たばこを吸う人は喫煙可能な店を、吸わない人は禁煙や分煙の店を探しています。近頃、入店時に「全席禁煙ですが、よろしいですか?」と確認されることが増えてきました。このような店だと喫煙者の利用はなかなか期待できませんが、分煙にすると、たばこを吸う人、吸わない人どちらの方々にも利用してもらうことができます。
東京都の2016年度の喫煙率は18.3%で、成人人口のおよそ2割が喫煙者といわれています。数にするとおよそ199万6207人となり、単純に分煙にすることで集客できる可能性があるこれだけいることになります。東京都を例にとりましたが、分煙にすると喫煙者の集客が見込めるのはどの地域にもあてはまるメリットでしょう。分煙をすると、「喫煙者の集客」のほかにもさまざまなメリットがありますが、今回は特に代表的な3つについてご紹介していきます。
この記事の目次
ターゲット市場の拡大・幅広い客測の獲得
冒頭部分で、喫煙者層の母数について触れましたが、喫煙可能に分煙にすることで逆に全席喫煙可であった店舗に対してもメリットが生まれてきます。それがタバコを吸わない・吸いたくないという客層を呼び込むことが可能になるという点です。店舗にたばこ専用部屋を設けることで煙を気にせず過ごせる空間ができ、受動喫煙対策がとられたことで新たに非喫煙者や家族連れといった客層が獲得できるようになるでしょう。もしくは非喫煙者のグループを呼び込むことが可能になります。
とある串カツ屋では店舗全面禁煙化に関するレポートを出しておりますが、客層は家族層が6%・男女20代1%・女性・カップル1%が増加となっているようです。一方で会社員男性グループ6%、男女30代~1%が減少しているということです。売上的には前年対比で102.2%と増加したようです。
ここで面白いポイントがレポートされていますが、繫盛時間の変化と時間別売上の変化です。家族連れが増えたことで繫盛時間が早まり、深夜時間の売上が減少している点です。ここから分析される点として、喫煙者が店舗から締め出されたことで滞在時間が短縮され深夜帯の単価が下がっているのではないかと考えられます。またここのレポートでも記されているように長期的に売り上げが上がると予測しています。
喫煙ルームを作る場合には、この2つの反比例するような客層をまとめて獲得できる形になります。
参照:https://kushi-tanaka.co.jp/news/entry/616
掃除の手間・改修費が削減と店舗への満足度を高める
分煙で喫煙スペースを限定することで、吸殻などのごみ処理、壁の掃除にかかる時間を減らすことができます。また、ヤニなどによる壁紙の劣化も軽減されます。
壁紙にヤニがついて、汚れや臭いが落ちなくなってくると、最終的には内装工事で張り替えることでししか対応ができなくなります。壁紙の費用はおよそ800円~1,500円(㎡)が相場で、下地処理や剥がし、廃材処分費などが別途かかります。張り替え場所の広さや壁紙のグレードにもよりますが、工事に数万~十数万円かかるケースもあります。
分煙のためにたばこ専用部屋があると、たばこ部屋内部の掃除が行き届くようになり、張り替えのような工事は必要とされなくなるでしょう。結果として改修の費用削減につながります。また店舗における衛生度が向上し来店者に対しての印象を高める効果もあります。
商業圏において一つの訴求ポイントとなりうる
分煙にすると、受動喫煙対策に取り組んでいる店として認識されます。厚生労働省では受動喫煙対策の基本的考え方として「望まない受動喫煙」をなくす、としています。これは、屋内において受動喫煙にさらされたくない人が、そのような状況に置かれることのないようにしていこう、という考え方です。分煙設備を整えると、受動喫煙にさらされたくない人にも食事を楽しんでもらえる環境作りをしていることのアピールができます。また受動喫煙対策に取り組むことは、従業員の健康リスクを排除することにもなり、従業員を受動喫煙から守っている企業としても認識されるでしょう。
東京都における受動喫煙防止対策助成金の概要
東京都では、都内の中小飲食店・宿泊施設が行う受動喫煙防止対策を支援する事業を実施しており、たばこ専用室設置の費用を400万円上限で補助しています。
対象者が客席面積100㎡以下の中小飲食店ですと、なんと補助率は10分の9です。これはもし設置工事に400万円かかったとしても、9割補助されますので、店舗の負担は40万円という計算になります。
40万円の設備投資で、喫煙者も非喫煙者も集客できるようになるのなら、導入する価値はあるのではないでしょうか。(客席面積100㎡以上の店の場合は、補助率は5分の4になります)
まとめ
今回は、分煙にすることでどんなメリットがあるかみてきましたが、おさらいすると、「新たな客層の獲得ができる」「掃除の手間・改修費の削減ができる」「店舗のアピールポイントになる」という3つでした。
たばこを吸いたい人、煙を気にせず過ごしたい人、どちらの方にも利用していただけるのが分煙のお店です。それは全席禁煙や全席喫煙のお店にはない、かゆいところに手が届くサービスだといえるのではないでしょうか。
分煙にすることで、いままでのような喫煙者の集客はなくなったとしても、新しく来てくれる非喫煙者のお客さまもいるはずです。みなさんの店舗のこれからを考えたとき、どなたにも利用してもらえるお店にしたいとお考えの方は、分煙の設備を整えることを検討してみましょう。