令和二年4月1日から中小企業に時間外労働の上限規制が適用されることとなり、これまで規制適用に向け中小企業の時間外労働削減を支援してきた厚労省の「時間外労働改善助成金」は、新たに「働き方改革推進支援助成金」に名称を変え、中小企業が行う前向きな働き方改革への取り組みを支援する制度として生まれ変わりました。
新たに創設された「労働時間短縮・年休促進支援コース」は、事業者が行う従業員の労働時間短縮や年休取得率の向上への取り組みを支援するため、必要な設備投資等への助成を行う制度です。
従業員の賃金引上げも併せて行う場合は最大で490万円を受給することが可能で、新型コロナウィルスの感染防止で需要の高まる「テレワーク用通信機器」や「労務管理システム」、「外部の専門家のコンサルティング」などにも活用することが可能です。
今回は創設後間もない助成金制度「労働時間短縮・年休促進支援コース(働き方改革推進支援助成金)」について、制度の内容や申請方法などについて紹介いたします。
この記事の目次
対象となるのは36協定の締結・届出が完了している中小企業事業主
支給対象となるのは可kのいずれにも該当する中小企業事業主です。
1.労働者災害補償保険の適用事業主であること
2.交付申請時点で「成果目標」1から4の設定に向けた条件を満たしていること
3.全ての対象事業場において、交付申請時点及び支給申請時点で、36協定が締結・届出されていること
4.全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。
中小企業事業主の定義は下記の通りです。
業種 | 資本または出資額 | 常時雇用する労働者 |
---|---|---|
小売業(飲食店を含む) | 5000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
働き方改革への取り組みに最大490万円!(助成率3/4~)
働き方改革推進支援助成金は文字通り政府が推進している『働き方改革』に関する取り組みを支援する助成金制度です。
「労働時間短縮・年休促進支援コース」では、下記の4つの働き方改革に対する「成果目標」に対しそれぞれ助成が行われ、更に従業員の賃金額引上げを行う場合には別枠で追加の助成金を受給する事が可能です。
成果目標
1.時間外労働時間数の縮減
2.所定休日の増加
3.特別休暇制度の導入
4.時間単位の年次有給休暇制度の導入
※上記のいずれか1つ以上の実施が必須
賃金加算
5.賃金額の引上げ
下記でそれぞれの取り組みの詳細について記載します。
1.全ての対象事業場において、令和2年度又は令和3年度内において有効な36協定について、時間外労働時間数を縮減し、月60時間以下、又は月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出を行うこと
支給額
・50万円又は100万円(※80時間以上⇒60時間以下への改善の場合)
2.全ての対象事業場において、週休2日制の導入に向けて、所定休日を1日から4日以上増加させ、規定後1月間においてその実績があること
支給額:
・所定休日3日以上増加:50万円
・所定休日2日以上増加:25万円
3.全ての対象事業場において、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇)の規定をいずれか1つ以上を新たに導入すること
支給額
達成時:50万円
4.全ての対象事業場において、時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入すること
支給額
達成時:50万円
5.対象事業場で指定する労働者の時間当たりの賃金額の引上げを3%以上行うこと
支給額
引上げ人数 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11~30人 |
---|---|---|---|---|
3%以上引き上げ | 15万円 | 30万円 | 50万円 | 1人当たり5万円(上限150万円) |
5%以上引き上げ | 24万円 | 48万円 | 80万円 | 1人当たり8万円(上限240万円) |
上限額
成果目標1~4(最大250万円)+賃金加算(最大240万円)で合計490万円が上限
助成率
3/4※常時使用する労働者数が30名以下で30万円を超える取り組みを行う場合は4/5に引上げ※指定の取り組みのみ
助成金の使い道として認められるものは?(対象事業)
助成対象となるのは下記の取り組みで、いずれか1つ以上を実施する事が求められています。
1.労務管理担当者に対する研修
2.労働者に対する研修、周知・啓発
3.外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
4.就業規則・労使協定等の作成・変更
5.人材確保に向けた取組
6.労務管理用ソフトウェア・労務管理用機器・デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
7.テレワーク用通信機器の導入・更新
8.労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)
※助成率の4/5への引上げの対象となるのは6~8のみ
※厚労省パンフレットより
受給すると新たな雇用で最大60万円が貰える「働き方改革支援コース」の利用も可能に!
「労働時間短縮・年休促進コース」の受給が決定した事業者の方は、雇用管理改善の取り組み(人材配置の変更、労働者の負担軽減等)に係る「雇用管理改善計画」について都道府県の認定を受けることで、新たな人材の雇い入れに助成金が交付される「人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)」への申請が可能になります。
この「働き方改革支援コース」では、認定された雇用管理改善計画に1年間取り組み各種要件をみたすことで、雇い入れた労働者一人当たり最大60万円の「計画達成助成」が交付され、更に計画開始から3年経過後に生産性要件等を満たしている場合には「目標達成助成」として労働者一人当たり最大15万円が追加で交付されます。
雇い入れの上限人数は10名までとなっているため、全ての助成を受けた場合には最大750万円(60万+15万×10名)が受給できることになります。
種別 | 助成額(労働者一人あたり) |
---|---|
計画達成助成 | 新たな雇い入れに対し60万円(短時間労働者の場合40万円) |
目標達成助成 | 生産性要件達成で15万円(短時間労働者の場合10万円) |
人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
中小企業の働き方改革を支援する、厚労省の人材確保等支援助成金に「働き方改革支援コース」が新設!
https://hojyokin-portal.jp/columns/hatarakikatakaikaku
申請するなら今がオススメ!その理由は?
厚労省の助成金は「申請すれば必ずもらえる」と言われるほどの採択率が高いのが特徴ですが、近年は設備投資系の助成金の人気が非常に高く、公募期間終了前に予算が尽きて突然申請そのものが出来なくなってしまうという事態も発生しています。
「労働時間短縮・年休促進コース」についても上限490万円、助成率3/4~4/5という非常に手厚い支援を行うことから早期終了の可能性は高く、申請順に審査が行われる事を考えれば予算に余裕のある早い時期に申請を行う事が断然オススメです。
申請締切:2020年11月30日
まとめ
今回の記事では厚労省の新たな助成金「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」と関連する助成金「人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)」について紹介いたしました。
新型コロナウィルスの感染防止に向けてニーズが高まるテレワーク導入に向けた環境構築や研修、専門家によるコンサルティング、そして働き方改革コースでは新たなテレワーカーの雇い入れなどが対象となるため、今後緊急急事態宣言が終了した際には相当な数の申請が集まりそうです。
数ある補助金・助成金の中でも破格の助成内容となっていますので、申請要件を満たす事業者の方は是非ご活用ください。