8月27日、国土交通省の令和7年度予算概算要求が公表されました。その中ではデフレからの脱却による持続可能な経済社会の実現や、国民の暮らしと命を守る政策が取り上げられています。
今回は令和7年度の概算要求額や、その3つの柱とポイントをまとめました。
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この記事の目次
国土交通省 令和7年度予算概算要求額
令和7年度の一般会計は7兆330億円(前年度比1.18倍)、うち「重要政策推進枠」が1兆6,100億円です。そのうち公共事業関係費では、一般公共事業費が6兆2,319億円(1.19倍)、災害復旧等が580億円(前年度と変わらず)でした。また、非公共事業は7,431億円(1.12倍)となりました。
また、東日本大震災復興特別会計は617億円(1.33倍)、財政投融資は1兆5,443億円(0.74倍)です。
出典:令和7年度 予算概算要求概要
国土交通省 令和7年度概算要求の主な方針
国土交通省令和7年度概算要求では、以下の3つが柱になっています。
①国民の安全・安心の確保
災害からの復興と防災、交通の安全などを強化するため、以下のような事業が盛り込まれました。
- 東日本大震災や令和6年能登半島地震をはじめとする大規模自然災害からの復旧・復興
- 災害に屈しない強靱な国土づくりのための防災・減災、国土強靱化の強力な推進
- インフラ老朽化対策等による持続可能なインフラメンテナンスの実現
- 地域における総合的な防災・減災対策、老朽化対策等に対する集中的支援
- 交通の安全・安心の確保
- 海上保安能力の強化等
- 国民保護・総合的な防衛体制の強化等に資する公共インフラ整備
②持続的な経済成長の実現
社会資本の整備やDX・GXの推進、観光立国の実現等によって持続的な経済成長を図るため、以下のような事業が盛り込まれました。
- ストック効果を重視した社会資本整備の戦略的かつ計画的な推進
- 脱炭素社会の実現に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)の推進
- 国土交通分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)や技術開発等の推進
- 持続可能な観光立国の実現
- 国土交通分野における働き方改革等を通じた担い手の確保・育成や生産性の向上
- 民間投資やビジネス機会の拡大
- 2025年大阪・関西万博に向けた対応
- 2027年国際園芸博覧会に向けた対応
➂個性をいかした地域づくりと分散型国づくり
多様な働き方・生活スタイルやすべての世代が生きやすいまちづくりのため、以下のような事業が盛り込まれました。
- 共生社会実現に向けたバリアフリー社会の形成と活力ある地方創り
- デジタル田園都市国家構想の実現に資する分散型国づくりや持続可能な地域活性化
- 「交通空白」の解消等に向けた地域交通のリ・デザインの全面展開
- 「こどもまんなかまちづくり」等こども・子育て政策の推進
- 安心して暮らせる住まいの確保と魅力ある住生活環境の整備
- 豊かな暮らしを支える社会資本整備の総合的支援(社会資本整備総合交付金)
「安全・安心の確保」「持続的な経済成長」「地域づくり」の3本柱
それでは、3つの柱ごとに、具体的な事業を見ていきましょう。それぞれの主な事業の内容をまとめました。
1.国民の安全・安心の確保
東日本大震災からの復興・再生[617億円] |
・原子力災害被災地域における道路整備への支援 |
・福島県の震災復興に資する観光関連事業等に対する支援 |
・「住まいの復興工程表」等に基づく災害公営住宅等の家賃の減額に対する支援 など |
南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策等の推進[2,771億円(1.34)] |
・河川・海岸堤防等のかさ上げ・耐震対策、水門等の自動化・遠隔操作化等の推進 |
・ライフライン施設の耐震化と一体となって実施する土砂災害対策の推進 |
・帰宅困難者等を受け入れるための施設の整備に対する支援 |
・災害時の衛生環境を守るための下水道施設の耐震化やマンホールトイレの設置等の推進 など |
密集市街地対策や住宅・建築物の耐震化の強化[392億円(2.15)] |
・密集市街地等における建替えや改修等の防災対策の強化 |
・住宅・建築物の耐震改修等の取組に対する支援の強化 |
・耐震診断義務付け対象建築物等への重点的支援措置等による耐震化の強化 など |
盛土の安全確保対策の推進[10,405億円の内数] |
盛土の安全確保対策を推進することを目的として、都道府県等が実施する規制区域指定のための調査等の取組や、盛土の安全性把握調査、対策工事等に対する支援を行う |
2.持続的な経済成長の実現
効率的な物流ネットワークの早期整備・活用 [4,336億円(1.20)] |
・三大都市圏環状道路等の整備の推進 |
・トラック輸送と空港・港湾等の主要な物流拠点との接続の強化 |
・平常時・災害時を問わない安全・円滑な物流等のための道路ネットワーク構築等の推進 |
・ダブル連結トラックによる省人化の推進 など |
グリーンインフラ、まちづくりGX等のインフラ・まちづくり分野における脱炭素化の推進[193億円(1.28)] |
・グリーンインフラ官民連携プラットフォームの活動拡大 |
・生態系ネットワーク形成に寄与するグリーンインフラの推進 |
・低炭素な人流・物流への転換 |
・建設施工の脱炭素化に向けた技術開発・実証 |
・インフラ等を活用した太陽光発電等の地域再エネの導入・利用の拡大 など |
DXの推進等[16億円(3.76)] |
・ICT等の活用による省力化・効率化を通じた持続可能な鉄道システムへの転換 |
・物流現場の機械化・デジタル化よる物流等の構築 |
・国土交通行政におけるDXの推進、サイバーセキュリティの確保・強化 |
・「統計品質改善会議」における審議内容を踏まえた所管統計の品質改善 など |
運輸業、不動産鑑定業、造船・海運業、宿泊・観光業等における人材確保・育成[307億円の内数] |
・人材確保対策の強化 |
・自動車運送業における外国人材の適正な受入環境の確保 |
・不動産鑑定士の担い手確保に向けた取組の推進 |
・海事人材の確保・育成 |
・観光産業における人材の確保・育成等の支援 など |
3.個性をいかした地域づくりと分散型国づくり
地域公共交通や観光地・宿泊施設等のバリアフリー化の推進とユニバーサルデザインのまちづくりの実現[337億円の内数] |
・ホームドアの更なる整備等の促進 |
・ノンステップバスやUDタクシー等の導入等に対する支援 |
・誰もが安心して旅行を楽しめる環境整備の推進 など |
スマートシティの社会実装の加速[52億円(1.88)] |
新技術や官民データを活用して地域の課題解決や、新たな価値の創出を図るスマートシティの実装の加速化を図る。また、その基盤となる3D都市モデルの整備等を推進する。 |
地域・拠点の連携を促す道路ネットワークの整備[4,469億円(1.21)] |
・高速道路ネットワークの構築 |
・ICや空港・港湾等へのアクセス道路の整備に対する安定的な支援 |
・スマートICの活用による地域の拠点形成や、民間施設との直結による産業振興の支援 など |
まとめ
国土交通省の令和7年度概算要求では、「国民の安全・安心の確保」「持続的な経済成長の実現」「個性をいかした地域づくりと分散型国づくり」が柱となりました。いずれも世界的な関心が高く、企業評価の指針にもなりやすい項目です。
概算要求から来年度の政策方針を予測し、支援策の目途を立てておくことは、時世を読んだ経営展開にも役立ちます。これら3つのポイントを把握し、今後のビジネス戦略に活かしてください。