建設業・運送業・医師・砂糖製造業にも時間外労働の上限規制が適用されました。規制への対応は進んでいますか?
働き方改革推進支援助成金の「業種別課題対応コース」は、設備投資や制度整備にかかる費用の最大4/5を助成する制度です。2026年度は予算が前年度比で増額され、新たに「所定外労働時間の削減」が成果目標に加わるなど、使いやすさが広がっています。
申請できる業種や助成額・手続きの流れを、2026年度の最新情報をもとに解説します。
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この記事の目次
業種別課題対応コースとは
働き方改革推進支援助成金の「業種別課題対応コース」は、時間外労働の上限規制が適用されている業種や、長時間労働が課題となっている特定業種の中小企業事業主を対象とするコースです。
生産性を向上させながら、時間外労働の削減・所定外労働の削減・週休2日制の推進・勤務間インターバル制度の導入・医師の働き方改革推進などに向けた環境整備を行う事業主を支援します。
具体的には、取組の実施にかかる経費の一部が、成果目標の達成状況に合わせて支給されます。
時間外労働の上限規制とは
2019年(中小企業は2020年)から、残業時間に法的な上限(原則月45時間・年360時間)が設けられました。さらに、特殊な事情を抱えるとして猶予されていた建設業・運送業・医師・砂糖製造業にも、2024年4月から同じ規制が適用されています。業種別課題対応コースは、この規制への対応を費用面から後押しする助成金です。
支給対象となる事業主
以下の要件をすべて満たす中小企業事業主が対象です。
①労働者災害補償保険の適用事業主である
②交付申請時点で、成果目標の設定に向けた条件を満たしている
③交付申請時点で、全ての対象事業場で年5日の年次有給休暇取得に向け就業規則等を整備している(年休管理簿の作成も必須)
④業種・規模が以下のいずれかに該当する
| 業種 | 要件 |
|---|---|
| 建設業(工作物の建設事業およびこれに関連する事業) | 資本金3億円以下 または 常時使用労働者300人以下 |
| 運送業(自動車運転業務に従事する労働者を雇用) | 同上 |
| 砂糖製造業(鹿児島県・沖縄県で砂糖を製造) | 同上 |
| 情報通信業(日本標準産業分類「G 情報通信業」) | 同上 |
| 宿泊業(日本標準産業分類「75 宿泊業」) | 同上 |
| 病院等(医師が勤務する病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院) | 常時使用労働者300人以下 |
支給対象となる取組
以下の取組のうち1つ以上を実施することが条件です。
②労働者への研修、周知・啓発
③社会保険労務士・中小企業診断士などの外部専門家によるコンサルティング
④就業規則・労使協定等の作成・変更
⑤人材確保に向けた取組
⑥労務管理用ソフトウェアの導入・更新
⑦労務管理用機器の導入・更新(例:建設業=測量杭打ち機・重機用センサー、運送業=積載量の多い車両・洗車機、病院=自動精算機・内視鏡自動洗浄機)
⑧デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
⑨労働能率の増進に寄与する設備・機器等の導入・更新(※パソコン・タブレット・スマートフォンは原則対象外)
成果目標の設定
支給対象の取組は、以下の7つの成果目標のうち1つ以上を選び、その達成を目指して実施します。業種によって選択できる目標が異なります。
7つの成果目標と選択可能業種
| 成果目標 | 選択可能な業種 |
|---|---|
| ①時間外・休日労働の上限設定 | 全業種 |
| ②所定外労働時間の削減(★2026年度より新設) | 全業種 |
| ③年次有給休暇の計画的付与の導入 | 全業種 |
| ④時間単位の年次有給休暇および特別休暇の導入 | 全業種 |
| ⑤勤務間インターバル制度の導入 | 全業種 |
| ⑥週休2日制の推進 | 建設業のみ |
| ⑦医師の働き方改革の推進 | 病院等のみ |
※ ①と②は同時選択できません。
各成果目標の概要
①時間外・休日労働の上限設定
36協定における時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下または月60時間超~月80時間以下に上限を設定して所轄労働基準監督署長に届け出ます。なお、過去に本目標で受給した実績がある場合(2回目以降)は、前年度の水準を維持または短縮することが条件となり、前年度より時間外・休日労働時間数を増やした場合は選択できません。
②所定外労働時間の削減(2026年度新設)
交付申請後から事業実施予定期間の終期までの期間において、いずれか1か月における所定外労働時間数を前年同月比で労働者1人あたり5時間以上削減します。
③年次有給休暇の計画的付与の導入
全ての対象事業場で、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入します。
④時間単位の年次有給休暇および特別休暇の導入
全ての対象事業場で、時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ病気休暇・教育訓練休暇・ボランティア休暇など特別休暇のいずれか1つ以上を新たに導入します。
⑤勤務間インターバル制度の導入
全ての対象事業場で、一定時間以上の勤務間インターバル制度を新たに導入します(9時間以上または10時間以上。業種・状況により異なります)。
⑥週休2日制の推進【建設業のみ】
全ての対象事業場で、4週5日以上に所定休日を増加させます。
⑦医師の働き方改革の推進【病院等のみ】
以下の2点を実施します。
・労務管理体制の構築(労務管理責任者の設置、管理者層の理解促進、副業・兼業医師がいる場合の体制整備)
・医師の労働時間の実態把握
助成額
取組の実施に必要な経費の一部を、成果目標の達成状況に応じて支給します。
支給額は以下のいずれか低い金額となります。
(2)対象経費の合計額 × 補助率3/4
※ 常時使用する労働者数が30人以下かつ設備・機器等の取組(取組6~9)を実施し、所要額が30万円を超える場合は補助率が4/5に引き上げられます。
成果目標ごとの上限額
①時間外・休日労働の上限設定【初回選択の場合】
| 事業実施前(36協定の時間外・休日労働時間数) | 月60時間以下に設定 | 月60時間超・80時間以下に設定 |
|---|---|---|
| 月80時間超 | 250万円 | 150万円 |
| 月60時間超・80時間以下 | 200万円 | ― |
①時間外・休日労働の上限設定【2回目以降の場合】
| 達成内容 | 上限額 |
|---|---|
| 前年度水準を月60時間超80時間以下または月60時間以下の範囲で維持 | 25万円 |
| 前年度から月60時間以下にさらに短縮 | 100万円 |
②所定外労働時間の削減(2026年度新設)
| 削減時間数 | 上限額 |
|---|---|
| 労働者1人あたり5時間以上10時間未満 | 50万円 |
| 労働者1人あたり10時間以上 | 100万円 |
③年次有給休暇の計画的付与の導入
25万円
④時間単位の年次有給休暇および特別休暇の導入
25万円
⑤勤務間インターバルの導入
【建設業・砂糖製造業・情報通信業・宿泊業】
| 交付申請前の状況 | 9時間以上11時間未満 | 11時間以上 |
|---|---|---|
| 導入していない(新規導入) | 120万円 | 150万円 |
| 既に導入(9時間以上)かつ労働者の半数以下に適用(適用範囲拡大) | 60万円 | 75万円 |
| 既に導入(9時間未満)(時間延長) | 60万円 | 75万円 |
【運送業等・指定病院等】
| 交付申請前の状況 | 10時間以上11時間未満 | 11時間以上 |
|---|---|---|
| 導入していない(新規導入) | 150万円 | 170万円 |
| 既に導入(10時間以上)かつ労働者の半数以下に適用(適用範囲拡大) | 75万円 | 85万円 |
| 既に導入(10時間未満)(時間延長) | 75万円 | 85万円 |
【指定病院等以外の病院等】
| 交付申請前の状況 | 9時間以上10時間未満 | 10時間以上11時間未満 | 11時間以上 |
|---|---|---|---|
| 導入していない(新規導入) | 120万円 | 150万円 | 170万円 |
| 既に導入(9時間以上)かつ医師の半数以下に適用(適用範囲拡大) | 60万円 | 75万円 | 85万円 |
| 既に導入(9時間未満)(時間延長) | 60万円 | 75万円 | 85万円 |
⑥週休2日制の推進【建設業のみ】
事業実施前後の4週あたり休日数の増加に応じて、1日増加ごとに25万円(最大100万円)。
⑦医師の働き方改革の推進【病院等のみ】
50万円
賃金引上げ加算
成果目標に賃金額引上げを加えた場合、以下のとおり上限額に加算されます。引上げ率は3%以上・5%以上・7%以上(2026年度から7%区分を新設)の3段階で、引上げ人数の上限は30人です。
常時使用する労働者数が30人超の場合
| 引上げ率 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11~30人 |
|---|---|---|---|---|
| 3%以上 | 6万円 | 12万円 | 20万円 | 1人あたり2万円(上限60万円) |
| 5%以上 | 24万円 | 48万円 | 80万円 | 1人あたり8万円(上限240万円) |
| 7%以上 | 36万円 | 72万円 | 120万円 | 1人あたり12万円(上限360万円) |
常時使用する労働者数が10人以上30人以下の場合
| 引上げ率 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11~30人 |
|---|---|---|---|---|
| 3%以上 | 6万円 | 12万円 | 20万円 | 1人あたり2万円(上限60万円) |
| 5%以上 | 48万円 | 96万円 | 160万円 | 1人あたり16万円(上限480万円) |
| 7%以上 | 72万円 | 144万円 | 240万円 | 1人あたり24万円(上限720万円) |
常時使用する労働者数が10人未満の場合
| 引上げ率 | 1~3人 | 4~6人 | 7~9人 |
|---|---|---|---|
| 3%以上 | 6万円 | 12万円 | 20万円 |
| 5%以上 | 60万円 | 120万円 | 200万円 |
| 7%以上 | 90万円 | 180万円 | 300万円 |
割増賃金率引上げ加算(2026年度新設)
2026年度から、割増賃金率の引上げを成果目標に加えることができるようになりました。以下の内容で上限額に加算されます。
| 内容 | 加算額 |
|---|---|
| 月60時間以内の時間外労働に係る割増賃金率を5%以上引き上げる | 25万円 |
| 月45時間超60時間以内の時間外労働に係る割増賃金率を5割以上とし、かつ時間外労働を1人あたり10時間以上削減する | 75万円 |
| 上記の両方を達成する | 100万円 |
申請方法と提出書類
本制度の主な申請手順は、以下のとおりです。
①交付申請書を提出
②交付決定通知を受理
③事業実施
④支給申請書を提出
⑤支給決定通知を受理
⑥助成金受取
申請は最寄りの都道府県労働局雇用環境・均等部(室)で行います。以下の書類を持参または郵送で提出してください。
・事業実施計画
・36協定届
・労働時間が確認できる書類(賃金台帳、タイムカード、出勤簿など)
・就業規則の写し(年次有給休暇管理簿)
・対象労働者の交付申請前1か月分の賃金台帳の写し・労働時間確認書類
・見積書
申請スケジュール
2026年度の申請期間は、令和8年4月13日から2026年11月30日午後5時までとなっています。
厚生労働省の令和8年度予算概算要求額は101億円(前年度92億円から増額)となっており、助成金は継続・拡充される見込みです。予算が上限に達し次第、期日前に受付が締め切られる場合もあるため、早めの申請をお勧めします。
まとめ
2026年度の業種別課題対応コースでは、②所定外労働時間の削減(新成果目標)の追加や割増賃金率引上げ加算の新設、賃金引上げ加算の7%区分の新設など、活用できる支援の幅が広がっています。
少子高齢化による人手不足が深刻化する中、生産性向上と働きやすい職場環境の整備は、事業継続のうえで欠かせない課題です。規制対応のための費用に悩む事業主の方は、ぜひ今年度中に申請を検討してみてください。
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