民間企業における障害者の法定雇用率の段階的な引き上げが迫るなか、2024年の4月から障害者雇用納付金関係助成金に「障害者雇用相談援助助成金」という新たな制度が加わりました。助成対象となるのは「障害者雇用に関する相談援助の業務や実務の経験を有する事業主」です。どのような支援が対象になるのか、支給額はいくらか、などを確認しましょう。
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この記事の目次
障害者雇用相談援助助成金とは
障害者雇用相談援助助成金は、障害者雇用を促進することを目的に、労働局に認定された事業者が、障害者雇用に関する知識やノウハウが不足している事業主に対して障害者の採用や雇用管理に関する支援を提供した場合に支給するものです。
障害者雇用相談援助助成金はどんな支援が対象?
助成金の対象となるのは「事業主に対する障害者の雇用管理に関する相談援助」ですが、具体的にどのような支援が対象になるのでしょうか。
以下の8つが、障害者の一連の雇用管理として挙げられています。
(1)経営陣の理解促進 |
経営や人材活用の方針の決定権等をもつ社長など経営陣に対して、障害者雇用促進法の趣旨やノーマライゼーションの観点から企業に求められている責任、障害者雇用を通じた経営改善について理解促進を図る |
(2)障害者雇用推進体制の構築 |
障害者雇用の担当者の明確化を図るとともに、属人化・形骸化しないよう、組織として障害者雇用を推進していくための実効性のある体制の構築を図る |
(3)企業内での障害者雇用の理解促進 |
経営陣や人事部門の考える障害者雇用の方針、障害者雇用のメリット、働く上で必要な合理的配慮について、障害者を配属する現場の社員の理解促進を図る |
(4)当該企業内における職務の創出・選定 |
業務の選定やそれに伴い必要となる業務プロセス・組織体制の見直し、受け入れ部署の検討等に当たり、企業全体を把握して分析を行う |
(5)採用・雇用方針の決定 |
(4)の職務の創出・選定の結果を踏まえ、求めるスキルや経験、人物像の整理等採用・雇用方針を決定する |
(6)求人の申し込みに向けた準備など募集や採用活動の準備 |
労働条件の設定、募集媒体の選定、応募状況に応じた条件の見直し、書類選考や採用面接におけるチェックポイントの作成など、募集や採用活動の準備を行う |
(7)企業内の支援体制等の環境整備 |
労働者の障害の特性に配慮した施設・設備の整備や援助する者の配置など、必要な支援体制等の整備について検討し導入する |
(8)採用後の雇用管理や職場定着等 |
採用後における、業務・作業環境・職場の人間関係等職場適応上の課題が生じた際の課題の把握や予防、解決するための仕組みや体制づくりを行う。また、中長期的な活躍も視野に、職場適応状況や本人の希望を踏まえ、業務範囲や勤務時間の拡大等のキャリアアップの仕組みづくりを行う |
障害者雇用相談援助助成金は誰がもらえる?
本助成金は「対象障害者の雇い入れを前提とした支援を、障害者の雇用がない、または雇用率目標に達していない中小企業等に対して行う認定事業者」に対し支給されるものです。
障害者雇用相談援助助成金の認定事業者とは
認定事業者とは、一定の要件を満たす事業者として労働局から認定を受けた事業者のことですが、その認定要件にはどのようなものがあるのでしょうか。主なものとして「法人要件」「人員要件」「その他」があります。
法人要件 |
障害者の一連の雇用管理に関する相談援助の業務の経験を有すること または障害者の一連の雇用管理に関する実務の経験を有すること |
人員要件 |
・障害者の一連の雇用管理に関し、5年以上の業務または実務の経験を有し、2年以上の総括的な指導監督の経験を有する事業実施責任者 ・障害者の一連の雇用管理に関し、3年以上の業務または実務の経験を有する事業実施者を配置していること |
その他 |
・法定雇用障害者数以上の障害者を雇用していること ・欠格事由に該当しないこと |
認定を受ける場合は、主となる事業所を管轄する労働局に申請書類を提出します。認定申請については障害者雇用相談援助事業者認定申請マニュアルも参照してください。
障害者雇用相談援助助成金の対象者とは
主な支給要件は以下のとおりです。次のいずれにも該当するものに対して助成金が支給されます。
(1)対象障害者の雇入れおよび雇用の継続を図るために必要な雇用相談援助事業を行う |
(2)障害者雇用相談援助事業を適正に行う能力を有する者として、当該事業者の住所地を管轄する都道府県労働局長の認定を受けている |
(3)次に掲げるいずれかに該当するもの ①その事業所において対象障害者の雇入れ及びその雇用の継続を図るための措置を行った利用事業主に対して、相談援助事業を行ったもの ②その事業所において対象障害者の雇入れ及びその雇用の継続を行った利用事業主に対して、相談援助事業を行ったもの |
障害者雇用相談援助助成金の対象者障害者とは
- 身体障害者
- 知的障害者
- 精神障害者保健福祉手帳をお持ちの精神障害者
障害者雇用相談援助事業の対象となる障害者は、週の所定労働時間が 20 時間以上(重度身体障害者、重度知的障害者または精神障害者である特定短時間労働者の場合は週所定労働時間 10 時間以上)の常用雇用労働者(雇入れから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる方)です。
障害者雇用相談援助助成金はいくらもらえる?
認定事業者に対し支給される金額は以下のとおりです。
支給対象 | 支給額 |
(1)認定事業者が障害者雇用相談援助事業を行った結果、支援を受けた事業主が障害者の雇入れのための措置を行った場合 | 60万円(80万円) |
(2)認定事業者が障害者雇用相談援助事業を行った結果、支援を受けた事業主が対象障害者を雇い入れ、6か月以上その雇用が継続した場合 | (1)の金額に、一人当たり7.5万円(10万円)上乗せ <4人まで> |
※( )内は、認定事業者が中小企業事業主または除外率設定業種事業主(特に除外率引き下げによる影響の大きい企業)に相談援助を行った場合の支給額です。
障害者雇用相談援助助成金はいつ申請できる?
障害者雇用相談援助助成金は、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構によって提供されます。申請受付は令和6(2024)年4月1日より開始しています。
障害者雇用相談援助助成金 活用の注意点
認定事業者が実施する障害者の雇用管理にかかる支援は、原則として、利用する事業主に無償で提供されることが想定されています。
ただし、利用事業主のニーズに応じて、追加的な相談援助を適切な範囲内で有料により実施することもできます。
本制度で助成金を受け取るには利用事業主が公共職業安定所に求人申込をすることが要件の一つです。もし事業主が求人申込を行えず、その結果認定事業者が助成金を受け取れない場合は、この支援に関する費用を利用事業主に請求することは原則できません。
まとめ
障害者雇用の相談や支援経験をお持ちの事業主の方々は、4月から新設された「障害者雇用相談援助助成金」を活用し、障害者雇用推進に向けた取り組みをさらに強化してみてはいかがでしょうか。詳しい申請方法や支援内容に関しては(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構の公式サイトをご覧ください。
障害者雇用を通じて、多様な人材が活躍する職場環境の構築を目指しましょう。
参考:障害者雇用相談援助助成金