2024年度の環境省補正予算案では、地域創生やGXの加速化、災害対策の強化に重点が置かれました。国民生活に直結する環境政策も重視されています。
今回は環境省の補正予算案について、環境問題やエネルギーコスト対策につかえる支援事業などを中心にまとめました。
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この記事の目次
2024年度 環境省補正予算案 追加額
環境省の補正予算案では、追加額の合計は4740億円(他省庁計上予算含む)となりました。施策としては、以下の3つが柱として設定されています。
①地方創生、経済成長に向けた投資の促進 |
②エネルギーコスト上昇対策に資するくらしの脱炭素化 |
➂国土強靭化など国民の安全・安心の確保 |
石破首相が重点を置く地方の活性化のほか、生活の安定と環境問題の解決の両立、頻発する災害への対策などが盛り込まれました。
2024年度 環境省補正予算案のポイント
それでは、3つの柱の予算額と、主な取組について見ていきましょう。特に大きな金額となったのは「住宅の断熱窓改修等の促進(1359億円)」と「一般廃棄物処理施設の整備(1101億円)」の2つです。
いずれも国民生活と環境問題に直結する課題で、早急な対策が望まれています。
①地方創生、経済成長に向けた投資の促進 | |
地域脱炭素推進交付金【エネ特+GX】 | 365億円 |
地産地消型資源循環加速化事業 | 20億円 |
食品ロス削減、サステナブル・ファッション等の推進 | 2億円 |
「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)推進事業【一部エネ特】 | 5億円 |
イノベーション創出のための環境スタートアップ研究開発支援事業 | 1億円 など |
②エネルギーコスト上昇対策に資するくらしの脱炭素化 | |
住宅の断熱窓改修等の促進【エネ特+GX】 | 1359億円 |
脱炭素志向型住宅の導入支援事業【GX】 | 500億円 |
建築物のZEB化・省エネ改修の促進【エネ特+GX】 | 160億円 |
中小企業等の工場・事業場における省CO2対策の加速化【エネ特】 | 30億円 |
商用車等の電動化促進事業【GX】 | 400億円 など |
➂国土強靭化など国民の安全・安心の確保 | |
能登半島地震・豪雨等における家屋解体・災害廃棄物の処理等支援 | 394億円 |
能登半島国定公園等施設災害復旧、能登半島の自然資源を活かしたツーリズムと地域づくりの推進 | 6億円 |
一般廃棄物処理施設の整備【一部エネ特】 | 1101億円 |
防災拠点や避難施設となる公共施設への再生可能エネルギー設備等導入支援【エネ特】 | 20億円 |
プラスチック等海洋ごみ回収・処理等支援 | 35億円 など |
CO2削減の目標達成に向けた施策のほか、能登半島の復興に向けた取組も多く盛り込まれています。
ではここからは具体的な施策をみていきましょう。脱炭素やGX、再生可能エネルギーに関する施策を中心にまとめました。
地域脱炭素推進交付金(地域脱炭素移行・再エネ推進交付金、特定地域脱炭素移行加速化交付金) 365億円
意欲的な脱炭素の取組を行う地方公共団体等に、地域脱炭素推進交付金が交付されます(民間と共同して意欲的に脱炭素に取り組む地方公共団体等が対象です)。
100か所以上の「脱炭素先行地域」で地域特性等に応じた先行的な取組を実施するとともに、脱炭素の基盤となる「重点対策」を全国で実施します。
交付率は脱炭素先行地域づくり事業が原則2/3、 重点対策加速化事業が2/3~1/3もしくは定額、特定地域脱炭素移行加速化交付金【GX】が原則2/3です。
出典:環境省 令和6年度補正予算(案)施策集
プラスチック資源・金属資源等のバリューチェーン脱炭素化のための高度化設備導入等促進事業 17億円
脱炭素型有効活用設備等の導入支援による、循環経済への移行を推進します。
プラスチック資源・金属資源等のリサイクル設備、バイオマスプラスチック等の製造設備および廃棄物エネルギーの有効活用のための設備の導入を支援する事業です。
補助率は1/3もしくは1/2です。
出典:環境省 令和6年度補正予算(案)施策集
「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)推進事業 5億1000万円
デコ活等の推進によって、将来にわたる質の高い暮らしの実現を目指します。
2030年度と2050年の目標達成を目指し、自治体・企業・団体・消費者と連携した国民運動として、「新しい豊かな暮らし」を支える製品・サービスの社会実装を推進します。
補助額は定額ですが、補助率では1/3相当となります。
出典:環境省 令和6年度補正予算(案)施策集
イノベーション創出のための環境スタートアップ研究開発支援事業 8800万円
環境スタートアップの研究開発から事業化までの支援を通じたイノベーションの創出と、環境ビジネスの創出・拡大及び雇用増加を目指します。
補助額は定額です。
出典:環境省 令和6年度補正予算(案)施策集
地域脱炭素実現に向けた再エネの最大限導入のための計画づくり支援事業 9億1800万円
地方公共団体等による地域再エネ導入の目標設定や意欲的な脱炭素の取組に関する計画策定、再エネ促進区域の設定等に向けたゾーニング等を支援することで、地域における再エネの最大限導入を図ります。
補助率は最大3/4、上限額は2500万円などです。
出典:環境省 令和6年度補正予算(案)施策集
断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業(経済産業省・国土交通省連携事業)1350億円
くらし関連分野のGXを加速させるため、断熱窓への改修による即効性の高いリフォームを推進します。既存住宅の早期の省エネ化を図ることで、エネルギー費用負担の軽減や住まいの快適性の向上に貢献する取組です。
また先進的な断熱窓の導入加速によって、関連産業の産業競争力強化および経済成長と温室効果ガスの排出削減を両立させます。
補助額は定額で、補助率1/2相当です。
出典:環境省 令和6年度補正予算(案)施策集
既存住宅の断熱リフォーム支援事業(経済産業省・国土交通省連携事業) 9億4000万円
住宅ストックの脱炭素化に資する既存住宅への断熱リフォームを支援します。
既存住宅の断熱性能向上による省エネ・省CO2化によって、エネルギー価格高騰から国民生活を守るとともに、CO2排出量の削減等を目指します。
補助率は1/3、上限額は、対象となる住宅によって異なります。
【集合住宅の場合】 最大15万円/戸(玄関ドアも改修する場合は20万円/戸、集合個別の熱交換型換気設備等に別途補助)
業務用建築物の脱炭素改修加速化事業(経済産業省・国土交通省連携事業) 111億7500万円
既存業務用施設の脱炭素化を早期に実現するため、外皮の高断熱化および高効率空調機器等の導入を支援します。
CO2削減ポテンシャルが大きい既存建築物への対策を行うと同時に、価格低減による産業競争力強化・経済成長や、建築物からの温室効果ガスの排出削減を目指します。
補助額は改修内容に応じて定額で、補助率1/2~1/3相当となります。
出典:環境省 令和6年度補正予算(案)施策集
民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業(一部 総務省・農林水産省・経済産業省 連携事業) 70億円
民間企業等による自家消費型・地産地消型の再エネ導入を促進し、再エネ主力化とレジリエンス強化を図ります。
また新たな手法による再エネ導入・価格低減によって地域の再エネポテンシャルの有効活用を図り、需要側需給調整力の確保によって変動性再エネに対する柔軟性を確保します。
補助額は、蓄電容量の1/2(電気事業法上の離島は2/3)×4万円/kWhです。ただし、上限が設定されています。
出典:環境省 令和6年度補正予算(案)施策集
脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT事業) 30億円
工場・事業場への脱炭素技術等の導入促進によって、バリューチェーン全体でのCO2排出削減を加速します。
CO2排出量のより少ない設備・システムへの改修を行う事業者を支援し、積極的な省CO2化投資を後押しする事業です。CO2排出削減を図るとともに支援した知見を普及展開し、省CO2化の浸透を図ります。
省CO2型システムへの改修支援事業は、補助率1/3、上限は1億円または5億円です。DX型CO2削減対策実行支援事業は、補助率が3/4で上限は200万円です。
出典:環境省 令和6年度補正予算(案)施策集
商用車等の電動化促進事業(経済産業省、国土交通省連携事業)400億円
トラック・タクシー・バスや建設機械の電動化を支援します。普及初期の導入加速を支援することで、価格低減による産業競争力強化・経済成長の実現も目指します。
補助率は差額の2/3、本体価格の1/4等です。
出典:環境省 令和6年度補正予算(案)施策集
災害等廃棄物処理事業費補助金 324億6400万円
災害廃棄物の適正かつ円滑・迅速な処理を支援します。
令和6年能登半島地震等により発生した廃棄物の収集・運搬や処分に係る事業に要する費用に対して補助を行います。被災者の生活の早期再建を促進し、被災市町村における早期の廃棄物処理体制の回復を図ります。
補助率は1/2です。
出典:環境省 令和6年度補正予算(案)施策集
災害に強い浄化槽の整備による防災対策の拡充(循環型社会形成推進交付金) 5億円
単独処理浄化槽やくみ取り槽を、災害に強く、早期に復旧可能な合併処理浄化槽へ転換する事業等を支援します。政府目標である令和8年度の汚水処理施設整備の概成を目指す取組です。
また防災・減災、国土強靭化の観点から、老朽化した単独処理浄化槽やくみ取り槽の合併処理浄化槽への転換促進及び浄化槽の長寿命化を支援します。
交付率は1/3または1/2です。
出典:環境省 令和6年度補正予算(案)施策集
まとめ
環境省の補正予算では、地域経済の活性化や暮らしの質の向上が重視されました。災害復興支援から脱炭素技術の導入促進まで、幅広い分野で支援策が展開されています。
環境負荷の低減と生活コストの削減を両立する取組も重視され、環境負荷の少ないエネルギーへの転換が強く促されました。
こうした政策は、時代に即した事業展開にも有利に働きます。補正予算案から来年度の国の動きを予想し、支援策を上手に活用していきましょう。