ガソリンスタンドは、エネルギー供給拠点として暮らしを支える重要な施設のひとつです。しかしガソリンの需要減少や後継者不足等を背景に、ガソリンスタンドの数は例年減少傾向にあります。
また、環境問題に配慮したクリーンなエネルギーの需要が高まるなど、ガソリンスタンドの在り方そのものにも変革が求められるようになりました。
東京都では、ガソリンスタンドを環境配慮型のマルチエネルギーステーションへ転換することを目指した環境配慮型設備の導入支援が実施されます。今回はこの、環境に配慮したエネルギーステーションづくりに向けた設備等導入支援事業についてまとめました。
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この記事の目次
ガソリンスタンドに求められる役割とは
全国のガソリンスタンドは、近年、コロナ禍による外出自粛などの影響で、急激に減少しています。近隣にガソリンスタンドがないことで、自家用車や農業機械への給油や冬場の灯油配送に支障をきたすといったいわゆる「SS (サービスステーション) 過疎地問題」も深刻化しています。これは、ほかに移動手段を持たない高齢者にとっては特に大きな問題です。
出典:資源エネルギー庁
いっぽうで2050年の脱炭素化に先立ち、2030年に設定された二酸化炭素排出量46%の削減までは10年を切っています。
都内の温室効果ガス排出量の約 90%は二酸化炭素で、そのほとんどがエネルギーの消費に伴うエネルギー起源 CO2です。これらの排出量のうち、6割は中小規模事業所から排出されます。都では、中小規模事業所における省エネ・低炭素化が喫緊の課題となっています。
ガソリンスタンドには暮らしを支える拠点としての役割と、環境問題への配慮が同時に求められています。この両立は、厳しい経営状況が続くガソリンスタンドにとって容易なことではありません。
環境に配慮したエネルギーステーションづくりに向けた設備等導入支援事業は、こうした経済的な課題を支援するための取り組みです。
環境に配慮したエネルギーステーションづくりに向けた設備等導入支援事業とは
環境に配慮したエネルギーステーションづくりに向けた設備等導入支援事業は、専門家の派遣とその助言をもとにした設備導入経費の一部を助成するものです。
まずはその目的や内容について、見ていきましょう。
【目的】
本事業は、エネルギー供給拠点であるガソリンスタンドが助成を受けられる取組です。エネルギー危機への対応や脱炭素化に向けた取組を加速する観点から、ガソリンスタンドを環境配慮型のマルチエネルギーステーションへ転換していくための支援を行います。
【概要】
支援の内容は、以下の2つです。
①専門家派遣の実施
事業者の申込に応じ、省エネ・経営に関する専門家がそれぞれ訪問し、既存設備や事業の調査、助言等が実施されます。
➁省エネルギー設備の導入に係る経費の助成
派遣された専門家による提案に基づき、実施される省エネルギー設備導入の経費の一部が助成されます。
専門家派遣
専門家派遣を希望する事業者は、必要書類を提出し、申し込みを行います。その申し込みに応じて、随時専門家が派遣されます。詳細は以下のとおりです。
対象事業者
対象事業者は、以下の①~⑤の条件を満たす必要があります。
①中小企業者等であること
②申込時点で、以下のいずれかに該当すること
・法人の場合:東京都内に登記簿上の事業所を有している
・個人事業主の場合:東京都内で開業届を提出または確定申告を行っており、東京都内で事業を営んでいる
③本事業への申込は1事業所につき1回であること
④申込時に申込に必要な書類をすべて提出すること
⑤暴力団関係者、風俗関連事業者等、支援先として適切でない業態を営む事業者ではないこと
【実施場所】
実施場所は、都内のガソリンスタンドです。
【派遣回数】
省エネ・経営に関する専門家の派遣は、1事業所あたりそれぞれ1回以上実施されます。2回が上限です。
【派遣費用】
専門家の派遣は、無料で受けられます。
助成金支援
次に、助成金支援についてみていきます。
専門家の助言を受けて導入される設備は、その費用の一部が助成されます。詳細は以下のとおりです。
対象事業者
対象となるのは、以下のいずれかの事業者です。
①中小企業者等
②その他の事業者
中小企業者等と契約により共同して助成事業を実施しようとするリース等事業者およびESCO事業者で、次のすべてを満たすもの
- 助成事業の工事に着手する日までに、ファイナンスリース契約・割賦販売の契約・シェアードセイビング方式のESCO契約を締結する
- 上記の契約におけるリース料などについて、助成金の交付額に相当する金額が減額されていること
- ESCO事業者においては、東京都地球温暖化対策ビジネス事業者に登録している事業者であって、1年以上継続して実施するESCO契約で実績を有すること
なお、ESCO契約とは、省エネルギー量の保証、費用負担などについて明記されたパフォーマンス契約のことです。
また、以下の場合は助成対象外です。
- 暴力団関係者等公的資金の交付先として社会通念上適切でない
- 他の団体等から補助金等の交付を受けている、または受けることが決まっている
- 過去に税金の滞納がある
- 刑事上の処分を受けている
- 国や地方公共団体の出資を受けている
対象事業
助成対象事業は、専門家派遣を受け、その提案に基づきガソリンスタンドに省エネルギー設備を導入するものです。ただし、専門家から提案された全ての設備を助成金交付申請対象とする必要はありません。
申請対象設備の最終的な決定は、申請する事業者が判断します。
※省エネルギー設備の例
・空調機の高効率化
・洗車機の省エネ化
・店名サインや屋内照明のLED化 など
対象経費
助成の対象となる経費は、以下の①~③です。
①設計費
助成対象設備の導入等に必要な経費
②設備費
対象設備の導入に関する、購入・製造・据付等に必要な経費など
③工事費
労務費、材料費など、対象事業の実施に不可欠な配管・配電等の工事に必要な経費
なお、以下の経費は助成対象外です。
- 本事業と直接関係のない設計に要した費用
- 必要不可欠とは言えない付属機器等
- 安全対策費、土地の取得・賃貸・管理等に要する費用、道路使用許可申請費用など
- 申請書類等の作成費用、各種保険など
助成金額
助成率と上限額は、以下のとおりです。
助成率:2/3
助成上限額:2,500万円
申請方法
申請は郵送か、電子メールにて行います。
申請スケジュールは以下のとおりです。
①専門家派遣
【申請】
令和4年11月17日(木)から令和5年2月28日(火)まで
【派遣】
随時
②助成金
【申請】
令和4年11月30日(水)から令和5年3月31日(金)まで
【交付決定】
随時
郵送での申請方法
申請書類の提出を郵送で申請を行う場合は、以下の手順で書類をファイルにまとめます。
- 申請書類一式をA4サイズまたはA3 (折りたたんで綴じる) で片面印刷します
- 書類は、A4ファイルに綴じてください
- ファイルの表紙・背表紙には、助成対象事業名と助成対象事業者名を記載します
- ファイルに綴る各書類には、インデックス付きの中仕切りを挿入します
- 申請書類は、「申請書類チェックリスト」の順に綴ります
- 紙の書類のほか、申請様式書類一式をデータでも提出してください
申請書類
申請に必要な提出書類は、以下の①~⑬です。
①助成金交付申請書
②助成事業経費内訳書
③助成事業実施計画書
④商業・法人登記簿謄本
■中小企業団体・中小企業等協同組合の場合
定款および組合名簿等添付
■個人事業主の場合
開業届
⑤建物登記簿謄本
⑥賃貸借契約書
⑦納税証明書
■建物の共有者が法人の場合
共有者のものを含む
⑧工事見積書又は入札等の証憑
⑨パフォーマンス契約書案
⑩サービス料金計算書案
⑪リース(または割賦販売)契約書案
⑫リース料金(または割賦販売価格)計算書案
⑬その他公社が必要と認める書類
なお、計画変更時や工事完了時や交付請求時には、別途書類提出が必要です。
環境に配慮したエネルギーステーションづくりに向けた設備等導入支援事業活用のメリット
新型コロナウイルス流行によるガソリン需要の減少、後継者不足、さらに原油価格高騰と、ガソリンスタンドを取り巻く状況は厳しさを増しています。さらに世界的な脱炭素化に向けた動きは、ガソリン以外のエネルギーへの転換も求めています。
エネルギー供給拠点としてのガソリンスタンドは、いま、大きな変革の時期を迎えています。
厳しい経営状況に耐えながらの改革には、国や自治体の助成金を上手に活用しましょう。環境に配慮したエネルギーステーションづくりに向けた設備等導入支援事業では、助成金だけでなく、専門家の助言も受けられることも特徴のひとつです。
これまで予算的な課題から着手できずにいた省エネ化を進め、時代の変化に対応したガソリンスタンドになるためには、こうした支援が大きな力になるはずです。
まとめ
世界的に不安定な社会情勢の中、多くの企業は経済の回復と新たな需要への対応という課題を抱えています。さらに環境問題への対応も、企業が社会的責任を負わねばならない問題のひとつです。
こうしたなか、政府や自治体が実施する助成事業は、中小企業にとって課題解決の一助となります。環境に配慮したエネルギーステーションづくりに向けた設備等導入支援事業を活用し、困難な時期を乗り越えていきましょう。