お正月の風物詩である年賀状。しかし、寄付金付の年賀状や切手があることは、知らない人も多いかもしれません。2025年度は、年賀はがきが85円、寄付金付年賀はがきが90円です。差額の5円が、寄付金となります。集められた寄付金は、地域や社会の課題解決に取り組む団体の支援する「日本郵便年賀寄付金助成金」として活用されてきました。今回は日本郵便年賀寄付金助成金の概要や申請可能事業、審査のポイントを見ていきましょう。
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この記事の目次
年賀寄付金配分事業とは
寄付金付年賀はがき・年賀切手の販売によって集まった寄付金は、日本郵便を通じて非営利の活動団体へ配分され地域の貢献活動に活かされています。対象の団体・事業は時代とともに変化してきましたが、2025年は、以下の2つの枠が設けられました。
①一般枠
②特別枠
それぞれの枠では、お年玉付郵便葉書等に関する法律に規定された10の課題に取り組む事業が支援されます。
日本郵便年賀寄付金助成金の詳細
それでは、助成金の詳細を確認していきましょう。対象となる10の課題や経費をまとめました。
申請可能事業
申請可能事業は、次の1~10の事業のいずれかに該当するものです。
1.社会福祉の増進を目的とする事業
2.風水害、震災等非常災害による被災者の救助またはこれらの災害の予防を行う事業
3.がん、結核、小児まひ、その他特殊な疾病の学術的研究、治療または予防を行う事業
4.原子爆弾の被爆者に対する治療・その他の援助を行う事業
5.交通事故の発生もしくは水難に際しての人命の応急的な救助・交通事故の発生・水難の防止を行う事業
6.文化財の保護を行う事業
7.青少年の健全な育成のための社会教育を行う事業
8.健康の保持増進を図るためにする、スポーツの振興のための事業
9.開発途上にある海外の地域からの留学生または研修生の援護を行う事業
10.地球環境の保全を図るために行う事業
なお、海外で実施される事業は除きます。また、海外活動を行う団体が国内で行う啓発事業などは、国内で行われる事業として扱われます。
助成分野・期間
助成分野や期間は、以下のとおりです。
①一般枠
■活動・一般プログラム | 福祉・人材育成・普及啓発・イベントまたは新規事業を支援 |
---|---|
■活動・チャレンジプログラム | 福祉・人材育成・普及啓発・イベントまたは新規事業を支援(50万円まで) |
■施設改修 | 事業をより効率的・効果的に実施するために必要な施設の改修などを支援 |
■機器購入 | 事業をより効率的・効果的に実施するために必要な車両以外の機器の購入を支援 |
■車両購入 | 事業をより効率的・効果的に実施するために車両の購入を支援 |
②特別枠
東日本大震災、令和6年能登半島地震の被災者救助・予防(復興)
活動・施設・機器・車両の区分はありません。
■助成期間
2025年4月1日(配分決定後)~2026年3月31日
助成金額
助成上限額は、以下のとおりです。
活動・チャレンジ以外 | 上限500万円 |
---|---|
活動・チャレンジ | 上限 50万円 |
助成対象となる経費
①一般枠 | ||
---|---|---|
活動・一般/活動・チャレンジ | 謝金・旅費交通費・会議費・会場借料・借料損料・印刷製本費・通信運搬費・広告宣伝費・消耗品費・什器備品費・賃金・雑役務費・委託費・その他 | |
施設改修 | 建物 | 壁、窓、床、天井、屋根などの修復、間取りの変更工事、水周り工事および耐震工事 |
外構工事 | 門、塀、柵、植栽、物置などの設置もしくは修復工事または工事の伴う水泳プール、ビオトープ、園庭に固定する大型遊具、ツリーハウスなどに関わる工事 など | |
機器購入 | ・機器本体費用・設置工事費用 | |
車両購入 | 車両(1台のみ) |
②特別枠 | |
---|---|
東日本大震災、令和6年能登半島地震の被災者救助・予防(復興) | ・「経費基準」の範囲内の費用 ・施設改修、機器購入または車両購入 |
申請可能団体
申請可能な団体は、以下のとおりです。
①一般枠:
社会福祉法人、更生保護法人、一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人または特定非営利活動法人(NPO法人)
②特別枠:
一般枠の対象団体に加え、営利を目的としない法人(生協法人、学校法人など)
申請の流れと必要なもの
申請は、日本郵便Webサイト内にある「申請入力フォーム」から行います。フォームに登録後、さらに必要な書類を郵送します。
全体の流れは、以下の図も参照してください。
参考:2025年度日本郵便年賀寄付金助成金申請ガイド①(配分申請要領)
申請期間・方法
申請期間は、以下のとおりです。
2024年9月9日(月)~同年11月1日(金)
また、申請は以下の流れで行います。
①申請入力フォームにより申請 |
---|
必要事項の記入および関係書類のアップロードを行います。 |
②必要書類の郵送 |
申請・関係書類のアップロード後、指定の書類を事務局に郵送で提出します。 |
③申請の受付完了 |
ウェブサイトでの申請と、書類の送付のどちらか一方だけでは、受付が完了していません。必ず、両方の手続きが済んだことを確認してください。 |
申請に必要なもの
申請時、フォームからデータでアップロードするものは、以下のとおりです。
■全分野共通 |
---|
・申請する団体の定款または寄付行為 ・2023度申請団体収支決算書 ・2024年度申請団体収支予算書 ・必要な見積書 |
■公益法人のみ |
事業報告等に係る提出書類の別紙1「運営組織及び事業活動の状況の概要等について」 |
■施設改修分野のみ |
・施設改修を行う内容が具体的に分かる改修施設の図面または改修箇所の写真 ・改修する施設が借用施設の場合は、当該施設の貸与契約書 ・文化財の保護事業の申請の場合は、文化財指定を受けていることが分かる登録証明書など |
また、申請入力フォームでの入力・送信後に、次の申請関係書類を郵送してください。
①配分申請する事業を所管する大臣または都道府県知事などの意見書
②郵便はがき
「実施責任者」の連絡先(住所)および氏名を宛名面に記載してください。
審査と採択通知までの流れ
審査は、社外有識者による審査委員会で行われます。審査では、申請事業に期待する項目および定量的条件の配慮を踏まえ、総合的な判断が行われます。
それぞれの項目を確認しましょう。
①申請事業に期待する項目および優先度合い | |
---|---|
■先駆性 | 先駆性が高く発展性のある事業 |
■社会性 | 社会的ニーズとその社会的波及効果の高い事業 |
■実現性 | 事業計画が明確化され、実現性が高く継続・発展が見込める事業 |
■緊急性 | 緊急性の高い事業 |
②定量的条件 | |
---|---|
■申請額がより小さい団体を優先 | できる限り多くの団体に配分するため |
■申請事業の事業総額に占める自己負担金の割合が高い団体を優先 | 事業の実施に向けて、自己努力意識や準備の高い団体 |
■団体の前年度決算における繰越剰余金額がより小さい団体を優先 | 財政状況を踏まえ、配分の必要性がより高い団体 |
申請のポイント
審査では、以下の点もポイントとなります。申請時にはこうした内容も意識して、各書類を作成しましょう。
■施設改修、機器購入および車両購入について |
---|
・新規事業の実施および事業の拡大などに伴う改修・配備 ・事故や天災などに伴う改修・更改 |
■活動(一般・チャレンジ)および特別枠 |
リスク発生時の代替案や対応策を盛り込む |
■事業内容に対して |
適切な効果・成果目標およびその根拠を記載 |
■先駆性・社会性・実現性・緊急性に関して |
その後の活動における活用用途(見込み)も記載 |
活用事例
申請ガイドには、事業の内容ごとに、これまでの活用事例が公表されています。ここでは、そのうちのいくつかを見ていきましょう。
■社会福祉の増進 | ・ひとり親とこどもの困難・貧困解消のためのサポート事業 ・「中途視覚障害者に対する点字学習指導法研修会」実施事業 | |
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■非常災害時の被災者の救助・災害の予防 | ・障がい当事者も参画した防災学習、防災訓練事業 ・要配慮者などにやさしい避難所づくりのための学習、訓練事業 | |
■がん、結核、小児まひその他特殊な疾病の予防 | ・入院患者の入院前新型コロナ抗原検査のためのPCR検査機器拡充事業 | |
■原子爆弾の被爆者の治療その他の援助 | ・原爆被害者に対する健診による調査および被爆二世に対する健診調査で使用する一般エックス線撮影装置の整備事業 | |
■交通事故、水難の救助・防止 | ・水難事故防止・海上での災害時の救助 | |
■文化財の保護 | ・国登録文化財 慧日寺方丈茅葺工事と茅葺技術研修事業 | |
■青少年健全育成のための社会教育 | ・不登校や発達障害等の要支援の子どもと健常な子どもとが共に学べるための教育支援事業 | |
■健康の保持増進を図るためにするスポーツの振興 | ・地域スポーツ振興のための室内トレーニング施設の改修事業 | |
■海外の地域からの留学生、研修生の援護 | ・海外からの留学生・技能実習生への日本で就労するための日本語能力向上支援事業 | |
■地球環境の保全 | ・海洋ゴミ発生抑制のための遠州灘海岸におけるマイクロプラスチックゼロプロジェクト |
まとめ
多くの非営利団体では、資金調達が難しいことが課題となっています。社会的な問題の解決は、すべての人にとって意義のあることです。年賀状という身近なものの購入から寄付につなげる日本郵便年賀寄付金助成金は、社会問題を自分事としてとらえ、その解決に助力する意識の高まりをも支えます。日本郵便年賀寄付金助成金を活用し、人々の生活を豊かに、安全にすることは、支援する人とされる団体との好循環を生み出すものです。積極的に活用し、資金面の課題とともに、活動団体と社会とのよりよい関係の構築を目指しましょう。