令和5年3月31日に閣議決定された新たな「観光立国推進基本計画」では、観光立国の復活に向けてインバウンド回復が重要な戦略のひとつとして盛り込まれました。日本国内でも新型コロナウイルスが5類感染症へ移行したことを受け、人の動きや経済の流れが活発化しています。
観光庁ではこうした流れを後押しし、インバウンドの消費拡大を促すため、「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」を設置しています。今回は本事業の「一般型」について、見ていきましょう。
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この記事の目次
「一般型」の概要
インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業は、インバウンドの地方誘客や観光消費の拡大促進を目的とした補助事業です。地域の観光資源をインバウンド向けに開発し、新たな販路開拓を目指す取組を支援します。
本補助金には「一般型」、「インバウンド販売モデル構築型」、「高付加価値コンテンツ型」の3つの類型があります。
「インバウンド販売モデル構築型」は販売基盤整備等を行う事業、「高付加価値コンテンツ型」は高い付加価値のあるコンテンツを販売する事業が対象です。一般型は、ほかの2つの類型に該当しない事業が対象となります。
それぞれの特徴は、以下の表も参照してください。
補助率・上限
補助率と補助上限額は、以下の通りです。
■補助率
400万円までは10/10
※400万円を超える部分は2分の1
■補助上限額
1,250万円
補助対象事業者の要件
対象となる事業者の要件は、以下の①~③です。
①地域の関係者と連携する |
②地方公共団体、観光地域づくり法人(DMO)、観光協会、民間企業等である |
③地方公共団体でない場合は、事業に関わる全ての市区町村の同意を得る |
補助対象事業
補助の対象となる事業は、以下のものです。
①観光事業者が連携し、地域に根差したアクティビティ等のコンテンツの磨き上げを図る |
②地域の産業連携を通じて観光消費拡大を図る |
③国内居住者もターゲットに含む、主にインバウンド向けの取組 |
④事業期間内に行うモデルツアーなど、地域に実際に旅行者が訪れる取組の販路形成・プロモーションなど、販売を想定した総合的な取組 |
⑤本事業終了以降もコンテンツの販売または継続的な実施を前提とした取組 |
⑥多くの訪日外国人旅行者が活用する地図検索サービスに、該当のコンテンツに関する情報を入力する |
➆コンテンツタリフやOTA掲載用情報入力フォーマット等を作成・提出する |
⑧事業費の下限600万円とする |
補助対象経費
補助の対象となる経費は、以下のとおりです。
補助対象経費 | |
①観光資源を活用したコンテンツの造成に関する経費 | ■観光コンテンツ、旅行商品等の企画開発 ■名産品の企画開発 ■ワークショップ、協議会等の開催 ■専門家からの意見聴取 ■ガイドの育成 ■観光イベントの実施 ■共通クーポン券等の企画開発 ■観光戦略の策定 ■地域事業者や地域住民に対するセミナーの開催 ■コンテンツに関するモニターツアーの開催 ■インバウンド受入に関わる他言語対応等における経費 等 |
②備品の購入・設備の導入に関わる経費 | ■インバウンド受入等に必要となる備品の購入や設備の導入 等 |
③販路基盤整備・プロモーションに関わる経費 | ■コンテンツを販売するために必要となる写真、動画、ホームページ等、対外的な情報発信のための素材やツールの作成 ■インバウンドも含めた販路拡大を目的とした販路基盤整備・プロモーションに関わる経費 ■コンテンツに関するファムトリップの招聘 等 |
このうち、①観光資源を活用したコンテンツの造成に関する経費は事業費全体の50%以上である必要があります。
なお、以下の経費は補助の対象外です。
- 本事業に直接関係のない経費
- 交付決定前に発生した経費
- 人件費および旅費、事務所等の家賃事など、業者における経常的な経費
- 旅行者が受益する、景品の購入や割引に係る経費
- 実施主体の会食費、弁当代等の飲食費
- 利子
- モニターツアー参加者の実施場所への旅費 等
留意点
申請にあたっては、以下の留意点を確認してください。
①災害等の予期できない事由によって事業が実施できなくなる場合には、そのキャンセル料等の経費も対象とします。
②観光庁内の他事業への重複申請も可能です。ただし複数採択となった場合は、いずれか一方の申請を取り下げることとします。
事業の流れ
事業の流れとスケジュールは、以下のとおりです。
①応募受付(~7月7日) | 応募書類一式を記入の上、Web サイトにて申請・提出を行います。 |
②採択内示通知(8月下旬) | 提出書類に基づいた審査が行われ、結果が通知されます。 |
③必修研修受講(9月上旬) | 採択事業者は、オンライン研修を受講します。この研修は必修です。 |
④事業計画書提出(9月上旬) | 採択事業者は研修を踏まえて事業計画書を見直し、必要に応じて内容を修正の上、改めて事業計画書を提出します。 |
⑤交付申請書提出(9月上旬) | 交付決定の通知を受けた後、事業を開始します。 |
⑥交付決定(9月上中旬を目途に通知) | 策定した事業計画書に基づき、事務局の伴走支援を受けながら事業を実施します。伴走支援には専門家による助言指導などが予定されています。 |
➆事業実施(交付決定後~令和6年2月29日) | 採択事業者は事業終了後、完了実績報告と精算書類を事務局に提出します。締め切りは令和6年2月29日です。 |
⑧精算(令和6年3月中) |
申請手続き
それでは、申請の手続きについて見てみましょう。申請はWebで行いますが、やむを得ない事情がある場合には事務局まで相談してください。
受付期間や申請に必要な書類をまとめました。
受付期間
令和5年6月5日(月)~令和5年7月7日(金)12:00
提出書類
申請時に提出する書類は、以下の①~⑥です。
①事業計画書
②費用積算書
③事業実施スケジュール
④事業概要
⑤市区町村の同意書
⑥連携先の同意書
このうち、④PowerPoint形式で、⑤と⑥はPDF形式で申請ページから提出します。①~④はフォームに直接入力してください。
選定の観点
審査は有識者を含む委員会にて行われます。その際、評価の基準となる「選定の観点」は以下のとおりです。
①持続可能な観光地域づくりへの寄与
②独自性・新規性
③具体性・計画性
④実施体制・持続性
⑤収益性
⑥インバウンド誘客に向けた計画性
なお募集締切り後、必要に応じて、ヒアリング等を実施する場合があります。
まとめ
政府は令和7年までに、持続可能な観光地域づくりに取り組む地域を100地域、1人あたりの訪日外国人旅行消費額単価20万円等の目標を掲げています。こうした数値を達成するには、地域のもつ観光資源の力を活かしたさらなる魅力の開発・磨き上げが必要です。
また外国人観光客にとって過ごしやすい環境の整備は、その地域に住む多様な人々の生活も豊かにします。誰にとっても魅力的な街づくりを進めることで、若い人材の定着や高齢者支援にもつながります。
自由な人の動きが回復しつつあるいま、コロナ禍で打撃を受けた観光業は復興のチャンスです。インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業を活用し、地域の良さを伸ばす取組を進めていきましょう。