総務省は平成13年(2001年に)の中央省庁再編により、従来の「自治省」「郵政省」そして「総務庁の大部分」が統合し発足した行政機関です。
合併前の各省庁の仕事を多岐にわたり引き継ぎ、行政運営の改善、地方行財政、選挙、消防防災、情報通信、郵政行政など、国家の基本的仕組みに関わる諸制度、国民の経済・社会活動を支える基本的システムを所管し、国民生活の基盤に関わる行政機能を担います。
所掌事務は非常に多岐に渡りますが、我々の生活に身近なものとしては「国税調査」や「マイナンバーカード」の整備、「ふるさと納税」の制度整備、本年度においてはコロナ対応の「特別定額給付金」、そして現在は携帯料金の値下げ(ドコモ、au、ソフトバンクが正式に値下げ対応を発表)に向けて大手通信事業者との意見交換会等も実施しています。
今回は総務省が発表した令和3年度の概算要求について概要を紹介いたします。
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この記事の目次
デジタル変革の加速による「新たな日常」の構築
1.国・地方を通じたデジタル・ガバメントの推進(139.5億円)
・行政手続オンライン化、AI・RPAの活用、自治体情報システム標準化等の推進
・国における行政のデジタル化の徹底
本年度は新型コロナウイルス感染症への対応として、国民すべてを対象とした給付金制度(特別定額給付金等)が実施されましたが、各地域の行政機関では電子申請システムの不備によるサイトのダウンや同一人物への複数回給付などが頻発し、やむなく郵送申請のみでの受付を行うなど大変な混乱が生じました。
総務省では行政手続きのオンライン化を進めるとともに、RPAの導入による自動処理等の標準化を図り、国による行政のデジタル化を徹底します。
2.マイナンバーカードの普及・利活用の促進(1451億円)
・デジタル・ガバメント実行計画などに基づく普及・利活用の促進
現在、住民票の写しの交付など104の行政手続きで署名や押印(はんこ)の廃止に向けた調整が行われており、それに代わる本人確認の手法として、マイナンバーカードの普及・利活用が促進されています。
3.テレワークや遠隔教育、遠隔医療を支える情報通信基盤の整備(256.8億円)
・5G・光ファイバ等の全国展開の推進
・ローカル5Gを活用した課題解決の促進
・急増する通信トラヒック(通信料)の予測や地域分散による混雑緩和
ローカル5Gとは、企業や自治体が独自に5G基地局を作って通信システムを構築するもので、通常の5G(第5世代移動体通信システム)とは別の周波数帯を利用するため、より高速で安定したプライベートネットワークの導入が可能になります。
4.Beyond 5Gをはじめとした先端技術への戦略的投資(732.5億円)
・Beyond5Gの高度化等の実現のカギを握る先端技術の研究開発
・量子暗号通信、多言語翻訳、破壊的イノベーション、宇宙ICT等の実現のための研究開発
・新たな電波利用ニーズに対応するための電波利用環境の構築
・戦略的な知財獲得・国際標準化
携帯端末の通信速度は1990年のアナログ通信方式の1G(最大2.8kbps)から2010年代の次世代高速通信規格である4G(最大1Gbps/下り)までの間に約40万倍まで向上し、2020年に国内で実装された5Gではさらに20倍にあたる最大20Gbps(下り)を実現可能としています。
総務省では現在も発展途上にある通信インフラの更なる安定化・高速化、そして多角的な利用を促進するため、Beyondo5G(5Gの次の世代の無線通信システム)の開発・実装に向けた戦略的な投資を行います。
5.デジタル化の進展に合わせたサイバーセキュリティの確保(83.6億円)
・サイバーセキュリティ統合知的・人材育成基盤の構築
・ナショナルサイバートレーニングセンターの強化
・IoT及び5Gの安心・安全な利用環境の構築
ICTの進歩により企業における組織運営のリモート化が急速に進む一方、本年度は新型コロナウイルスに便乗したサイバー犯罪が多発し、デジタル化の進展に合わせたサイバーセキュリティの確保は急務となっています。
総務省では巧妙・複雑化するサイバー攻撃に対応できる人材の育成、データの改ざんや送信元のなりすまし等を防止する仕組み「トラストサービス」の制度化等によって、紙・対面からデジタルへの移行を加速し、安全・安心なオンラインでの社会・経済活動の普及に取り組みます。
6.新しい働き方・暮らし方の定着、デジタル格差対策の推進(55.1億円)
・デジタル活用支援の総合的な推進
・テレワークの推進
・キャッシュレス環境の整備
・遠隔医療や8K、AI等の医療分野への活用の推進
・4K・8K放送の推進
・スマートシティの推進
・AI(多言語翻訳)の研究開発
・情報バリアフリーの促進に向けた字幕番組の制作促進
2019年は「キャッシュレス元年」とも呼ばれ、企業では複数税率(軽減税率)の導入に合わせたレジシステムの更新と共に、キャッシュレス決済への対応が一気に拡大しました。(キャッシュレスの利用率:2018年=約18% 2020年=約60%)
総務省では引き続き新しい働き方・暮らし方の定着と、国民生活の利便性向上に向け、様々なデジタル技術の利活用、標準化を推進します。
7.デジタル市場のルール整備(6.2億円)
・インターネット上の違法有害情報対策
・情報銀行い関するルール整備
・視聴データの適切な取り扱いに係るルールの検討
近年はネット上でのTV出演者への誹謗中傷や、インターネット上における著作物の違法アップロードなども大きな社会問題となっており、デジタル市場においては利用者の利便性の向上と共に、ステークホルダーの権利保護に重点を置いた新たなルールの整備も必要となっています。
総務省はこうしたネット上の問題への対応、利便性向上に向けたルールの整備などに取り組みます。
8.総務省の政策資源を総動員した海外展開の推進(105.4億円)
・5G、光海底ケーブル等のICTインフラシステム、放送コンテンツ、郵便、消防、行政相談、統計などの海外展開
・デジタル経済に関する国際的なルール形成に向けた枠組みづくり
総務省が保有する様々な政策資源を活用し、日本経済の持続的な成長を実現、国際競争力の強化に取り組みます。
また、海外において電気通信事業、放送事業又は郵便事業等を行うものに対して資金の供給等の支援を行い、新興国を中心とした世界の膨大なインフラ需要を取り込むことを目指します。
ポストコロナの社会に向けた地方回帰支援
9.地方への人の流れの創出・拡大(8.1億円)
・都市から地方への移住・交流の推進
・地域との多様な関わりの創出
・テレワークの推進
デジタル技術を活用した地域コミュニティの新たなつながりの創出、地域運営組織の形成及び、持続的な運営の支援を通しポストコロナの社会に向けた地方回帰を推進します。
また、テレワーカーに向けた地域での支援体制の整備・運用、専門家派遣による相談対応にも取り組み、地方への人の流れの創出・拡大に取り組みます。
10.自立分散型地域経済の構築、過疎地域の持続的発展等の支援(21.8億円)
・地域資源を活かした地域の雇用創出と分散型エネルギーの推進
・新たな過疎対策の推進
地方への人の流れの拡大に対応するため、空き家や廃校舎などを活用した住宅、働く場の整備などに取り組み、過疎地域等については「集落ネットワーク圏(小さな拠点)」の形成、維持にむけ生活支援や「なりわい」の創出等への支援に取り組みます。
防災・減災、国土強靭化の推進
11.国土強靭化の推進(22.2億円+事項要求)
・地方公共団体等の災害対応能力及び安全・安心対策の強化
・地方公共団体への人的支援や技術職員の充実による市町村支援体制の強化
・ケーブルテレビの光化
地方公共団体や各市町村長を対象とした災害訓練、危機管理等責任者を対象とした研修などを通し、災害発生時の被災地支援における受け皿づくりを推進します。
また2021年に延期されたオリンピック・パラリンピックに向けて、NBCテロ等に対する消防・救急体制の構築にも取り組みます。
12.大規模災害等に対応した消防防災力・地域防災力の充実(102.9億円)
・緊急消防援助隊の充実・消防の広域化の推進等による消防力の強化及び火災予防対策の推進
・地域防災力の中核となる消防団及び自主防災組織等の充実強化
・被災地の消防防災力の充実強化
被災地の消防力のみでは対応困難な大規模・特殊な災害への援助を目的とする「緊急消防援助隊」の増強に向けた車両・資機材等の整備を進めるほか、救急救助・情報収集の高度化及び人材育成等にも取り組みます。
13.災害時の情報伝達手段の確保(75.3億円)
・地方公共団体における防災情報の伝達体制の強化
・Lアラートの活用推進
・公共安全LTEの本格導入に向けた技術検証
・放送ネットワークの強靭化
これまで各行政機関が個別に整備していた公共業務用無線に代わり、音声だけでなく画像や映像などの送受も可能なLTEを本格導入するため、関係府省庁と連携した技術検証等を実施します。
その他、災害発生時の情報伝達を確実にするための放送ネットワーク整備等への支援も行います。
経済・社会を支える地方行財政基盤の確保
14.地方の一般財源総額の確保等(16兆1653億円+事項要求)
・地方の一般財源総額の確保等
・東日本大震災に係る地方の復旧・復興事業等の事業費及び財源の確実な確保
新型コロナウイルスの影響により地方税の大幅な減収が見込まれるなか、地方団体が「新たな日常」の実現に向けて安定的な行政サービスが提供できるよう、地方交付税により一般財源の確保を行います。
その他、事項要求として東日本大震災に係る地方の復旧・復興事業等の事業費及び財源の確保等が計画されています。
15.2040年頃を見据えた地方行政体制の構築(1.1億円)
・多様な広域連携の推進
・自治体情報システムの標準化の推進
2040年頃にかけて顕在化する人口構造等の変化やリスクに対応し、連携中枢都市圏をはじめ、地方公共団体間の多様な広域連携を推進し、税務システム及び選挙人名簿管理システムなど、自治体の情報システムの標準化にも取り組みます。
持続可能な社会基盤の確保
16.郵政事業のユニバーサルサービスの安定的な確保(8.1億円)
・ユニバーサルサービスの確保、利用者の目線に立った新しい事業展開、郵便局の利便性の向上
郵便局を国民生活の安心・安全の拠点として活用するため、新たな事業の展開及び利便性の向上を促進、郵政3事業のユニバーサルサービスが着実に提供されるよう郵便行政における適正な指導・監督に取り組みます。
17.恩給の適切な支援(1378億円)
・受給者の生活を支える恩給の支給
公務員が一定年限勤務したのち退職,あるいは死亡したときに支給される年金または一時金である「恩給」について適切な年額水準を確保、恩給請求について適正・迅速な処理を行うとともに、丁寧な相談対応等により受給者サービスの向上を図ります。
18.ワイズペンディングの徹底に向けたEBPMの強化及び基盤となる統計の整備(180.4億円)
・政策評価等を通じたEBPMの推進
・社会・経済実態の把握に資する統計調査の実施及びビッグデータ等を活用した統計作成の推進
・ユーザー支店に立った統計データの利活用促進
時代の変化をより的確に捉える経済統計を整備し、将来的に高い利益・利便性を生み出すことが見込まれる事業・分野に的確な財政支出が出来る体制づくりに取り組みます。
19.行政運営の改善を通じた行政の質の向上(11.9億円)
・行政の業務改革の推進等
・政策評価等を通じたEBPMの推進
・行政評価局調査機能及び行政相談機能の充実・強化
令和2年新型コロナウイルス感染症に対応しながら行政相談活動を継続するための体制整備等を行います。
また、様々な取り組みにより行政サービスの質の向上にも取り組みます。
20.主権者教育の推進と投票しやすい環境の一層の整備(1.7億円)
・民主主義の担い手である若者に対する主権者教育の推進
・投票しやすい環境の一層の整備
高校生向けの副教材の作成・配布、体験型学習のイベント等の実施により、主権者教育教育を継続的に推進、その他在外選挙インターネット投票(海外にいながら国政選挙に投票できる仕組み)を早期に導入できるよう検討を進めていきます。
21.その他の主要事項(1009.1億円)
・衆議院議員総選挙関係経費
・政党交付金
まとめ
以上、総務省の令和3年度概算要求の内容について紹介いたしました。
補助金・助成金制度の分野では存在感の薄い総務省ですが、ICT分野や海外展開などで時代をリードし、国民の快適な暮らしを実現するために様々な取り組みを行っています。
他省庁についても以下にまとめております。
【令和3年各省庁概算要求(案)について】
■厚労省概算要求(案)
■経産省概算要求(案)
■文部科学省概算要求(案)
■各省庁まとめ
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