厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症対策として、新たに特別休暇の規定を整備した中小企業事業主を支援するため、既に今年度の申請の受付を終了していた時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)について、特例的なコースを新たに設け、速やかに申請受付を開始すると発表しました。
令和2年3月10日追記
令和2年3月9日より、時間外労働等改善助成金(※令和2年4月1日以降は「働き方改革推進支援助成金」に名称変更予定)の職場意識改善特例コースの受付が開始されました。ポイントをまとめましたので、ご確認ください。
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この記事の目次
時間外労働等改善助成金 職場意識改善特例コースのポイント【令和2年3月10日更新】
新型コロナ感染症対策の特別休暇の取得促進に向けて実施する、支給対象となる取り組みにかかる費用の一部を助成します。
【対象事業主】
労働者災害補償保険の適用事業主で、特別休暇の規定の整備を行う中小企業の事業主
【主な要件】
-事業実施期間中に新型コロナウイルスの対応として労働者が利用できる特別休暇の規定を整備すること
-支給対象となる取り組みを1つ以上実施すること
支給対象となる取組の実施に要した費用のうち、これにかかる経費として認められているものが、謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、広告宣伝費、印刷製本費、備品費、機械装置等購入費、委託費、です。
【助成金額】
・対象経費の合計額×補助率3/4
・1企業当たりの上限額(50万円)
なお事業規模30名以下かつ労働能率の増進に資する設備・機器等の経費が30万円を超える場合は、補助率4/5となります。
【実施期間】
令和2年2月17日~3月25日
※令和2年2月17日から同年5月31日までの取組について、令和2年4月以降に申請開始する「働き方改革推進支援助成金」でも、助成を行う予定です。
【交付申請期限】
令和2年3月13日(金)必着
※令和2年3月14日以降に交付申請がなされたものについては、令和2年4月以降に交付決定を行います。
【申請フロー】
・交付申請書を提出(申請期限3月13日)→交付決定
・事業実施期間内(2月17日~3月25日)に「特別休暇の整備」と「支給対象となる取り組み」を実施します。なお支給対象の取り組みは事業実施期間中であれば、交付決定前でも対象になります。
・支給申請書の提出(申請期限3月25日)→支給決定後、助成金支給
前述のとおり、「令和2年2月17日から5月31日までの取り組みについて、令和2年4月以降に申請開始する働き方改革推進支援助成金でも、助成を行う予定」とありますし、「令和2年3月14日以降に交付申請がなされたものについては、令和2年4月以降に交付決定を行います」とありますので、この短い期間で手続きができなかった場合でも、完全に助成を受けるチャンスを逃すわけではないようですが、詳しくは最寄りの都道府県労働局へお問い合わせください。
<参考>時間外労働等改善助成金とは
「時間外労働等改善助成金」は労働環境の見直しをお考えの中小企業事業主の皆さまが活用できる助成金で、5つのコースが存在し、長時間労働の改善には「時間外労働上限設定コース」、勤務終了から次の勤務までに一定時間以上の休息時間を確保するなら「勤務間インターバル導入コース」、時間外労働の制限や仕事と生活の調和のためにテレワークを導入するなら「テレワークコース」というようにコースごとに目的が異なり、助成内容も異なるものです。
特例的なコースが設けられた「職場意識改善コース」は、もともとは有給休暇等の取得促進と所定外労働の削減に取り組むことを目的としたコースでした。
<参考>時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)の対象事業者とは
この職場意識改善コースはほかのコースより一足早く受付を終了してしまいましたが、
ほかのコースと比べて対象事業主や成果目標がシンプルであったように感じます。
対象事業主
このコースの対象となる事業主は以下の要件を満たす必要があります。
①交付決定日より前の時点で、全ての事業場の就業規則等に、病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇などの「特別休暇」のいずれかが明文化されていないこと
②前年における労働者の月間平均所定外労働時間が10時間以上であること
③労災保険の適用事業主であること
④中小企業事業主であること
①について、平たくいうと、全事業場の就業規則等に病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇などの「特別休暇」の規定の整備がされていないことを意味します。
②については、前年度の所定外労働時間(社内で定める勤務時間を越えて働いた時間)の月平均が10時間以上であるということを指します。
成果目標「有休の取得促進と、所定外労働削減」とは
今年の成果目標は以下の2つでした。
①年次有給休暇の取得促進
②所定外労働の削減
昨年(平成30年度)の同コースの成果目標は、事業主によっては「有休の年間平均取得日数を4日以上増加させる」等がありましたが、今年は取得日数に関する目標はありませんでした。これは今年の話であって来年もそうなるかは定かではありませんが、簡単に内容を確認しておきましょう。
①年次有給休暇の取得促進
年次有給休暇の取得促進とは、具体的には特別休暇のいずれか1つ以上を全ての事業場に新たに導入することを指します。特に配慮を必要とする労働者について次の(1)~(3)のいずれかの内容を満たす規定を就業規定に新たに定めることが求められます。
(1)病気休暇
※長期にわたる治療等が必要な疾病等、健康の保持に努める必要がある労働者を支援する休暇
(2)教育訓練休暇
※労働者が自発的な職業能力開発を図るための休暇
(3)ボランティア休暇
※地域活動、ボランティア活動へ参加する労働者に対し、その参加を可能にするよう付与される休暇
目標の達成となるには、事業実施期間中に、就業規則の作成・変更を行い必要な手続きを経て施行されていることが必要です。規定を行う場合は対象となる特別休暇の名称、対象者、休暇日数、休暇申請方法、有休か無給かについて就業規則に明文化する必要があります。
②所定外労働の削減
所定外労働の削減について、労働者の月間平均所定外労働時間数を前年度と比較して5時間以上削減させることが求められます。
助成対象となる取り組みをみてみよう
助成対象となる取り組みは「時間外労働上限設定コース」「勤務間インターバル導入コース」と同様で、以下の取り組みから1つ以上を実施することが必要です。
①労務管理担当者に対する研修
②労働者に対する研修、周知・啓発
③外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
④就業規則・労使協定等の作成・変更(計画的付与制度の導入など)
⑤人材確保に向けた取り組み
⑥労務管理用ソフトウェアの導入・更新
⑦労務管理用機器の導入・更新
⑧デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
⑨テレワーク用通信機器の導入・更新
⑩労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)
たとえば「生産性を上げるために設備・機器の導入をしたい!」と考えたときに、「時間外労働等改善助成金」では複数のコースでその取り組みが助成対象として上がっています。そのため、取り組み内容だけでなく、対象事業主の要件、助成金額に違いはあるか、どのような目標を達成したいのかに焦点をあててコースを選ぶ必要があると言えます。
時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)の支給額を確認
簡単に今年の職場意識改善コースの支給額を確認しておきましょう。成果目標は以下の2つでした。
①年次有給休暇の取得促進
②所定外労働の削減
「成果目標」の達成状況に応じて、支給対象となる取り組みの実施に要した経費の一部が支給されます。
支給額(以下のいずれかの低い方の額)
●企業あたりの上限額
●対象経費の合計額×補助率(3/4もしくは1/2)※
※常時使用する労働者数が30名以下かつ、助成対象の取り組みの⑥~⑩を実施する場合でその所要額が30万円を超える場合は補助率4/5になります
補助率および上限額は以下の表をご覧ください。
出典:時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)のご案内
https://www.mhlw.go.jp/content/000498236.pdf
この表から、両方の目標を達成した場合は最大100万円(補助率3/4)、
所定外労働の削減が未達成でも、有休の取得促進(特別休暇の導入)が達成できれば最大50万円(補助率1/2)が助成されるということがわかります。
働き方改革、福利厚生の視点から時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)を考える
今年の時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)では有休の取得促進のために「特別休暇の導入」が求められていました。特別休暇とは治療が必要な労働者、職業能力訓練を自発的に受けようとする労働者、ボランティア活動の参加を希望する労働者などを対象にした休暇のことでしたね。このように必要に応じた休暇制度を設けることは、休暇を利用する人の多様な働き方を認めるだけでなく、人材確保や労働者の満足度向上にもつながると考えられます。
働き方改革において「個々の事情に応じた多様な働き方を可能にし、働き手を増やすこと」「生産性の向上を図り長時間労働を見直すこと」は重要なポイントになります。働き手を増やすという文脈では女性や高齢者の労働が多く取り上げられますが、個々のニーズにあった制度を企業が設けることで、働きづらいと考えていた人々が安心して働けるようにすることも働き手の増加に役立つのではないでしょうか。
福利厚生の面でも、有休の取得促進はプラスになると考えられます。日本では有休の取得率の低さが課題となっており、2019年4月から「年次有給休暇の年5日取得が義務化」されることになりました。企業が有休の取得促進に取り組むことは、労働者の健康管理やワークライフバランスの推進にもつながると考えられます。福利厚生を充実させ、働きたい・働き続けたいと思ってもらえるような職場環境づくりを行うことは労働者と企業の双方にとってプラスになることでしょう。
時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)のメリット、デメリット
前述のとおり、メリットとしては
●人材確保
●労働者の満足度向上
●生産性の向上
●企業のイメージアップ
●所定外労働時間の削減
などが上げられます。
ではデメリットにはどものようなものがあるでしょうか。
「特別休暇」のいずれかの導入は、導入したい事業場が行えば良いのではなく、全ての事業場で行うことが必要なので、選択肢がないという点はデメリットと言えるかもしれません。また、事業実施のために、労働時間や有休に関して労使で話し合う機会を設けて証拠となる記録をとる、苦情、意見を受け付ける担当者の選任、労働者への事業計画の周知などが必要で、これら「実施体制の整備のための措置」が1つでも実施されなかった場合は助成金全額が不支給となります。単に助成対象となる取り組みを行うだけではないという点は、そのための業務が生じるという意味でデメリットと言えるのではないでしょうか。
まとめ
新型コロナウイルスで特別休暇の規定整備が急務となり、時間外労働改善助成金の特例的なコースの申請受付が開始されました。2月17日以降に行った取組は、交付決定前でも特例として助成の対象となります。
▼時間外労働等改善助成金(テレワークコース)の特例についてはこちら
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