▼2022年の最低賃金引き上げについてはこちらから
新型コロナウイルスの影響が続いているなかで、7月14日に最低賃金引き上げの目安が示され、過去最大の引き上げ幅だったことが話題になっています。
厚生労働省の審議会は、今年度の最低賃金について全都道府県で28円引き上げ、全国平均で現在の902円から930円(時給)とする目安を示しました。6月に政府が示した全国平均を早期に1,000円に引き上げるとの方針が背景にあるものとみられます。このあと、目安をもとに都道府県ごとに設置された審議会を経て引き上げ額が決まり、10月ごろから全国で新たな最低賃金が適用となります。
参考:NHK NEWS WEB 最低賃金引き上げ コロナ影響続くなかで都道府県の議論焦点に
▼8月17日更新
8月12日に今年の最低賃金の改定額が全都道府県で出そろいました。47都道府県のうち、引き上げ額が28円は40都道府県、29円は4県(青森・山形・鳥取・佐賀)、30円は2県(秋田・大分)、32円は1県(島根)で、改定額の全国加重平均額は、昨年度から28円増の930円となりました。
本記事では、賃金引き上げが経営を圧迫することへの対応策として、最低賃金引き上げで使える助成金について調べてみたいと思います。また、必要事項を入力して、賃金額が最低賃金額以上となっているかどうか判定できるエクセルシートもご紹介します!
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この記事の目次
最低賃金制度とは?事業者にはどんな影響がある?
最低賃金とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。
【最低賃金額より低い賃金で契約した場合】
最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、法律によって無効とされて最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます。
【使用者が最低賃金を支払っていない場合】
各都道府県に1つずつ、全部で47の最低賃金が定められている地域別最低賃金以上の賃金額を支払わない場合には、罰則(50万円以下の罰金)が定められています。使用者が労働者に最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合は、使用者は労働者に対してその差額を支払わなくてはなりません。
賃金引上げによる影響
今年度の最低賃金について、全国平均で時給902円から930円とする目安が示されました。28円上がると1人あたりの人件費にどのような影響があるのか、以下の内容で計算してみます。
時給 | 902円 | 930円 |
---|---|---|
労働日数/月 | 20日間 | 20日間 |
労働時間/日 | 8h | 8h |
1人あたり月給 | 144,320円 | 148,800円 |
という計算式を立てることができます。28円の最低労働賃金が上がったことにより、ひと月1人あたり4,480円の人件費が上がることになります。年間でみると、1人あたり5万3760円になります。売上の増加、減少にかかわらず、この労働者に対して支払わなければいけないコストがこれだけ発生することになるのです。
最低賃金引き上げで使える助成金は?
このように時給を上げて人件費が上がるなら、労働時間を減らさなければ対応できないといった企業もでてくるでしょう。
労働時間の短縮、という点では、簡単なことではありませんが「業務効率化・生産性を高める」ことでも短縮が可能です。そこで、国は最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者支援事業として「業務改善助成金」という制度を設けています。
生産性向上のためには、何かしらの設備投資を検討されることが多いと思いますが、この「業務改善助成金」は生産性向上を目的とした設備投資(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練、POSシステムの導入)などを行って、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部の助成を受けることができる制度です。
業務改善助成金の対象者
事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内で、事業場規模が100人以下の事業場の中小企業・小規模事業者が対象です。過去に業務改善助成金を受給したことがあっても対象になります。
【支給要件】
(1)賃金引上計画を策定し、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げること
(2)引上げ後の賃金額を支払うこと
(3)生産性向上に資する機器・設備などを導入して業務改善を行い、その費用を支払うこと
(4)解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと
(3)について
・単なる経費削減のための経費
・職場環境を改善するための経費
・通常の事業活動に伴う経費などは除きます。
業務改善助成金の助成額
20円、30円、60円、90円といった申請コースごとに定める引上げ額以上、事業場内最低賃金を引き上げた場合に、生産性向上のための設備投資等にかかった費用の一部が助成されます。なお申請コースごとに、引き上げ額、引き上げる労働者数、助成率、助成の上限額が定められています。まとめたものが下図になります。
※8月から45円コースが新設されます!
出典:令和3年度「業務改善助成金」のご案内
【上限額】
最大450万円(引き上げ額90円以上・引き上げる労働者数7人以上の場合)
※8月から拡充:最大600万円(引き上げ額90円以上・引き上げる労働者数10人以上の場合)
【助成率】
最大9/10(助成金を申請する事業所が生産性要件を満たす場合)
助成率が高い「事業場内最低賃金900円未満」の対象となるのは?
地域別最低賃金900円未満の地域(北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の39地域)のうち、事業場内最低賃金が900円未満の事業場に限り対象となります。
【生産性向上のための設備・機器の導入例】
- POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
- リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
- 顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化
- 専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上 など
※このほか、8月からの特例的な拡充で、PC、スマホ、タブレットの新規購入、貨物自動車なども生産性向上の効果が認められる場合は対象になります。
業務改善助成金の申請方法
(1)助成金交付申請書を労働局に提出
事業改善計画と賃金引上げ計画を記載した交付申請書(様式第1号)を都道府県労働局に提出。内容が適正と認められれば助成金の交付決定通知が届きます。
↓
(2)設備・機器の導入などで生産性を向上
生産向上、労働能率の増進が図られる設備投資などを行い、業務の効率化を目指します。
↓
(3)事業場内の最低賃金を引上げ
事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げます。
↓
(4)事業実績報告書を提出
業務改善計画の実施結果と賃金引上げ状況を記載した事業実績報告書(様式第9号)を提出。内容が適正と認められれば助成金額の確定通知が届きます。
↓
(5)入金
確定通知を受けたら、支払請求書(様式第13号)を提出します。
※業務改善助成金の申請締切は令和4年1月31日です。
最低賃金のチェック方法は?
最低賃金は使用者にも労働者にも関わる制度です。最後に、賃金額と最低賃金を比較チェックする方法をみてみましょう。
最低賃金をチェックするには、たとえば月給の場合は、対象賃金額を時間額に換算して、適用される最低賃金額と比較します。
今回、自社の賃金額が最低賃金以下かどうか、簡単にチェックできるシートをご用意しました!
月給計算式のシートでは、都道府県を選択して、基本給や手当、労働時間などを入力すると時給換算され、一番下に「判定」がでます。(月給の場合だけでなく、歩合給制の場合の計算もすることができます)
判定が「最低賃金額以下」なら、見直しが必要だということになります。最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、50万円以下の罰金となってしまいます。
仮に賃金額がそのままですと、10月における最低賃金額の引上げにおいても法律に抵触してしまいますので、賃金引上げに向けた確認ツールとしてお役立てください。
この計算シートは、厚生労働省の「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」を参考にして作成しております。
まとめ
新型コロナウイルスの影響が続くなかでの最低賃金の見直しは容易なことではなく、最低賃金の過去最大の引き上げ幅は、驚きをもって迎えられました。
業務改善助成金は、最低賃金引上げに向けた国の支援事業の1つです。また、有期雇用労働者の賃上げに取り組むならキャリアアップ助成金の活用も検討できます。困難を乗り越えるために、こういった国の支援策である助成金を上手に活用していただきたいと思います。
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