令和4年11月8日、政府は「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」の各施策を盛り込んだ補正予算を閣議決定しました。
今回、経済産業省は中小企業・小規模事業者等関連の予算として、1兆1190億円を計上しました。この補正予算案には中小企業の資金繰り支援や賃上げを条件とした補助金の拡充などが盛り込まれています。事業再構築補助金や小規模事業者持続化補助金の拡充の内容はどのようなものでしょうか。今回は令和4年度第2次補正予算案の中から、経済産業省の中小企業関連予算について詳しくご紹介します。
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この記事の目次
中小企業関連の令和4年度補正予算案
中小企業・小規模事業者等関連の補正予算案は1兆1190億円で、資金繰り支援と事業再構築補助金が大きな割合を占めています。また、ものづくり補助金や小規模事業者補助金などの「生産性革命推進事業」では、グリーンや賃上げ、インボイスへの対応支援として、補助率や上限額の引上げが行われますので、あわせてチェックしましょう。
出典:中小企業・小規模事業者等関連 令和4年度補正予算のポイント
資金繰り支援【2981億円】※財務省計上分212億円を含む
コロナ関連融資の借換えによる返済負担軽減に加え、新たな資金需要にも対応するための信用保証制度を措置します。
新たな借換保証制度の創設 | 実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済本格化に備えて、融資の借換えや新たな資金需要にも対応するため、100%保証は100%保証で借換えすることができる保証制度を創設。 |
経営者保証を徴求しない創業時の信用保証制度の創設 | 創業時の経営者保証を不要とする信用保証制度を創設(保証上限3,500万円)。事業者が債務不履行となった場合に発生する信用保証協会の損失の一部等を補填します。 |
上記に加えて、セーフティネット貸付の金利引き下げやスーパー低利融資、資本性劣後ローンの供給等により、新型コロナや物価高騰の影響を受けた事業者等を引き続き支援します。(2023年3月末まで)
価格転嫁対策の更なる強化【4.8億円】
中小企業等が価格転嫁しやすい環境を実現することを目的として、下請Gメンの増強(300 名体制)や価格交渉促進月間等を通じ中小企業の価格交渉と転嫁が定期的に行われる取引慣行の定着を図ります。
事業再構築補助金【5800億円】
新分野展開や業態転換等を支援する「事業再構築補助金」には5800億円を計上しました。新たに成長枠等を設け、中小事業者等の挑戦を支援します。
事業再構築補助金では、特別枠を4つ新設する予定です。
◆市場規模が10%以上拡大する業種・業態への転換を支援する「成長枠」(最大7000万円、補助率1/2)
◆「グリーン成長枠」について、研究開発等の要件を2年から1年に短縮等した「エントリークラス」(上限8000万円(中堅1億円)、補助率1/2)
◆市場規模が10%以上縮小する業種・業態からの転換を支援する「産業構造転換枠」(最大7000万円、補助率2/3)※廃業費がある場合は上限を2,000万円上乗せ
◆海外から国内への回帰等を促進する「サプライチェーン強靱化枠」(上限5億円、補助率1/2)
出典:中小企業・小規模事業者等関連 令和4年度補正予算のポイントより抜粋
上の表は、新設枠を含めた、事業再構築補助金の特別枠をまとめたものです。特別枠にはそれぞれ役割があり、大きく3つに分かれます。
【業況が厳しい事業者への支援】
最低賃金引上げの影響を大きく受ける事業者や新型コロナや物価高等により業況が厳しい事業者を「最低賃金枠」と「物価高騰対策・回復再生応援枠」にて、引き続き高い補助率で支援します。(売上10%減少等が要件)
【産業構造転換等の促進】
市場規模が縮小する業種・業態からの転換をはかる「産業構造転換枠」や、円安を活かした国内回帰を促進する「サプライチェーン強靱化枠」を新たに設けて企業の挑戦を後押しします。
【成長分野への転換の支援】
成長分野への転換を図る事業者を対象とした「成長枠」では、グリーン成長枠と同様に売上減少要件を撤廃します。また、大胆な賃上げに取り組む事業者には、更なるインセンティブを措置します。
具体的なインセンティブの内容は、補助事業期間内に事業場内最低賃金を年45円以上引上げた場合等に補助率を1/2から2/3へ引き上げます。また事業終了後3~5年で同水準等を達成すれば上限3,000万円を上乗せします。さらに、この表には枠名の記載がありませんが、事業終了後3~5年で中小・中堅企業を卒業し、中堅・大企業となった場合に上限が2倍となる「卒業促進枠」も新たに用意するとしています。
生産性革命推進事業【2000億円】※国庫債務負担含め総額 4000億円
中小企業・小規模事業者の設備投資、販路開拓、IT導入、事業承継等を支援する生産性革命推進事業では、グリーン分野への投資加速化、賃上げ、インボイスへの対応を支援するため補助率や上限額を引き上げます。
また、生産性向上の取り組みを切れ目なく支援するため、国庫債務負担行為(令和6年度まで)により、長期的な予算措置を担保します。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)
ものづくり補助金は、革新的製品・サービスの開発、または生産プロセス等の改善に必要な設備投資等を補助する制度です。現行制度では「通常枠」「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」があります。
ここに新しく加わるのが「グローバル市場開拓枠」で、海外展開に係るブランディング・プロモーション等の経費が補助対象に含まれます。
さらに注目すべきは「グリーン枠」の拡充についてです。温室効果ガス排出削減の取り組み度合いに応じて「エントリー」「スタンダード」「アドバンス」の3段階の補助上限を設定し、幅広い省エネニーズの取り込みを目指します。
今回の補正予算では、中小企業向け補助金の賃上げインセンティブの強化が特徴となっており、ものづくり補助金においても、事業終了後3~5年に事業場内最低賃金を年45円以上引き上げ等で上限最大1,000万円上乗せが行われる見込みです。
出典:中小企業・小規模事業者等関連 令和4年度補正予算のポイントより抜粋
小規模事業者持続的発展支援事業(持続化補助金)
持続化補助金は、小規模事業者が経営計画を策定して取り組む販路開拓費等を補助する制度です。現行制度の補助内容は以下のとおりです。
【補助上限額】
通常枠:50万円 | 賃金引上げ枠:200万円 |
卒業枠:200万円 | 後継者支援枠:200万円 |
創業枠:200万円 | インボイス枠:100万円 |
【補助率】
2/3(賃金引上げ枠のうち赤字事業者については3/4)
特別枠の新設はないようですが、インボイス枠を拡充し、課税事業者に転換する事業者の補助上限を50万円上乗せする予定です。(上限100万円から150万円へ)
サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)
IT導入補助金は、業務効率化やDXのために導入するITツール等の費用を補助する制度です。以下の表は「通常枠」「デジタル化基盤導入枠」「セキュリティ対策推進枠」の補助内容をまとめたものです。
【主な申請類型と補助内容】
出典:生産性革命推進事業のご案内より抜粋
このほか、申請が難しい枠ですが、商業集積地・サプライチェーン等で連携した複数の中小・小規模事業者によるITツール・機器の導入を支援する「複数社連携型IT導入枠」もあります。
IT導入補助金に新設される特別枠はないようです。注目する点として、安価なツール導入も支援するため補助下限額(5万円)が撤廃されること、またインボイス方式への対応も見据えた会計ソフト等の導入を促進するための「デジタル化基盤導入枠」の継続が明言された点があげられます。
事業承継・引継ぎ支援事業(事業承継・引継ぎ補助金)
事業承継・M&A後の経営革新やM&A時の専門家活用等を支援する制度です。対象となる事業には「経営革新事業」「専門家活用事業」「廃業・再チャレンジ事業」があります。
【申請類型と補助内容】
出典:生産性革命推進事業のご案内より抜粋
このうち「経営革新事業」において、事業終了時に事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上等の場合、補助上限額が600万円から800万円へと引き上げられる予定です。
円安環境への対応、相談体制強化【196億円+α】
【円安への対応】
輸出促進として「中小企業国際化総合支援事業」に5.4億円を計上しています。この事業は海外展開を目指す中小企業等1万者支援に向けて、中小機構が戦略立案・具体化等を伴走型ハンズオンで支援するというものです。
インバウンドの促進としては「面的地域価値の向上・消費創出事業」に10億円を計上し、成長意欲のある商店街等による、消費を創出するための事業等を支援します。
【相談体制の強化】
インボイス・物価高対応では、事業環境変化対応型支援事業に113億円を計上しました。中小企業・小規模事業者のインボイス、省エネ等の経営課題に対応するための相談体制・専門家派遣の強化や、地域企業等のDX投資を加速する支援機関の体制整備等を行います。
このほか、中小企業活性化・事業承継支援事業として、中小企業活性化協議会及び事業承継・引継ぎセンターの体制整備に67億円を計上しています。
災害からの復旧・復興【209億円】
被災地域の速やかな復旧及び復興を支援するため、令和2年7月豪雨に対するなりわい補助金、令和3年及び令和4年福島県沖地震に対するグループ補助金を引き続き行うとしています。
まとめ
今回は経済産業省の令和4年度第2次補正予算案について、中小企業・小規模事業者等関連の施策をご紹介しました。10月28日に閣議決定された物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策では「物価高騰・賃上げへの取り組み」が第1の柱となっており、それに合わせるように補正予算の中小企業支援は、物価上昇を乗り越えるための継続的な賃上げへの支援策の強化が目立っていたように思います。
内容を簡単に振り返ると、まず、コロナ禍の中小企業の資金繰り支援として、実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)からの借換需要と新たな資金需要等に対応するため、新たな借換保証制度の創設がありました。
事業再構築補助金とものづくり補助金では、大胆な賃上げに取り組む事業者や成長分野への前向き投資を行う事業者への補助率や上限額の引き上げがみられました。
小規模事業者持続化補助金ではインボイス枠の拡充、IT導入補助金では、デジタル化基盤導入枠の継続が明言されました。
経済産業省の令和4年度第2次補正予算案には、厳しい状況でも賃上げや成長分野への投資、インボイス対応に踏み出す中小企業への支援策が盛り込まれています。経営回復、事業環境整備を検討するにあたり、補助金活用の準備をしておきたい方や成長投資であるグリーン分野に補助金を活用して取り組む計画を策定したい方は、お気軽に補助金ポータルまでお問い合わせください。