日本においてクリーンエネルギー自動車の普及を目指す取り組みとして挙げられるのが、「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」です。この補助金は、2050年のカーボンニュートラル達成に必要な「日本の運輸部門のCO2排出量削減」を目的として展開されています。
令和5年度の補正予算案によって、経済産業省から「関連予算約1,291億円」が計上されています。令和4年度補正予算および令和5年度当初予算では「約900億円」であったため、政府としてもカーボンニュートラル達成に向けてより力を入れているとわかるでしょう。
今回の記事では、令和5年度補正予算「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」の概要や補助対象車両、申請期間の予測、車種ごとの補助金額などについて解説します。
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この記事の目次
「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」実施の背景
日本の運輸部門における二酸化炭素排出量は全体の約2割を占めており、とくに自動車分野が大部分を占めています。日本政府が掲げる「2050年のカーボンニュートラル」を実現するには、CO2排出において大部分を占める自動車分野での施策が必須です。
施策のひとつとして日本はクリーンエネルギー自動車の普及に力を入れており、その象徴とも言える施策が「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」です。
この補助金は、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)など、環境性能に優れた車両の市場への導入促進を目的として展開されています。クリーンエネルギー自動車導入促進補助金によってクリーンエネルギー自動車が普及することで、産業競争力を高めつつCO2排出削減を図ることが期待できるでしょう。また、グリーン成長戦略における「2035年までに乗用車新車販売で電動車を100%とする」という目標に向けた重要な一歩とされています。
令和5年度補正予算「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」とは
上記で解説した「自動車分野におけるCO2削減」を行うためには、各自動車メーカーによる以下のような取り組みの実現が必要です。
実現が必要な項目 | 自動車メーカーが行うべき取り組み |
製品性能の向上 | ①電費および航続距離を向上させる ②省エネ法TR制度の対象である |
ユーザーが安心・安全に乗り続けられる環境の構築 | ①充電インフラを整備する ・電動車の普及に重要な公共用急速充電器の整備に取り組むこと ・電動車が増加してもユーザーの利便性を確保できるよう、自社の販売台数に応じて、急速充電器(公共・非公共)の整備に取り組むこと ②修理やメンテナンス等のアフターサービス体制の確保や整備人材の育成を行う ・十分な数の整備拠点を確保する等、整備サービスの提供体制の確保に取り組むこと ・修理や交換迅速化の観点から、主要部品(バッテリーや駆動用モーター)の安定確保に向けて取り組むこと ・メンテナンスを支える整備人材の育成に取り組むこと ③車両のサイバーセキュリティ対策を行う |
ライフサイクル全体での持続可能性の確保 | ①蓄電池や鉄鋼等を含めて、ライフサイクル全体でCO2排出削減を目指す ②資源の有効活用の観点から、バッテリーのリユースやリサイクルの適正な実施や資源の有効活用を行う ③GXリーグへの参画や取引適正化など、サプライチェーン全体の持続可能性の確保に取り組むこと 等 |
自動車の活用を通じた他分野への貢献 | 外部給電機能の具備を通じて、エネルギーマネジメントや災害対応に貢献すること 等 |
クリーンエネルギー自動車導入促進補助金の活用によって、単に電動車の台数増加のみを追求するのではなく、「より性能の高い機器の導入」「ユーザーの安心・安全の確保」「利便性の向上」「ライフサイクル全体での持続可能性の確保」などを同時に実現できる市場の創造を目指しています。
補助対象となる車両と申請期間
【補助対象となる車両】
クリーンエネルギー自動車導入促進補助金の対象車両は非常に多いです。詳細は必ず「一般社団法人次世代自動車振興センター」の公式サイトをご確認ください。今回は代表的な車両を一部紹介します。
自動車の種類 | 具体的な車種名の一例 |
EV(自動車・ミニカー・原付) | ・アウディ「e-tron」 ・ジャガー「I-PACE」 ・シトロエン「E-C4 SHINE」 ・スバル「SOLTERRA」 ・DS「DS 3 CROSSBACK E-TENSE Grand Chic」 ・テスラ「モデル3 RWD」 ・トヨタ自動車「bZ4X」 ・日産自動車「アリア」 ・ビー・エム・ダブリュー「BMW i4 eDrive40」 ・BYD「DOLPHIN Long Range」 等 |
PHV(プラグインハイブリッド自動車) | ・アルファ ロメオ「TONALE PLUG-IN HYBRID Q4」 ・Jeep「Grand Cherokee Summit Reserve 4xe」 ・シトロエン「C5 AIRCROSS SUV PLUG-IN HYBRID」 ・ジャガー「E-PACE」 ・DS「DS 4 RIVOLI E-TENSE」 ・トヨタ自動車「クラウン SPORT RS」 ・ビー・エム・ダブリュー「BMW 330e M Sport」 ・フォルクスワーゲン「Passat GTE Variant」 ・プジョー「408 GT HYBRID」 ・ポルシェ「Panamera4 E-Hybrid」 等 |
FCV(燃料電池自動車) | ・トヨタ自動車「クラウン」 ・トヨタ自動車「MIRAI」 ・Hyundai「ネッソ」 |
【申請期間】
以下はあくまでも令和6年2月3日時点の想定スケジュールです。詳細は経済産業省の公式サイトをチェックしましょう。
・令和6年3月中旬頃:令和6年4月1日(令和6年度)以降の新車新規登録車(新車新規検査届出車)が適用される「新たな要件に基づく車両ごとの補助金額」が決定される
・令和6年3月下旬頃:補助金の申請受付開始予定
なお、令和6年3月31日(令和5年度)以前の新車新規登録車(新車新規届出車)については、従来制度の「令和4年度補正・令和5年度当初予算」における車両ごとの補助金額を適用します。
クリーンエネルギー自動車導入促進補助金の補助金額
補助金額は車種ごとで異なります。今回は例として、先ほど紹介した「補助対象となる車両」の補助金額を取り上げます。詳細は「令和5年4月1日以降登録分の補助対象車両」をご確認ください。
自動車の種類 | 具体的な車種名の一例:補助金額 |
EV(自動車・ミニカー・原付) | ・アウディ「e-tron」:37万円〜 ・ジャガー「I-PACE」52万円 ・シトロエン「E-C4 SHINE」:65万円 ・スバル「SOLTERRA」:85万円 ・DS「DS 3 CROSSBACK E-TENSE Grand Chic」:52万3,000円 ・テスラ「モデル3 RWD」:65万円 ・トヨタ自動車「bZ4X」:85万円 ・日産自動車「アリア」:85万円 ・ビー・エム・ダブリュー「BMW i4 eDrive40」:65万円 ・BYD「DOLPHIN Long Range」:65万円 等 |
PHV(プラグインハイブリッド自動車) | ・アルファ ロメオ「TONALE PLUG-IN HYBRID Q4」:45万円 ・Jeep「Grand Cherokee Summit Reserve 4xe」:31万円 ・シトロエン「C5 AIRCROSS SUV PLUG-IN HYBRID」:45万円 ・ジャガー「E-PACE」:36万円〜 ・DS「DS 4 RIVOLI E-TENSE」:45万円 ・トヨタ自動車「クラウン SPORT RS」:55万円 ・ビー・エム・ダブリュー「BMW 330e M Sport」:44万8,000円〜 ・フォルクスワーゲン「Passat GTE Variant」:45万円 ・プジョー「408 GT HYBRID」:45万円 ・ポルシェ「Panamera4 E-Hybrid」:28万3,000円 等 |
FCV(燃料電池自動車) | ・トヨタ自動車「クラウン」:136万3,000円 ・トヨタ自動車「MIRAI」:145万3,000円 ・Hyundai「ネッソ」:215万5,000円 |
クリーンエネルギー自動車導入促進補助金の補助対象者
対象の車両を購入する「個人・法人・地方公共団体等」が支給対象者です。以下の点にご注意ください。
- 新車新規登録(新車新規検査届出)で、自家用の車両に限ります
- 「国」が実施する他の補助金と重複した補助金交付申請はできません。ただし、「地方公共団体」による補助金制度とは重複申請できます
- リース契約についても申請可能です。所有者であるリース会社が行い、補助金もリース会社に交付されます。ただし、補助金相当額が「車両のリース料金を支払う使用者の月額リース料金に還元される」ということが条件となり、申請時は関連書類の提出が必要です
令和4年度補正予算および令和5年度当初予算で実施しているクリーンエネルギー自動車導入促進補助金との違い
「令和4年度補正予算および令和5年度当初予算」と「令和5年度補正予算」における制度の違いは以下の通りです。
令和4年度補正予算および令和5年度当初予算 | 令和5年度補正予算 | |
予算額 | 約900億円 | 約1,291億円 |
補助要件 | GX支援の趣旨を踏まえ、規制・制度と支援を一体的に行う観点から、補助上限額の上乗せ要件として「外部給電機能の保有」に加え、EV・PHEVの乗用自動車については「省エネ法トップランナー制度」の2030年度燃費基準の対象車両(型式指定自動車)であることを追加 | 従来の要件に加え、充電インフラ整備やアフターサービス体制の確保、災害時の地域との連携等、自動車メーカーの取組を総合的に評価し、車両ごとの補助金額を決定する |
令和5年度補正予算「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」申請スケジュール
令和6年2月3日時点で、令和5年度補正予算事業におけるスケジュールは明示されていないため、参考として令和4年度補正予算および令和5年度当初予算の内容を紹介します。過去の事業では、以下のスケジュールに沿って申請が行われました。
初度登録(届出)日 | 【申請書提出期限】 原則(車両登録日までに支払い手続きが完了している場合) |
【申請書提出期限】 例外(車両登録日までに支払い手続きが完了していない場合) |
令和4年11月8日〜令和5年3月31日 | 5月31日 | 5月31日 |
4月1日〜4月30日 | 5月31日 | 6月30日 |
5月1日以降 | 初度登録(届出)日から1か月 | 初度登録(届出)日の翌々月末日 |
今後の想定スケジュールとしては、「令和6年4月1日(令和6年度)以降」の新車新規登録車(新車新規検査届出車)が適用される、新たな要件に基づく車両ごとの補助金額は3月中旬頃に決定し、その後申請受付が始まる予定です。
まとめ
クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)は、クリーンエネルギー車の普及を目的とした制度です。対象車両購入費の一部を支援することで、消費者に対する直接的な財政援助を実現しています。
国が実施する他の補助金とは重複申請できません。しかし、地方公共団体の補助金制度とは重複申請できるため、上手に活用すれば利用者は自身の負担を減らしつつ、より利便性が高く環境にも配慮した車両を購入できるでしょう。
こうした購入者への支援が積み重なり、日本全体でクリーンエネルギー自動車の普及が促進されれば、日本が目指すカーボンニュートラルの実現がさらに近づきます。
具体的な申請スケジュールなどは今後公表されるため、利用を検討している方はこまめに最新情報をチェックしておきましょう。