現在世界を震撼させている新型コロナウィルスは、中国の武漢という地域で2019年11月ごろに初めて発生が確認されました。
その後、感染地域は徐々に拡大し、中国では発生から数か月で8万人が感染(2900人以上が死亡)、国内でも大型クルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号(イギリス船籍)」内で集団感染が確認されたため、政権による検閲も実施され大きなニュースとして取り上げられる事となりました
国内の感染者数は現在約1000人で死者は12人、その他の国の感染状況としては、韓国で4千人以上が感染し28人が死亡、イタリアで2000人以上が感染し52人が死亡、イランでは2000人以上が感染し、医療機関の発表によれば200人以上(政府発表では50人前後)の死亡が確認されています。※3/2の情報
現在も有効なワクチンがないため混乱が続いている状況ではありますが、対症療法によって多くの人が既に回復している事実もあり、今後のワクチンの完成(各機関が今秋の臨床試験開始に向け開発を急いでいます)をもって事態が収束に向かう事も期待されています。
こうしたなか、政府は新型コロナウィルス感染症の影響による今後の国内経済の下振れを回避する為、サプライチェーンの毀損に対応する為の設備投資や販路開拓に取り組む事業者、また特に風評被害の大きい宿泊業や飲食業などを対象に、間もなく実施される「中小企業生産性革命推進事業」の仕組みを利用した集中的な支援を行う事を決定しました。
今回はこの「中小企業生産性革命推進事業」について、どういった取り組みが優先的な支援の対象となるのか調べてみたいと思います。
新型コロナウィルス対策の概要※経産省資料より
この記事の目次
間もなく公募開始、中小企業生産性革命推進事業はこんな制度!
中小企業生産性革命推進事業は中小企業庁が所管する「ものづくり補助金」「持続化補助金」「IT導入補助金」という3つの補助金制度の総称です。
予算は3ヵ年での継続的な実施で3600億円という事なので、1年あたり1200億円程度となる事が予想されています。
ものづくり補助金とは?
正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業」といい、中小企業の「革新的な生産性の向上」に向けた設備投資を支援するのが主な目的です。
今回は懸念されている「サプライチェーン(部品供給の為の物流システム全体のこと)の毀損」にも対応する為、感染症の影響で部品の調達・供給方法の見直しを行うために設備投資を行う事業者を対象に、優先的な採択を行う「加点調整」を行う事が決定しています。
本来の目的である新製品・新サービス開発や生産プロセス改善等のための設備投資などを検討していた場合などには、新型コロナ対策として加点にかかる取り組みを加える事で採択率は確実に向上することになります。
加点の要件として「サプライチェーンの毀損等の影響を受けている客観的事実を証明するための書類の提出」が求められていますので、例えば部品の供給を受けていた事業者の休廃業等があれば、それを客観的に証明するためweb上での告知などを印刷しておく必要があります。
※3月3日に更新された経産省のパンフレット
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持続化補助金とは?
正式名称は「小規模事業者持続化補助金」といい、小規模事業者の販路開拓等の取り組みを支援するのが主な目的です。
補助対象となる取り組みの範囲が広いため非常に人気のある補助金制度で、店舗の内装工事やHPの作成、チラシや看板の作成、ショーケースやレジシステム等の購入にも利用する事が出来ます。
今回はインバウンド需要の縮小(主にコロナ発生地の中国からの旅行客が激減)に対応するため、国内需要を拡大するためのインターネット販売の強化や、ビジネスモデルの転換、旅館等は事業を継続する為に人員の削減等を図る場合にも優先的な採択を受ける事ができます。
騒動の終息後の販促活動なども本来の用途となりますので、個人事業主の方は是非活用をご検討ください。
※3月3日に更新された経産省のパンフレット
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IT導入補助金とは?
正式名称は「サービス等生産性向上IT導入支援事業」といい、ITツールの導入による業務の効率化を支援する補助金制度です。
ITベンダー(ITツールの商社)が登録したITツールを対象に、運用による生産性の向上の度合いによって審査が行われる仕組みとなりますが、今回はBCP(事業継続のための計画)対策としてテレワークの導入等を行う場合に優先採択の対象となります。
今回紹介している3つの補助金制度の中では最も人気が高く、近年は採択が受けづらい状況もつづいていますので、導入したいITツールに複数の候補がある場合などは「WEB会議システム」や「社内SNS」などテレワークに関連した対象製品から導入検討をしてみるのはいかがでしょうか。
※3月3日に更新された経産省のパンフレット
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まとめ
新型コロナウィルス感染症の感染拡大は、もはや一部の事業だけでなく国内の全ての産業に大きな影響を与えています。
人口が過密する都心部では交通インフラ利用時の濃厚接触によるコロナウィルス感染のリスクから臨時の休業に踏み切る学校や企業も増えて来ています。
また多くの企業の集積で事業が成り立っている製造分野は、小さな部品製造事業者の倒産が関連企業の連鎖倒産の引き金にもなり得るため、経産省はより慎重に対策を検討し、優先的かつ集中的な支援を決定しました。
現在はスポーツジムやイベントホール、動植物園、水族館等といった人が集まる施設全般で営業を自粛する動きがあり、今後も様々な分野でこの影響は拡大していく可能性はあります。
今どうするべきか、これからどうするべきか、携わる事業よって必要な対策は様々ではないかと思いますが、政府が随時発表する中小企業支援策等を有効に活用して、雇用の維持や業績の回復、今後の成長などに役立てていただきたいと思います。