令和5年4月1日、厚生労働省は産業雇用安定助成金に「事業再構築支援コース」を新設しました。これは新型コロナウイルス拡大の影響等で縮小を余儀なくされた事業の回復のため、必要な人材の受け入れを支援するためのものです。
今回は産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)の内容や申し込み手続きの流れについて、お伝えします。
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この記事の目次
産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)とは
「事業再構築補助金」は経済社会の変化に対応するため、中小企業の新分野展開や業態転換などの事業再構築を支援するものです。今回、産業雇用安定助成金に新設された「事業再構築支援コース」では、令和5年4月1日以降に事業再構築補助金の応募書類を提出し、交付決定を受けている事業者が再構築に必要な人材を雇用した場合、1人あたり280万円 (中小企業以外では200万円) の助成金が交付されます。
まずは概要や助成額の詳細や対象者の要件について見ていきましょう。
助成額
助成金は雇入れから6か月を支給対象期の第1期、次の6か月を第2期として、2回に分けて支給されます。また、1事業あたりの条件は5人までです。
企業規模ごとの助成金額は、以下の通りです。
■中小企業
1人あたり280万円 (140万円×2期)
■中小企業以外
1人あたり200万円(100万円×2期)
対象事業主
助成の対象となるのは、以下のすべてに該当する事業主です。
対象事業主の要件 |
---|
①令和5年4月1日以降に中小企業庁の実施する「事業再構築補助金」の応募書類を提出し、交付決定を受けている ②対象労働者の雇入れにあたって、次の全ての条件を満たす ■雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れる ■パートタイム労働者を除き、期間の定めのない労働者として雇い入れる ■補助事業実施期間の初日から当該期間の末日までに雇い入れる ③対象労働者に対して1年間に350万円以上の賃金を支払っている ④雇入れ日前6か月から本助成金の支給申請までの期間に、労働者の解雇等していない ⑤原則として基準の期間内の特定受給資格者となる離職理由の被保険者数が、被保険者数の6%を超えていない ⑥過去に本助成金の支給決定の対象となった労働者を解雇していない ⑦受給に必要な書類を整備し、労働局等に提出するとともに保管して、提出を求められた場合は速やかに応じる ⑧労働局等の実地調査を受け入れる |
不支給要件
対象事業主であっても、次の①~⑫のいずれかに該当する場合は支援の対象となりません。
不支給要件 |
①過去3年間に、事業主と雇用等の関係にあった対象労働者を雇い入れる場合 |
②過去1年間に、対象労働者と雇用等の関係にあった事業主と独立性が認められない事業主 |
③対象労働者が、事業主または取締役の3親等以内の親族である場合 |
④支給対象期の対象労働者の賃金が、支払期日までに支払われていない場合 |
⑤過去に不正受給による不支給決定等を受けたことがあり、当該不支給決定日または支給決定取消日から3年または5年の該当期間を経過していない |
⑥過去に雇用関係助成金について、不正受給に関与した役員等がいる |
➆過去の保険年度で、労働保険料の滞納がある |
⑧過去1年において、労働関係法令違反で送検処分を受けている |
⑨風俗営業等関係事業主 |
➉事業主または事業主の役員等が暴力団等に関係している場合 |
⑪支給申請日または支給決定日の時点で倒産している |
⑫支給申請書等に事実と異なる記載または証明を行った場合 |
対象労働者
助成の対象となる雇用者は事業再構築に関わる業務に就く者のうち、以下の要件を満たす者です。
対象労働者の要件 |
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①次のいずれかに該当する者 ■専門的な知識や技術が必要となる企画・立案、指導の業務に従事する者 ■部下の指揮監督業務に従事し、部下として、1階職以上の従業員を有する者 ②1年間に350万円以上の賃金が支払われる者 |
産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)の活用方法
産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)は、「事業再構築補助金」に採択された事業が該当の取り組みを行うための人材を受け入れる際に活用できる制度です。支援を受けるためには、まず事業再構築補助金に採択される必要があります。
実際にどんな事業が事業再構築補助金の交付の対象となるのか、活用イメージ集から見てみましょう。
①新分野展開
■製造業
ドライブレコーダーなどの車載製品を製造していた業者が、医療用ライトなどの医療分野向けの製品の製造を開始
②事業転換
■小売業
衣服品販売店を経営する事業者が、健康・美容関連商品の販売店を展開
③業種転換
■賃貸業
農業機械のリース事業者が、ドローンの操作を学ぶための通信教育ビジネスを運用
④業態転換
■サービス業
美容室を経営していた事業者が、移動が難しい高齢者向けに訪問美容サービスを開始
⑤事業再編
■飲食業
オフィス街で営業する弁当屋が、病院向けの給食などの施設給食業に着手
産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)の申請手続き
それでは、産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)の申請手続きについて見ていきましょう。なお申請の際には、事業再構築補助金の申請要件等も確認をしてください。
受給までの流れ
申請から受給までの流れは、以下の通りです。
受給までの流れ |
①事業再構築補助金の応募書類の提出 |
②採択審査委員会による審査・採択 |
③事業再構築補助金の交付申請 |
④事業再構築補助金の交付決定 |
⑤対象労働者の雇入れ(補助事業実施期間内) |
⑥産業雇用安定助成金の支給申請 |
➆産業雇用安定助成金の受給 |
手続きの全体像については、以下の図も参考にしてください。
出典:産業雇用安定助成金 (事業再構築支援コース)のご案内
申請手続き
実際の申請手続きは、支給対象期ごとに2回行います。事業所の所在地を管轄する労働局またはハローワークで手続きを行ってください。
支給申請期間は、各支給対象期の末日の翌日から「2か月以内」です。なお第1期と第2期の支給対象期を合わせて、助成対象期間と呼んでいます。
対象労働者の受け入れと申請スケジュールについては、以下の図を参照してください。
出典:産業雇用安定助成金 (事業再構築支援コース)のご案内
提出書類
申請に必要な書類は、以下の①~⑩です。なお、★は第1期の支給申請時のみ提出が必要な書類、☆は第2期の支給申請時のみ提出が必要な書類です。
提出書類 |
---|
①支給申請書 ②対象労働者雇用状況等申立書 ☆③事業再構築実施結果報告書 ★④事業再構築補助金の交付決定を受けていることが確認できる書類の写し ・事業再構築補助金の応募と補助金交付申請において、提出した書類一式 ・事業再構築補助金の採択と交付決定に関する通知書類 など ★⑤雇用契約書または雇入れ通知書 ⑥報酬支払簿 ➆出勤簿等 ★⑧対象労働者であることを証明する組織図等の写し ⑨支給要件確認申立書 ➉支払方法・受取人住所届(共通要領様式) |
産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)よくある問い合わせ
新たに創設された事業再構築支援コースでは、認知の広まっていない情報も多くあります。ここでは事務局が公表しているFAQの中から、特に重要なものをいくつか紹介します。
よくある問い合わせ | |
①来年以降の実施予定 | 令和6年度以降の取り扱いについては未定です。 |
②労働者が専門知識を有することの証明方法 | 対象労働者雇用状況等申立書に当該労働者の従事する業務の内容を記載するとともに、業務内容、部署が明らかにされた事業主の組織図等の写しを提出してください。 |
③「事業再構築補助金」の採択を受けた事業主 | 対象となるのは、第10回公募要領に基づく事業再構築補助金のうち、「物価高騰対策・回復再生応援 枠」および「最低賃金枠」の採択を受けた事業主のみです。また、事業計画に記載することとされている「実施体制」中に人材確保に関する事項を記載する必要があります。 |
④令和5年4月1日より前に事業再構築補助金の交付決定を受けた場合 | 支給対象となりません。 |
⑤自営業者、個人事業主、フリーランスへの業務委託 | 支給対象とはなりません。 |
まとめ
経済活動には回復の兆しが見え始めたとはいえ、企業にとっては厳しい状況が続いています。事業再構築のためには、優秀な人材確保も課題のひとつです。
産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)の活用は、予算的な問題を緩和する一助となります。ポストコロナ・アフターコロナを見据えた事業展開を目指す企業には、ぜひ活用してほしい助成金です。