東京都では、都内の家庭から排出される温室効果ガスを削減するため「東京ゼロエミ住宅の新築に対する助成事業」を実施しています。このたび、助成内容を拡充する補正予算が成立し、令和5年1月31日より新たな助成制度による申請の受付が始まりました。
この記事では、現時点で発表されている拡充内容から本事業の概要、また東京ゼロエミ住宅のメリットについても詳しく解説します。拡充後の助成を受けたい方はもちろん、これから都内で住宅を新築したいとお考えの方も、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
東京ゼロエミ住宅の新築に対する助成事業とは
「東京ゼロエミ(※)住宅の新築に対する助成事業」とは、東京ゼロエミ住宅を新築する建築主に対し、東京都が費用を支援する取り組みです。東京の地域特性を前提とした、省エネ性能に優れる住宅をより普及させることを目的としています。
(※)ゼロエミとは「ゼロエミッション」の略で、廃棄物の排出(エミッション)をゼロに近づける取り組みのことです。
東京ゼロエミ住宅とは
「東京ゼロエミ住宅」とは、高性能の断熱材や窓を使用したり、省エネ性能に優れた照明やエアコンなどを用いたりした、人にも地球環境にもやさしい都独自の住宅を指します。東京ゼロエミ住宅には下記のようなメリットがあります。
- 断熱性化により部屋間や部屋内の温度差が小さくなることで、ヒートショック(急激な温度差による血圧の乱降下)を予防できる。
- 設備の効率化によって空調や給湯器等の効率が改善されるため、光熱費を削減できる。
- 冬の壁や窓の表面温度が下がりにくくなり、結露の防止に繋がる。その結果、ダニやカビなどが繁殖しづらくなったり、木材の腐朽・建材の劣化を抑えられたりするので、住宅が長持ちしやすくなる。
東京ゼロエミ住宅を普及させる目的
東京都では、2050年までに世界のCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」の実現を掲げています。そんな中、都内における温室効果ガス排出量のうち、約30%を占めているのが家庭からの排出分です。
出典:東京都環境局 都内の最終エネルギー消費及び温室効果ガス排出量(2020 年度速報値)
よって、家庭からの排出量を削減するためには、住宅の省エネ性能等を一層向上させなければなりません。
しかし、都内の住宅は建設費や地価が高額な上、土地利用の範囲が狭かったり斜線制限による屋根形状があったりといった特性があります。これにより、太陽光発電システムなどの再エネ設備を利用した環境性向上が進捗しづらくなっています。
「東京ゼロエミ住宅」が普及すれば、高性能の建材や設備の価格低下が望めるため、多くの都民が環境性能に優れた住宅を選べるようになります。東京ゼロエミ住宅を普及させることで、この好循環を生み出すのが狙いです。
令和4年度補正予算事業 東京ゼロエミ住宅の新築に対する助成事業の拡充について
近年の電力需給ひっ迫への対応や、2030年カーボンハーフ(温室効果ガス排出量を2030年までに2000年比で50%削減する指標)達成に向け、「東京ゼロエミ住宅の新築に対する助成事業」の助成内容(蓄電池、太陽光パネルの架台)を拡充する補正予算が成立しました。
令和5年1月31日より、拡充後の新たな助成制度での申請受付を開始しています。
拡充内容
対象 | 拡充内容 |
蓄電池 | 機器費の1/2→機器費、材料費並びに工事費の3/4【補助率等の引き上げ】 ※上限額:「10万円/kWh→15万円/kWh」「80万円/戸→120万円/戸」など ※蓄電池の蓄電容量合計が6.34kWh未満の上限額:「19万円/kWh」「95万円/戸」【追加助成】 |
太陽光パネルの架台 | マンション等(陸屋根が対象)に設置するパネルの架台:20万円/kW【追加助成】 |
受付開始日
令和5年1月31日(火)
※1月31日の受付開始とともに、拡充内容の詳細や申請書類の新様式が掲載されています。拡充後の助成内容で申し込む場合は、クール・ネット東京のホームページをご参照ください。
受付期間
令和5年3月31日(金)まで
※申請の受け付けは随時行います。申請総額が予算に達した時点で受付終了します。
補正予算額
約27億円(令和4年度予算額計:約159億円)
既に交付申請済みで拡充後の助成を受けたい場合
既に交付申請は済んでいるものの、拡充後の助成を受けたいとお考えの方は、新たな受付開始以降に再度申請を行う必要があります。その際は、東京都環境公社から拡充後の申請を受領した旨を通知した日以降、建築基準法に定める確認済証の交付を受けるのが条件です。併せて、提出済みの申請取り下げも行ってください。
東京ゼロエミ住宅の新築に対する助成事業の概要
【助成対象者】
- 東京ゼロエミ住宅(以下「助成対象住宅」とします)を都内に新築する建築主(個人もしくは法人)
- 保有する太陽光発電システムもしくは蓄電池システムを助成対象住宅へ設置するため、リース等で当該住宅の建築主に貸与する者。ただし、建築主と共同で助成金交付に関する申請を実施する者に限る(以下「リース事業者」とします)
助成対象住宅
- 令和4年4月1日以降に工事を開始したものである。
- 東京ゼロエミ住宅の認証に関する要綱に則り、認証審査機関から東京ゼロエミ住宅認証書を交付されている。
- 単位住戸並びに共用部分(人の居住用に限ります)の床面積合計が2,000㎡未満である。
【単位住戸当たりの額】
住宅種別 | 水準1 | 水準2 | 水準3 |
戸建住宅 | 30万円 | 50万円 | 210万円 |
集合住宅等 | 20万円 | 40万円 | 170万円 |
※「水準1」の注文戸建住宅のみ、特定の建設工事事業者(交付申請を行う前年度に全国で新たに建設した注文戸建住宅の戸数が300戸未満)が建築する住宅を対象に助成を実施します。また「水準1」の東京ゼロエミ住宅を建築する場合は、「水準1」の助成対象の建設工事事業者であることを前もってご確認ください。
助成対象機器
- リース事業者が助成対象機器を設置する際には、当該リース等契約でリース等料金から本助成金の相当額を減額されていることが条件です。
- 助成対象機器がリース等である時は、助成金はリース事業者へ支払われるためご注意ください。
①太陽光発電システム
- 住宅指針第4の基準を満たしている。
- 未使用品かつ発電出力の合計が50kW未満に相当する。
- オール電化住宅の場合は、東京ゼロエミ住宅設計確認書(認証書)にオール電化への該当「有」の記載が確認できる。
【太陽光発電システム(1棟あたり)】
発電出力 | 設置住宅の種別 | 発電出力に乗じる額 | 上限額 |
3.6kW以下 | オール電化住宅 | 13万円/kW | 39万円 |
3.6kW以下 | オール電化住宅以外の住宅 | 12万円/kW | 36万円 |
3.6kW超50kW未満 (3.61~49.9kW) |
オール電化住宅 | 11万円/kW | 550万円 |
3.6kW超50kW未満 (3.61~49.9kW) |
オール電化住宅以外の住宅 | 10万円/kW | 500万円 |
②太陽電池の架台
- 集合住宅の陸屋根に設置する
- 未使用品である
- 令和5年1月31日以降に交付申請をしたもの
【集合住宅の陸屋根に架台を設置した上で太陽光発電システムを設置する場合】
助成金額(以下のいずれか小さい額) |
①太陽光発電システムの発電出力×20万円 ②架台の材料費及び工事費 |
③蓄電池システム
- 住宅指針第5の基準を満たしている。
- 未使用品かつ蓄電容量1kWhあたりの機器費(工事費は除きます)が200,000円以下である。
- 「戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業」の補助対象機器として登録済の製品である。
- 複数台の設置も認められる。ただし、蓄電池の電気を使う1住戸あたりの助成対象額上限は、下表の助成額のいずれか小さい額とする。
交付申請の日付によって、助成内容が異なります。
【蓄電池システム(単位住戸あたり) ※令和5年1月30日までに交付申請をしたもの】
設置する太陽光発電システム出力値 | 助成額(①~③のいずれか小さい額とします) |
4kW以下(蓄電池システムの単独設置を含みます) | ①機器費の1/2の額 ②蓄電容量×10万円 ③80万円 |
4kW超 | ①機器費の1/2の額 ②太陽光発電出力×20万円 ③蓄電容量×10万円 |
【蓄電池システム(単位住戸あたり) ※令和5年1月31日以降に交付申請をしたもの】
蓄電容量合計 | 設置する太陽光発電システム出力値 | 助成額(①~③のいずれか小さい額とします) |
6.34㎾h未満の場合 | ー | ①補助対象経費の3/4の額 ②蓄電容量×19万円 ③95万円 |
6.34㎾h以上の場合 | 4kW以下(蓄電池システムの単独設置を含みます) | ①補助対象経費の3/4の額 ②蓄電容量×15万円 ③120万円 |
6.34㎾h以上の場合 | 4kW超 | ①補助対象経費の3/4の額 ②蓄電容量×15万円 ③太陽光発電出力×30万円 |
※助成対象経費とは、機器費、蓄電池システムの設置に係る材料費、工事費をいいます。
助成対象外にあたる申請
下記のいずれかに該当する申請は助成対象外です。
(1)交付申請書の受付の結果通知発行日よりも以前に、建築基準法に定める確認済証の交付を受けている。
※ただし、下記に掲げる特例対応を満たす場合は、交付申請の受付が認められます。
- 令和4年4月1日以降に着工したものであり、更地写真等それを客観的に証明できる資料を提出可能である。
- 令和4年度の住宅指針で東京ゼロエミ住宅設計確認書の交付を受領済み(着工前に申請済みで交付予定のものを含みます)である。
- 令和4年度の交付申請受付開始日から令和4年8月31日までに交付申請を実施している。
(2)本助成金以外に、国・都・公社もしくは都の補助金交付により補助金交付事業を実施する者から、本事業と事業目的並びに対象を同一とする助成金等を受領した、又は今後受領予定である場合。ただし、太陽光発電システム並びに蓄電池システムに関しては、住宅建設費と分離して助成される国の助成金は除外する。(併給可)
※ゼロエミ住宅に太陽光発電システム並びに蓄電池システムを設置予定の方は、原則本事業で助成金を申請してください。
【住宅に関する併用可・併用不可の取扱事例】
本助成金と併用可 | 本助成金と併用不可 |
◆地域型住宅グリーン化事業 ◆グリーン住宅ポイント制度 ◆こどもみらい住宅支援事業 ◆こどもエコすまい支援事業 等 |
◆戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)化支援事業 ◆次世代ZEH+実証事業 ◆集合住宅のCO2化促進事業(ZEH-M) ◆LCCM住宅整備推進事業 ◆高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費 補助金(給湯省エネ事業) ◆東京ゼロエミポイント(エアコン、給湯器及びLEDの買い換え) 等 |
申請方法
本事業における交付申請書の受付は先着順ですが、公社の予算を超過した日をもって申請受付は終了となります。また、公社が受け付けた申請書類に不備が見つかった場合、規定日以内に修正が行われないと申請は取り下げたものとみなされる可能性があるため、ご注意ください。
公募期間
令和4年度交付申請受付期間
令和4年6月22日から令和5年3月31日まで
事業の実施期間:令和6年度まで(交付期間は令和8年度まで)
申請書類
申請書類の様式は公社ホームページからダウンロードを行い、最新の書式で提出する必要があります。
【交付申請時】
①提出書類チェックリスト
②助成金交付申請書
③交付申請受理決定通知用郵便はがき(1枚)
④工事請負契約書
⑤事業計画書
⑥本人確認書類もしくは実在証明書類
⑦その他公社が必要とみなす書類
【交付申請追加書類提出時】
①交付申請追加書類送付状
②確認済証
③東京ゼロエミ住宅設計確認書
④交付要件等確認書兼誓約書
⑤その他建築主の本人確認書類
⑥手続代行に関する誓約書
⑦リース事業者誓約書
⑧蓄電池システム費用内訳書
⑨その他公社が必要とみなす書類
※⑤~⑧は該当者のみ提出となります。
申請書類の提出方法
郵送もしくは電子申請(持参は不可です)
※申請書に提出期限が設けられている場合は、最終日の受付は17時必着です。17時以降に公社へ届いたものは無効なのでご注意ください。
まとめ
近年では世界各地で異常気象が発生しており、東京都内でも猛暑日記録更新や大寒波などがたびたび確認されています。しかし、環境性能に特化した東京ゼロエミ住宅であれば、季節を問わず快適に過ごしやすくなるでしょう。
今回の助成事業拡充で、より幅広い層が建築費用の補助を受けられます。東京都内で新築住宅の建造を検討している方は、ぜひこの機会に建築費用の補助が受けられる「東京ゼロエミ住宅の新築に対する助成事業」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。