温室効果ガス削減のための取組として、世界各国で省エネの必要性が高まっています。しかし経済産業省「省エネの進め方と現場で役立つ着眼点」によると、日本国内の中小企業のうち約34%が、省エネに関する取組を行っていない、もしくは取組を検討しているというデータがあります。
省エネへの取組は、企業に下記のようなメリットをもたらします。
- 省エネで浮いたコストが利益になる。
- 生産・サービスの手法見直しにより、生産性向上を図れる。
- 環境問題への取組が、企業の社会貢献活動と認められる。
そこで、省エネへの取組に遅れを取っている中小企業のため、東京都では省エネ化・創エネ化(エネルギーを生み出す)に関する費用を支援する「オフィスビル等のエネルギー効率化による経営安定事業」を実施しています。この記事では、本事業の申請要件・対象設備・対象経費などを詳しく解説します。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
オフィスビル等のエネルギー効率化による経営安定事業の概要
本助成金は、オフィルビル等を都内に所有する中小企業者に対し、省エネ化・創エネ化を図るための設備導入等の経費を一部助成します。省エネ化・創エネ化に必要な費用を支援することで、経営基盤の安定化を促進するのが目的です。
補助対象者の要件
対象者は、下記(1)~(4)の要件全てに該当し、かつ助成対象期間終了時まで、要件を継続して満たす必要があります。
(1)下記①~③のいずれかによる省エネルギー診断を受け、更新予定の設備に関して記載されている診断報告書を提出するもの |
---|
①東京都中小企業振興公社の「オフィスビル等のエネルギー効率化による経営安定事業専門家派遣(省エネルギー診断)」※令和5年8月時点では、専門家派遣の新規受付を実施していません。 ②クール・ネット東京(東京都地球温暖化防止活動推進センター)の「省エネルギー診断」 ③省エネルギーセンターが実施する「省エネ最適化診断」 ※いずれの場合も、申請日時点で実施から3年以内のものとします。 |
(2)下記①~⑨の要件全てに該当するもの |
---|
①都内にオフィスビル等を所有している。 ②当該オフィスビル等のテナントとして、中小企業者が一者以上入居している。 ③当該オフィスビル等の年間エネルギー使用量(原油換算値)について、基本的に1,500kL未満の事業所である。 ④大企業が経営に参画していない中小企業者である。 ⑤日本国内の法人もしくは個人事業者である。 ⑥申込に必要な書類を全て提出可能である。 ⑦暴力団関係者、風俗関連業、ギャンブル業、賭博等の業態を営んでいない。 ⑧連鎖販売取引、ネガティブ・オプション(送り付け商法)、催眠商法、霊感商法などの業態を営んでいない。 ⑨反社会勢力に該当せず、また今後も該当しない旨を誓約する。 |
(3)取組の実施場所について、下記①②の要件いずれにも該当するもの |
---|
①省エネルギー診断を行ったオフィスビル等である。 ②設備等の設置状況や支払いに関する経理関係書類について、完了検査時に確認可能な実施場所である。 |
(4)下記①~⑩の要件全てに該当するもの |
---|
①公社・国・都道府県・区市町村等から、同一テーマ・内容の助成金等を受けていない。 ②本助成事業の同一年度での申請は、一企業につき一件とする。 ③公社が実施する助成事業(他の事業を含みます)に同一テーマ・内容で申請していない。ただし、過去に本事業や他の事業で採択されていない場合は、この限りではない。 ④事業税等を滞納(分納)していない。 ⑤東京都や公社に対し、賃料・使用料等の債務支払いが滞っていない。 ⑥申請日までの過去5年間で、助成事業等で不正等の事故を起こしていない。 ⑦過去に公社から助成金を交付されている者は、申請日までの過去5年間で「企業化状況王国所」「実施結果状況報告書」等を、所定の期日までに提出済みである。 ⑧民事再生法や会社更生法による申立て等、助成事業の継続にあたり不確実な状況が存在しない。 ⑨助成事業の実施に必要な許認可を取得し、関係法令を遵守する。 ⑩その他、公的資金の助成先として、公社が不適切とみなすものでない。 |
必要書類
必要書類は以下のとおりです。
- 申請様式
- 診断報告書
- 登記簿謄本
- 開業届
- 建物登記簿謄本
- テナント賃貸借契約書
- 直近3期分の決算書類
- 事業税納税証明書
- 住民税納税証明書
- 申請金額根拠資料
- 導入設備・機器の設置場所が確認可能な書類
- 導入設備・機器の仕様・機能が確認可能な書類
- 別途公社が指定する書類
申請方法
デジタル庁が運営する「Jグランツ」の電子申請フォームより、必要事項を入力します。ただし「GビズID」でアカウントを取得する必要があるため、事前にアカウントを取得してから申請を進めてください。
【申請時の注意点】
- 申請フォームの入力内容について、送信後の加筆・修正等はできないのでご注意ください。
- 申請書類の提出者や連絡担当者は、申請者の役員・従業員が原則です。
- 状況によっては、公社から追加書類の提出や説明を要求されることがあります。
- マイナンバーが記載されているものは、判読できないよう当該箇所を黒塗りするなどしてください。
- GビズIDのアカウント作成には2~3週間かかるため、申請期日を考慮した上で事前登録してください。
- 受付期間中に不備を訂正できなかった場合や、追加書類の提出期限を過ぎた場合は、申請書類を受理できない可能性があります。
補助対象の事業内容
省エネルギー診断に基づいて行う「省エネ化」「創エネ化」に関連した設備について、更新に係る経費の一部を助成します。
設備の具体例 |
高効率空調設備 |
高効率照明器具(LED) |
高効率照明器具(誘導灯) |
高効率変圧器 |
デマンド監視装置 |
BEMS |
インバータ制御 |
遮熱・断熱施工 |
高効率全熱交換器 |
太陽光発電システム |
高効率給湯設備 |
高効率冷蔵・冷凍設備 |
その他、省エネ化・創エネ化に貢献する設備 |
対象経費
以下、対象経費と対象外経費についてまとめました。
①設備購入費 | 機器・設備の購入費 |
②設備費 | 機器・設備の設置に直接必要となる経費 【例】運搬費、搬入・据付費、撤去費、処分費 |
③工事費 | 機器・設備の設置工事に直接必要となる経費 【例】配管材、電線やケーブル等の材料、テープ等の消耗品・雑材料費、直接仮設費(足場代、養生費等)、労務費、総合試験調整費、立会検査費 |
①~③に関する助成対象外経費の例 | ・共通仮設費、一般管理費 ・消費税その他の租税公課、諸経費、通信費、光熱水費、旅費・交通費、駐車場代、消防等官公庁・電力会社への申請費、道路占有許可申請費、安全対策費、清掃費、収入印紙代、振込手数料等の事務費 ・人員募集を目的とした費用、食事代、安全訓練等に必要な費用 ・保険料(見積りに明示した法定福利費を除きます) ・住宅手当等の諸手当、福利厚生費等の人件費 ・維持管理費、機器等の保守費 ・設計費、契約に関する保証金 ・予備並びに事務用品等の消耗品、汎用性の高い備品・機器に関する経費 |
【上記以外で助成対象外となる経費】
①汎用品的性質を持つものや、本事業の枠組みに該当しないもの
- 自動車の購入に関する経費
- 収益(収入)の増加を目的とした経費
- プロバイダの使用料、通信料等の間接的な経費
- 固定費やコスト削減以外が目的のサービス(ストレージサービス等)に関する経費
- 汎用性の高い情報端末、ソフトウェア、社内の通信環境整備
- 本助成金の取組と関連の無い、建物の改修工事に係る経費(断熱・遮熱性向上の取組に関する経費を除きます)
- 既存設備等の移転時に発生する設置費等
- 中古品の購入に関する経費
- 社会通念上、公的資金の使途として不適切とみなされる経費
- 一般価格や市場価格と比較した場合、極めて高額な経費
- 再委託されている経費
- その他、公社が不適切とみなす経費
②手続き上の不備等
- 契約から実施、支払いまでの一連の手続きが、助成対象期間内に完了していない。
- 公社指定の帳票類(見積書、契約書、納品書、請求書、振込控、領収書等)が不備である。
- 助成対象の取組が写真等で確認できない、帳票類と写真が一致しない。
- 支払いが通常業務や他の取引と混合しており、助成対象経費の支払いとして区分が難しい。
- 支払いが他の取引と相殺されている。
助成率、上限額
【助成率】
助成対象経費の2/3以内
【助成限度額】
3,000万円(申請可能な助成金の下限額は100万円)
申請のスケジュールと手続きの流れ
【助成金申請期限】
令和5年10月31日
【スケジュール(予定)】
①申請(~10月末)
②審査(申請後~11月下旬)
③交付決定(11月下旬)
④助成事業を実施(助成対象期間:交付決定日の翌日より1年間)
⑤実績報告書を提出
⑥完了検査
⑦助成金額が確定(完了検査より1か月程度)
⑧助成金交付
まとめ
企業が省エネへ取り組むメリットは、コスト削減や生産性向上だけではありません。設備を更新することで、事故防止や設備の長寿命化にも繋がるため、企業経営がより安定するでしょう。
「オフィスビル等のエネルギー効率化による経営安定事業」では、省エネ化・創エネ化に関する幅広い設備が支援対象となっています。これまで人材不足や費用の捻出が困難などの理由で、省エネへの取組を後回しにしていた対象事業者は、ぜひ本事業の活用を検討してみてはいかがでしょうか。