経済産業省は、中小企業の持続的な成長を見据え、金融庁や財務省と連携しながら、「挑戦する中小企業応援パッケージ」を策定しました。この取り組みは、中小企業の挑戦的な活動を力強くバックアップするためのものであり、特に資金繰りに頭を悩ませている企業の皆様を対象とした、さまざまな支援メニューが揃っています。
低利・無担保融資や資本性劣後ローン、セーフティネット貸付など、多岐にわたる融資制度が令和6年3月末まで実施される予定です。このような支援により、経済産業省は中小企業の新たな飛躍を後押しすることを目指しています。本記事では、8月30日に公表された挑戦する中小企業応援パッケージの内容と、令和5年10月以降の資金繰り支援について確認していきます。
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この記事の目次
挑戦する中小企業応援パッケージ
「挑戦する中小企業応援パッケージ」は、以下の二つを柱としています。
①将来の挑戦に向けたコロナ資金繰り支援
②挑戦する中小企業の経営改善・再生支援の強化
「挑戦する中小企業応援パッケージ」は、中小企業の未来を見据えて設計された包括的な支援策から成り立っています。このパッケージの第一の柱である「将来の挑戦に向けたコロナ資金繰り支援」では、セーフティネット保証4号(100%保証)の借換目的での利用が当面、12月末まで継続されます。さらに、日本公庫等の資本性劣後ローンの限度額が10億円から15億円へ引き上げられ、スーパー低利融資の金利引下げ幅は縮小されつつも、令和6年3月末までその制度が延長されます。また、物価高騰への対策として、セーフティネット貸付の金利引下げ措置も同期間延長されることとなりました。
一方、第二の柱である「挑戦する中小企業の経営改善・再生支援の強化」では、挑戦意欲溢れる中小企業の経営の改善や再生を後押しするための総合的な取り組みが推進されます。具体的には、「挑戦する中小企業の経営改善・再生支援強化会議」(仮称)が設立される予定で、この会議を通じて、官民金融機関が経営改善や再生の取り組み状況を緻密にフォローしていく方針となっています。
以下に、それぞれの詳細をまとめました。
将来の挑戦に向けたコロナ資金繰り支援
まず資金繰り支援の10月以降のメニューについてです。日本政策金融公庫による制度と、信用保証協会による制度を分けて記載します。
日本政策金融公庫による制度
■スーパー低利融資を、金利引下げ幅を縮小(▲0.9%→▲0.5%)の上で、令和6年3月末まで延長します。
低利・無担保融資…コロナ対策(コロナで売り上げ減少 ) | |
制度概要 | 当初3年間は基準金利から 0.5%引き下げた融資制度 |
対象者 | ・新型コロナの影響を受け、売上が5%以上減少した者 ・新型コロナの影響を受け、債務負担が重い事業者(債務償還年数13年以上) |
低利上限 | (中小企業事業 )4億円、 ( 国民生活事業 )6000万円 |
貸付期間 | 運転資金20年以内 、設備資金20年以内 |
据置期間 | 最大で5年 |
■事業再構築等への挑戦を応援すべく、日本公庫等の資本性劣後ローンの限度額を10億円から15億円へ引き上げの上、令和6年3月末まで延長します。
資本性劣後ローン…コロナ対策 | |
制度概要 | 資産査定上「資本」とみなすことができ、民間金融機関の支援が受けやすくなる融資制度 |
対象者 | 新型コロナにより、キャッシュフローが不足する企業や一時的に財務状況が悪化したため企業再建等に取り組む企業 |
融資上限 | (中小企業事業)15億円 、(国民生活事業)7200万円 |
貸付期間 | 5年1か月、 7年、 10年、 15年 、20年 ※ 元本は期限一括償還 |
■物価高騰対策のセーフティネット貸付の金利引き下げ措置を令和6年3月末まで延長します。
セーフティネット貸付…物価高対策(物価高で利益率が減少 ) | |
制度概要 | 基準金利から 0.4%引き下げた融資制度 |
対象者 | ウクライナ情勢・原油価格上昇の影響を受けて、利益率が減少した者 |
融資上限 | (中小企業事業 )7億2千万円、 ( 国民生活事業 )4800万円 |
貸付期間 | 設備資金15年以内 、運転資金8年以内 |
据置期間 | 最大で3年 |
【お問い合わせ先】
日本政策金融公庫事業資金相談ダイヤル( 0120-154-505)
信用保証協会による制度
■コロナ、物価高対策として、民間ゼロゼロ融資に加え、他の保証付融資や新たな資金需要にも対応できる借換保証制度を設置しています。
セーフティネット貸付…コロナ対策、物価高対策 | |
制度概要 | 民間ゼロゼロ融資に加え、他の保証付融資や新たな資金需要にも対応できる借換保証制度 |
対象者 | 売上または利益が5%以上減少した者で、経営行動計画書を作成して、金融機関による継続的な伴走支援を受ける者 |
制度詳細 | 融資上限1億円、保証料0.2%等 、据置期間 最大5年 |
■セーフティネット保証4号(100%保証)の借換目的での利用を当面は令和5年12月末まで継続します。※新規融資のみでの利用は、9月末で終了しました
セーフティネット保証4号…コロナ対策 | |
制度概要 | 一般保証と別枠で利用できる保証制度 |
対象者 | コロナの影響を受けて売上高等が減少しており、借換目的である者 |
制度詳細 | 保証上限 2.8億 円 、保証割合 100% |
【お問い合わせ先】
中小企業庁金融課 (03-3501-2876)
挑戦する中小企業の経営改善・再生支援の強化
挑戦意欲のある中小企業の支援を強化するための一連の取り組みが進められています。中心的な措置として、「挑戦する中小企業の経営改善・再生支援強化会議」を設立し、官民間の金融機関が経営の改善・再生の状況を密接にフォローします。
さらに、信用保証協会と民間金融機関との連携による経営改善支援を強化すべく、「早期経営改善計画策定支援事業」」(支援費用の2/3を補助)等について、100%保証先等に、民間金融機関も一定の条件で利用を認めるなどの措置を講じます。再生支援面では、商工組合中央金庫の危機対応融資のDES(債務の株式化)を通じて、企業の再生を後押しする施策を実施します。再チャレンジ支援も、中小企業活性化協議会の体制強化を通じて力を入れる方針です。
また、経営者の負担を軽減するために、信用保証制度に関する経営者保証の改革と、その保証料の軽減策の検討も進められます。
まとめ
中小企業の挑戦を全力で応援することを目的とした「挑戦する中小企業応援パッケージ」は、将来的な成長を目指す中小企業にとって、有用な支援策となるでしょう。このパッケージにおける資金繰り支援は、コロナ禍の影響を受けた事業者が新しい挑戦を始める上での貴重なサポートとして設置されています。特にセーフティネット保証や低利融資などの措置が、事業者の経営基盤を固める上で役立ちます。
また、経営改善や再生を目指す中小企業のサポートも強化します。新たに「挑戦する中小企業の経営改善・再生支援強化会議」の設置や、早期経営改善計画の策定支援、再チャレンジ支援の強化など、多岐にわたる取り組みが進行中です。これらの施策は、中小企業の持続的な成長と、経済全体の活性化に寄与することが期待されます。