日本は現在、2050年カーボンニュートラル、および2030年温室効果ガス削減目標(2013年度比46%減)を掲げています。この目標の達成には、CO2を削減する取り組みを推進して地球温暖化を極力抑えることが重要です。
こうしたCO2削減の取り組みのひとつとして挙げられるものが「車両の電動化」です。CO2を排出する従来式車両の利用を控え、電動車両の導入を増やすことで、長期的に環境問題の解消に一役買うでしょう。
今回の記事では、車両電動化の中でも「トラックの電動化」を推進するために利用できる補助金制度を紹介します。
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この記事の目次
商用車の電動化促進事業とは?
2050年カーボンニュートラル、および2030年温室効果ガス削減目標(2013年度比46%減)を達成するためには、商用車の電動化(BEV・PHEV・FCV)が必要不可欠です。「商用車の電動化促進事業」は、これらの目標達成に向けて一般財団法人環境優良車普及機構が実施している事業のことです。
環境省から一般財団法人環境優良車普及機構に交付された「脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金」を活用してトラック輸送の電動化導入を加速し、価格低減による産業競争力強化や経済成長、脱炭素社会の構築推進を目的として実施されています。
補助対象事業者の条件
商用車の電動化促進事業に申請できるのは、以下の条件のうち、国で定める目標(目安)等に準じる「非化石エネルギー自動車の導入計画」を設定している事業者となります。
補助対象者 |
1.貨物自動車運送事業者 |
2.自家用商用車(トラック等)を業務に使用する者(車両総重量2.5トン超の車両に限る) |
3.商用車(トラック等)の貸渡しを事業とする者(上記の1・2に貸渡しする者に限る) |
4.地方公共団体 |
5.その他、環境大臣の承認を得て執行団体が適切と認める者 |
電動トラック(補助対象車両)の概要
補助金の交付対象となるのは、環境省の事前登録を受けたトラック(BEV・PHEV・FCV)であり、かつ以下の新車車両です。
- BEV:電気自動車
- PHEV:プラグインハイブリッド車
- FCV:燃料電池自動車
- 車両総重量2.5トン超の車両(事業用、自家用)
- 車両総重量2.5トン以下の車両(事業用のみ) *バンタイプ含む
商用車の電動化促進事業の補助対象車両については、環境省の「商用車の電動化促進事業補助金に係る車両の事前登録のご案内について(令和5年3月31日付)」に基づいた事前登録を行い、審査を受けた車両のみが補助金の交付対象となります。
そのため、補助金の交付を申請する際は、事前登録を受けているか必ず確認しましょう。事前登録を受けていない車両については、補助金の交付申請ができません。ただし、申請対象車両が「国の他の補助金を受けていない」ということが条件です。
車両の新車新規(軽自動車については新車新規検査)登録期間は「令和5年4月3日(月)~令和6年1月31日(水)」です。
令和5年8月31日時点における「事前登録された対象車型情報」をチェックしておきましょう。
会社名 | 動力構造区分 | 通称名 |
フォロフライ株式会社 | EV | F1V・F1T・F1VS・F1TS・F1VS4 |
株式会社EVモーターズ・ジャパン | EV | E1・E2 |
ASF株式会社 | EV | ASF2.0 |
HW ELECTRO株式会社 | EV | ELEMO-K・ELEMO・ELEMO-L |
三菱自動車工業株式会社 | EV | ミニキャブ・ミーブ |
日野自動車株式会社 | EV | デュトロZ EV |
三菱ふそうトラック・バス株式会社 | EV | eCanter |
いすゞ自動車株式会社 | EV | エルフ EV |
いすゞ自動車株式会社 | FCV | FC 小型トラック |
トヨタ自動車株式会社 | FCV | FC 小型トラック |
具体的な車両の外観や型式などは「補助対象車一覧表」でチェックしてください。また、商用車の電動化促進事業を活用し、上記の該当車両を電動化することで以下のようなメリット・デメリットがあります。
商用車の電動化のメリット
1.環境性能が⾼い
電動化した車両は環境性能が高くなります。環境性能とは、環境に与える悪影響を極限まで抑える性能を備えていることです。排出ガスを削減できるため空気中のCO2量を減らせるうえ、⾛⾏音も静かであるため、長距離も落ち着いて走行できます。
2.従来⾞と遜⾊ない動⼒性能を持っている
環境性能の高さを誇りながらも、従来とほぼ変わらない動力性能を持っています。「電動化したから特別に使いにくくなった」ということはありません。
商用車の電動化のデメリット
1.⾞両価格と充電設備費⽤が⾼い
⾞両価格は従来⾞のほぼ倍です。車両価格だけでなく、急速充電設備の設置費⽤も高額になります。そのため、商用車の電動化促進事業などの補助制度なしで導⼊することは難しいでしょう。
2.バッテリーが重いためトラックの積載量が犠牲になる
電動化した車両に搭載するバッテリーは重いため、トラックの積載量を犠牲にしてしまいます。
3.充電スタンドの場所が少ないうえ、充電自体にも時間がかかる
車両の充電ステーション数は増えつつあります。しかし、トラック向けのスペースが⼗分に確保されている場所は少ないです。また充電できたとしても、ゼロから満タンに充電されるまで時間がかかるため、「夜間に充電する」などの⼯夫が必要になります。
基準額と補助金交付申請額の違い
商用車の電動化促進事業では、金額の概念について「基準額」「補助金交付申請額」という2つの定義があります。前提として「基準額=補助金交付申請額」ではありません。補助金交付申請額は、以下A・Bの金額を比較して「低いほう」が支給されます。
A:車両価格から「他の寄付金」「地方公共団体の補助金」を引いた金額
B:基準額
基準額については「公募説明資料p.9〜」に記載されています。例えば補助対象車両のひとつである「フォロフライ株式会社」の基準額は以下の通りです。
通称名 | 用途区分 | 基準額 |
F1VS | 営業用 | 182万1,000円 |
F1VS | 自家用 | 170万9,000円 |
F1TS | 営業用 | 160万7,000円 |
F1TS | 自家用 | 149万5,000円 |
申請の受付期間
令和5年6月27日(火)〜令和6年1月31日(水)
申請手順
1.交付申請(申請者が最初に行う申請)
機構では、申請書に添付された非化石エネルギー転換目標に係る添付書面を審査し、内容等が審査基準を満たしているか審査します。
2.交付決定通知書(機構が発行)
交付決定通知には、交付予定の基準額が記載されています。この通知は、補助事業実施に係る補助金交付予定額を示すものです。
3.補助事業の完了・完了実績報告・精算払請求
車両の購入、新車新規登録(軽自動車については新車新規検査)が完了したら、補助事業完了に伴う「補助事業の完了・完了実績報告・精算払請求」の申請を行ってください。
4.補助金交付額の確定および補助金の支払い(機構が発行)
申請者から申請された「補助事業の完了・完了実績報告・精算払請求」などの申請書を審査して、審査基準に適合する申請については、機構から交付額の確定通知が発行されます。
5.申請方法
申請方法は「申し込み順」です。郵便申請は「総務大臣の許可を受けた事業者が取り扱う信書便」、持参は「土日祝祭日を除く午後5時まで」となります。電子申請による申請は、識別番号付き電子メール「j-Grants」で申請しましょう。j-Grants申請の場合、GビジネスIDの取得が必要となり、取得には2~3週間かかります。
商用車の電動化の未来と補助金(電動化促進事業)の役割
温室効果ガス削減目標を達成するためには、トラックの電動化導入を含めて、CO2排出を極力減らせる施策を実施することが大切です。とはいえ上記で解説したように、トラックの電動化には多額のコストがかかるため、気軽に実施するのは難しいでしょう。
今回紹介した電動化促進事業を活用することで、トラックの電動化に関する費用負担を減らし、間接的に温室効果ガスの削減に貢献できる状態を整えられます。日本中でこうした補助金が活用されていけば、小さな施策の実施が積み重なり、2030年の目標達成に向けて大きな力となるでしょう。
まとめ
商用車の電動化促進事業を活用することで、費用負担を極力抑えてトラックの電動化を実現できます。「環境に配慮した活動を行いたいが費用を考えるとためらってしまう」というトラックの持ち主は、積極的に活用しましょう。