令和5年4月より、雇用関係助成金を電子申請できる「雇用関係助成金ポータル」の運用が開始されます。これにより、電子申請できる雇用関係助成金の対象が拡大するため、多くの事業者がより手続きを進めやすくなるでしょう。
ただし、電子申請を行うためには専用IDが必要です。この記事では、電子申請するための「GビズID」の申請・取得方法や、電子申請の受付を順次開始する雇用関係助成金について解説します。雇用関係の助成金申請を検討している事業者は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
電子申請の3つのポイント
電子申請を適用した場合、メリットとして主に下記の3点が挙げられます。
①利便性が向上する | 窓口へ来所する必要がなくなるため、移動時間や長い待ち時間を気にせず申請できます。 |
②負担を軽減できる | 一度入力した情報であれば、一部は自動的に繰り返し反映されます。 |
③いつでも利用できる | 窓口が開いていない時間でも対応(メンテナンス時間を除きます)しており、申請・申請状況の確認がいつでも行えます。 |
電子申請が可能となる助成金のカテゴリー
雇用関係助成金ポータルで電子申請が可能な助成金を6つのカテゴリーにまとめました。
(1)再就職支援関係の助成金
■労働移動支援助成金■
◎早期雇入れ支援コース
【概要】
再就職援助計画などに該当する対象者を、離職後3ヶ月以内に期間の定めがない労働者として雇用し、継続での雇用が確実と見込める事業主を助成します。
【助成額】
※再就職援助計画等の提出日によって条件が異なります。
〈早期雇入れ支援〉
①通常助成:1人あたり30万円
②優遇助成:1人あたり40万円
③賃金上昇加算:条件を満たした場合に1人あたり20万円を加算
〈人材育成支援〉
支給対象者に職業訓練を実施した場合、上記①~③に支給額が上乗せされます。
◎再就職支援コース
【概要】
事業規模縮小等によって離職せざるを得ない労働者等の再就職支援を職業紹介事業者へ委託、もしくは「求職活動を目的とした休暇付与」「再就職のための訓練」を教育訓練施設等へ委託した事業主へ、助成金を支給します。
【助成額】
①再就職支援を職業紹介事業者へ委託
「委託費用-訓練実施に関する費用-グループワーク加算の額」に、通常・特例区分それぞれの助成率を算出した金額
※訓練・グループグワークルの実施を委託した場合は加算有り
②求職活動を目的とした休暇を付与
再就職達成時に休暇1日あたり5,000円(中小企業事業主は8,000円)を助成
※離職日の翌日から1ヶ月以内に再就職した場合は1人あたり10万円を加算
③離職する労働者の再就職訓練を教育訓練施設等へ委託
再就職達成時に訓練費用の2/3を助成(上限30万)
(2)転職・再就職拡大支援関係の助成金
■中途採用等支援助成金■
◎中途採用拡大コース
【概要】
中途採用者の雇用管理制度を整備しつつ、中途採用拡大を推進する事業者を助成します。
【助成額】
①中途採用率を20ポイント以上増加させた事業主へ50万円
②①に加え、うち45歳以上の労働者で10ポイント以上増加させ、かつ当該45歳以上の労働者全員の賃金を前職比で5%以上増加させた事業主へ100万円
◎UIJターンコース
【概要】
東京圏からの移住者を雇用した事業主へ、採用活動時に必要な経費を一部助成します。
【助成額】
中小企業:上限100万円(助成率1/2)
中小企業以外:上限100万円(助成率1/3)
(3)雇入れ関係の助成金
■トライアル雇用助成金(一般トライアルコースは4月からとなります)■
◎一般トライアルコース、新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース
【概要】
職業経験の不足などで就職に難航している求職者等を、無期雇用契約への移行を前提として一定期間試行雇用(トライアル雇用)の実施に取り組む事業主を助成します。
【助成額】
①一般トライアルコース、新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース
1人あたり月額4万円
※対象労働者が母子家庭の母等もしくは父子家庭の父の場合(一般トライアルコース)、事業主が雇用調整助成金を支給されていない等の場合(新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース)は5万円
②新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース(令和5年3月31日限りで廃止予定)
1人あたり月額2万5千円
※事業主が雇用調整助成金を支給されていない等の場合は3万1,200円
◎障害者トライアルコース
【概要】
ハローワークもしくは民間の職業紹介事業者等を介した就職困難な障害者を、一定期間雇用することで適正や業務遂行可能性を見極め、障害者の早期就職実現や雇用機会の創出を目指します。
【助成額】
①対象労働者が精神障害者:月額最大8万円を3ヶ月、月額最大4万円を3ヶ月(最長6ヶ月間)
②①以外:月額最大4万円(最長3ヶ月間)
◎障害者短時間トライアルコース
【概要】
継続雇用の労働者として雇入れることを目的とし、障害者を一定期間試行的に雇用するものとします。雇用時の週あたりの所定労働時間を10時間以上20時間未満とし、障害者の職場適応状況や体調等に伴い、同期間中にこれを20時間以上にすることを目指します。
【助成額】
1人あたり月額最大4万円(最長12ヶ月間)
■地域雇用開発助成金■
◎地域雇用開発コース
【概要】
雇用機会が著しく不足している地域等の事業主が、事業所の設置・整備を実施し、かつその地域に居住する求職者等を雇用する場合、設置設備費用並びに対象労働者の増加数に合わせて助成します。
【助成額】
対象労働者の増加人数や設置・設備費用に応じて、地域雇用開発助成金支給要領・表ー3の金額を1年ごとに最大3回支給
◎沖縄若年者雇用促進コース
【概要】
沖縄県内で事業所の設置・整備に応じて、沖縄県内に居住する35歳未満の若年求職者を雇用する事業主を助成します。
【助成額】
事業主が当該沖縄助成金対象者へ支払った賃金額に、下表の比率を乗じた額
助成金対象者の種別 | 中小企業以外 | 中小企業 |
対象労働者 | 1/4 | 1/3 |
沖縄新規学卒者 | ー | 1/3 |
※1人あたり年間120万円(各算定期間内1人ごとに60万円)が上限
(4)雇用環境の整備関係等の助成金
■人材確保等支援助成金■
【概要】
人材の確保・定着を目指すため、魅力的な職場作りを目的として、労働環境の向上等を目指す事業主・事業協同組合等を助成します。
〈コースの種類〉
①雇用管理制度助成コース
②介護福祉機器助成コース
③中小企業団体助成コース
④人事評価改善等助成コース
⑤建設キャリアアップシステム等普及促進コース
⑥若年者並びに女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
⑦作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
⑧外国人労働者就労環境整備助成コース
⑨テレワークコース
【助成額】
各コースの助成額の詳細は、厚生労働省公式ホームページをご参照ください。
■通年雇用助成金■
【概要】
北海道・東北地方等の積雪もしくは寒冷度が高い地域の事業主が、冬期間に離職を余儀せざるを得ない季節労働者を通年雇用した場合に助成します。
【助成額】
(A)事業所内就業もしくは事業所外就業時、下記①並びに②を1年ごとに最大3回支給
①新規継続労働者:支払った賃金の2/3(上限71万円)
②継続、再継続労働者:支払った賃金の1/2(上限54万円)
(B)休業を実施時、1人あたり最大2回支給
①休業助成の申請1回目:対象賃金合計額の1/2(新規継続労働者の上限額71万円、継続・再継続労働者の上限54万円)
②休業助成の申請2回目:対象賃金合計額の1/3(上限54万円)
(C)業務転換実施日から6ヶ月間に支払った賃金の1/3(上限71万円)
(D)職業訓練を実施時、上記(A)に加え下記①もしくは②のいずれかの額
①季節的業務:訓練実施に必要な費用の1/2(上限3万円)
②季節的業務以外:訓練実施に必要な費用の2/3(上限4万円)
(E)新分野進出を実施時、事業所の設置・整備に必要な費用の1/10(上限500万円)を、1年ごとに3回支給
(F)季節トライアル雇用を実施時、移行日から6ヶ月以内に支払った賃金の1/2の額から「トライアル雇用助成金」の額を差し引いた額(上限71万円)
■キャリアアップ助成金(正社員化コースは4月からとなります)■
【概要】
非正規雇用の労働者(有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者等)の企業内でのキャリアアップを図るため、正社員化、処遇改善の取組を行った事業主を助成します。
〈コースの種類〉
①正社員化コース
②障害者正社員化コース
③賃金規定等改定コース
④賃金規定等共通化コース
⑤賞与・退職金制度導入コース
⑥(選択的適用拡大導入時処遇改善コース)
⑦短時間労働者労働時間延長コース
【助成額】
各コースの助成額の詳細は、キャリアアップ助成金支給要綱をご参照ください。
(5)仕事と家庭の両立支援関係等の助成金
■両立支援等助成金■
【概要】
職業生活と家庭生活の両立支援や、女性の活躍推進を図る事業主を助成します。
〈コースの種類〉
①出生時両立支援コース
②介護離職防止支援コース
③育児休業等支援コース
④事業所内保育施設コース
⑤新型コロナウイエウス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース
⑥不妊治療両立支援コース
⑦新型コロナウイルス感染症小学校休業等対応コース
【助成額】
各コースの助成額の詳細は、厚生労働省 事業主の方のための雇用関係助成金の「7.仕事と家庭の両立支援関係等の助成金」をそれぞれご参照ください。
(6)人材開発関係の助成金
■人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コースを除きます)■
【概要】
事業主等が雇用する労働者に対し、職務に関する専門知識・技能を習得させるための職業訓練等を計画通りに実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成します。
〈参考〉コースの種類
①特定訓練コース
②一般訓練コース
③教育訓練休暇等付与コース
④特別育成訓練コース
⑤事業展開等リスキリング支援コース
⑥建設労働者認定訓練コース
⑦建設労働者技能実習コース
⑧障害者職業能力開発コース
⑨人への投資促進コース
⑩事業展開等リスキリング支援コース
【助成額】
各コースの助成額の詳細は、厚生労働省 事業主の方のための雇用関係助成金の「8.人材開発関係の助成金」をそれぞれご参照ください。
スケジュール
以下のスケジュールで順次受付を拡大予定です。
受付開始予定日:2023年(令和5年)4月3日
【2023年(令和5年)4月から開始予定の助成金】
- キャリアアップ助成金 正社員化コース
- トライアル雇用助成金 一般トライアルコース
【2023年(令和5年)6月から開始予定の助成金】
- 労働移動支援助成金
- 中途採用等支援助成金
- トライアル雇用助成金(一般トライアルコース以外)
- 地域雇用開発助成金
- 人材確保等支援助成金
- 通年雇用助成金
- キャリアアップ助成金(正社員化コース以外)
- 両立支援等助成金
- 人材開発支援助成金
電子申請には「GビズID」の申請・取得が必要
電子申請を進めるためには、サイトから「GビズID」の申請を行い取得する必要があります。
※事業主が電子申請を代理人(社会保険労務士、弁護士等)へ依頼する場合も、GビズIDの申請・取得が不可欠です。
※事業主に代わり社会保険労務士が電子申請する場合は「提出代行等に関する証明書」の提出、弁護士等の代理人が電子申請する場合は「委任状」の提出がそれぞれ求められます。
【GビズIDとは】
GビズIDとは、法人・個人事業主に向けた共通認証システムのことです。GビズIDを取得すれば、ひとつのID・パスワードで下記行政サービスの全てにログインが可能です。
初めにアカウントを1つ取得すれば、有効期限・年度更新などは不要です。(令和3年8月現在)
GビズIDの取得はgBizID公式ホームページより行ってください。
現在受付中のその他電子申請
【雇用調整助成金・産業雇用安定助成金の電子申請】(受付中)
雇用調整助成金・産業雇用安定助成金オンライン受付システムで電子申請受付中です。
【特定求職者雇用開発助成金の電子申請】(受付中)
特定求職者雇用開発助成金の電子申請で電子申請受付中です。
まとめ
電子申請ができれば、時間帯を気にせずどこからでも手続きを進められます。また、交通費や郵送費などのコストを削減することもできます。
令和5年6月には、多くの雇用関係助成金が電子申請の対象となりますので、雇用関係の助成を受けたい事業者は、ぜひこの機会に「雇用関係助成金ポータル」による電子申請を検討してみてはいかがでしょうか。