近年、大雨や台風などの災害が原因で、普段通りの日常生活を送ることが難しくなる事態が増えています。首都圏では直下型地震の危険性も指摘され、災害への備えは重要性を増してきました。
令和5年度、東京都では災害時への備えとして水や食料を貯蓄する私立学校の取組を支援する、「私立学校災害時対応環境整備費助成事業」を実施しています。これは災害時への備えを推進するとともに、賞味期限の過ぎた貯蓄食品等の食品ロス削減を促す制度です。
今回は私立学校災害時対応環境整備費助成事業の内容や申し込み方法について、お伝えします。
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この記事の目次
災害時における非常用食品の整備の重要性
災害時には、生命を守ることが最優先項目となります。災害そのものによる被害から逃れた後も、しばらくは普段どおりの生活ができなくなることも珍しくありません。普段から食料や生活に必要なものを備えておくことが、避難生活中の健康を守ることにつながるのです。
農林水産省 では、家庭内において、1週間分程度の水と食料の備えることを推奨しています。大人2人の家庭であれば水2L、レトルト食品や缶詰等18個、米4kgなどです。しかし、大量の食品等を備蓄しておくには、広い場所が必要です。そこで普段から食品を多めに購入し、古いものから使っていく、ローリング・ストックと呼ばれる方法も注目を集めています。
一方で、日常的に食品を消費する家庭と違い、学校や職場などでは古くなった備蓄食品が食品ロスとして廃棄されることも問題となっています。大量に保管された食品は、賞味期限を把握し、計画的に学校給食等に活用しなくてはなりません。
学校等での食品備蓄を促進し、食品ロスを減らすためには、長期的な備蓄計画が必要なのです。
私立学校災害時対応環境整備費助成事業とは
東京都では、都立学校に児童・生徒のための食糧・飲料水・毛布を備蓄するとともに、地域住民等の避難者に提供するためのセルフケアセット等を整備しています。さらに一時滞在施設に指定された都立高校では、帰宅困難者を対象として、最長3日間分の食糧や水が備えられています。
参考:東京都教育委員会 学校危機管理マニュアル 第3編 学校の危機管理
一方、私立学校では災害への備えは、施設ごとに判断されています。私立学校災害時対応環境整備費助成事業は、私立学校における災害時の備えを支援する取組のひとつです。
児童・生徒の安心安全な学校環境を整備するため、災害時における非常用食品の整備に要する経費の一部が助成されます。
本事業では、教育施設内に食料や水を備蓄するとともに、賞味期限の短くなった食品等を有効に活用する取組も要件のひとつとなっています。
助成対象学種
助成の対象となる学種は、以下のとおりです。
・都内の私立幼稚園(幼保連携型認定こども園を含む) |
・小学校 |
・中学校 |
・高等学校 |
・特別支援学校および専修学校(高等課程) |
助成対象経費
対象経費は、非常用食品の整備にかかる経費です。具体的には、以下の経費が助成されます。
■「保存年限が3年以上」の非常用飲料水および食糧の購入に要する経費
※令和5年4月1日以降に契約し、令和5年12月31日までに支払いや納品が完了するもの
なお、水や食糧の更新にあたっては、古い災害用備蓄食糧の有効活用に取り組むことが条件です。
助成対象限度額
助成対象限度額は、令和5年5月1日現在の「算定の対象となる生徒等の学年」の生徒数に3,000円を乗じた金額です。それぞれの学種における生徒等の学年は、以下のとおりです。
幼稚園 | 3歳児 |
小学校 | 第1学年・第4学年 |
中学校 | 第1学年 |
高等学校 | 第1学年 |
特別支援学校 | 幼・小・中・高に準ずる学年 |
専修学校・高等課程 | 第1学年 |
なお、算出の根拠となる学年は、購入品の対象学年を限定するものではありません。
また、本事業は令和5年度から令和7年度の3年間で実施されます。令和6年度以降の事業概要については、別途公開される予定です。
申請方法
それでは、申請の方法について見ていきましょう。申請には、申請に必要な書類を郵送にて送付する必要があります。事業全体のスケジュールと申請書類、締め切りをまとめました。
助成金の交付決定・交付のスケジュール
申請期間等のスケジュールは、以下のとおりです。
申請期間 | 令和5年12月1日(金)~令和6年1月10日(水)消印有効 |
助成金交付決定通知書送付 | 令和6年3月中旬 |
助成金交付 | 令和6年3月下旬 |
なお、事業全体のスケジュールは以下の図も参照してください。
出典:令和5年度 私立学校災害時対応環境整備費助成事業のしおり
申請に必要な書類
申請に必要な書類は、以下のとおりです。
- 助成金交付申請書
- 申請品目内訳表
- 食品ロス削減取組報告書
- 見積書
- 契約書または注文書・注文請書のセット
- 納品書
- 対象経費の支出を証する書類
- 購入品の写真
- 印鑑証明書
- 助成金交付請求書兼振込口座指定通知書
「食品ロス削減取組報告書」について
過去に整備した飲料水および食糧の保存年限が経過したために、新しいものに更新する場合には、「食品ロス削減取組報告書」の提出が必要です。これは既存の水や食糧を、食品ロスとしないための取組を報告するものです。
食品ロスの取組には、以下のようなものがあります。
■防災訓練等の行事や試食会の開催等における生徒・児童・園児等への配布
■フードバンクへの寄付
また、食品ロス削減の取組については、以下のサイトも参考にしてください。
食品ロス削減国民運動(No-Foodloss Project)※農林水産省など6府省が連携して実施 | https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/index.html |
東京都の食品廃棄物・食品ロス対策(東京都環境局) | https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/recycle/tokyo_torikumi/food_waste.html |
なお、新規に整備する備蓄品については、食品ロス削減取組報告書の提出は必要ありません。該当の項目の□にチェックを入れてください。
よくある質問
「私立学校災害時対応環境整備費助成事業のしおり」では、本事業に対するQ&Aが公開されています。ここではその中から、特に重要なものをいくつか見ていきましょう。
Q1. 高等学校通信制課程で、助成対象となる生徒の範囲は?
A1. 常時登校することが必要であると認める生徒が助成対象となります。具体的な算定対象生徒数については、事務局に問い合わせてください。
Q2. 「保存年限3年以上」とありますが、どのように判断すれば良いか?
A2. 購入した品に記載されている、「保存〇〇年」等記述で審査されます。
Q3. PTAからの寄付金をもとに備蓄食糧を購入する場合、助成対象になるか。
A3. PTA・保護者等の寄付金により購入したものは、助成対象外です。
Q4. 教職員のための水及び食糧は助成対象になるか。
A4. 助成対象外です。対象となるのは、「園児・児童・生徒」のために整備される水や食糧に限られます。
Q5. 以前購入した防災備蓄品には、助成金を申請していない。今回、保存年限を過ぎた備品を更新する予定だが、これも食品ロス削減の取組を行う必要があるか。
A5. 助成金を申請せずに購入した防災備蓄品であっても、更新の際に本助成金を申請する場合は、食品ロス削減の取組を実施する必要があります。その際には、食品ロス削減取組報告書を提出してください。
まとめ
幼稚園や学校は、大勢の子どもたちが生活する場所です。また、こうした施設は地域の中心部に位置し、公共性の高い場所でもあります。こうした場所に災害時の備蓄品が整備されることは、施設に通う児童・生徒だけでなく、その保護者や地域住民の安心にもつながります。
災害はいつ、どこで遭遇するかわかりません。自分の力で身を守ることが難しい子供たちの安全にこそ、日ごろの備えが大きな役割を果たします。幼稚園や学校に十分な備えを整備しておくことで、子どもたちが日々の生活をより安全に、楽しく過ごすことができるのです。