令和6年度の東京都予算は、一般会計歳出総額が8兆4,530億円に上りました。これは前年度当初予算比で5.1%の増額です。今回は特に、「人」が輝く社会の実現、国際競争力の強化、安全・安心の確保に向けた取組に対し、重点的に予算配分されました。
令和6年度予算のポイントごとに、予算額や新規・拡充事業を見ていきましょう。
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この記事の目次
東京都令和6年度予算のポイント
令和6年度の予算は、「変化する社会情勢の中、東京・日本の輝かしい未来を切り拓くため、産業や経済、社会の構造転換に挑み、一人ひとりが輝く明るい『未来の東京』を実現する予算」と位置付けられています。
全体像は、以下の図も参照してください。
出典:東京都予算案の概要
予算編成では、以下の2つが基盤となりました。
①「『人』が輝く」、「国際競争力の強化」、「安全・安心」の観点から、大胆な施策を積極的に展開する
②社会構造の変化を踏まえた制度や仕組みのアップグレードを図り、強靱で持続可能な財政基盤を堅持する
具体的には、以下の8つのポイントが掲げられています。
①誰もが輝き、自分らしく活躍できる共生社会 |
②子供の笑顔があふれる都市 |
③イノベーションを巻き起こす金融・経済都市 |
④多彩な魅力にあふれ、世界から選ばれる都市 |
⑤世界一安全・安心で強靱な都市 |
⑥気候危機へ立ち向かい、脱炭素化を加速 |
⑦「スマート東京」「シン・トセイ」の推進 |
⑧多摩・島しょの振興 |
次は、それぞれのポイントごとの予算と事業をまとめました。
誰もが輝き、自分らしく活躍できる共生社会
誰もが個性を活かせる共生社会の実現に向け、総合的に施策を推進する取組として、2,872億円が計上されました。
活躍し続けたいシニアのキャリアへの後押しのほか、女性の社会進出を推進するため、いわゆる「年収の壁」への対応として雇用環境整備促進事業が盛り込まれました。また、フリースクール等支援事業など、学齢期の子どもを支援する事業も設置されます。
主な新規事業と予算額は、以下のとおりです。
①高齢者が自分らしく活躍できる社会の実現 |
・ プラチナ・キャリアセンターの創設 5億円 ・介護職員・介護支援専門員居住支援特別手当事業 285億円 ・地域を支える「訪問介護」応援事業 7億円 |
②女性が自分らしく輝く社会の実現 |
・女性活躍の推進に向けた雇用環境整備促進事業 4億円 ・女性起業家への資金・事業計画等サポート事業 0.6億円 |
➂誰一人取り残さない社会の実現 |
・学齢期の子育ち 12億円 |
子供の笑顔があふれる都市
出会いから結婚、妊娠、出産、子育てに至るまでのシームレスな支援のため、8,560億円が計上されました。AIマッチングシステムを利用した結婚支援が新設されるほか、卵子凍結を希望する女性への支援や私立高校奨学金補助が拡充されます。
主な新規・拡充事業と予算額は、以下のとおりです。
①出会い・結婚への希望を叶える支援 |
【拡充】結婚支援マッチング事業 1億円 |
②妊娠・出産を希望する方への支援 |
【拡充】卵子凍結への支援 5億円 【新規】先天性代謝異常等検査 6億円 |
➂子育て世帯に寄り添った支援 |
【拡充】私立高等学校等特別奨学金補助 600億円 【新規】学校給食費の負担軽減 239億円 |
④未来を切り拓く人材の育成 |
【新規】都立学校の国際交流プログラム 9億円 |
このほか、018サポート事業の継続も盛り込まれました。
イノベーションを巻き起こす金融・経済都市
イノベーションの創出により、グローバルな成長と社会課題解決に向け、5,013億円が計上されました。スタートアップ支援に関わるイベントやプログラムを運営するTIBの拡充や活用のほか、DXを活用した企業・農業の活性化も目指されます。
主な新規・拡充事業は以下のとおりです。
①スタートアップ戦略の加速化 |
【拡充】 ・Tokyo Innovation Base(TIB)の運営 24億円 【新規】 ・TIBを結節点としたイノベーションネットワークの構築 7億円 ・官民連携インパクトグロースファンド(仮称)100億円 |
②中小企業・地域産業の活性化 |
【新規】 ・DX推進支援事業 26億円 ・サーチファンドを活用した中小企業の事業承継支援 20億円 ・東京型スマート農業の新展開 3億円 |
多彩な魅力にあふれ世界から選ばれる都市
東京の持つ強みやポテンシャルを最大限活かし、プレゼンスを向上させるため、4,855億円が計上されました。
身近な樹林地の保全に有効な特別緑地保全地区の指定に向けた区市町村による土地の買収・整備への支援が新設されます。また、東京の世界的な魅力を高める、食やナイトタイムの充実を図る取組が盛りこまれました。
主な新規・拡充事業は以下のとおりです。
①みどりと生きるまちづくり |
【新規】 ・特別緑地保全地区買取等補助制度 20億円 ・東京グリーンビズ・ムーブメントの醸成 2億円 ・雨水流出抑制に資するグリーンインフラ先行実施事業 0.5億円 |
②世界を惹きつける魅力にあふれた都市の実現 |
【拡充】 ・SusHi Tech Tokyo・東京ベイeSGプロジェクト 55億円 【新規】 ・東京の多彩な食のプレゼンテーション 0.8億円 ・東京ナイトタイム魅力創出プロジェクト 6億円 |
世界一安全・安心で強靱な都市
ハード・ソフト両面で強靱化を強力に推進し、暮らしの安心安全の確保を目指し、8,974億円が計上されました。災害時にも生活を維持しやすい環境づくりや浸水対応、特殊次対策等が拡充されたほか、より安全な避難施設の整備などが新たに掲げられています。
主な新規・拡充事業は以下のとおりです。
①TOKYO強靭化プロジェクトの推進 |
【拡充】 ・災害時も生活継続しやすいマンションの普及促進 4億円 ・浸水に対応した高台まちづくり 2億円 【新規】 ・モバイル衛星通信機器の配備 4億円 |
②安全・安心なくらし |
【拡充】 ・地域における見守り活動支援 5億円 ・特殊詐欺対策 0.9億円 【新規】 ・より安全に避難できる施設の整備 2億円 |
気候危機へ立ち向かい脱炭素化を加速
技術革新を弾みにした、ゼロエミッション東京の実現に向け、2,228億円が計上されました。グリーン水素に関する取組が拡充されるなど、地球環境に配慮したエネルギーを推進する取組が盛り込まれています。
また、家庭のゼロエミッション行動推進事業にも拡充が発表されました。
主な新規・拡充事業は以下のとおりです。
①水素エネルギーの社会実装に向けて取組を加速 |
【拡充】 ・グリーン水素の製造・利活用事業 30億円 【新規】 ・東京における水素実装課題解決技術開発促進事業 0.4億円 ・燃料電池トラック実装支援事業 42億円 |
②再生可能エネルギーの実装加速化・省エネルギーの最大化 |
【拡充】 ・家庭のゼロエミッション行動推進事業 100億円 【新規】 ・ペロブスカイト太陽電池社会実装推進事業 1億円 ・航空貨物輸送でのSAF活用促進事業 8億円 |
「スマート東京」「シン・トセイ」の推進
DXを強力に推進し、都民が実感できるQOS向上を実現するための取組に、1,757億円が計上されました。こどもDXではアプリを活用した「プッシュ型子育てサービス」や、母子保健や保活をオンライン上で利用できるサービス等が設定されています。
主な新規事業は以下のとおりです。
「スマート東京」「シン・トセイ」の推進 |
【新規】 ・デジタル地域通貨プラットフォーム「Tokyo Tokyo Point(仮称)」の構築・運用 5億円 ・こどもDXの推進 14億円 ・生成AI利用環境の整備 0.4億円 ・「待たない、書かない、キャッシュレス」窓口の実現 2億円 |
多摩・島しょの振興
地域の特色を活かした実効性あるまちづくりを推進するため、2,633億円が計上されました。
ワーケーション体験ツアーや誘客キャンベーンなど、活気ある街づくりを目指す取組が盛り込まれています。また、海外からのビジネスジェット直行便を誘致する事業も設定されました。
主な新規・拡充事業は以下のとおりです。
①成熟社会に対応した持続可能なまちづくり |
【拡充】 ・町村総合交付金 620億円 【新規】 ・ 多摩・島しょ地域交流ワーケーション体験ツアー 0.2億円 ・ 多摩地域への誘客促進キャンペーン 0.4億円 |
②島しょにおける個性と魅力あふれる地域づくり |
・ビジネスジェット受入機能強化 3億円 |
まとめ
東京都は2023年の「世界の都市総合力ランキング」においてロンドン・ニューヨークに続いて3位に入る、世界的にも人気の高い都市です。日本経済や人の動きの中心となる東京都の事業は、国内全体に大きな影響を及ぼします。
今回の予算では、多様な人が生活しやすい共生社会の実現や安全性のほか、環境問題など、世界的な問題意識も重視した取組が盛り込まれました。こうした報告から社会の流れを読み取り、ニーズを掘り出すのは、企業にとっても有意義なことです。また、補助金等の支援事業を活用することでよりリスクの低い企業展開が望めます。
東京都をはじめとした国や自治体の動きも見極めながら、新しい年度の事業計画を立てていきましょう。