東京都は、未来の東京を切り拓くための羅針盤となる、「『未来の東京』戦略」を令和3年(2021年)3月に策定しました。そこには、2040年代の東京の姿の実現に向け、2030年に向けて取り組むべき21の戦略と、戦略を具体化する122の推進プロジェクトが盛り込まれています。
今回は、東京が直面している課題に向き合うための未来の東京戦略と、この戦略で取り組む事業の一つである「外国人起業家の資金調達支援事業」について調べてみました。
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この記事の目次
未来の東京戦略とは
現在、東京が抱える課題に正面から向き合い、目指すべきビジョンとその実現に向けた戦略を明らかにしたのが、未来の東京戦略です。
未来の東京をつくるための方向性として、次の3つが示されています。
1. 50年、100年先も豊かさにあふれる持続可能な都市をつくる |
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・コロナ禍から持続可能な回復を遂げる(サステナブル・リカバリー) ・自然と便利を兼ね備えた都市づくりを進める ・グリーンシフトで成長産業と新サービスを育成する 等 |
2.「新しいつながり」を紡ぎ「新しい暮らし」を追求する |
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・リアルとバーチャルで多様な人がつながる社会をつくる ・働き方や暮らしの在り方を東京から発信する ・多様な人のつながりによってイノベーションを生み出す 等 |
3.「爆速」デジタル化で世界からの遅れを乗り越え、国際競争に打ち勝つ |
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・DXの推進で「未来の東京」を切り拓く ・スタートアップの力で変革を加速させる ・アジアで一番強い経済・金融都市をつくる 等 |
また、目指すべきビジョンとは、おおむね四半世紀先である2040年代を念頭に、目指す未来の東京の姿を提示したものです。
出典:「未来の東京」戦略
20のビジョンは、「人が輝く」を中心に、「安全安心」「世界をリードする」「美しい」「楽しい」「オールジャパンで進む」を土台とした東京の姿になっています。人が輝く東京、安心安全な東京、世界をリードする東京……そんな都市が築けたら、未来の東京はとても魅力ある場所になっていることでしょう。では、一体どのようにしてこのビジョンを現実のものにしていくのでしょうか。
2030年に向けた戦略と推進プロジェクト
上記ビジョンを実現するために提示されたのが、2030年に向けた戦略と、戦略実行のための推進プロジェクトです。
【20+1の「戦略」】
新型コロナに打ち克つ取り組みを戦略0に位置付け、それ以外の20の戦略とあわせて、21の戦略が示されています。2030年に向けて取り組むべき戦略は以下のとおりです。
戦略0 | 感染症に打ち克つ戦略 |
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戦略1 | 子供の笑顔のための戦略 |
戦略2 | 子供の「伸びる・育つ」応援戦略 |
戦略3 | 女性の活躍推進戦略 |
戦略4 | 長寿(Chōju)社会実現戦略 |
戦略5 | 誰もが輝く働き方実現戦略 |
戦略6 | ダイバーシティ・共生社会戦略 |
戦略7 | 「住まい」と「地域」を大切にする戦略 |
戦略8 | 安全・安心なまちづくり戦略 |
戦略9 | 都市の機能をさらに高める戦略 |
戦略10 | スマート東京・TOKYO Data Highway戦略 |
戦略11 | スタートアップ都市・東京戦略(詳細は後述します) |
戦略12 | 稼ぐ東京・イノベーション戦略 |
戦略13 | 水と緑溢れる東京戦略 |
戦略14 | ゼロエミッション東京戦略 |
戦略15 | 文化・エンターテインメント都市戦略 |
戦略16 | スポーツフィールド東京戦略 |
戦略17 | 多摩・島しょ振興戦略 |
戦略18 | オールジャパン連携戦略 |
戦略19 | オリンピック・パラリンピックレガシー戦略 |
戦略20 | 都政の構造改革戦略 |
【122の推進プロジェクト】
さらに、戦略実行のため、122の推進プロジェクトが計画されています。未来の東京戦略では推進プロジェクトごとに、取り組み内容やスキームが分かりやすく示されています。未来の東京戦略は、東京都政策企画局のサイトから、デジタルブック形式で読むことができますので、興味のある方はご一読ください。
参考:「未来の東京」戦略
戦略11:スタートアップ都市・東京戦略
スタートアップとは、短期間で急成長する企業のことで、社会に新たな価値をもたらすイノベーションを起こすものとして期待されています。後ほどご紹介する「外国人起業家の資金調達支援事業」は、戦略11のスタートアップ都市・東京戦略に関係するものです。
出典:「未来の東京」戦略
東京では、世界経済の潮流であるグリーントランスフォーメーション(GX)・デジタルトランスフォーメーション(DX)等を生み出す「スタートアップの育成」といった、世界をリードする都市へと進化するための施策を進めていく必要があります。なぜなら、デジタル化や脱炭素の動き、国際金融センターなど、東京をとりまく厳しい環境に目を向けなければ、世界の競争から大きく取り残されてしまう可能性があるからです。
戦略11のスタートアップ都市・東京戦略には、以下4つのプロジェクトがあります。
- イノベーション・エコシステム形成プロジェクト
- スタートアップによる行政課題解決プロジェクト
- 多様なスタートアップ育成プロジェクト
- 東京発ネクストユニコーン創出プロジェクト
多様なスタートアップ育成プロジェクト
4つのプロジェクトのうちの一つ、「多様なスタートアップ育成プロジェクト」では、起業家教育・大学連携、起業マインドの醸成といったシード・ベンチャーの掘り起こしから、成長ステージに応じた経営支援・資金調達支援まで、多様なスタートアップを育成するための戦略的な取り組みを行います。「外国人起業家の資金調達支援事業」はこのプロジェクトに属するものです。
2030年への展開として、起業が身近な選択肢となる環境をつくることで、女性・学生起業家・シニア・外国人など、様々な主体による起業の実現と、都内開業率の向上を目指します。
いま、脱炭素やデジタルを基軸とした世界の潮流は巨大化しており、スタートアップがその流れを加速させているとして、注目を集めています。こういった国際競争の新たな局面をとらえ、東京が世界をリードする経済・金融都市へ進化するためにも「スタートアップ都市・東京戦略」は重要な取り組みといえるでしょう。
外国人起業家の資金調達支援事業とは
令和4年6月28日、外国人起業家資金調達支援事業の受付が始まりました。金融機関からの融資と融資実行前後の経営支援を組み合わせて、創業5年未満の外国人起業家を対象とした資金調達支援を行うプロジェクトです。本事業で融資を申し込むには、東京都の事業計画認定を受ける必要があります。
【支援対象者の主な要件】
国際競争力を強化し、東京圏に国際的な経済活動の拠点を形成するという東京都の計画に基づき、東京で長く事業を営む意欲のある方が対象になります。支援対象者の主な要件は以下のとおりです。
- 東京都(政策企画局)において、事業計画の認定を受けている
- 日本国内において創業した日から5年未満
- 事業活動の制限を受けていない在留資格を有している (※)
- 東京都内に本店又は主たる事務所を置く法人の代表者
- 事業の形態は法人
(※)在留資格の具体例
永住者/特別永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、経営・管理、高度専門職の一部
融資条件 | |
融資限度額 | 1,500万円以内(運転資金のみは750万円以内) |
返済期間 | 10年以内(うち据置期間3年以内) |
融資利率 | 固定金利2.7%以内 |
保証人 | 法人代表者(原則)、または不要 |
担保 | 無担保 |
【取扱金融機関】
株式会社きらぼし銀行、第一勧業信用組合
【支援の流れ】
1.事業計画の作成・認定
2.支援申し込み
3.起業サポート
4.融資審査、融資実行
5.経営サポート
出典:外国人起業家募金支援リーフレット
まとめ
今回は、未来の東京戦略の内容と、外国人起業家の資金調達支援事業についてご紹介しました。この外国人起業家のための支援事業は、数ある未来の東京戦略のプロジェクトのうち、多様なスタートアップを育成するための取り組みの一つとして行われています。
「いま、なぜ外国人起業家の資金調達支援なのか?」と疑問を持つ方も多いかもしれません。スタートアップが社会経済に与える影響が増大し、グリーン・デジタル分野における役割期待も大きいことから、こういった支援事業の積み重ねで、外国人を含むさまざまな主体が将来東京で起業する環境を作り出す狙いがあるものとみられます。
なお、資金調達サポートを希望する外国人起業家は、まず事業計画作成から始める必要があります。事業計画作成・認定申請に関するお問い合わせは、ビジネスコンシェルジュ東京(赤坂窓口)まで、お願いいたします。