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厳格化された雇用調整助成金の不正受給の対応について調べてみた

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この記事は執筆時(2022年6月)における雇用調整助成金の情報となります。
最新の雇用調整助成金の情報についてはこちらをご確認ください。
https://hojyokin-portal.jp/columns/koyochosei_jyosei_kaisei

従業員の雇用を維持するための雇用調整助成金は、コロナ禍において受給条件が緩和され、より多くの事業主が対象となりました。一方で問題となっているのが、受給条件緩和により増加している不正受給です。

これに対し、国では雇用調整助成金等の不正受給についての厳格な対応策を定めました。もしも不正が明らかになった場合、不正受給額以上の返還が求められるほか、詐欺罪で刑事告発される可能性もあります。

「少しの不正なら気付かれないだろう」と安易な気持ちを抱いている方や、「もしかしたら不正に関わってしまったかもしれない」と不安になっている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

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この記事の目次

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コロナ禍における雇用調整助成金の役割

まずは通常の雇用調整助成金の簡単な概要と、コロナ禍により実施された特例措置について見ていきましょう。

【通常の雇用調整助成金】
経済上の理由(景気の後退等)により、事業活動縮小を余儀なくされた事業主のための制度です。従業員に対し一時的に休業・教育訓練・出向などの雇用調整を行い、雇用を維持した場合に休業手当や賃金の一部を助成します。

〈雇用調整についての受給要件〉
◆休業
労使間の協定に基づき、所定労働日の全一日にわたって取り組まれるものである。
※事業所の従業員(被保険者)全員に関して、一斉に1時間以上行われるものも認められます。

◆教育訓練
上記休業と同等の基準に加え、職業についての知識・技能・技術の習得や向上のための教育訓練である。また当該受講日に、本助成金の対象である教育訓練以外の業務を行わない。

◆出向
対象期間内に着手し、3か月以上1年以内に出向元事業所へ復帰するものである。

【コロナ禍における雇用調整助成金の特例措置】
新型コロナウイルス感染症の影響が拡大したことにより、事業活動縮小を余儀なくされた事業主が増加傾向にあり、これに対する特例措置として、各項目の条件変更とともに、雇用調整助成金の助成率及び上限額の引き上げ等が行われました。

特例以外での助成率 特例措置による助成率
中小:2/3
大企業:1/2
①中小:4/5、大企業:2/3
②解雇等を実施せず雇用を維持している場合
中小:9/10、大企業:3/4
③業況特例・地域特例が適用される場合
中小・大企業ともに4/5、解雇等を実施しない場合は10/10
特例以外での日額上限額 特例措置による日額上限額
8,265円
①13,500円(令和3年5月~12月)
②11,000円(令和4年1・2月)
③9,000円(令和4年3月~9月)
④業況特例・地域特例が適用される場合
15,000円(令和3年5月~令和4年9月)

このように支給要件が緩和されたことで、通常よりも幅広い対象事業主が助成金を受給できるようになりました。しかし受給のハードルが下がったことで、不正が行われやすくなったという問題が浮き彫りになっています。

不正受給にあたる例は?

雇用調整助成金についての、主な不正受給の例は以下の通りです。

◆架空休業
・テレワークを含め、従業員が実際に出勤していながら休業しているように装い、休業日数や休業時間を水増しして申請する。
・出勤日にタイムカードの打刻を行わないよう従業員へ促す等、法定帳簿(出勤簿・賃金台帳など)を改ざん・偽造して申請する。

◆架空雇用
退職した従業員について、現在も雇用が続いているように見せかける、もしくは架空の人物を雇用しているように見せかけ、休業を取ったものとして申請する。

◆架空休業手当
必要な休業手当を実際に従業員へ支払っていないにも関わらず、支払っているかのように申請する。
※実際に支給されていなくても、支給を受けようとする行動は不正として扱われます。

次に、実際に起きた不正事案を基にした、不正受給のオーソドックスな例を解説します。なお、以下の例は特定の事業所を指すものではありません。

〈例①〉
製造業A社では、受注回復に合わせ、休業状態だった従業員を働かせていた。しかし、そのまま休業が続いていたかのように虚偽の申請を行い、助成金を受給していた。
【不正発覚の経緯と結末】
労働局が事前連絡無しで実地調査を行ったところ、不正が発覚した。不正受給事業主として公表されたことにより、銀行からの融資が打ち切られ、取引先との取引も解消された

〈例②〉
サービス業B社では、急な業務が発生した時など、休業予定の従業員を急遽労働させるケースがあった。しかし、計画届通りに休業させたと虚偽の申請を行い、さらに有給休暇を取得した従業員に関しても休業と偽った上で、支給を受けていた。
【不正発覚の経緯と結末】
従業員が不正受給の疑惑を持ち、労働局へ相談したことで不正が発覚した。正当な休業分を含め、受け取った助成金全額の返還を行った。

〈例③〉
ソフトウェア開発を営んでいるC社の社長は、同業者から煽られたことにより、実際は通常業務を実施していたにも関わらず、教育訓練を1日実施していたと虚偽の申請を行っていた。
【不正発覚の経緯と結末】
労働局が従業員へアンケート調査を行った結果、教育訓練時間中であっても一部で業務を実施していたことが判明し、不正受給とみなされ助成金全額の返還を行った。

不正受給対応の厳格化について

助成金について、平成31年4月に不正受給の厳罰化が実施されました。具体的な内容は以下の通りです。

①支給前であれば支給が取り消される。
②支給後に判明した場合は請求金の納付が求められる。
※請求金は以下A~Cの合計額です。
A.不正受給によって返還を要求された金額
B.不正受給日の翌日から納付日まで、年5%で算出した延滞金
C.不正受給によって返還を要求された金額の20%相当額
③支給前・支給後に関わらず、不正受給による不支給決定日もしくは支給決定取消日から5年間は、不正受給を行った事業主への助成金支給は認められない。
④不正の内容次第では事業主が告発される可能性がある。
⑤不正発覚時には事業主名等が公表される。これに関して事前に承諾が得られない場合は、助成金は支給されない。

また、社会保険労務士や代理人が事業者の代わりに申請を行った場合も、罰則の対象となります。具体的な内容は以下の通りです。
①申請事業主に負担義務のある債務に関して連帯し、請求された場合は速やかに弁済義務を果たす。
②事務所名もしくは法人名が公表される。
③不正受給による不支給決定日もしくは支給決定取消日から5年間は、助成金に関する提出代行が行えない。

雇用調整助成金における不正受給の動向

コロナ禍において、雇用調整助成金の特例措置により、多くの雇用がサポートされました。(令和4年6月10日時点で支給決定額5兆7879億円、決定件数659万件)また支給決定が迅速に行えるよう、休業計画の届出省略や添付書類の簡略化など、申請手続の簡素化にも取り組んでいます。

令和3年度では、1日あたりの申請件数が1万1,000~1万6,000件台と高水準での推移を見せていました。しかしその反面、書類審査の過程で不正申請を見落としがちになる側面も懸念されていました。令和2年9月~令和3年12月末における不正受給の状況は以下の通りです。
・不正受給261件(約32.3億円)
・うち回収額(一部返還含む)218件(約21.5億円)

出典:雇用調整助成金等の不正受給対策についてより抜粋

不正受給が増加する一方で、近年では不正について以下のような事案が増えています。
・不正受給に関する報道を見て、従業員等が通報する。
・不正もしくは不正が疑われる事案の複雑化・巧妙化によって、調査が長期化する。
・事業主が自主返納を行う。
さらには、会計検査院(税金で実施された政策・事業が正しく機能しているか等を検査する行政機関)からも、方策を検討するよう指摘を受けています。

◆不正受給に対する対策
引き続き迅速な助成金支給を実施するとともに、不正受給対応強化として、都道府県労働局に以下の指示が出されています。
・不正疑惑のある事業主へ積極的に調査を実施する。
・不正受給へ対応するためのチームを編成する。
・不正の手口等について労働局間で共有する。
・警察等関係機関と連携して対応する。

◆不正受給の対応で厳格化された内容
雇用調整助成金等の不正受給への対応を“厳格化”する、として令和4年3月に公表された内容は、以下のとおりです。
①事業所名等の公表、予告無しでの現地調査
不正受給に携わった事業所名等を積極的に公表する。都道府県労働局が、事前の予告無しで事業所訪問・立入検査(※)等の現地調査を行う。
(※)雇用保険法第79条に則った検査で、支給決定から5年間は現地調査を実施する可能性があります。なお、申請事業主は提出書類の保存が求められます。
公表においては、不正「指南役」の氏名等も対象となるケースがあります。
②ペナルティ付きの返還請求
「不正発生日を含めた期間以降の全額」+「不正受給額の2割相当額」(ペナルティ)+「延滞金」の合計額を返還請求する。
③5年間の不支給措置
雇用調整助成金のみならず、他の雇用関係助成金についても5年間は不支給措置とする。
④捜査機関との連携強化
都道府県労働局は、都道府県警察本部との連携を強化し、不正受給の対応を行う。不正の内容が悪質な場合は、捜査機関へ刑事告発を実施する。

出典:雇用調整助成金不正受給の対応を厳格化します リーフレット

予告なしの現地調査の実施や指南役の氏名等の公表、事業所名等の積極的な公表、返還請求(ペナルティ付き)など、注意喚起につながるような表現で、対応が“厳格化”していることをアナウンスしています。

まとめ

たとえ悪意や故意によるものでなくても、また少しの水増しであっても、誤った方法で受給すれば立派な不正にあたります。その不正によって、会社や従業員の将来に深刻な影響を及ぼすかもしれません。

自らが不正を行わないのはもちろんですが、知らない間に加担してしまったということのないよう、基本要件や最新情報をしっかり把握しておきましょう。また、事業者の不正受給についての情報を把握している方は、速やかに情報提供を行ってください。

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