「103万円の壁はどうなった?」——そう気になっている方も多いのではないでしょうか。2025年から2026年にかけての税制改正で、所得税がかからない年収のラインが大きく引き上げられました。2025年分は160万円、そして2026年分からはさらに178万円へ。
30年以上変わらなかった「103万円の壁」は、事実上撤廃されることになりました。
この記事では、改正の経緯・新しい控除のしくみ・年収別の手取り増加シミュレーションまでまとめて解説します。
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この記事の目次
「103万円の壁」とはそもそも何だったのか
「年収の壁」とは、年収が一定額を超えると税金や社会保険料の負担が増える境目のことです。なかでも長年最も意識されてきたのが「103万円の壁(所得税の壁)」です。
給与所得者には「給与所得控除(55万円)」と「基礎控除(48万円)」が適用されます。この合計103万円が、所得税がかからない上限として1995年以来30年間維持されてきました。年収103万円以下であれば所得税は0円ですが、これを超えると超えた分に対して所得税が課されます。
また、配偶者を扶養している世帯では、配偶者の年収が103万円を超えると配偶者控除が受けられなくなると誤解されることも多く、働き控えの原因となっていました。
103万円の壁、結局どうなった?改正の経緯
2025年分:まず「160万円の壁」へ
物価高や最低賃金の上昇を背景に、2025年度の税制改正で所得税の非課税ラインが引き上げられました。基礎控除・給与所得控除がそれぞれ引き上げられ、年収200万円以下の方については最大160万円まで非課税となる仕組みが導入されました。ただし、この措置は低所得者向けの特例が中心で、高所得者ほど恩恵が小さい設計でした。
2026年分:さらに「178万円の壁」へ
2025年12月18日、高市首相と国民民主党・玉木代表が会談し、年収の壁を178万円に引き上げることに正式合意。同月19日の2026年度税制改正大綱(令和7年12月26日 閣議決定)に明記されました。
今回の改正では、恩恵が年収665万円以下(納税者の約8割)まで拡大。パート・アルバイトだけでなく、正社員の会社員にも減税効果が及ぶ内容となっています。
出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」(令和7年12月26日 閣議決定)
178万円の壁はどう計算される?
所得税は「給与収入-給与所得控除-基礎控除などの所得控除=課税所得」で計算されます。課税所得がゼロになるまでは所得税がかかりません。この「課税所得ゼロ」となる給与収入の上限が、いわゆる「年収の壁(課税最低限)」です。2026年分の課税最低限は、以下の2つの控除の合計で178万円になります。
| 控除の種類 | 金額 | 内訳 |
|---|---|---|
| 給与所得控除(最低保障額) | 74万円 | 本則69万円+特例5万円 |
| 基礎控除 | 104万円 | 本則62万円+特例42万円 |
| 合計(課税最低限) | 178万円 | - |
この74万円・104万円という金額は、給与収入が一定以下の場合に適用される金額です。給与所得控除の最低保障額74万円は給与収入220万円以下の場合、基礎控除104万円は合計所得金額489万円以下(給与収入で約665万円以下)の場合に適用されます。給与収入がこれらを超えると、控除額は段階的に縮小していきます。
また、上記の控除額のうち、特例部分(基礎控除42万円・給与所得控除5万円)は令和8年・令和9年(2026・2027年)の2年間限りの時限措置です。2028年以降は、消費者物価指数の動向を踏まえて令和10年度税制改正で改めて控除額が算出される予定です。
手取りはいくら増える?年収別シミュレーション
2025年(160万円ベース)と2026年(178万円ベース)の控除額の差分をもとに、年収別の概算減税額を試算しました。
| 年収 | 2025年 課税所得 | 2026年 課税所得 | 適用税率(2025年) | 年間減税額(目安) |
|---|---|---|---|---|
| 150万円 | 0円 | 0円 | - | 0円(元々非課税) |
| 200万円 | 約37万円 | 約22万円 | 5% | 約7,500円 |
| 300万円 | 約114万円 | 約98万円 | 5% | 約8,000円 |
| 400万円 | 約188万円 | 約172万円 | 5% | 約8,000円 |
| 500万円 | 約288万円 | 約252万円 | 10% | 約3.6万円 |
| 600万円 | 約368万円 | 約332万円 | 20% | 約7.2万円 |
| 700万円 | 約457万円 | 約453万円 | 20% | 約8,000円 |
| 800万円 | 約547万円 | 約543万円 | 20% | 約8,000円 |
出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」(令和7年12月26日 閣議決定)をもとに編集部試算
この表はあくまで制度を元にした概算なので、一例としてご覧ください。
なお、注意点として、2026年中の毎月の給与手取りは変わりません。2026年12月の年末調整でまとめて還付され、毎月の給与への反映は2027年1月からです(財務省大綱明記)。
配偶者控除・扶養控除の上限も変わった
所得税の非課税ライン(178万円)とは別に、配偶者控除・扶養控除の基準も2025年の税制改正で引き上げられています。「178万円の壁」と混同しやすいですが、別制度である点に注意が必要です。
配偶者控除:103万円の壁は123万円→136万円へ段階的に拡大予定
配偶者控除の対象となる配偶者の年収上限は、2025年分(令和7年分)からすでに103万円→123万円に引き上げられています。さらに2026年度税制改正大綱では、合計所得金額要件が58万円以下→62万円以下に引き上げられ、給与収入換算で136万円以下(令和8・9年)まで拡大される方針です。年次ごとの変化は以下のとおりです。
| 適用年分 | 合計所得金額要件 | 給与収入換算(目安) |
|---|---|---|
| 〜令和6年(2024年)分まで | 48万円以下 | 103万円以下 |
| 令和7年(2025年)分から | 58万円以下 | 123万円以下 |
| 令和8・9年(2026・2027年)分から ※予定 | 62万円以下 | 136万円以下(目安) |
配偶者の年収が配偶者控除の範囲を超えても、169万円以下であれば配偶者特別控除として38万円が満額受けられます(令和8年分)。169万円超〜201.6万円未満では控除額が段階的に縮小します。
【配偶者特別控除の適用範囲(令和8年・2026年分)】
| 配偶者の年収 | 控除の種類 | 控除額(所得税) |
|---|---|---|
| 136万円以下 | 配偶者控除 | 38万円(満額) |
| 136万円超〜169万円以下 | 配偶者特別控除 | 38万円(満額) |
| 169万円超〜201.6万円未満 | 配偶者特別控除 | 段階的に縮小(最終ゼロ) |
| 201.6万円以上 | 対象外 | 0円 |
※ 納税者(扶養する側)の合計所得が900万円超で控除額が縮小し、1,000万円超で配偶者控除・配偶者特別控除は受けられません。
扶養控除(大学生世代):特定親族特別控除が新設
令和7年分以後19〜22歳の子を扶養している家庭向けに「特定親族特別控除」が新設されました。これまで子の年収が103万円を超えると親の控除(63万円)が丸ごと消えていましたが、改正後は150万円まで満額控除が維持され、188万円まで段階的に縮小する仕組みになっています。
アルバイト収入が増えがちな大学生世代の親にとって大きなメリットです。
【特定親族特別控除額の早見表】
| 子の年収 | 親が受けられる控除額 |
|---|---|
| 123万円以下(旧:103万円以下) | 特定扶養控除 63万円 |
| 【★新設】123万円超〜150万円以下(新設) | 特定親族特別控除 63万円(満額) |
| 【★新設】150万円超〜188万円以下(新設) | 特定親族特別控除 3〜61万円(段階的に縮小) |
| 188万円超 | 0円 |
【★】が今回の改正で新設・拡充された範囲です。
注意:社会保険の壁は別問題
178万円まで所得税がかからなくなっても、社会保険の壁は別に存在します。130万円を超えると健康保険の扶養から外れ、自分で社会保険料を支払う必要が生じます。この基準額自体は2026年も変わっていません。
なお、106万円の壁(厚生年金・健保への加入義務を生じさせる賃金要件)については、2026年10月に撤廃予定です。週20時間以上勤務していれば、収入額にかかわらず社会保険加入対象となります。
詳しくはこちら:130万円の壁はどうなった?一時的な収入増でも扶養を外れにくくなる新ルール
2026年4月時点の「年収の壁」早見表
| 壁の種類 | 金額 | 内容 | 2026年の変化 |
|---|---|---|---|
| 所得税の壁 | 178万円 | 所得税がかかり始めるライン | 103万→160万→178万に引き上げ済み |
| 配偶者控除の壁 | 123万円 | 配偶者控除が受けられるライン | 103万→123万に引き上げ済み |
| 社会保険の壁① | 106万円 | 厚生年金・健保への加入義務 | 2026年10月に賃金要件撤廃予定 |
| 社会保険の壁② | 130万円 | 扶養から外れるライン | 基準額は変わらず。判定方法が4月に変更 |
まとめ
「103万円の壁」は2025年に160万円、2026年にはさらに178万円へと段階的に引き上げられました。納税者の約8割にあたる年収665万円以下の方が恩恵を受けられる改正です。
ただし、減税が実感できるのは2026年12月の年末調整から。また、社会保険の130万円の壁は変わっていないため、働き方を考える際は税と社会保険の両方を合わせて確認することが大切です。
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参考資料
・財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」(令和7年12月26日 閣議決定)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_gaiyou.htm
・首相官邸「いわゆる年収の壁対策」
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/nennsyuunokabe/index.html


