることが条件です。
研修費用をクレジットカードで支払った場合は対象になりますか?
なりません。助成対象経費の支払いは、申請企業等の口座から金融機関による振込払いのみが認められています。クレジットカード払いや現金払い、従業員個人による立替払いは対象外です。実績報告時には振込の控えや通帳のコピーが必要になりますので、支払いの証拠書類を必ず保管してください。
自社の社員が講師を務める社内研修は対象になりますか?
原則として対象外です。レディメイド研修は「教育機関が計画した公開研修」、オーダーメイド研修は「教育機関に委託して実施する研修」が条件であるため、自社の社員が講師を務める純粋な社内研修は対象となりません。ただし、社内の担当部署が計画し、外部の教育機関に研修を委託する形式(オーダーメイド研修のOFF-JT)であれば対象となります。
実績報告の期限を過ぎてしまった場合はどうなりますか?
事前の相談なく提出期限(研修最終日から2か月以内)までに実績報告書が提出されない場合、助成金の交付決定が取り消されることがあります。やむを得ない事情がある場合は、期限前に必ず事務局に相談してください。また、実績報告書の内容に不備がある場合も追加書類の提出を求められることがありますので、書類の事前確認を徹底することが重要です。
まとめ
東京都のDXリスキリング助成金は、都内中小企業が従業員のデジタルスキル習得を支援するための手厚い制度です。令和8年度の主なポイントを整理すると、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成率・上限 | 対象経費の3/4(1人1研修上限75,000円 / 年間1社100万円) |
| 受付期間 | 令和8年3月1日〜令和9年2月28日(研修開始1か月前までに申請) |
| 対象研修 | レディメイド・オーダーメイド研修(eラーニングはレディメイドのみ)。定額制(サブスク)研修は対象外 |
| 研修時間 | 3時間以上10時間未満(休憩除く)。複数日程の場合1回30分以上 |
| 受講者要件 | 従業員(代表・個人事業主本人は除外、役員は雇用保険加入者のみ)。過去に同様の研修を受けていないこと |
| 支払方法 | 企業口座からの振込払いのみ(カード払い・個人立替は対象外) |
| 申請方法 | Jグランツでの電子申請が原則(GビズID取得が必要) |
特に令和8年度からサブスクリプション形式の研修が明示的に対象外となった点、および過去に同様の研修を受けていない受講者のみが対象となる点は、実務上の注意点として押さえておきましょう。研修費用の3/4が助成される本制度を活用して、自社のDX推進を加速させてください。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する

