
政府の電気代・ガス代負担軽減策が1月使用分から始まりました。この制度は2023年9月までの間、電気代とガス代に政府からの支援が受けられるものです。しかし、大手電力会社はさらなる値上げを発表しており、不安定な世界状況によってエネルギー価格の高騰がもうしばらく続く見込みです。
現在、多くの省エネ推奨事業が設置され、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが進んでいます。電気代・ガス代支援期間の終了後を見据え、省エネ設備を導入することは将来の備えのひとつとなるでしょう。このような取り組みによって、将来のエネルギー価格高騰に備えることができます。
今後、エネルギー価格高騰が続く中、カーボンニュートラルの実現に向けた省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用がますます重要となってくるでしょう。政府や企業、市民社会が協力して、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めていくことが求められます。
今回は今後の電気代のシミュレーションと、省エネ設備の導入に活用できる補助金をまとめました。
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この記事の目次
2023年6月まで電気代は上がり続ける?
電気料金は、一般的に次のように算出されています。
基本料金+電力量料金±燃料費調整額+再生可能エネルギー発電促進賦課金
このうち、「燃料費調整額」は毎月変動する部分です。現在値上げが行われているのはこの燃料費調整額で、本来設定されている上限を撤廃する電気会社も出てきました。東京電力の発表では、今回の価格改定率は一般的な家庭で28%増と、2000年以降の料金見直しの中でも特に高い水準となっています。
出典:規制料金値上げ申請等の概要について
現在予定されている大手電力会社の値上げ幅と値上げ開始日は、以下のとおりです。
■北海道電力(https://www.meti.go.jp/press/2022/01/20230126001/20230126001.html)
規制料金値上げ幅…平均34.87%
値上げ予定日…令和5年6月
■東北電力(https://www.meti.go.jp/press/2022/12/20221205013/20221205013.html)
規制料金値上げ幅…平均32.94%
値上げ予定日…令和5年4月
■東京電力EP (https://www.meti.go.jp/press/2022/01/20230123001/20230123001.html)
規制料金値上げ幅…平均29.31%
値上げ予定日…令和5年6月
■北陸電力(https://www.meti.go.jp/press/2022/12/20221205014/20221205014.html)
規制料金値上げ幅…平均45.84%
値上げ予定日…令和5年4月
■中国電力(https://www.meti.go.jp/press/2022/12/20221205010/20221205010.html)
規制料金値上げ幅…平均31.33%
値上げ予定日…令和5年4月
■四国電力(https://www.meti.go.jp/press/2022/12/20221205012/20221205012.html)
規制料金値上げ幅…平均28.08%
値上げ予定日…令和5年4月
■沖縄電力(https://www.okiden.co.jp/shared/pdf/news_release/2022/221128.pdf)
規制料金値上げ幅…平均39.3%
値上げ予定日…令和5年4月
電気代補助金で補助される電気代は9月まで
電気・ガス価格激変緩和対策事業として、電気代・ガス代に国からの補助が受けられるのは、令和5年月9月使用(10月検針)分までです。期間の途中で、割引率は変動します。令和5年1月時点でのデータを参考に、政府負担がある場合とない場合の電気代をシミュレーションで見てみましょう。
【令和5年2月電気料金シミュレーション】
4人暮らし家族が一軒家でTEPCO (従量電灯B・40A) を利用し、電気使用量が762kWhだった場合
①政府負担なし
■基本料金
1,144円
■電気量料金 (第3段階料金)
19.88円×120kWh+26.48円×180kWh+30.57円×462kWh=21,275円
■燃料費調整額 (単価5.13円)
762kWh×5.13=3,909円
■再生可能エネルギー発電促進課税 (単価3.45円)
762kWh×3.45=2,629円
■合計
28,957円
②政府負担あり
■基本料金
1,144円
■電気量料金 (第3段階料金)
19.88円×120kWh+26.48円×180kWh+30.57円×462kWh=21,275円
■燃料費調整額 (単価5.13円)
762kWh×5.13=3,909円
■再生可能エネルギー発電促進課税 (単価3.45円)
762kWh×3.45=2,629円
■政府負担額(1kWhあたり7円)
762×7=5,334円
■合計
23,623円
こちらの電気使用量の多めな4人暮らし家族の場合、政府負担のあり・なしでは、支払金額に5,000円以上の差が出ます。1月から9月までの9か月間では、単純に計算すると4万5,000円以上の差です。
なお、実際には電気使用量は月によってばらつきがありますし、政府負担額は段階的に変動しますので、電気代支援額の総額はもっと少なくなります。こちらのシミュレーションはあくまで参考に留めてください。
いまから準備しておくべき電気代節電のための対策とは
政府の負担削減策が実施されている間に住宅の省エネ率向上を目指すなら、補助事業の活用も検討しましょう。住宅を省エネ化することは、住居をより居心地の良い場所にすることにもつながります。
ここでは、住居の光熱費削減に役立つ設備導入のための補助金を見ていきます。
ガス給湯器と電気給湯器はどちらがお得なのか
電気代だけでなく、ガスや石油の価格も世界的に高騰が続いています。給湯器はガスや石油への依存率が高く、家庭からの二酸化炭素排出量の大きな割合を占めています。
給湯器には、ガスでお湯を沸かすものや電気を利用するものなど様々な種類があります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、目的やライフスタイルに合わせた給湯器を選ぶことが大切です。
光熱費を抑えるためには、エコキュートをはじめとする高効率給湯器が優れた仕組みを持っています。エコキュートは、空気中の熱を集めてお湯を沸かすため、電気代を節約することができます。また、ガス給湯器よりもエコキュートの方が二酸化炭素排出量が少なく、環境にも優しい選択肢と言えます。
今後もエネルギー価格高騰が続く中、省エネ設備や再生可能エネルギーの活用がますます重要となっていきます。給湯器を含めた家庭内のエネルギー使用量を抑えることは、環境に配慮するだけでなく、光熱費の削減にもつながります。
ガス給湯器と電気給湯器の特徴を、以下にまとめました。
【ガス給湯器】
タンクに水を貯め、ガスの火力で水温を上げる「貯湯式」と、水の通るパイプの周りを温めることで瞬間的に水の温度を上げる「瞬間式」があります。特に瞬間式の給湯器では、排出された熱を再利用することでガスの使用量を減らす「エコジョーズ」や「エコフィール」が登場しています。
いずれのタイプも稼働時には独特の匂いや音があり、機器本体の耐久年数も電気給湯器より短いのが短所です。導入費用は5万から60万円程度です。
【電気給湯器】
タンクに貯めた水を電気の力でお湯にする給湯器です。常にタンクは水で満たされているため、災害時の備えとしても活躍します。
「エコキュート」は電気代の安い夜間を利用して1日分のお湯を作る仕組みで、光熱費が抑えられることが大きな特徴です。
動作音も静かですが、水を貯めておくための大きなタンクを設置する必要があります。導入費用は10万から100万円程度と、ガス給湯器よりも少し高めです。
エコキュート導入に使える補助金
古いタイプの給湯器は丈夫でありながら安価なため、なかなか新しいタイプへの置き換えが進んでいません。しかし、省エネ化を進めるためには新しい機器への買い替えが有効です。
そこで、「給湯省エネ事業」が設けられています。この事業では、エコキュートなどの高効率給湯器を導入する際の費用の一部が助成されます。給湯器のタイプによって補助金額は異なりますが、1台あたり5万円から15万円が支給されます。
もし、導入予定の設備が給湯省エネ事業の対象になっている場合は、ぜひこの補助金制度を活用してみてください。給湯器の省エネ化が進めば、光熱費の削減だけでなく、環境にも貢献することができます。
▼給湯省エネ事業の詳細はこちらからどうぞ!
窓ガラス等の交換で省エネ対策を
家庭部門での電力消費は、冬場の暖房が最も大きな割合を占めます。四季の気温の変化が激しい日本では、寒冷地以外でも電気やガスを利用した暖房が全国的に使われています。
窓やドアからの熱の流失は、住宅全体の6割から7割にも及ぶと言われます。日本の住宅では、アルミサッシと1枚ガラスから成る窓が多く使われていますが、この構造は熱の流出量が大きいのです。
サッシを樹脂サッシにしたり、窓ガラスを二重にしたりすることで、ある程度室内の温度を快適に保つことができます。エネルギー消費の少ない省エネ住宅の場合、年間の光熱費は東京で123,963円、北海道で184,868円も安くなると試算されています。
出典:住宅省エネ2023キャンペーン総合サイト
先進的窓リノベ事業では、住宅の窓のリフォームが補助の対象です。これは住宅省エネ2023キャンペーンとして、「こどもエコすまい支援事業」、「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金」とともに設置されたものです。
基準を満たした「ガラス交換」「内窓設置」「外窓交換(カバー工法)」「外窓交換 (はつり工法)」の4つのリフォームに対し、最大200万円が支援されます。
▼いま注目の先進的窓リノベ事業の詳細は、こちらからご確認ください。
太陽光発電や蓄電池で電気代を節約
東京都では、太陽光発電の普及を進めています。拡充が発表された「災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業」では、太陽光発電設備のほか、高断熱窓・ドアへのリフォームや蓄電池の導入に対して補助が受けられます。
今回の拡充では蓄電池システムの設置に関して補助率や上限額の引き上げがあったほか、太陽熱利用システム・地中熱システム・太陽光発電設備は新規の設置以外に更新でも補助の対象になりました。太陽光発電設備など、環境にも家計にも負荷の少ない住宅への改修を目指している人には活用しやすい補助事業です。
主な補助対象や補助金額などは以下のとおりです。
【高断熱窓・ドア】
■補助率
1/3
■補助金額
窓…最大100万円
ドア…最大16万円
【蓄電池】
■補助率
3/4
■補助金額
[太陽光4kW以上と蓄電池設置の場合]
15万円/kWh(蓄電池容量)または30万円/kW(太陽光発電設備容量)のいずれか小さい額、最大1,500万円/戸
※太陽光4kW未満と蓄電池をあわせて設置、または蓄電池のみ設置の場合は、15万円/kWh、最大120万円/戸
【V2Hの設置】
■補助率
10/10など
■補助金額
最大100万円(太陽光、V2H及びEV・PHVが揃う場合)
【太陽熱利用システム】
■補助率
1/2
■補助金額
最大55万円
【地中熱利用システム】
■補助率
3/5など
■補助金額
最大180万円
【太陽光発電設備】
■補助率
10/10など
■補助金額
最大45万円(既存住宅の場合)
まとめ
高騰する電気代に対し、国は再生可能エネルギーの使用や住宅の省エネ化を推奨しています。環境に配慮した生活への関心は、世界的にも高まりを見せている分野です。今後は電気やガスといった従来のエネルギーを取り合うのではなく、新しいエネルギーの活用への移行が進むことも想定されます。
電気代への対応は、一時しのぎのものではありません。これを変化の機会ととらえ、エネルギーの使い方そのものを考え直すことが、これからの生活を豊かにしていくのです。家電による節電効果の違いについてはこちらの記事で詳しく解説されています。是非チェックしてみてください。