2022年2月から続くウクライナ情勢は、現在も終結のめどが立っていません。長引く不安定な社会情勢に、経済界も打撃を受けています。原油価格高騰や円安も進む中、特に予算的な余裕の少ない中小企業にとっては大きな負担です。
ウクライナ情勢に関する企業の悩みを支援するため、政府はさまざまな事業を立ち上げています。今回は、ウクライナ情勢の影響で輸出入に負担を強いられている企業者向けの各種支援策を紹介します。
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この記事の目次
ウクライナ情勢の悪化に影響を受けている企業は半数以上に
帝国バンクの調査では、原材料や商品・サービスの仕入数に「影響を受けている」と答えた企業は50.8%に上りました。また、原材料などの仕入れ価格に関しても66.7%が「影響を受けている」と回答しています。
特に木造建築工事では、仕入れ量に関しては88.3%、仕入れ価格に関しても91.3%と、ほとんどの企業が影響を受けていることが報告されました。
出典:帝国データバンク ロシア・ウクライナ情勢による企業の仕入れへの影響調査
先行きの見えない情勢に、多くの企業は事業の見直しや新たな資金繰りを余儀なくされています。
ウクライナ情勢による影響は、今後も続くことが予想されます。新型コロナウイルスの流行拡大が再び懸念されている今日において、まずはこの危機をどう乗り越えていくかが、企業にとって大きな課題となっているのです。
相談窓口のご紹介
中小企業庁やJETROでは、ウクライナ情勢や原油価格上昇の影響でお困りの方を対象にした相談窓口を用意しています。事業に関する相談は、まずは以下の窓口へご連絡ください。
1.ウクライナ情勢・原油価格上昇等に関する特別相談窓⼝
ウクライナ情勢や原油価格⾼騰などにより影響を受ける中⼩企業・⼩規模事業者を対象とした相談窓口です。相談窓口は各自治体に設置されていますので、近くの窓口を利用することができます。
2.JETRO(⽇本貿易振興機構)の海外販路開拓⽀援
JETROは中堅・中小企業などの海外展開を支援する機構です。ウクライナ情勢に関しては、中⼩機構、⽇本貿易保険等が参加する「新輸出⼤国コンソーシアム」の枠組みにおいて、ワンストップ相談を受け付けています。また、ハンズオン⽀援や展⽰会出展⽀援も実施されています。
ウクライナ情勢の影響に対応する6つの支援
ウクライナ情勢による影響で業績の悪化や資金繰りにお困りの企業者を対象に、政府は各種の支援策事業を実施しています。各事業の支援対象は以下のとおりです。
1.事業再構築補助⾦
事業の再構築に取り組みたい事業者が対象
2.セーフティネット貸付
資⾦繰りを改善したい事業者が対象
3.国産材転換⽀援緊急対策事業
⽊材の樹種やその調達先を変えたい事業者が対象
4.⽔産加⼯業原材料調達緊急対策事業
原材料の調達変更等で⽔産加⼯業を継続したい事業者が対象
5.⼩規模事業者持続化補助⾦
新たな販路開拓に取り組みたい事業者が対象
6.JAPANブランド育成⽀援等事業
海外での新たな事業展開に取り組みたい事業者が対象
それぞれの事業の主な申請要件や、補助金額などを紹介します。
事業再構築補助⾦
ウクライナ情勢に関する輸出⼊の影響等を含む物価や原油価格の⾼騰等、予期せぬ経済環境の変化の影響を受ける事業者が、新分野展開等の事業再構築に取り組む際に活用できる「緊急対策枠」が創設されました。
【緊急対策枠の主な申請要件】
補助の対象となるには、以下のすべてを満たす必要があります。
1.足許で原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響を受けたことにより、2022年1月以降の連続する6か月のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019年~2021年の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること等。また、コロナによって影響を受けていること。
2.認定経営革新等支援機関や金融機関と事業計画を策定し、事業再構築に取り組むこと。
3.補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加を達成すること。
【緊急対策枠の補助金額】
上限額:最⼤4,000万円等
補助率:中⼩3/4 (一部 2/3)・中堅企業2/3 (一部 1/2)
【期間】
9⽉30⽇ 第7回公募締め切り
【問い合わせ先】
事業再構築補助⾦コールセンター:0570-012-088
セーフティネット貸付
ウクライナ情勢に関する輸出⼊の影響等を含む社会情勢に伴う原油価格等の⾼騰等で苦しむ企業に、⽇本公庫等はセーフティネット貸付の更なる利下げを実施します。
【主な対象要件】
セーフティネット制度の対象となるのは、以下のいずれかの場合です。
(原油高の特別相談窓口を利用した場合は、数値要件を満たさずとも、資金繰りに著しい支障をきたしている又はきたすおそれがあれば対象になります)
1.最近の決算期における売上高が5%以上減少している
2.最近3ヵ月の売上高が5%以上減少し、かつ、今後も売上減少が見込まれる
3.最近の決算期における純利益額または売上高経常利益率が悪化している
4.最近の取引条件が、回収条件の長期化または支払条件の短縮化などにより0.1ヵ月以上悪化している
5.社会的な要因による一時的な業況悪化により、資金繰りに著しい支障をきたす、またはそのおそれがある
6.最近の決算期において赤字幅が縮小したものの、税引前損益または経常損益で損失を生じている
7.前期の決算期において税引前損益または経常損益で損失を生じ、かつ、最近の決算期においては利益が増加したものの大幅な繰越欠損金を有している
8.前期の決算期において税引前損益または経常損益で損失を生じ、最近の決算期においては利益が増加したものの、債務償還年数が15年以上である
【貸付利率】
利益率が5%以上減少した場合、基準利率-0.4%
【期間】
申請受付中
【問い合わせ先】
⽇本政策⾦融公庫:0120-154-505 、沖縄振興開発⾦融公庫:0120-981-827
国産材転換⽀援緊急対策事業
ウクライナ情勢の影響を受けた木材需給のひっ迫を緩和し、国産材製品の増産に伴う原⽊・製品の運搬や⼀時保管、国産材製品への転換や設計・施⼯⽅法の導⼊、普及支援します。
【主な申請要件】
申請には、以下の1~5をすべて満たす必要があります。
1.民間事業者
2.助成事業に関わる経理およびその他の事務について、適切な管理体制や処理能力を有すること
3.私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に基づく排除措置命令または課徴金納付命令を受けていないこと
4.不適切だと判断される行為を行っていないこと
5.本事業以外の国からの助成を受けていないこと
【補助金額】
定額・1/2
【期間】
7⽉20⽇または9⽉20⽇締め切り (メニューにより異なる)
【問い合わせ先】
全国⽊材組合連合会: 03-6550-8540
⽔産加⼯業原材料調達緊急対策事業
①原材料の調達⽅法の変更に関わる取り組み②販路の維持・拡⼤を⽬指す取組③加⼯機器の導⼊に関わる取組等を行う⽔産加⼯業者を支援するものです。
【対象水産物】
1.魚類
- さけ、ます類
- にしん
- ひらめ、かれい類
- たら類
- ほっけ
- めぬけ類
2.えび類
3.かに類
4.貝類
5.いか類
6.なまこ類
7.うに類
8.魚卵
9.海藻類
10.その他、水産庁長官が必要と認めるもの
【補助金額】
上限額:1取組あたり5,500万円
補助率:中⼩2/3以内・中堅企業等1/2以内
【期間】
6⽉30⽇に第1回公募締め切り
【問い合わせ先】
⽔産物安定供給推進機構:03-3254-7045 ⽔産庁加⼯流通課:03-6744-2350
⼩規模事業者持続化補助⾦
⼩規模事業者が経営計画を策定して取り組む、販路開拓等を⽀援する事業です。ウクライナ情勢等の影響を受けている事業者に対して、採択審査時に政策的観点から加点を行います。
【主な申請要件】
申請の要件は、次の1~4です。
1.小規模事業者
2.法人の場合、資本金または出資金が5億円以上の法人に100%の株式を保有されていないこと
3.直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
4.10か月以内①「令和元年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>」 ②「令和2年度第3次補正予算 小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>」の採択を受けていないこと
【補助金額】
上限額:200万円
補助率:2/3等
【期間】
9⽉20⽇ 第9回公募締め切り
【問い合わせ先】
近隣の商⼯会、もしくは商⼯会議所
JAPANブランド育成⽀援等事業
海外展開やそれを⾒据えた全国展開のために行う、新商品・サービスの開発による販路開拓やブランディング等の取組の経費の⼀部を補助します。
【主な申請要件】
申請には以下の2つを満たす必要があります。
1.海外での販路開拓を目指す事業計画を策定すること
2.支援パートナーが提供する支援サービスを受けること
【補助金額】
上限額:500万円等
補助率:2/3以内等
【期間】
8⽉1⽇締め切り
【問い合わせ先】
各都道府県を管轄する経済産業局
まとめ
企業にとって、社会情勢の影響は自社だけではどうにもならない問題です。工夫を重ねて乗り切るしかありません。とはいえ、資金的な課題への対処には限界があります。
そんなときは各種補助金や支援制度を活用しましょう。今回紹介した補助金や支援は、社会的な問題を乗り越え、将来を見据えての成長を目指す企業に申請してほしい事業です。