近年、地震や集中豪雨、台風などの大規模災害が起こるリスクが高まっています。
今回ご紹介するのはそんな時代に必要とされる補助金です。「災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金(令和5年度補正予算)」は、災害頻発化や天然ガスの環境特性を踏まえ、災害発生時でも避難施設が利用できるよう、停電対応型の天然ガス利用設備を普及させるものです。
本事業で災害に強い避難施設を作りながら、環境に負荷をかけないエネルギーを使った環境対策を進めてみませんか。
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この記事の目次
災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金(令和5年度補正予算)とは
今回ご紹介する補助金の正式名称は、「令和5年度「災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金(補正予算に係るもの)」であり、一目で内容が理解しにくいかもしれません。
簡単に言うと、災害時でも避難所が使えるように、停電対応型の天然ガス利用設備を導入する事業者に補助金が出る、というものです。
出典:R5補正強靭性パンフレット
対象事業
本事業では、災害時の電力供給停止にも対応可能な停電対応型CGS(コージェネレーションシステム)および停電対応型GHP(ガスエンジン・ヒートポンプ・エアコン)に対して、以下のそれぞれの要件に適合する常用の設備を設置し、避難スペースにおける費用対効果に優れていると認められるものが対象になります。
具体的に、どのような設備を、どのような場所に導入すると補助の対象になるのでしょうか。交付の要件を確認しましょう。
主な交付要件 |
1.天然ガスを主原料とするガスを燃料とした設備を導入して使用する。 |
2.以下のいずれかのガス供給を受ける。 (ア)中圧導管による供給 (イ)耐震性を向上させた低圧導管等による供給 |
3.系統電力の停電時に、発電または空調を開始できる設備である。 |
4.導入後の対象設備に、運転状況を確認するために必要な専用の計測装置を取り付ける。 |
5.以下のいずれかの施設であって、災害時に地域住民に空間、物資、情報等の提供を行うことが可能な施設に設置され、対象設備が当該施設における災害時の役割に寄与している。※ただし、設置する施設は、年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの建築物である「ZEB」や、「災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金」を活用して石油製品タンク等を導入した施設等を除く (ア)災害時に避難所等として活用される国や地方公共団体の防災計画指定の施設 〇指定避難所(福祉避難所含む) 〇指定避難場所への避難者にサービスを提供する施設 (イ)災害時に活動拠点等として活用される国や地方公共団体の防災上中核となる施設 〇地方公共団体施設 (ウ)災害時に避難所等として活用される国や地方公共団体と協定を締結している(見込みも含む)施設 〇協定による避難所 〇協定による避難場所への避難者にサービスを提供する施設 〇帰宅困難者受入施設 〇災害時帰宅支援ステーション 〇一斉帰宅抑制事業者の当該施設 〇物資提供の協定を締結した上で、それら物資の提供を地域住民にも行う施設(地域住民へ提供を行うことを確認できることが必須) (エ)その他交付規程第6条に定める審査委員会が認めた施設 |
対象となる施設のイメージは下図も参照してください。
出典:解説資料
【注意事項】
本補助金は、更新の場合も申請できます。その際、更新前の設備等を廃止することが要件となるため、撤去等の処置を行う必要があります。ただし更新のための既存設備の撤去に要する費用は補助対象外となりますのでご注意ください。
補助対象範囲
次に、補助対象経費の確認をしましょう。
停電時に発電または空調を開始・継続できる設備「停電対応型CGS」および「停電対応型GHP」の導入に係る設計費、既存設備撤去費、新規設備機器費、新規設備設置工事費、敷地内ガス管敷設費が対象になります。
ただし、既存設備撤去費では、設備の更新目的での撤去にかかる経費は除外されます。また、敷地内のガス管敷設費において本支管工事費も除外されます。
① 設計費、既存設備撤去費、新規設備機器費、新規設備設置工事費の補助対象範囲 |
|
対象設備 | a. 停電対応型CGS:機器本体、機器本体メーカー付属品、その他必要と判断される設備 b. 停電対応型GHP:機器本体、冷媒配管、室内機、その他必要と判断される設備 c. その他設備:熱交換器(排熱利用機含む)、煙道、煙突、安全装置、省エネ計測装置、ガスブースタまたはガスコンプレッサ、脱硝装置、基礎工事(設備建屋および建屋に付随する設備等は対象外) |
温水配管および電気配線等 | 対象設備間をつなぐものは対象、対象設備と対象外設備をつなぐものは対象外(配管に付随するポンプ等も同様) |
② 敷地内ガス管敷設費の補助対象範囲 |
|
対象設備 | ガス配管、ガバナ、ストレーナ、緊急遮断弁、ガス漏れ警報器等必要と判断される設備 |
対象事業者
補助の対象となる事業者は、リース・エネルギーサービス等を含む全業種です。ただし、家庭用需要は除きます。
補助率・上限額
補助率と上限額は、施設の所在エリアや対象設備、ガスの供給方式によって異なります。ここでいう地震対象エリア・大都市等は、以下(1)~(3)です。
(1)政府想定の地震
-南海トラフ地震
-首都直下地震
-日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震
-中部圏・近畿圏直下地震
(2)熊本地震・北海道胆振東部地震の被害地域
(3)政令指定都市・特別区、中核市、特例市、県庁所在地、中枢中核都市
以下、補助率と上限額をそれぞれまとめました。
補助率 | |
(1)地震対象エリア・大都市等のうち、中圧ガス導管でガスの供給を受けている施設 | 1/2以内 |
(2)上記以外の中圧ガス導管または低圧ガス導管でガスの供給を受けている施設 | 1/3以内 |
補助上限額 | |
(1)地震対象エリア・大都市等 | 【停電対応型CGS】 中圧ガス導管:3億6,000万円、低圧ガス導管:6,000万円 【停電対応型GHP】 中圧ガス導管:1億円、低圧ガス導管:6,600万円 |
(2)上記以外 | 【停電対応型CGS】 中圧ガス導管:2億4,000万円、低圧ガス導管:6,000万円 【停電対応型GHP】 中圧ガス導管:6,600万円、低圧ガス導管:6,600万円 |
【災害種別および浸水区域の確認】
災害時の強靭性の高い避難所の有効性・実用性を確認する為、協定上の災害種別の確認、および同施設における立地(浸水区域指定の該非)の確認があります。この結果に応じて、停電対応型設備の設置位置に水害対策が施されているかチェックされます。
申請対象となる事業の期間について
単年度事業のため、定められた期間に事業を開始、完了できる場合のみ申請の対象となります。工程等を検討する際は、実施可能なスケジュールにて申請ください。
申請方法とスケジュール※7月23日更新
次に、補助金の申請方法などを確認しましょう。
申請は、原則jGrantsで行います。jGrantsの申請フォームより必要事項を直接入力し、その他書類は、jGrantsに電子ファイルをアップロードします。
jGrantsにて申請した書類については、必ずすべてのデータの保管とファイルの作成、ファイルへの綴じ込みを行ってください。特に概算見積書や供給証明書などは、後で原本照合が行われるため、大切に保管する必要があります。
【公募期間】
四次公募:令和6(2024)年7月17日(水) ~ 8月5日(月)まで
交付決定時期などは、都市ガス振興センターのホームページで更新されます。
https://www.gasproc.or.jp/current/subsidylist/r6_1/
必要書類
申請に必要な書類は以下のとおりです。
- 交付申請書
- 実施計画書
- 発注計画書
- 補助事業方式の設備に関する仕様
- 補助事業の設備に関する図面等
- 見積依頼書、見積書の写し
- 会社情報
- 避難所として協定している施設等であることを証明できる書類
- 中圧導管、または耐震性を向上させた低圧導管等でガス供給を受けていることを示す書類
- その他に提出が必要な書類
- 交付申請時提出書類チェックリスト
申請から交付決定までの流れ
最後に、申請から交付決定までの流れを確認しましょう。
(1)交付申請 (都市ガス振興センターによる個別ヒアリングおよび審査ののち、交付決定通知) |
(2)交付決定通知 受理 |
(3)事業開始 (請負会社等との契約締結) |
(4)中間報告 |
(5)請負会社等への支払完了 |
(6)実績報告 |
(7)確定検査 (確定検査の合格をもって事業完了、センターによる支払確定通知) |
(8)支払確定通知 受理 |
(9)精算払請求 |
(10)補助金受領 |
(11)燃料使用量等提出依頼書 受理 |
(12)燃料使用量等提出 |
事業開始後、請負会社への支払いが完了したら、その日から30日以内に実績報告を提出します。また、事業が完了した後には、燃料使用量や稼働時間などのデータを1年間分提出する必要があります。このように、補助金には交付申請だけでなく、事業の進行と成果を確認するための各種手続きがあることを把握しておきましょう。
全体フロー図もあわせてご確認ください。
出典:R5補正強靭性公募説明会資料
令和6年度 災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金との違い
本事業を執行する一般社団法人 都市ガス振興センターでは、令和6年度予算における「災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金[災害時にも利用可能な天然ガス利用設備]」の公募を行っていました。
【公募期間】
令和6(2024)年4月26日(金)~ 5月24日(金)まで 公募終了
出典:R6強靭性パンフレット(災害)
令和5年度補正予算事業と令和6年度予算事業では、主に補助金の対象となる施設の範囲が異なります。
令和6年度事業の対象施設には「災害時帰宅支援ステーション」、「一斉帰宅抑制事業者の当該施設」、「物資提供の協定を締結した上で、それら物資の提供を地域住民にも行う施設」が含まれていません。令和6年度予算の方は、補助対象施設の範囲を狭めて、公立学校や福祉施設などに焦点を当てているという印象です。
【複数年事業の取扱い】
ほかに、令和6年度事業では、事業規模が大きく単年度での実施が困難な場合などに限り「複数年事業の取扱い」が定められています。下記のいずれかに該当する場合、2年度を上限に補助金申請が可能です。
(1)新築の建物に設備を導入する場合で、工程上、単年度での実施が困難な場合
(2)事業規模が大きく、単年度での実施が困難な場合(原則として補助事業に要する経費が1.5億円以上)
なお、複数年分の補助対象経費のうち、50%以上を本年度に割り当てている案件は、単年度申請と同等の採択優先順位で扱われます。20%以上50%未満の場合は、単年度申請案件よりも順位が後退します。つまり、複数年事業は本年度に多くの経費を支出する案件でないと、補助金の採択確率が低くなるといえます。
令和6年度事業の詳細は公式ホームページからご確認ください。
(令和6年度)災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金[災害時にも利用可能な天然ガス利用設備]
まとめ
今回ご紹介した「災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金(令和5年度補正予算)」は、環境負荷の低減と災害時のエネルギー供給の安定化を図る補助金です。
補助金の内容をおさらいすると、補助対象施設は、中圧導管または耐震性を向上させた低圧導管等でガスの供給を受けている指定避難所等で、補助対象となる設備は、停電時に発電または空調を開始・継続できる設備(停電対応型CGS・ 停電対応型GHP)でした。
この補助金を利用することで、環境に優しい天然ガスを使った設備を導入することができ、災害時においても安定的なエネルギー供給を確保することが可能です。災害時の対応強化などをお考えの場合はぜひ活用をご検討ください。