この記事は、2022年の4月に書かれた記事ですので人材開発支援助成金に「人への投資促進コース」の詳細はこちらのページをご確認ください。
▶️人材開発支援助成金
令和4年4月1日から、人材開発支援助成金に「人への投資促進コース」が新設されました。これは民間ニーズに応えて新設されたもので、OFF-JTとOJT以外に、海外の大学院での訓練を含む職業訓練や定額制訓練も助成の対象です。
あわせて、すべてのコースでオンライン研修(eラーニング)と通信制による訓練も新たに助成対象に加わりました。
国民の提案をもとに見直されたという今回の変更では助成の幅が広がった一方で、要件や提出書類が複雑になりました。この記事では「人への投資促進コース」や新たな助成対象について、簡潔に紹介します。
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▶️定額制訓練も助成対象!(人への投資促進コース)
▶️人への投資促進コースの活用法
▶️デジタル人材と成長分野等人材育成の重要性とは
▶️リスキリング支援コース
この記事の目次
「人への投資促進コース」設立の背景
2022年1月の通常国会において、岸田首相は「人への投資」を倍増させることを強調しました。また、首相官邸の公式ホームページでは「人への投資を抜本的に強化するため、3年間で、4000億円の施策パッケージを提供すること」「デジタルなど成長分野への労働移動の円滑化や、人材育成」を推進すること、そのためのアイディアを民間から広く募集することなどが明記されています。
参考:首相官邸
こうして集められた意見を基に新設されたのが、人材開発支援助成金「人への投資促進コース」です。いままで認められていなかった自発的な訓練も対象となるほか、対象人数の制限撤廃など、より多くの従業員が助成の対象になりました。
人材開発支援助成金とは
令和3年度まで、人材開発支援助成金は7つのコースから成り立つ事業でした。まずは8コースとなった人材開発支援助成金の、それぞれの内容を確認しましょう。
①特定訓練コース
雇用する正社員に対して、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、若年者への訓練、労働生産性向上に資する訓練等、訓練効果の高い10時間以上の訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成
②一般訓練コース
雇用する正社員に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための20時間以上の訓練(特定訓練コースに該当しないもの)を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成
③教育訓練休暇等付与コース
有給教育訓練休暇等制度を導入し、労働者が当該休暇を取得し、訓練を受けた場合に助成
④特別育成訓練コース
有期契約労働者等の人材育成に取り組んだ場合に助成
⑤建設労働者認定訓練コース
認定職業訓練または指導員訓練のうち建設関連の訓練に対して助成
⑥建設労働者技能実習コース
1.安全衛生法に基づく教習及び技能講習や特別教育
2.能開法に規定する技能検定試験のための事前講習
3.建設業法施行規則に規定する登録基幹技能者講習
などに対して助成
➆障害者職業能力開発コース
1.障害者職業能力開発訓練施設等の設置等
2.障害者職業能力開発訓練運営費(人件費、教材費等)
に対して助成
⑧【新規】人への投資促進コース
デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成
「人への投資促進コース」の概要・対象訓練・助成率等
新設された「人への投資促進コース」について、もう少し詳しくみていきましょう。各訓練に対する助成の内容は以下の通りです。※< >内は生産性要件を満たした場合の助成率・額です。
①デジタル人材・高度人材の育成
【高度デジタル人材訓練】
・高度デジタル人材の育成のための訓練や、海外を含む大学院での訓練を行う事業主に対する高率助成
対象者…正規・非正規
対象訓練…高度デジタル訓練(ITスキル標準(ITSS)レベル3、4以上)
経費助成率…中小企業・75%、大企業・60%
賃金助成額…中小企業・960円、大企業・480円 ※訓練期間中に支払われた賃金に対する1人1時間当たりの助成額
【成長分野等人材訓練】
・高度デジタル人材の育成のための訓練や、海外を含む大学院での訓練を行う事業主に対する高率助成
対象者…正規・非正規
対象訓練…海外も含む大学院での訓練
経費助成率…75%
賃金助成額…国内大学院・960円
【情報技術分野認定実習併用職業訓練】
・IT分野未経験者の即戦力化のための訓練を実施する事業主に対する助成
対象者…正規
対象訓練…OFF-JT+OJTの組み合わせの訓練(IT分野関連の訓練)
経費助成率…中小企業・60%<+15%>、大企業・45%<+15%>
賃金助成額…中小企業・760円<+200円>、大企業・380円<+100円>
OJT実施助成額…中小企業・20万円<+5万円>、大企業・11万円<+3万円>
②労働者の自発的な能力開発の促進
【長期教育訓練休暇等制度】
・働きながら訓練を受講するための長期休暇制度や短時間勤務等制度を導入する事業主への助成の拡充
対象者…正規・非正規
1.対象訓練…長期教育訓練休暇制度(30日以上の連続休暇取得)
経費助成率…制度導入経費20万円<+4万円>
賃金助成額…1日当たり6000円<+1200円>
2.対象訓練…所定労働時間の短縮及び所定外労働免除制度
経費助成率…制度導入経費20万円<+4万円>
【自発的職業能力開発訓練】
・労働者が自発的に受講した職業訓練費用を負担する事業主に対する助成
対象者…正規・非正規
対象訓練…労働者の自発的な職業訓練費用を事業主が負担した訓練
経費助成率…30%<+15%>
③柔軟な訓練形態の助成対象化
【定額制訓練】
・労働者の多様な訓練の選択・実施を可能とする「定額制訓練」を利用する事業主に対する助成
対象者…正規・非正規
対象訓練…「定額制訓練」(サブスクリプション型の研修サービス)
経費助成率…中小企業・45%<+15%>、大企業・30%<+15%>
人への投資促進コースの限度額
1事業所が1年度に受給できる助成金の限度額は以下のとおりです。
◆人への投資促進コース(成長分野等人材訓練除く):1500万円 ※自発的職業能力開発訓練200万円
◆成長分野等人材訓練:1000万円
対象事業者
対象となる事業者・労働者は、それぞれ以下の要件をすべて満たしている必要があります。
①雇用保険適用事業所の事業主であること
②労働組合等の意見を聴いて事業内職業能力開発計画およびこれに基づく年間職業能力開発計画を作成し、その計画の内容を労働者に周知していること
③職業能力開発推進者を選任していること
④年間職業能力開発計画の提出日の前日から6か月前の日から支給申請書の提出日までの間に、当該計画を実施した事業所において、雇用する被保険者を解雇等事業主都合により離職させていないこと
⑤年間職業能力開発計画を提出した日の前日から6か月前の日から支給申請の提出日までの間に、特定受給資格者となる離職理由のうち、特定受給資格離職者の数を当該事業所における支給申請書提出日における被保険者数で除した割合が6%を超えていないこと
⑥従業員に職業訓練を受けさせる期間中も、賃金を適正に支払っている事業主であること
⑦助成金の支給または不支給の決定に係る審査に必要な書類等を整備、5年間保存していること
⑧審査に協力すること
【対象となる労働者】
①助成金を受けようとする事業所において、被保険者であること
②訓練実施期間中において、被保険者であること
③訓練実施計画届時に提出した「訓練別の対象者一覧」に記載のある被保険者であること
④訓練を受講した時間数が、実訓練時間数の8割以上であること
このほか、助成ごとに対象となる事業者・労働者の要件があります。
申請方法
「人への投資促進コース」の内容を確認したら、次は申請手続きへ進みましょう。申請のための手続きは、助成を受ける訓練の内容によって違いがあります。それぞれの助成のための申請の流れをまとめました。
【高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練・情報技術分野認定実習併用職業訓練・定額制訓練】
①事業内計画の作成等
②計画提出
③訓練実施
④支給申請
【長期教育訓練休暇等制度】
①事業内計画の作成等
②計画提出
③制度導入
④制度適用
⑤支給申請
【自発的職業能力開発訓練】
①事業内計画の作成等
②制度導入
③計画提出
④訓練実施
⑤支給申請
申請に必要な書類
申請に必要な書類も、訓練ごとに異なります。また、訓練実施方法や計画を変更した場合にも書類の提出が必要ですので、必ずパンフレット等で確認をしてください。以下は、各訓練メニューで共通して提出が必要な書類の一覧です。
▼人材開発支援助成金人への投資促進コースのご案内(詳細版)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000922575.pdf
【計画提出時】
どの助成を受ける場合でも提出する書類は、以下のとおりです。
①訓練実施計画届
②年間職業能力開発計画
③訓練別の対象者一覧
④事前確認書
⑤訓練対象者が被保険者であることおよび職務内容が確認できる書類
⑥OFF-JTの実施内容等を確認するための書類
⑦訓練にかかる教育訓練機関との契約書・申込書など (事業外訓練の場合)
⑧受講料を確認できる書類 (事業外訓練の場合)
【支給申請時】
どの助成を受ける場合でも提出する書類は、以下のとおりです。
①支給要件確認申立書
②支払方法・受取人住所届
③支給申請書
④雇用契約書(写)(訓練実施計画届提出時に雇用契約書(案)を提出した場合) または変更後の雇用契約書(写)(雇用契約内容に変更があった場合)
⑤個人事業の開業・廃業等届出書 (訓練実施計画届提出時に未進出の事業に係る訓練を実施した場合)
⑥入学料・受講料・教科書代等を支払ったことを確認するための書類
⑦請求書および領収書または振込通知書
⑧受講料の案内(写)
⑨訓練に使用した教材の目次等の写し
⑩支給申請承諾書 (訓練実施者が提出)
なお共通の書類とは別に、それぞれの訓練ごとに提出が必要な書類があります。
申請期間
「人への投資促進コース」は、令和4年度から令和6年度までの間設置されます。
申請の前には「事業内職業能力開発計画」を作成のうえ「職業能力開発推進者」を選定する必要があります。申請時は「訓練実施計画届」と「年間職業能力開発計画」を作成し、訓練開始から1か月前までに都道府県労働局に必要書類を提出してください。
オンライン研修・通信制による訓練の要件等
令和4年度から人材開発支援助成金のすべての訓練コースにおいて、オンライン研修と通信制による訓練も助成の対象となりました。対面との違いは以下のとおりです。
【訓練時間の要件】
実際の訓練時間ではなく、受講案内等に記載されている「標準学習時間」や「標準学習期間」によって判断されます。
【受講時間の要件】
訓練機関が発行する「受講を修了したことを証明する書類(修了証等)」や「LMSデータ」などの書類により、訓練を修了していることを確認します。
【経費助成の限度額の判断】
標準学習時間が設定されている場合には、実際の教育訓練の視聴等の時間ではなく、その標準学習時間に基づいて限度額が適用されます。標準学習期間のみ設定されている場合には、100時間未満の区分が適用されます。
【申請期間】
修了日の翌日から支給申請可能です。最終的な提出期限は、計画期間の終了の日の翌日から2か月以内です。
「人への投資促進コース」活用のメリット
「人への投資」についてのアイディアでは「企業の従業員教育、学び直しへの支援」や「デジタル分野など円滑な労働移動を促すための支援」などが多く寄せられたそうです。急激に進むDX化への対応や、スキルアップを希望する従業員の声に応えようとする企業の姿勢がうかがえます。
そうした要望を反映して設立された「人への投資促進コース」はデジタル化に対応した人材開発のほか、対象人数制限の廃止や自発的な訓練にも助成が適応されるなど、これまでの制度より多くの企業が活用できる仕組みになりました。
「人への投資促進コース」の活用でこれまで予算の問題で実施できていなかった職業訓練を実施できるようになったことは、特に中小企業にとって大きな利点といえるでしょう。
まとめ
新型ウイルスによる世界的な感染拡大の中、将来を担う人材の開発は企業にとって大きな課題となっています。リクルートの調査では、55.2%の企業が「次世代の経営を担う人材が育っていない」と回答しました。また社会的需要の高まったデジタル化への対応は、特に中小企業で遅れが出ています。
参考:【調査発表】人材マネジメント実態調査2021
人材開発支援助成金に新設された「人への投資促進コース」は、そうした中小企業の問題を解決する助けとなるはずです。この機会に自社の人材開発を見直し、有効な職業訓練を実施することは、変化を続ける社会情勢を乗り越えて未来への成長につながる大きな一歩となるでしょう。