「治療と仕事の両立支援助成金」を調べてこの記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。結論からお伝えすると、労働者健康安全機構が実施していた「治療と仕事の両立支援助成金」(環境整備コース・制度活用コース)は、令和3年度末をもって終了しており、現在は申請できません。
しかし、治療と仕事の両立支援に取り組む企業を支援する制度がなくなったわけではありません。「団体経由産業保健活動推進助成金」をはじめ、令和8年度(2026年度)も活用できる助成金は複数あります。旧「不妊治療両立支援コース」が最大90万円の「不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース」に拡充されるなど、むしろ支援の幅は広がっています。
この記事では、終了した「治療と仕事の両立支援助成金」の経緯を整理したうえで、2026年度に活用できる主な助成金4つについて、支給額・要件を最新情報で解説します。
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この記事の目次
治療と仕事の両立支援助成金(環境整備コース・制度活用コース)は終了
「治療と仕事の両立支援助成金」は、独立行政法人労働者健康安全機構が実施していた産業保健関係助成金の1つで、次の2コースで構成されていました。
| コース | 内容 | 助成額 |
|---|---|---|
| 環境整備コース | 両立支援コーディネーターの配置と、休暇制度・短時間勤務・時差出勤などの両立支援制度を新たに導入した場合に助成 | 20万円 (1企業1回限り) |
| 制度活用コース | 病気を抱える労働者に両立支援制度を実際に適用した場合に助成 | 対象労働者1名あたり20万円 (有期・無期各1名まで) |
しかし、ストレスチェック助成金や小規模事業場産業医活動助成金などを含む産業保健関係助成金は、令和3年度(2021年度)をもって廃止されました。したがって「治療と仕事の両立支援助成金」も現在は新規申請できません。
これらに代わる制度として新設されたのが、後述する「団体経由産業保健活動推進助成金」です。個々の企業が直接申請する形から、商工会議所や事業協同組合などの事業主団体を経由して産業保健サービスの提供を受ける形に変わりました。このほかにも、両立支援のための休暇制度整備などに使える助成金があるため、あわせて紹介します。
【早見表】治療と仕事の両立支援に使える助成金4選(2026年度)
| 制度名 | 支援内容 | 助成額 | 令和8年度の状況 |
|---|---|---|---|
| 団体経由産業保健活動推進助成金 | 事業主団体等による産業保健サービス(個別労働者への両立支援を含む)の提供費用を助成 | 費用の9/10 団体全体で上限500万円(一定の団体は1,000万円) ※両立支援分は上限130万円(同260万円) | 予算上限到達により7月10日で受付終了 |
| 人材確保等支援助成金 (雇用管理制度・雇用環境整備助成コース) | 健康づくり制度等の雇用管理制度の整備・離職率低下を助成 | 最大230万円 (賃金引上げ7%以上の場合は最大325万円) | 受付中(令和7年4月に受付再開) |
| 働き方改革推進支援助成金 (労働時間短縮・年休促進支援コース) | 病気休暇・不妊治療休暇等の特別休暇導入や残業削減の環境整備費用を助成 | 成果目標達成で最大200万円+賃上げ加算等 | 交付申請は令和8年11月30日まで |
| 両立支援等助成金 (不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース) | 不妊治療・月経・更年期と仕事の両立支援制度の整備・利用を助成 | 区分ごとに30万円 最大90万円 | 通年受付(制度利用後2か月以内に申請) |
治療と仕事の両立支援とは?
病気の治療が必要になっても、働き続けたいと考える労働者は少なくありません。がん・脳卒中・糖尿病・難病など、反復・継続して治療が必要な疾病を抱える労働者が治療しながら働けるよう、職場環境を整備することが企業に求められています。
2026年4月から両立支援の取組は事業主の努力義務に
改正労働施策総合推進法により、2026年(令和8年)4月1日から、治療と就業の両立支援の取組が事業主の努力義務となりました。あわせて「治療と就業の両立支援指針」(令和8年厚生労働省告示第28号)が適用され、労働者からの申出を起点とした両立支援の進め方が示されています。従来は企業の自主的な取組と位置づけられていましたが、今後はすべての事業主が対応を求められる領域になったといえるでしょう。
さらに労働安全衛生法の改正により、2028年4月1日からは従業員50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます。中小企業にとっても、産業保健体制の整備は待ったなしの課題です。
治療と仕事の両立支援の流れ
「治療と就業の両立支援指針」では、両立支援は労働者からの申出を起点として、次のような流れで進めるとされています。
| 両立支援の流れ |
|---|
| (1)両立支援を必要とする労働者(患者)が、事業主に両立支援を申し出る。 (2)労働者は「勤務情報提供書」等を用いて主治医に自らの勤務情報を提供し、下記のような支援に必要な情報(主治医意見書等)を収集して事業主に提出する。 ・症状、治療の状況 ・退院後・通院治療中の就業継続の可否についての意見 ・望ましい就業上の措置についての意見 ・その他配慮を要する事項についての意見 (3)事業主が産業医等から意見を聴取し、主治医の意見や労働者(患者)本人の要望を考慮した上で、具体的な支援内容を検討する。 |
このあとの対応は、休養が必要・不要かによって下記の通りに進みます。
| 【入院等による休養が必要でない場合の対応】 |
|---|
| ①治療を続けながら就業を継続するための「両立支援プラン」を策定する。 |
| ②周囲の同僚や上司等に対し、限定された必要な情報をできるだけ開示し、理解を得ながら「両立支援プラン」を実施する。 |
| 【入院等による休養が必要な場合の対応】 |
|---|
| ①事業者が、休業についての制度と休業可能期間、職場復帰の手順等に関する情報提供を実施する。労働者(患者)は休業申請書類を提出後、休業を開始する。 |
| ②疾病が回復した場合、配置転換も考慮に入れた職場復帰の可否を判断し、労働者(患者)が職場復帰するまでの「職場復帰支援プラン」を策定する。 |
なお、労働者が勤務先に相談する前の一般診療の場で、主治医に自ら勤務情報を提供して意見をもらうための様式例として「治療と仕事の両立支援連絡カード」も公開されています。
出典:治療と就業の両立支援指針・関連資料(厚生労働省「治療と仕事の両立について」)
治療と仕事の両立支援に活用できる助成金
それでは、治療と仕事の両立支援に活用可能な支援制度を4つご紹介します。
①団体経由産業保健活動推進助成金(旧・治療と仕事の両立支援助成金の後継)
本助成金は、廃止された産業保健関係助成金(治療と仕事の両立支援助成金を含む)に代わって新設された制度です。中小企業や労災保険の特別加入者を支援する団体等が、傘下の中小企業等に対し、産業保健サービスを提供する際の費用の一部を助成します。助成対象サービスには「事業者や労働者等への治療と仕事の両立支援」が含まれています。
ただし、対象となるのは実際に支援を必要とする個別の労働者に対する両立支援です。支援対象者がいない状態で、将来に備えて就業規則等の規定を整備するだけでは助成対象にならない点に注意してください。
制度創設当初と比べて内容は大幅に拡充されており、令和8年度は費用の90%(団体全体で上限500万円、一定の要件を満たした団体は1,000万円)が助成されます。
助成対象となる団体等
・事業主団体等
・労災保険の特別加入団体
| 助成対象となる産業保健サービス(例) |
|---|
| ①労働者等の健康診断結果の意見聴取 |
| ②医師・保健師等によるストレスチェックの実施、保健指導、面接指導、健康相談対応、健康教育研修等 |
| ③事業者や労働者等への治療と仕事の両立支援 |
| ④事業者への職場環境改善支援 |
補助率、助成金額
| 補助率 | 産業保健サービス費用の9/10 |
|---|---|
| 上限額 | 団体全体で500万円(一定の要件を満たした団体は1,000万円) |
助成上限額はサービスごとに別途定められており、「治療と仕事の両立支援」に係る費用は上限130万円(一定の要件を満たした団体は260万円)、対象労働者1人当たり3,000円が上限です。
令和8年度の受付状況
令和8年度は6月10日に受付が開始されましたが、予算上限に達したため、7月10日をもって交付申請の受付が終了しています。人気の高い助成金のため、令和9年度の活用を検討する場合は、年度当初から労働者健康安全機構の案内をチェックし、早めに申請準備を進めることをおすすめします。②人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)
事業主が、健康づくり制度をはじめとする雇用管理制度の導入等による雇用管理改善を実施し、離職率の低下が図られた場合に助成金を支給するコースです。旧「雇用管理制度助成コース」は令和4年4月から整備計画の受付を休止していましたが、令和7年4月1日に「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」として受付が再開され、令和8年度も継続実施されています。従来の雇用管理制度の整備に加え、業務負担軽減機器等の導入も助成対象に加わりました。
主な支給要件
| 受給までの流れ |
|---|
| ①雇用管理制度整備計画の認定:健康づくり制度・研修制度・メンター制度等の雇用管理制度の導入、または業務負担軽減機器等の導入を含んだ整備計画を作成し、管轄の労働局の認定を受ける。 |
| ②制度・機器等の導入と実施:計画に基づき、実施期間内に雇用管理制度の導入・実施(または機器等の導入)を行う。 |
| ③離職率の低下目標の達成:計画期間終了から1年経過するまでの離職率を、計画提出前1年間の離職率よりも目標値以上に低下させる。 |
治療と仕事の両立支援の観点では、「健康づくり制度」(人間ドックを導入する取組)が特に関連の深いメニューです。
助成額
離職率低下の目標を達成した場合に助成金が支給されます。令和8年度は最大230万円、賃金引上げ7%以上の要件を満たした場合は最大325万円です。なお、業務負担軽減機器等の導入部分については、助成率3/4・上限225万円が適用される場合があります。計画書に記載する「計画時離職率」が労働局の計算と一致しないと計画が認定されないため、雇用保険被保険者数や離職者数は正確に記入しましょう。
詳しくはこちら:最大230万円を支給!人材確保等支援助成金 雇用管理制度・雇用環境整備助成コースとは
③働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
このコースは、生産性を向上させ、時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の取得促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を支援するものです。治療と仕事の両立支援との関係では、成果目標の1つに「病気休暇・不妊治療のための休暇等の特別休暇の新規導入」が含まれている点がポイントです。がん治療や不妊治療などで通院する労働者のための休暇制度を整備しながら、その環境整備費用(外部専門家によるコンサルティング、労務管理用機器の導入等)の助成を受けられます。
対象事業主
次のいずれにも該当する中小企業事業主が対象です。・交付申請時点で、選択する成果目標の要件を満たしていること
・すべての対象事業場で年次有給休暇管理簿を作成しており、常時10人以上の事業場では年5日の年休の時季指定を定めた就業規則を労働基準監督署に届け出ていること
成果目標
以下のうち1つ以上を選択し、達成を目指します。・年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入する
・時間単位の年次有給休暇を新たに導入し、かつ特別休暇(病気休暇、不妊治療のための休暇等)の規定を1つ以上新たに導入する
※成果目標③の特別休暇は、有給の休暇として規定する必要があります。無給の休暇は対象外です。
助成率、助成金額
| 助成率 | 3/4 (常時使用する労働者が30人以下で、労務管理用機器や労働能率の増進に資する設備・機器等の導入経費が30万円を超える場合は4/5) |
|---|---|
| 上限額 | 成果目標の達成状況に基づき、最大200万円 |
これに加えて、賃金引上げを成果目標に追加した場合の加算(最大720万円)や、令和8年度に新設された割増賃金率引上げ加算(最大100万円)を上乗せできます。
詳しくはこちら:労働時間短縮・年休促進支援コースとは【2026年度】最大150万円+加算|働き方改革推進支援助成金
④両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース)
旧「不妊治療両立支援コース」を拡充する形で2025年度にスタートしたコースで、令和8年度も引き続き実施されています。不妊治療に加えて、月経(PMSを含む)・更年期という女性の健康課題までを対象とし、それぞれの両立支援制度を整備・利用させた中小企業事業主に、区分ごとに30万円、最大で1事業主あたり90万円が支給されます。
| 区分 | 助成額 | 上限 |
|---|---|---|
| 不妊治療 | 30万円 | 1事業主1回限り |
| 女性の健康課題対応(月経) | 30万円 | 1事業主1回限り |
| 女性の健康課題対応(更年期) | 30万円 | 1事業主1回限り |
※令和6年度までに旧「不妊治療両立支援コース」を受給した事業主は、不妊治療区分の再受給はできません(月経・更年期区分は新たに要件を満たせば対象)。
支給対象となる制度
不妊治療・月経・更年期のそれぞれについて、次の6種類から1つ以上の制度を就業規則等に規定し、労働者に利用させることが必要です。
・所定外労働制限制度(残業免除)
・時差出勤制度
・短時間勤務制度
・フレックスタイム制
・在宅勤務等
主な支給要件
| 受給までの流れ |
|---|
| ①支援制度を整備し、就業規則等に規定・周知する |
| ②両立支援担当者を選任する(制度利用開始日の前日まで) |
| ③対象労働者に制度を合計5日(回)以上利用させる |
| ④対象労働者を支給申請日まで雇用保険被保険者として継続雇用する |
詳しくはこちら:不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースとは?【両立支援等助成金】
よくある質問
治療と仕事の両立支援助成金はまだ申請できる?
申請できません。労働者健康安全機構の「治療と仕事の両立支援助成金」は、産業保健関係助成金の廃止に伴い令和3年度末で終了しました。現在は後継の団体経由産業保健活動推進助成金や、働き方改革推進支援助成金などが活用できます。
両立支援コーディネーターの配置に使える助成金はある?
現在、配置自体への直接の助成制度はありません。ただし、労働者健康安全機構の両立支援コーディネーター基礎研修は無料で受講できます。
がんや難病で長期療養する社員向けの助成金はある?
労働者本人に支給される助成金はありませんが、健康保険の傷病手当金(最長1年6か月)が利用できます。企業向けには、病気休暇制度の導入が成果目標の対象となる働き方改革推進支援助成金などが活用できます。
不妊治療の制度を男性社員が使っても対象になる?
対象になります。不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースは男女双方の不妊治療が対象で、女性のみを対象とする制度は助成対象外です。
複数の助成金は併用できる?
支給要件をそれぞれ満たせば併給できる組み合わせがあります。働き方改革推進支援助成金と不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースの併給は、厚生労働省のQ&Aで可能と明記されています。
まとめ
少子高齢化が急速に進む中、企業によっては労働者の高齢化も問題となっています。高齢になるほど疾病や障害のリスクが高くなるため、治療をしながら仕事をする労働者は今後さらに増えていくと見込まれます。また、キャリアを積んできた社員が不妊治療や更年期の症状と仕事の両立に悩んで離職してしまうことは、企業にとって大きな損失です。令和8年度は、不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース(最大90万円)をはじめ、治療と仕事の両立を支援する制度が拡充されています。将来的な人材不足への対策や職場環境の整備、女性活躍推進をお考えの事業者は、ぜひ今回紹介した助成金の活用をご検討ください。
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