本年度は9月以降に立て続けに大型の台風が日本に上陸し、全国各地では河川の氾濫や浸水などによる非常に大きな被害が発生しました。
家屋や事業所、交通インフラへの被害は平成30年7月に発生した激甚災害「西日本豪雨」を上回る規模で、東日本大震災の復旧・復興の最中にある福島県や宮城県も中心的な被災地の一つとなっています。
政府は本年度最も大きな被害をもたらした「台風19号」を非常災害・激甚災害に指定し、被災地に対する集中的な支援を行う為5000億の予算を投じる事を決定しています。
具体的な支援策は政府が既に発表している「被災者の生活と生業(なりわい)の再建に向けた対策パッケージ」にまとめられており、制度の整備が完了したものから順次実施されていく予定です。
今回はその中から、被災地域の中小企業等で構成されるグループが行う施設・設備の復旧・整備を支援する「中小企業等グループ施設等復旧整備補助金」について紹介します。
この記事の目次
被災者の生活と生業の再建に向けた対策パッケージとは?
「被災者の生活と生業再建に向けたパッケージ」とは、台風15号と19号をはじめとした一連の豪雨・暴風によって被害を受けた地域の支援を目的に、地域ごとの特性を踏まえつつ被災者の生活と生業を再建するための緊急の施策を下記の4つの分野にまとめたものです。
被災地域への緊急対応策
①生活の再建
・廃棄物土砂の撤去など
・被災者のニーズに応じた住宅再建等
・停電・断水の解消など
・地域住民の交通手段の確保
・切れ目のない被災者支援
・被災者向けの特別の金融支援
②生業の再建
・中小・小規模事業者の支援等~寄り添い型支援~
・農林漁業者の支援~一日も早い営農再開~
・観光需要喚起に向けた対策
・被災地域の特別の雇用対策
③災害応急復旧
・河川・道路等の復旧、二次災害の防止
・災害復旧事業の迅速化
④災害救助等
・仮説住宅等の応急救助等
・自衛隊等の活動
今回取り上げる「中小企業等グループ施設等復旧整備補助金」は上記の4つの分野の緊急対応策の1つ「②生業の再建」に向けた支援制度で、「中小・小規模事業者の支援など~寄り添い支援~」にあたります。
中小企業等グループ施設等復旧整備補助金(令和元年台風19号)
この補助金制度は、台風19号で特に被害が甚大だった地域を対象に、中小企業等のグループが行う復旧・復興に向けた取り組みを支援する為、必要な経費に対し最大15億円(補助率3/4)の手厚い補助を行います。
また、東日本大震災の被害が残る宮城県と福島県の一部の事業者等は、県と国によって必要な経費の全額(最大5億円)が補助される場合があります。
【中小企業庁HPより】
申請が可能な中小企業等グループとは?
商店街組織や、事業組合などの申請を想定した制度ですが、申請要件は「2者以上の中小企業者等で構成されるグループが、共同事業を盛り込んだ「復興事業計画」を策定し県の認定を受ける事」となっている為、特定の組織(組合や商工会等)に加盟していなくても下記のいずれかの機能を持ったグループであれば申請を行う事は可能です。
【中小企業等グループの要件】
【概要】
台風19号により被災された中小企業者等の施設・設備の復旧・整備を支援する補助金制度です。
【公募期間】
2019年11月29日〜
▼各県のスケジュールはこちら
福島県
第2次 受付期間:令和元年12月23日(月)~令和2年1月24日(金)
第3次 受付期間:令和2年1月下旬から開始予定
長野県
第1次 受付期間:令和元年12月18日(水)~令和2年1月9日(木)
第2次 受付期間:令和2年1月10日(金)~令和2年1月23日(木)
栃木県
第2回 受付締切:令和2年1月17日(金)
第3回 受付締切:令和2年2月28日(金)
宮城県
第2回 受付締切:令和2年1月28日(火)
【対象者】
中小企業等のグループ
※グループには中堅企業を含む事が可能
【補助率①】
台風19号で被害を受けた事業者に対し下記の補助率を適用
中小企業者等:3/4以内
中堅企業:1/2以内
【補助率②】
福島県・宮城県の以下の要件を満たす事業者は5億円まで全額補助(国2/3・県1/3で負担)
①国などによる東日本大震災からの復旧・復興支援を活用した下記のいずれかの事業者
・津波や地震によって直接被害を受けた事業者
・風評被害等の二次被害などで業績が悪化した事業者
・原発事故による避難を経験した事業者
②売上高が東日本大震災以降20%以上減少している事業者
③交付申請時に東日本大震災からの復旧・復興に伴う債務を抱えている事業者
【上限額】
15億円/1事業者
【対象経費】
①施設
復興事業計画の実施に不可欠と認められる事業所や倉庫などの施設の整備費
②設備
復興事業に係る経費のうち中小企業等グループ又はその構成員の資産として計上する設備費
③宿舎整備のための事業
新分野事業に資する宿舎の整備費など※既存の宿舎の復旧については認められません。
④商業機能の復旧促進のための事業
共同店舗の設置費,共同店舗及び街区の再配置に付随して行う駐車場や街灯、コミュニスペースの整備費など
【事業の流れ】
①2者以上の中小企業者等でグループを作ります。
②「復興事業計画」を策定し、県の認定を受けます
③補助金の交付申請を行う
④事業を実施
⑤補助金請求
災害対策補助金の特徴をチェック
事業の流れは一般的な補助金制度と同様ですが、災害からの復旧・復興を目的とした補助金制度では交付決定日前に実施した施設・設備の復旧についても補助対象として認められる場合があります。
交付決定前の事前着工が補助対象となるのは通常の補助金制度とは大きな違いになりますので、申請を行う場合は既に完了した復旧事業が申請対象となるかどうかの確認も忘れずに行っていただきたいと思います。
「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業」経産省HP
https://www.meti.go.jp/press/2019/11/20191129003/20191129003.html
まとめ
今回紹介した「中小企業等グループ施設等復旧整備補助金」は、台風19号で被災した地域に向けた最優先の復旧・復興支援策という事で、「被災者の生活と生業(なりわい)の再建に向けた対策パッケージ」の中でも最も早い実施となりました。
被災地域にはグループとしての申請が難しい事業者の方も、数多く多くいらっしゃる事とは思いますが、今後は被災した小規模事業者が単独で申請を行う事ができる「被災小規模事業者再建事業(補助金)」が12月上旬以降に実施される予定となっていますのでご安心ください。