技術革新や社会情勢の変化に伴い、業種・業態の市場規模は変化します。企業が永続的に成長を遂げるためには、新たな分野への挑戦が必要です。
「事業再構築補助金」では、成長枠に「市場拡大要件」が、産業構造転換枠に「市場縮小要件」が設定されています。これらの要件を満たさない場合、該当枠での申請はできません。
今回は事業再構築補助金の市場拡大・縮小要件について、見ていきましょう。
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この記事の目次
事業再構築補助金の概要
事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの長期的影響を受けて業績が悪化した企業を対象にした補助事業です。企業の新しい市場への進出や事業の変革を支援します。積極的な事業変革を目指す中小・中堅企業を後押しすることが目的です。
第10回公募からは、業績が厳しい事業者向けの「物価高騰対策・回復再生応援枠」、事業再構築が特に求められる業者向けの「産業構造転換枠」、そして海外からの部品製造を国内に取り戻す動きや成長分野へのシフトを促進する「成長枠」が新たに設けられました。これらの枠は、企業の新たな挑戦を重点的に支援します。
また、第11回公募では「サプライチェーン強靱化枠」の公募が停止され、全7枠となりました。このように事業再構築補助金は、社会情勢に応じて、内容が変更されます。
市場拡大要件とは
市場拡大要件は、成長枠での申請に必要な要件のひとつです。成長枠は「成長分野への大胆な事業再構築に取り組む中小企業等」を支援します。
要件を満たすには、取り組む事業が、「過去から今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属している」ことが必要です。該当の業種・業態は事務局から指定がありますが、指定されていない場合でも、申請が認められる場合があります。
市場拡大要件の詳細や留意事項は、以下の通りです。
補助対象者 |
①期間については、新型コロナウイルスによる特異的な影響は除外されます。(過去10年の場合、原則コロナ前である2019年までの期間とする)ただしコロナ後の期間を含んでいる場合でも、それが中長期的なトレンドであると考えられる場合には補助の対象です。 |
②事務局から指定されている業種・業態でない場合は、該当期間に市場規模が10%以上拡大する業種・業態であることを示すデータ・統計等を添付する必要があります。 |
市場縮小要件とは
市場縮小要件は、産業構造転換枠での申請に必要な要件のひとつです。産業構造転換枠は、「国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の中小企業等が取り組む事業再構築」を支援します。
要件を満たすには、現在の主たる事業が「過去から今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属す」ことと、今後「別の業種・業態の新規事業を実施する」ことが必要です。
拡大要件と同じく、該当の業種・業態は事務局から指定がありますが、指定されていない場合でも、申請が認められる場合があります。
市場縮小要件の詳細や留意事項は、以下の通りです。
補助対象者 |
①期間については、新型コロナウイルスによる特異的な影響は除外されます。(過去10年の場合、原則コロナ前である2019年までの期間とする)ただしコロナ後の期間を含んでいる場合でも、それが中長期的なトレンドであると考えられる場合には補助の対象です。 |
②以下の両方を満たす事業者も対象となります。 ・基幹大企業の撤退によって、市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域で事業を行っている ・当該企業との直接取引額が、売上高の10%以上を占める この場合、指定した地域の自治体に市場縮小要件を満たすことの説明書(基幹大企業撤退)を提出し、確認を受けてください。 |
➂事務局から指定されている業種・業態でない場合は、該当期間に市場規模が10%縮小する業種・業態であることを示すデータ・統計等を添付する必要があります。 |
なお、「過去10年間で市場規模が10%以上縮小し、今後10年間で市場規模が10%以上拡大する場合」と「過去10年間で市場規模が10%以上拡大し、今後10年間で市場規模が10%以上縮小する場合」は、いずれも市場拡大要件と市場縮小要件の両方を満たします。この場合は今後のトレンドが優先され、前者は成長枠、後者は産業構造転換枠にのみ申請可能です。
市場拡大・縮小要件に該当する業種・業態とは
それでは、要件を満たす業種・業態にはどのようなものがあるのでしょうか。事務局ホームページでは、各要件に指定される業種・業態の一覧が公表されています。
ここではその中から、各要件に該当する業種・業態の例を見ていきましょう。
市場拡大要件の対象業種・業態
市場拡大要件の対象となる業種・業態は、例えば以下のようなものです。
①経済産業省「工業統計調査」、経済産業省「企業活動基本調査」を基に、要件を満たすとされる業種 |
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②業界団体等が要件を満たすことについて示した業種・業態 |
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市場縮小要件の対象種・業態
市場縮小要件の対象となる業種・業態は、以下のとおりです。
業界団体等が要件を満たすことについて示した業種・業態 |
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申請が「認められる例」と「認められない例」
各要件には、申請が認められるケースと認められないケースがあります。ポイントは、規模の拡大・縮小が「トレンド」になっているかどうかです。
それぞれの例を紹介します。
市場拡大要件
市場拡大要件では、2019年だけ極端に値が上昇している等、上昇傾向にあると認められない場合は対象となりません。
支援対象になる業種・業態とは、市場規模が今後も上昇を続ける「上昇トレンド」にあるものです。
「認められる例」と「認められない例」は、以下の表も参考にしてください。
出典:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)
市場縮小要件
市場拡大要件でも同様に、2019年だけ極端に値が減少している等、下降傾向にあると認められない場合は対象となりません。
支援対象になる業種・業態とは、市場規模が今後も縮小を続ける「下降トレンド」にあるものです。
「認められる例」と「認められない例」は、以下の表も参考にしてください。
出典:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)
まとめ
市場規模の大きな業種・業態では、これまでなかった価値や新しい発想が企業に大きな成長をもたらします。縮小傾向にある市場からの転向は、時代にあわせてビジネスのあり方を見直すことにもつながります。いずれの取組も、変化する時代の企業には必要な改革です。
社会の変化は、大きなビジネスチャンスともなり得ます。事業再構築補助金は、この機を逃さずに前向きな改革を行う企業こそ、活用してほしい制度です。