「退職給付金」と検索したものの、「結局、自分は何をいくらもらえるのか分からない」と感じていないでしょうか。結論から言えば、「退職給付金」という名前の単一制度は国にも会社にも存在しません。会社から受け取る退職金と、退職後に国からもらえる失業手当・傷病手当金などをまとめて呼ぶ「総称」です。
2026年8月1日から雇用保険の基本手当日額が改定され、45〜59歳の上限は8,870円から9,110円、30歳未満は7,255円から7,450円へ引き上げられました。2025年4月の雇用保険法改正で、自己都合退職の給付制限が原則2か月から1か月へ短縮された点と合わせて、退職後に受け取れる金額と時期はこの数年で大きく変わっています。
一方で、「退職給付金が最大○○万円もらえる」とうたう民間サポート業者の広告も急増しています。国民生活センターは2025年12月3日、この種の申請サポートに関する消費者相談が2021年度の42件から2024年度には217件(3年で約5倍)に急増したとして注意喚起を公表しました。厚生労働省・消費者庁と連携した啓発資料も作成されています。
この記事では、退職給付金の全体像を「会社からもらえるお金」と「国からもらえるお金」に整理し、年齢・退職理由別の総額シミュレーション、退職金の税金、民間サポート業者を利用する際の注意点、退職前後に必要な健康保険・年金・住民税の手続きまでを一気通貫で解説します。
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この記事の目次
退職給付金とは?「退職給付金」という単一の制度は存在しない
退職給付金とは、会社から支払われる退職金(退職給付)と、退職後に国からもらえる公的給付をまとめた「総称」であり、この名前の単一制度が国にも会社にもあるわけではありません。「退職給付」は本来、退職一時金や企業年金を指す人事・会計上の用語ですが、一般には失業手当なども含めた「退職したらもらえるお金」全般を指す言葉として使われています。自分が受け取れるお金を漏れなく確認するには、「会社」と「国」の2つの財源に分けて考えるのが近道です。
「退職給付金」の正体は退職金と公的給付の総称
ハローワークにも健康保険にも、「退職給付金」という名称の給付は存在しません。検索でたどり着いた方が実際に探している制度は、次の4つのいずれかであることがほとんどです。
| 「退職給付金」が実際に指しているもの | 正式名称 | 支払い元 |
|---|---|---|
| 退職時に会社からまとめて受け取るお金 | 退職一時金・企業年金(退職給付) | 勤務先の企業 |
| 65歳未満で退職して求職活動をするときのお金 | 基本手当(失業手当) | ハローワーク |
| 65歳以上で退職したときのお金 | 高年齢求職者給付金 | ハローワーク |
| 病気・ケガで働けず退職したときのお金 | 傷病手当金(継続給付) | 加入していた健康保険 |
どれに当てはまるかは、退職時の年齢・退職理由・退職後に働けるかどうかで決まります。まずは自分がどのケースかを確認してから、条件と金額を調べるのが最短ルートです。
会社からもらえるお金と国からもらえるお金の内訳
退職給付金は、大きく「会社」と「国」の2つの財源に分かれます。会社からは退職一時金と企業年金、国からは雇用保険と健康保険の給付が中心です。厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、退職給付制度がある企業の割合は74.9%で、約4社に1社は退職金制度自体がありません。会社の退職金だけを当てにせず、国の給付も忘れずに確認することが大切です。
| 財源 | 主な給付 | 受け取れる条件 |
|---|---|---|
| 会社 | 退職一時金・企業年金・中退共 | 就業規則・退職金規程に定めがある |
| 国(雇用保険) | 基本手当(失業手当)・高年齢求職者給付金・再就職手当・教育訓練給付金など | 雇用保険の被保険者期間の要件を満たす |
| 国(健康保険) | 傷病手当金の継続給付 | 病気・ケガで働けず退職した |
| 市区町村 | 住居確保給付金など | 離職後2年以内で家賃に困っている |
会計・人事用語としての「退職給付制度」との違い
「退職給付金制度」「退職給付制度」と検索した場合、企業会計の専門用語にたどり着くこともあります。会計上の「退職給付」とは、従業員の退職後に支給される給付全般を指し、企業はその将来の支払見込額を「退職給付債務」として貸借対照表に計上します。企業年金や退職一時金の原資をどう積み立てているかを表す概念で、退職する個人が受け取る手続きとは別の話です。個人が「自分はいくらもらえるのか」を知りたい場合は、会計上の退職給付ではなく、勤務先の退職金規程と雇用保険・健康保険の給付を確認しましょう。
退職時にもらえる会社と国のお金一覧【2026年8月改定対応】
退職時にもらえるお金は、会社からの退職金3種類と、国からの給付9種類の合計12種類に整理できます。年齢・退職理由・退職後の状況で使える組み合わせが変わるため、まずは一覧で全体像を把握しましょう。個別給付の詳細な受給条件や金額計算は、各専門記事で解説しています。会社からもらえる3種類のお金
会社からもらえるお金は、退職時にまとめて受け取る「退職一時金」、分割で受け取る「企業年金」、中小企業が加入する共済制度の「中退共」に大きく分かれます。両方を併用している企業も少なくありません。
| 制度 | 受け取り方 | 請求先 |
|---|---|---|
| 退職一時金 | 退職時に一括 | 勤務先(原則手続き不要) |
| 確定給付企業年金(DB) | 年金または一時金 | 企業年金基金・勤務先 |
| 企業型確定拠出年金(DC) | 原則60歳以降に年金または一時金 | 運営管理機関(転職時は移換手続きが必要) |
| 中小企業退職金共済(中退共) | 退職後に一括または分割 | 勤労者退職金共済機構 |
企業型DCに加入していた方が60歳前に退職する場合は、退職後6か月以内にiDeCoや転職先のDCへ移換する手続きが必要です。放置すると自動移換となり、運用されないまま管理手数料だけが引かれ続けるため注意しましょう。中退共の詳しい仕組みは、以下の記事で解説しています。
国からもらえる9つの給付を一覧で比較
国からもらえる退職給付金の中心は、雇用保険の失業手当(基本手当)と健康保険の傷病手当金です。65歳以上は高年齢求職者給付金、早期再就職者は再就職手当と、状況に応じて使える給付が変わります。2026年8月1日改定後の金額を反映した一覧が下記です。
| 種類 | もらえる人 | 金額の目安 | 申請先 |
|---|---|---|---|
| 失業手当(基本手当) | 65歳未満で求職活動をする人 | 日額2,562〜9,110円 × 90〜330日 | ハローワーク |
| 高年齢求職者給付金 | 65歳以上で求職活動をする人 | 日額の30日分または50日分(最大約37.3万円) | ハローワーク |
| 特例一時金 | 季節労働などの短期雇用特例被保険者 | 基本手当日額の40日分 | ハローワーク |
| 再就職手当 | 失業手当の受給中に早期再就職した人 | 残りの基本手当の60%または70% | ハローワーク |
| 広域求職活動費・移転費 | 遠方での面接や転居を伴う再就職をする人 | 交通費実費+着後手当38,000〜95,000円 | ハローワーク |
| 教育訓練給付金 | 指定講座でスキルアップする人 | 受講費用の最大80%(年間上限64万円) | ハローワーク |
| 職業訓練受講給付金 | 失業手当を受給できない求職者 | 月10万円+通所手当 | ハローワーク |
| 傷病手当金(継続給付) | 病気・ケガで働けず退職した人 | 標準報酬日額の3分の2 × 通算1年6か月 | 加入していた健康保険 |
| 住居確保給付金 | 離職・廃業後2年以内で家賃に困っている人 | 自治体が定める上限額 × 最大9か月 | 市区町村の自立相談支援機関 |
それぞれの給付には、被保険者期間・年齢・離職理由などの受給条件があります。65歳以上向けの高年齢求職者給付金、再就職時の再就職手当、スキルアップ時の教育訓練給付金、家賃補助の住居確保給付金、失業手当が受給できない場合の求職者支援制度は、それぞれ専門記事で詳細を解説しています。
会社からもらえる退職金はいくら?相場・税金・受け取り方
会社からもらえる退職金は、大企業の大卒定年退職者の平均で1,896万円、中小企業のモデル退職金で約1,150万円です。ただし約4社に1社は退職金制度自体がなく、勤続年数・退職理由でも大きく変わります。退職金は税制優遇が手厚く、勤続20年以上なら「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」まで非課税で受け取れます。
退職一時金・企業年金(DB・DC)の違い
退職一時金は、就業規則等の定めに基づき退職時に一括で支払われるお金です。企業年金には、あらかじめ給付額が約束される確定給付企業年金(DB)と、会社が拠出した掛金を従業員自身が運用する企業型確定拠出年金(DC)があります。DBは年金または一時金として、DCは原則60歳以降に受け取ります。
中小企業では国の退職金共済制度である中小企業退職金共済(中退共)を利用しているケースも多く、この場合は退職後に中退共へ請求すると本人の口座へ直接振り込まれます。DCに加入していた方は、退職時に「加入者資格喪失手続」を行い、資産を転職先のDCまたはiDeCoへ移換する必要があります。
退職金の相場は大企業1,896万円・中小企業約1,150万円
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者の平均退職給付額は1,896万円です。一方、東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」では、中小企業の大卒モデル退職金(定年)は約1,150万円と、企業規模によって大きな差があります。
同じ会社でも自己都合退職は会社都合退職より低く設定されているケースが一般的です。金額の目安は必ず自社の退職金規程で確認しましょう。就業規則の別規程になっていることが多く、退職前に人事部へ問い合わせれば見積額を教えてもらえるケースもあります。
退職所得控除で1,500万円まで非課税になるしくみ
退職金には所得税・住民税がかかりますが、退職所得控除により税負担は大幅に軽くなります。控除額は勤続20年以下なら「40万円×勤続年数」(最低80万円)、20年超なら「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」です。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 10年 | 400万円 |
| 20年 | 800万円 |
| 30年 | 1,500万円 |
| 38年 | 2,060万円 |
例えば勤続30年なら1,500万円までの退職金には所得税がかかりません。さらに控除後の金額の2分の1だけが課税対象になるため、「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出しておけば、原則として確定申告も不要です。この申告書を提出しないと、退職金全額に一律20.42%の税率で源泉徴収されるため、忘れずに提出しましょう。
国からもらえる退職給付金はいくら?年齢・退職理由別シミュレーション
国からもらえる退職給付金の総額は、退職時の年齢・退職理由・勤続年数の3つで大きく変わります。ここでは代表的な5パターンについて、2026年8月1日改定後の基本手当日額をもとに概算を試算しました。
| ケース | 失業給付の日数 | 失業給付の総額目安 | 受給開始までの期間 |
|---|---|---|---|
| 35歳・自己都合・勤続10年 | 120日 | 約76万円 | 約1か月半 |
| 45歳・会社都合・勤続20年 | 270日 | 約182万円 | 約3週間 |
| 60歳・定年・勤続38年 | 150日 | 約100万円 | 約3週間 |
| 65歳以上・勤続1年以上 | 50日(一時金) | 最大約37.3万円 | 約1か月 |
| 病気で退職・被保険期間1年以上 | 最大1年6か月(傷病手当金) | 標準報酬日額×2/3×日数 | 初回申請から約2週間〜1か月 |
35歳・自己都合退職(勤続10年・月収30万円)
勤続10年で自己都合退職した35歳の場合、失業手当は120日分でおよそ76万円が目安です。賃金日額は10,000円(月収30万円×6か月÷180)、基本手当日額は約6,307円となります。自己都合のため7日間の待期と1か月の給付制限があり、受給開始は退職の約1か月半後です。会社に退職金制度があれば、勤続10年・自己都合の相場は100万〜300万円程度が加わります。
45歳・会社都合退職(勤続20年・月収40万円)
勤続20年で会社都合退職した45歳の場合、失業手当は270日分でおよそ182万円と、自己都合の倍以上になります。賃金日額13,333円、基本手当日額は約6,744円です。会社都合(特定受給資格者)は給付制限がなく、7日間の待期後すぐに支給が始まります。
さらに会社都合退職なら、国民健康保険料の軽減措置も使えます。前年の給与所得を100分の30とみなして保険料が計算されるため、年間で数万〜数十万円の負担減につながるケースもあります。
60歳・定年退職(勤続38年・月収45万円)
60歳の定年退職は、失業手当が最大150日分でおよそ100万円、これに会社の退職金が加わります。60〜64歳の基本手当日額の上限は7,830円(2026年8月1日改定)で、賃金日額15,000円なら日額は6,750円です。定年退職は正当な理由のある離職として扱われるため、給付制限はありません。
大学卒定年退職者の平均退職給付額1,896万円と合わせると、総額2,000万円近くになる計算です。すぐに働かず休養する予定がある場合は、定年退職者向けの受給期間延長(最長1年)を申請しておくと、あとから失業手当を受け取れます。
65歳以上で退職したケース
65歳以上で退職した場合は失業手当ではなく高年齢求職者給付金の対象となり、基本手当日額の30日分または50日分を一時金として一括で受け取ります。上限額は50日分で約37.3万円です。金額は下がりますが、65歳未満と違って老齢年金と同時に受け取れる点が大きな違いです。詳しい受給条件と計算方法は下記の専門記事で解説しています。
病気・ケガで退職したケース
病気やケガで働けないまま退職した場合は、健康保険の傷病手当金を退職後も継続して受け取れる可能性があります。継続給付の条件は、退職日までに継続して1年以上健康保険の被保険者であったことと、退職時に傷病手当金を受けているか受けられる状態であることです。支給額は1日あたり標準報酬日額の3分の2で、支給開始日から通算1年6か月まで受け取れます。
働ける状態にないときは失業手当と同時には受給できません。この場合はハローワークで受給期間の延長を申請しておき、回復してから失業手当を受け取る流れになります。
退職給付金はいつ・どうやってもらう?申請先と振込までの期間
退職給付金は「退職したらすぐ振り込まれる」わけではなく、給付ごとに支給までのタイミングと申請先が違います。自動的に振り込まれるのは会社の退職一時金くらいで、それ以外は自分で申請しないと1円も受け取れないプル型の制度です。
給付ごとの振込タイミング一覧
会社の退職一時金は退職後1〜2か月、失業手当は自己都合退職なら約1か月半、傷病手当金は初回申請から約2週間〜1か月が目安です。生活費に余裕がない状態で退職する予定なら、給付ごとの入金タイミングを事前に把握し、退職前に一定額の生活資金を用意しておくと安心です。
| もらえるお金 | 初回振込までの目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 退職一時金 | 退職後1〜2か月 | 会社の給与規程で支給日を確認 |
| 失業手当(自己都合退職) | 退職後 約1か月半 | 7日待期+原則1か月の給付制限あり |
| 失業手当(会社都合退職) | 退職後 約3週間〜1か月 | 7日待期のみで給付制限なし |
| 高年齢求職者給付金 | 申請後 約1か月 | 一時金で一括振込 |
| 再就職手当 | 就職後 1〜2か月 | 採用証明書の提出が必要 |
| 傷病手当金 | 申請後 約2週間〜1か月 | 医師の証明書欄への記入が必要 |
| 中退共の退職金 | 請求後4〜7週間 | 本人口座へ直接振込 |
給付ごとの申請先と必要書類
申請先が給付ごとに分かれているため、どこに何を出すのかを整理しておきましょう。特に注意したいのが失業手当の「離職日の翌日から1年」という受給期間です。所定給付日数が330日ある方が申請を4か月遅らせると、1年の期限内に受け取り切れず日数が残ってしまいます。離職票が届いたらすぐにハローワークへ行きましょう。
| もらいたいお金 | 申請先 | 主な必要書類 | 申請期限 |
|---|---|---|---|
| 退職一時金 | 勤務先(原則手続き不要) | 退職所得の受給に関する申告書 | 退職時 |
| 企業型DCの資産 | 運営管理機関 | 移換申出書 | 退職後6か月以内 |
| 中退共の退職金 | 勤労者退職金共済機構 | 退職金共済手帳の請求書 | 退職後2年以内 |
| 失業手当・高年齢求職者給付金 | 住所地のハローワーク | 離職票、本人確認書類、マイナンバー確認書類、通帳 | 離職日の翌日から1年以内 |
| 傷病手当金(継続給付) | 加入していた健康保険 | 支給申請書(医師の意見欄あり) | 労務不能だった日ごとに2年以内 |
| 住居確保給付金 | 市区町村の自立相談支援機関 | 本人確認書類、収入・預貯金の証明、賃貸契約書 | 離職・廃業後2年以内 |
なお雇用保険の各種給付の申請期限をまとめて確認したい方は、下記の関連記事もあわせてご覧ください。
【要注意】「退職給付金がもらえる」とうたう民間サポート業者に注意
インターネット広告やSNSで見かける「退職給付金が最大○○万円もらえる」というサービスは、国の新しい制度ではなく、傷病手当金と失業手当の申請をサポートする民間の有料サービスです。制度自体は本記事で解説したとおり公的なもので、自分で申請すれば手数料はかかりません。契約前に必ず仕組みと費用を理解しておきましょう。
国民生活センターが2025年12月に注意喚起(3年で相談5倍)
国民生活センターは2025年12月3日、「失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートに注意─不正受給を促すかのようなケースも!」と題する注意喚起を公表しました。PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に寄せられた相談件数は3年で約5倍に急増しています。
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2021年度 | 42件 |
| 2022年度 | 54件 |
| 2023年度 | 113件 |
| 2024年度 | 217件(前年度の約2.4倍) |
| 2025年度(10月末時点) | 216件 |
契約当事者の平均年齢は42.7歳、平均契約購入金額は約29万円、契約金額帯では「10万円以上50万円未満」が全体の86%を占めています。同時期には東京労働局も独自の注意喚起を公表し、厚生労働省・消費者庁・国民生活センターが連携して啓発資料を作成するに至っています。
業者が言う「退職給付金」の正体は傷病手当金+失業手当
広告で示される高額な受給例の多くは、健康保険の傷病手当金(通算1年6か月)を受け取ったあと、受給期間を延長しておいた失業手当を受け取るという組み合わせを前提にしています。制度上は可能な受け取り方ですが、成立するのは病気やケガで働けない状態にある人だけです。
傷病手当金の支給可否を判断するのは健康保険組合や協会けんぽであり、医師の意見書によって「労務不能」と認められる必要があります。健康な状態で退職する方は対象外で、失業手当のみが受け取れる給付となります。「誰でももらえる」という説明を受けた場合は、いったん立ち止まったほうが安全です。
実際に起きているトラブル事例3パターン
国民生活センターの注意喚起では、次の3つの相談パターンが目立つとされています。事前に典型例を知っておくことで、契約前の判断材料になります。
相談パターン1:思ったような給付金がもらえない「社会保障制度を利用すれば最大200万円受給できる」と説明されて約30万円のサポート契約を結んだが、業者が言う金額はもらえなかった(2025年5月受付、40代男性)。
相談パターン2:解約したら高額な違約金を請求された約20万円振り込んで契約したが、退職しないことになったため解約を申し出たところ、サポートを受ける前でも「大部分が違約金になる」と言われた(2025年7月受付、30代女性)。
相談パターン3:不正受給を促すマニュアルを渡された「提携オンラインクリニックで受診すれば必ずうつ病と診断され、失業給付を10か月に延長できる」と案内され、うつ病と診断されるためのマニュアルが送られてきた(2024年9月受付、30代女性)。
特に3つ目のパターンは、業者の指示に従って申請すると申請者本人が不正受給の責任を問われます。事業者に「言われたとおりにした」では済まされません。
申請代行ができるのは社会保険労務士だけ
社会保険労務士法第27条により、他人の求めに応じて報酬を得て、労働・社会保険に関する申請書等の作成や提出手続の代行を業として行えるのは社会保険労務士(および社労士法人・弁護士・弁護士法人)に限られます。資格のない事業者ができるのは、あくまで情報提供や助言だけです。社労士資格のない担当者から「書類の作成と提出はこちらでやっておきます」と言われた場合は、その場で資格を確認しましょう。
ハローワークでは、失業手当の申請手続について無料で相談や案内を受けることができます。通常は自分で手続きができるため、こうしたサポートを利用する必要はほとんどありません。
契約前に必ず確認すべき5項目
サポート費用は、受給見込額の10〜15%程度を成功報酬とする形や、月額制・定額制など業者によって異なります。国民生活センターの分析では平均契約購入金額は約29万円で、10〜50万円台の契約が全体の86%を占めています。受給額が大きくなるほど手数料も高額になるため、契約前に「自分のケースで最終的にいくら払うのか」を金額で確認しておくことが欠かせません。
契約前に必ず確認したい5項目
- 手数料の計算方法(成功報酬の料率か、月額制か)と支払総額の見込み
- 「全額返金保証」が適用される条件と、適用されないケース
- 解約したい場合の条件と違約金の有無(サポート開始前の解約でも違約金が発生するか)
- 実際に申請書を作成・提出するのは誰か(社会保険労務士かどうか)
- 受給できなかった場合に何が起きるか(サポート費用の返還可否)
不正受給の罰則は最大3倍返し+詐欺罪の可能性
働ける状態にあるのに「働けない」として傷病手当金を申請したり、就職が決まっているのに失業認定申告書に記載しなかったりすると、雇用保険法第10条の4に基づき、給付の全額返還に加え、不正に受給した額の2倍の納付を命じられる(返還額と合わせて実質3倍返し)ことがあります。悪質な場合は詐欺罪として刑事告発される可能性もあります。
給付金は本来、生活が困難な状況にある方を支えるための制度です。自分の状況に本当に当てはまるのかを確認したうえで、必要なら社会保険労務士やハローワーク、市区町村の窓口といった公的な相談先を先に利用することをおすすめします。
迷ったときの相談窓口
サポート契約でトラブルになった場合や、契約を迷った段階でも、公的な相談窓口を無料で利用できます。最寄りの消費生活センター(消費者ホットライン「188(いやや!)」)や、失業手当の手続きに関することであれば住居所を管轄するハローワークへ問い合わせましょう。有料の民間サービスに契約する前に、まずこれらの公的窓口に相談するのが安全です。
退職前後に必要な手続きスケジュール
退職給付金を漏れなく受け取るには、退職前後の健康保険・年金・住民税の手続きを順序どおり進めることが重要です。特に健康保険の任意継続は退職日の翌日から20日以内、国民健康保険は14日以内と、いずれも期限が短く設定されています。
| 退職から失業手当受給までの流れ | |
|---|---|
| STEP1 | 退職前:退職金規程の確認、離職票の発行を会社へ依頼 |
| STEP2 | 退職後10日〜2週間程度:会社から離職票を受け取る |
| STEP3 | ハローワークで求職申込みと受給資格の決定 |
| STEP4 | 7日間の待期期間(自己都合退職は+原則1か月の給付制限) |
| STEP5 | 雇用保険受給者初回説明会・失業認定(4週間ごと) |
| STEP6 | 認定から約1週間で指定口座に振込 |
健康保険は任意継続・国民健康保険・扶養のどれを選ぶ?
退職後の健康保険には3つの選択肢があり、任意継続の申請期限は退職日の翌日から20日以内、国民健康保険は14日以内と非常に短いのが特徴です。扶養に入れる場合は保険料の負担がゼロになるため、まず家族の勤務先に条件を確認しましょう。
| 選択肢 | 保険料 | 申請先 | 申請期限 |
|---|---|---|---|
| 健康保険の任意継続 | 全額自己負担(協会けんぽは令和8年度の標準報酬月額の上限32万円で計算) | 協会けんぽ・健康保険組合 | 退職日の翌日から20日以内 |
| 国民健康保険 | 前年所得に応じて自治体が算定 | 市区町村 | 退職日の翌日から14日以内 |
| 家族の被扶養者になる | 負担なし | 家族の勤務先 | 扶養の事実発生から5日以内が目安 |
任意継続は最長2年間加入でき、在職中と同じ給付内容を受けられます。どちらが安いかは前年の所得と扶養家族の人数で変わるため、市区町村の窓口で国民健康保険料の試算をしてもらったうえで比較するのが確実です。
会社都合退職なら国民健康保険料が軽減される
倒産・解雇などで離職した方は、国民健康保険料の算定で前年の給与所得を100分の30とみなす軽減措置を受けられます。対象は離職時に65歳未満で、雇用保険の特定受給資格者(倒産・解雇等)または特定理由離職者(雇止め等)に該当する方です。
軽減は離職日の翌日が属する月から、その翌年度末まで適用されます。自動では適用されず、雇用保険受給資格者証を持参して市区町村へ申請する必要がある点に注意しましょう。この軽減を使うと国民健康保険のほうが任意継続より安くなるケースが多いため、会社都合で退職した方は必ず試算してもらってください。
国民年金・住民税の手続きも忘れずに
退職して厚生年金の資格を失った60歳未満の方は、14日以内に市区町村で国民年金第1号被保険者への切り替え手続きが必要です。収入が減って保険料の納付が難しい場合は、免除・納付猶予の申請ができます。失業を理由とする特例免除も用意されているため、未納のまま放置せず窓口に相談しましょう。
住民税は前年の所得に対して課税されるため、退職後に収入がなくても支払いが続きます。1〜5月に退職する場合は最後の給与から残額が一括徴収され、6〜12月に退職する場合は普通徴収に切り替わって自分で納付するのが原則です。転職を予定している方向けの各種給付・支援制度は、以下の記事でも詳しくまとめています。
退職給付金に関するよくある質問
退職給付金とはどんな制度ですか?
「退職給付金」という名前の制度は国にも会社にも存在しません。会社から受け取る退職一時金・企業年金と、退職後に国からもらえる失業手当・高年齢求職者給付金・傷病手当金などをまとめた総称として使われている言葉です。自分が受け取れるお金を確認するには、勤務先の退職金規程と、退職時の年齢・退職理由に応じた公的給付の2方向から調べるのが確実です。
国からもらえる退職給付金にはどんなものがありますか?
国からもらえる主な退職給付金は9種類あります。雇用保険の給付として失業手当(基本手当)、高年齢求職者給付金、特例一時金、再就職手当、広域求職活動費・移転費、教育訓練給付金、職業訓練受講給付金があり、健康保険の給付として傷病手当金の継続給付、市区町村の給付として住居確保給付金があります。どれを受け取れるかは退職時の年齢・退職理由・退職後に働けるかどうかで決まります。
退職給付金はいくらもらえますか?
年齢・退職理由・勤続年数で大きく変わります。失業手当だけで比べると、35歳・自己都合・勤続10年(月収30万円)なら120日分で約76万円、45歳・会社都合・勤続20年(月収40万円)なら270日分で約182万円、60歳・定年・勤続38年なら150日分で約100万円が目安です。65歳以上は高年齢求職者給付金となり最大約37.3万円の一時金です。これに会社の退職金が加わり、大学卒の定年退職者の平均退職給付額は1,896万円という調査結果があります。
退職給付金はいつもらえますか?
給付ごとに支給までのタイミングが違います。会社の退職一時金は退職後1〜2か月、失業手当は自己都合退職なら7日待期+原則1か月の給付制限を経て約1か月半後、会社都合退職なら7日待期後の約3週間〜1か月後です。傷病手当金は初回申請から約2週間〜1か月、再就職手当は就職後1〜2か月が目安です。生活費に余裕がない状態で退職する予定なら、給付ごとの入金タイミングを事前に把握しておきましょう。
退職給付金はどうやってもらうのですか?
申請先が給付ごとに分かれています。失業手当・高年齢求職者給付金は離職票を持って住所地のハローワークへ、傷病手当金は加入していた健康保険へ、住居確保給付金は市区町村の自立相談支援機関へ申請します。会社の退職一時金は原則手続き不要ですが、中退共は勤労者退職金共済機構へ、企業型確定拠出年金は運営管理機関へ自分で請求や移換の手続きが必要です。自動で振り込まれる給付はほとんどありません。
「退職給付金が最大○○万円もらえる」という広告は本当ですか?
それらは国の新制度ではなく、健康保険の傷病手当金と雇用保険の失業手当の申請をサポートする民間の有料サービスです。国民生活センターは2025年12月3日、この種の申請サポートに関する消費者相談が2021年度42件から2024年度217件(前年度2.4倍)に急増したとして注意喚起を公表しています。制度自体は実在しますが、高額な受給例は「病気やケガで働けない状態にある」ことが前提で、健康な状態で退職する方は傷病手当金の対象外です。平均契約金額は約29万円で、契約前に支払総額と返金条件を必ず確認してください。自分で申請すれば手数料はかかりません。
退職給付金(退職金)と失業手当は両方もらえますか?
両方もらえます。会社の退職金と雇用保険の失業手当は別の制度のため、退職金を受け取っても失業手当は減額されません。ただし失業手当の受給には、働く意思があり求職活動をしていることが条件です。退職金の額がいくら大きくても、失業手当の支給に影響することはありません。
2026年8月1日の基本手当日額改定で何が変わりましたか?
令和7年度の平均給与額が前年度比で約2.7%上昇したことを受け、基本手当日額の上限額が年齢区分ごとに引き上げられました。45歳以上60歳未満は8,870円から9,110円(+240円)、30歳以上45歳未満は8,055円から8,270円(+215円)、60歳以上65歳未満は7,623円から7,830円(+207円)、30歳未満は7,255円から7,450円(+195円)です。年齢共通の下限額も2,411円から2,562円(+151円)に引き上げられました。
退職金がない会社は違法ですか?
違法ではありません。退職金の支給は法律上の義務ではなく、就業規則や退職金規程に定めがある場合に支払われます。厚生労働省の令和5年就労条件総合調査では、退職給付制度がある企業は74.9%で、約4社に1社には制度がありません。退職金がない場合でも、雇用保険の失業手当など国からの給付は条件を満たせば受け取れます。
退職金を受け取ったら確定申告は必要ですか?
勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、適正な税額が源泉徴収されるため原則として確定申告は不要です。提出していない場合は一律20.42%が源泉徴収されるため、確定申告をすると納めすぎた税金が還付される可能性があります。なお退職所得控除は勤続20年以下で「40万円×勤続年数」、20年超で「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」です。
まとめ
退職給付金とは、会社から受け取る退職金と、失業手当・高年齢求職者給付金・傷病手当金など国からもらえる給付の総称であり、「退職給付金」という単一の制度は存在しません。会社の退職金の平均は大企業の大卒定年退職で1,896万円、中小企業のモデル退職金で約1,150万円という調査結果がある一方、約4社に1社には退職金制度がないため、まずは自社の規程確認が欠かせません。
国の給付は、2025年4月の改正で自己都合退職の給付制限が原則1か月に短縮され、以前より受け取りやすくなりました。さらに2026年8月1日の改定で基本手当日額の上限も引き上げられ、45〜59歳では日額9,110円が上限です。失業手当の総額は、45歳・会社都合・勤続20年なら270日分で約182万円が目安となります。
一方、「退職給付金がもらえる」とうたう民間サポート業者のサービスは国の新制度ではなく、傷病手当金と失業手当の申請を有料で支援するものです。国民生活センターは2025年12月3日、相談件数が3年で約5倍(2021年度42件→2024年度217件)に急増したとして注意喚起を公表しています。傷病手当金は病気やケガで働けない方が対象で、誰でも受け取れるわけではありません。契約前に手数料の総額と返金条件を確認しましょう。
なお、失業手当の申請期限は原則として離職日の翌日から1年間、健康保険の任意継続は退職日の翌日から20日以内と、いずれも期限が短く設定されています。受け取れるはずのお金を逃さないよう、退職が決まったら早めに手続きを進めましょう。制度について迷ったときは、ハローワークや市区町村の窓口、消費者ホットライン(188)、社会保険労務士などの公的・専門的な相談先に相談するのもひとつの方法です。
この記事のポイント
- 「退職給付金」という制度はない:会社の退職金+国の公的給付の総称
- 会社から:退職一時金・企業年金・中退共(大卒定年退職の平均1,896万円/制度がある企業は74.9%)
- 国から:失業手当・高年齢求職者給付金・傷病手当金・再就職手当・住居確保給付金など9種類
- 2026年8月1日改定:基本手当日額の上限は45〜59歳9,110円、30〜44歳8,270円、60〜64歳7,830円、30歳未満7,450円
- 給付制限:2025年4月から自己都合退職は原則1か月(5年間に2回以上の受給資格決定がある場合は3か月)
- 退職所得控除:勤続30年なら1,500万円まで非課税、20年超は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」
- 申請期限:失業手当は離職日の翌日から1年、任意継続は20日以内、国民健康保険は14日以内
- 民間サポート業者:国民生活センターが2025年12月に注意喚起。相談件数は3年で約5倍。契約前に手数料総額と返金条件を確認
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