補助金や助成金の不正受給は、故意や過失にかかわらず、該当してしまうことがあります。
残念なことですが、新型コロナウィルス関連の補助金や助成金における不正受給も全国で発覚しました。特に国税局職員までもが不正受給に手を染めていたという「持続化給付金」では、令和8年3月6日時点で給付金を不正に受給した者として2,512者が認定され、不正受給の総額は25億6,391万0934円に上ります。
本記事では「不正受給」について解説します。不正受給が発覚する理由やペナルティ、対処法や事例などもご紹介しますので、補助金や助成金の申請を検討している場合は、参考にしてください。
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この記事の目次
不正受給とは?
不正受給とは、補助金や助成金の対象者ではないのに、虚偽の申請をすることを指します。注意したいのが、実際に補助金や助成金を受給したかどうかにかかわらず、事実とは異なる虚偽申請をすること自体が「不正受給」に該当する点です。不正受給には、虚偽の数字や金額、書類の捏造や改変などが挙げられます。
不正受給が発生する理由
不正受給の発生には、いくつかの理由があります。ここでは、主な理由について解説します。
・制度が不完全なまま実施されることもあるため
・不正行為が発見されにくい場合もあるため
利益を多く得たいと考えるため
不正受給は、自分の利益を少しでも多く得ようとして発生することが少なくありません。この理由は、特に個人によるもので「経済的な不安を解消したい」、「少しでも多くの収入を得たい」などといった思いから、虚偽申請をしてしまうことから発生します。
制度が不完全なまま実施されることもあるため
補助金や給付金は、緊急措置として決定する場合や事前に支給時期が定められていることなどから、迅速な対応や給付が求められます。そのため、制度に欠陥があるなど不完全な状態で施行されることもゼロではありません。
新型コロナウィルス関連の給付金においては、「持続化給付金」や「家賃支援給付金」、「事業復活支援金」など、さまざまな制度で不正受給が発生してしまいました。
経済産業省では、これらの不正受給に関する調査を行っており、実際に多くの企業が不正受給の認定を受けています。
| 制度名 | 認定者数 | 不正受給総額 |
|---|---|---|
| 持続化給付金 ※2026年3月6日時点 | 2,512者 ※そのうち1841者は加算金や延滞金を納付済 | 25億6391万0934円 |
| 家賃支援給付金 ※2025年10月3日時点 | 132者 ※そのうち65者は加算金や延滞金を納付済 | 3億8128万3098円 |
| 事業復活支援金 ※2025年3月3日時点 | 4者 ※そのうち3者は加算金や延滞金を納付済 | 246万0300円 |
参照:『持続化給付金の不正受給の認定及び公表について』経済産業省
参照:『家賃支援給付金の不正受給者の認定及び公表について』経済産業省
参照:『事業復活支援金の不正受給者の認定及び公表について』経済産業省
ただし、調査を開始する前に自主返還した場合は、原則として加算金や延滞を徴収しないとしています。
最新状況として公開されている2026年2月28日時点の返還状況は、以下のとおりです。
| 制度名 | 返還申し出件数 | 返還済件数 | 返還済金額 |
|---|---|---|---|
| 持続化給付金 | 25,317件 | 27,958件 | 約203億5,200万円 |
| 家賃支援給付金 | 1,407件 | 1,371件 | 約12億3,300万円 |
| 事業復活支援金 | 1,359件 | 2,598件 | 約9億5,800万円 |
参照:『不正受給及び自主返還について(持続化給付金・家賃支援給付金・一時支援金・月次支援金・事業復活支援金)』経済産業省
不正行為が発見されにくいため
不正受給は、不正行為や虚偽申請自体が発見されにくい点も否めません。特に、複雑な内容の給付金や助成金においては、申請者に専門的な知識が不足していたり、監査が適切に実施されなかったりする場合、意図的でなくても不正受給にもつながってしまうことがあります。
不正受給が発覚する状況
不正受給が発覚するのは、主に以下の状況が挙げられます。
・監査
・告発や情報提供
・照合や検証
審査や実地調査
補助金や助成金では、担当者によって申請内容と実際の状況に相違や矛盾点がないか確認されます。また、審査官や監査官による抜き打ちの実地調査によって、さまざまな書類の整合性が細かく検証されることもあります。
監査
監査は、国や地方自治体によって支給された補助金などが適切に使用されたか(事業が適切に実施されたか)どうかを確認する手続きです。国の会計検査院や地方自治体の監査部門などが実施します。
告発や情報提供
不正受給について内部からの告発によって発覚することがあります。また、企業や個人に関する外部からの情報提供が行われたことから不正受給が疑われ、発覚につながるケースも少なくありません。
照合や検証、実地調査
補助金や助成金では、申請された内容について、過去における他の補助金に関するデータと照合したり検証することがあります。これにより、同一経費などによる二重申請などがないかなどが確認されます。
不正受給に対するペナルティ
補助金や助成金の不正受給には、さまざまなペナルティが設けられています。
2019年4月には、助成金の不正受給が厳罰化されました。そのため、不正受給をしてしまうと以下のペナルティを科される可能性があります。
・5年間の支給停止になる
・刑事告発される可能性がある
・不正受給を公表される可能性がある
・不正受給の関与者も連帯責任になる
全額返金と2割相当の加算金が科される
不正受給が発覚した場合、全額返還が命じられます。さらに、不正受給した金額の2割相当の加算金と返還完了日までの延滞金を支払わなければなりません。延滞金は、不正受給の翌日から返還完了日までとし、年3%などの利息が付けられます。
※利息は制度によって異なります
5年間の支給停止になる
助成金の不正受給が決定すると、その日から5年間はすべての助成金の受給資格が停止します。全額返還されていない場合は、さらに期間が延長されることがあります。
刑事告発される可能性がある
悪質な不正受給は、刑事告発され、詐欺罪に問われる可能性もあります。詐欺罪が適用されると、拘禁刑や罰金が科される恐れがあることも理解しておかなければなりません。
不正受給を公表される可能性がある
不正受給が発覚すると、労働局や経済産業省のウェブサイトなどに「事業所名」や「代表者名」、「不正受給の内容」等が公表されることもあります。
不正受給の関与者も連帯責任になる
不正受給について社会保険労務士やコンサルタント、機関等が関わっていた場合、関与者も連帯責任を負うことになります。
不正受給をしてしまった際の対処法
不正受給をしてしまった際の対処法は、以下の3点です。
・専門家への相談
・再発防止策の実施
不正受給をしてしまった際は、判明次第すぐに返金手続きを開始しましょう。迅速で自主的な返還によってペナルティを最小限に抑えられる可能性があります。法的な問題が生じた場合は、弁護士や社会保険労務士など専門家に相談することも大切です。
また、事務的な対応とともに再発防止策の実施も必要です。特に、過失による不正受給の場合は今後同様のケースが起こらないとは言い切れません。厳格なルールやチェック体制などを講じましょう。
助成金申請の審査が厳しくなってきています
近年では、ハローワークや労働局などによる調査が厳しくなってきています。審査時にはチェックされることがなかったとしても、後から調査が入ることもあるため、前提として正しい労務管理、帳簿の運用を行ってください。
以下(1)~(6)については、申請前に一度確認しておきましょう。
(2)社会保険・労働保険への加入をしているか
(3)賃金が最低賃金を下回っていないか
(4)時間外手当が支払われているか
(5)休業手当の支払い状況に矛盾がないか
(6)出勤簿・賃金台帳等の裏付けとなる関係書類があるか など
参照:会計検査院 雇用保険の雇用調整助成金に係る事業所訪問調査の実施について
参照:厚生労働省 雇用関係助成金支給要件
不正受給の事例
最近では、「助成金の受給手続きに詳しい、より高額な助成金を受けられる方法を知っている」と主張する一部の経営コンサルタント等が、雇用関係の助成金申請に関して、事業主に対して不正受給にあたる助言をする例が発生しています。どのような内容か事例を確認しましょう。
事例1 領収書水増し発行
事業主Aは、助成金申請にあたり、「事業所内保育施設建設にかかった費用の領収書コピー」が必要でした。助成金申請手続きに詳しいという外部の者から「他の事業主は、みんなこのように賢くやっている」との助言を受けて、建設会社へ依頼し、実際に支払った金額よりも高額な額面の領収書を発行してもらい、本来受給できる金額より多額の助成金の支給を受けますが、後日、会計検査院の調査において不正受給の事実が明らかになりました。
事例2 架空書類作成
事業主Bは、助成金申請にあたり、「対象労働者の出勤簿の写し」の提出が必要でした。
しかし、もともと出勤簿を作成していなかったため、助成金申請手続きに詳しいという外部の者が出勤簿を作成しその写しを添付書類として支給申請をしてしまいましたが、後日、記載内容が実際の出勤状況と相違していることが明らかになってしまいました。
参考:厚生労働省 実態と異なる書類等を作成して助成金を受給しようとすることは犯罪です
不正受給を防ぐためのポイント
不正受給を防ぐためのポイントを解説します。
情報を適切に管理
不正受給を防ぐためには、申請に必要とされる情報の適切な管理が大切です。たとえば個人が給付金を申請する際は収入状況などが必要であったり、企業が補助金を申請する際には業績や事業計画を求められたりします。個人・企業を問わず、申請の際に正しい情報を提出できるようにしておきましょう。
申請手続きを正しく理解
不正受給を防ぐためには、正しい申請手続きを理解することが重要です。とくに企業向けの補助金や助成金においては、複雑な制度になっていることも少なくないため、最新の公募要領を確認することが大切です。そもそも申請手続きに不備があると、受理されないケースもあります。不明点がある場合は、担当窓口に問い合わせましょう。
不正受給の指摘を受けた際は迅速に対応
不正受給の指摘を受けた場合、まずは事実確認を行います。指摘された内容に間違いがある場合などは、客観的な証拠を用意して説明することが大切です。万が一、不正受給に該当していることがわかった場合は、受給額の迅速な全額返還に努めましょう。
不明な点は専門家に相談
補助金や助成金など、内容の理解や申請手続きに不安がある場合、申請前に弁護士や社会保険労務士などといった専門家に相談することも大切です。法律に基づいた正しい知識に基づいたサポートや助言があることで、安心して制度を利用できるでしょう。また、不正受給などのトラブルが生じた際も、適切な対処法などを示してくれます。
補助金や助成金の不明点は窓口へ相談しよう
不正受給には、
・休業日に業務を行っていたにもかかわらず休業を実施したと偽る
・実際には雇用していないにもかかわらず雇用していたことにする
・実際には実施しなかった社員研修を実施したかのように装う
・無期雇用の契約書を有期雇用に勝手に書き換える
などの事例もあります。
「申請に必要な書類を作っていない」「紛失してしまった」など、支給申請で不明な点がある場合は、支給申請先の都道府県労働局雇用均等室へ相談ができます。
そのほか、補助金や助成金には窓口があります。不明点を残したまま申請するのではなく、こうした窓口を活用するのも不正受給を防ぐ方法のひとつです。
まとめ
補助金や助成金の不正受給は、故意・過失にかかわらず防がなければなりません。そのため、日頃の適切な情報管理や申請手続きを正しく理解することが大切です。
また、万が一不正受給に該当した場合でも、直ちにペナルティ対象にならないケースもあります。まずは冷静な事実確認と状況に応じて全額返還ができるよう、迅速に対処しましょう。
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