工場の新設や大型の自動化ラインに最大50億円を補助する「中堅・中小・スタートアップ企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」(以下、大規模成長投資補助金)。6次公募は2026年8月31日に締め切られ、事務局の発表によると有効申請は163件でした。10月19日〜23日にはプレゼンテーション審査が行われ、採択発表は11月上旬頃に予定されています。
一方で、経済産業省は令和9年度概算要求に本補助金として約1,376億円を計上しました。「6次に間に合わなかった」「次の公募はいつか」と考えている経営者の方も多いのではないでしょうか。投資額20億円以上という大型案件だからこそ、公募要領が出てから準備を始めるのでは手遅れになりがちです。
この記事では、6次公募の現状と採択発表後の流れ、7次公募の見通し、5次公募の採択企業77社から見た業種別の傾向(金属加工・機械加工・電子部品・半導体・食品工場など)、審査とプレゼンの対策、申請支援業者の選び方までを、事務局の公募要領と公表資料をもとに解説します。
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2016年に中小企業診断士資格を取得。2021年に楽器メーカーを退職し、同年プロダクトイノベーション/経営コンサルティングオフィス「YKフューチャーコンサルティング」を創業。現在は製造業を中心とした事業者の新規事業立案・新商品開発・マーケティング支援に従事するほか、セミナー登壇や中小企業診断士の育成、大学での講義など幅広く活動。事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金など各種補助金の申請支援に豊富な経験を持ち、採択実績も多数。130名の中小企業診断士が所属するProHubを運営し、次世代の支援者育成にも努めている。
この記事の目次
大規模成長投資補助金とは?最大50億円で工場新設・大規模設備投資を支援
大規模成長投資補助金は、常時使用する従業員数2,000人以下の中堅・中小・スタートアップ企業が行う20億円以上の大規模投資を、補助上限50億円・補助率1/3以下で支援する経済産業省の補助金です。運営事務局は株式会社野村総合研究所が担っています。
目的は、地域の雇用を支える企業が人手不足に対応しながら、省力化による労働生産性の抜本的な向上と事業規模の拡大を図り、地方での持続的な賃上げを実現することです。1次〜4次公募は「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」の名称で実施され、5次公募からスタートアップが対象に明記されました。「中堅等大規模成長投資補助金」「成長投資補助金」と呼ばれることもありますが、いずれも同じ制度です。
| 大規模成長投資補助金(6次公募)の概要 | |
|---|---|
| 補助上限額 | 50億円 |
| 補助率 | 1/3以下(申請時に1/4での採択を容認した事業者は追加採択の対象になる場合あり) |
| 補助対象者 | 日本国内に本社と補助事業の実施場所がある、常時使用する従業員2,000人以下の会社または個人等(みなし大企業を除く)。最大10者のコンソーシアム形式も可 |
| 投資額要件 | 一般企業向け:20億円以上/100億宣言企業向け:15億円以上(税抜。外注費・専門家経費を除く補助対象経費分) |
| 賃上げ要件 | 補助事業終了後3年間の従業員1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が、一般企業向け5.0%以上/100億宣言企業向け4.5%以上 |
| 補助対象経費 | 建物費、機械装置費、ソフトウェア費、外注費、専門家経費 |
| 補助事業期間 | 交付決定日から最長で令和10年(2028年)12月末まで |
| 申請方法 | Jグランツによる電子申請のみ(GビズIDプライムが必要) |
- 投資額20億円以上(100億宣言企業は15億円以上)の大型投資が対象
- 補助上限50億円は、国の設備投資系補助金の中でも最大規模
- 書面審査に加え、経営者本人によるプレゼンテーション審査がある
- 賃上げ目標を達成できないと補助金の返還が求められる
6次公募の現状は?申請163件・採択発表は11月上旬の予定
6次公募は2026年7月31日に受付を開始し、8月31日17時に締め切られました。事務局によると、締切までの有効申請は163件で、書面(一次)審査の結果は9月30日に各申請企業へメールで通知されています。2026年10月28日時点では、プレゼンテーション審査(10月19日〜23日)を終え、採択発表を待つ段階です。6次公募のスケジュールは?
6次公募の採択発表は11月上旬頃、交付決定は2027年1月中旬以降の予定です。公募要領に記載された日程は次のとおりです。
| 手続き | 日程(公募要領記載の予定) | 状況(10月28日時点) |
|---|---|---|
| 申請受付 | 2026年7月31日(金)〜8月31日(月)17:00 | 終了 |
| 書面審査(一次)結果通知 | 9月下旬頃(9月30日にメール送信) | 終了 |
| プレゼンテーション審査(二次) | 10月19日(月)〜10月23日(金) | 終了 |
| 採択発表 | 11月上旬頃 | 発表待ち |
| 交付申請 | 11月中旬以降 | これから |
| 交付審査 | 12月中旬以降 | これから |
| 交付決定 | 2027年1月中旬以降 | これから |
なお、事務局は令和8年熊本地震の被災事業者への配慮として、8月28日に公募要領を更新しています。期限内の申請が難しかった被災事業者には、事務局への個別相談を案内していました。
6次公募の競争率はどのくらい?
6次公募の申請件数163件は、5次公募の198件から35件(約18%)減りました。5次公募の採択件数は77件で、仮に6次も同程度の件数が採択されれば、採択倍率は約2.1倍となります。ただし採択件数は予算の残額や申請内容で決まるため、実際の倍率は採択発表で確認する必要があります。
申請件数が減った背景として、6次公募から審査が厳しくなった点が考えられます。補助事業期間中の「足下の賃上げ」が物価上昇率を下回ると審査上大幅に不利になることや、投資総額を上回る余剰キャッシュを持つ企業は補助金の必要性を厳しく問われることが、公募要領に明記されました。
採択された後は何をする?交付決定までの流れ
採択は補助金額の決定ではありません。採択後は11月中旬以降に交付申請を行い、交付審査を経て交付決定(2027年1月中旬以降)を受けてから、初めて契約・発注に進めます。交付決定前に契約・発注した経費は補助対象外です。
- 交付申請時に、原則3社以上の同一条件による相見積もりを提出(建物・機械・ソフトウェアは100万円以上、外注費・専門家経費は契約先1件あたり50万円以上が対象)
- 交付申請時に経済安全保障に関する誓約書を提出し、交付決定から1年以内に報告
- 交付決定から原則1か月以内に、採択された旨・目標賃上げ率・投資規模をプレスリリース等で公表(未公表の場合は交付決定取消)
- 事業完了後30日以内に実績報告書を提出(補助金は原則として精算払い)
- 事業完了後3年間、賃上げ・事業化の状況を報告
7次公募はいつ?次回公募の見通し
2026年10月28日時点で、7次公募の実施時期は発表されていません。ただし、経済産業省は令和9年度概算要求で「中堅・中小・スタートアップ企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」として約1,376億円を要求しており、制度を継続する方針が示されています。
これまでの公募は、2025年が春(3次)と夏(4次)、2026年が春(5次・2月27日開始)と夏(6次・7月31日開始)と、おおむね年2回のペースで行われてきました。予算の成立時期にもよりますが、過去の実績からは2027年の春ごろに次の公募が行われる可能性があります。これは当サイトの推測であり、公式発表ではない点にご注意ください。
- 公募期間は1か月前後と短い(5次は2月27日〜3月27日、6次は7月31日〜8月31日)
- 6次は公募開始の約1か月前(6月30日)に公募要領の事前公開版が出た。事前公開版での申請は認められない
- 過去の採択事業と同じ事業内容では申請できない重複制限がある
次回公募までの期間は、計画の数値化や金融機関との調整を進める準備期間と考えるとよいでしょう。他の補助金の締切もあわせて確認したい方は、以下の記事もご覧ください。
過去の公募結果は?1次〜6次の申請件数と採択件数
直近の採択倍率は4次公募が約2.1倍、5次公募が約2.6倍でした。3次以降の公募結果は次のとおりです。
| 公募回 | 公募期間 | 採択発表 | 申請件数 | 採択件数(倍率) |
|---|---|---|---|---|
| 1次・2次 | 2024年 | 2024年 | ― | ― |
| 3次 | 2025年3月10日〜4月28日 | 2025年6月30日 | ― | ― |
| 4次 | 2025年7月7日〜8月8日 | 2025年10月10日 | 210件 | 102件(約2.1倍) |
| 5次 | 2026年2月27日〜3月27日 | 2026年5月18日 | 198件 | 77件(約2.6倍) |
| 6次 | 2026年7月31日〜8月31日 | 11月上旬頃(予定) | 163件 | 発表待ち |
5次公募では、書面と定量面の一次審査を経て147件がプレゼンテーション審査に進み、最終的に77件が採択されました。採択者の平均投資予定額は約56億円、採択金額の合計は約1,241億円です。
採択者はどのくらいの目標を掲げている?
5次公募の採択者は、年平均従業員目標賃上げ率の中央値が年7.0%でした。一般企業向けの基準率5.0%を2ポイント上回っており、要件ぎりぎりの目標では競争上不利になりやすいことがわかります。事務局が公表した主な指標(中央値)は次のとおりです。
| 指標(中央値) | 採択者(77件) | 申請者全体(198件) |
|---|---|---|
| 年平均従業員目標賃上げ率 | 7.0%/年 | 6.5%/年 |
| 全社年平均売上高成長率 | 21%/年 | 20%/年 |
| 全社売上高増加額 | +82.4億円 | +67.1億円 |
| 補助事業売上高増加額 | +74.8億円 | +57.4億円 |
| 補助事業付加価値増加額 | +28.1億円 | +19.9億円 |
| 従業員給与支給総額の増加額 | +3.9億円 | +2.8億円 |
| 補助金額に対する付加価値増加額割合 | 213% | 171% |
| 全社売上高に対する投資額割合 | 61% | 64% |
| ローカルベンチマークの得点 | 23点 | 23点 |
採択者と申請者全体の差が大きいのは、補助事業による売上高・付加価値の増加額と、補助金額に対する付加価値増加額割合(213%と171%)です。補助金1円あたりでどれだけ付加価値を生むかという費用対効果が、採否を分ける要素になっていると読み取れます。
どんな業種が採択されている?金属加工・電子部品・食品工場などの事例
5次公募の採択77件を計画名から分類すると、食品・飲料の製造が約18件で最多、次いで金属加工・機械、半導体・電子部品関連が多くなっています。業種そのものに制限はなく、製造業のほか物流、観光・宿泊、環境・リサイクルでも採択例があります。
| 業種 | 5次公募の主な採択事例(事業者名・本社所在地・計画の要約) |
|---|---|
| 金属加工・鋳造 | 森田鉄工所(埼玉)水道バルブの生産能力強化/三光製作所(愛知)防衛・宇宙サプライチェーン向け新工場/愛同工業(愛知)中型アルミダイカスト製品への参入/大和特殊鋼(大阪)新工場建設と拠点集約/関東高圧容器製作所(群馬)高圧容器の生産能力強化/日本フネン(徳島)鋼製玄関ドア事業の省力化 |
| 機械加工・生産財 | 東栄鉄工(愛知)BIM・ロボット連携のスマート工場/TONE(大阪)省力化新工場による電動工具の販売拡大/菊水製作所(京都)新工場建設/湯浅製作所(群馬)自動車産業向け次世代生産拠点/A.I.S(静岡)次世代自動車ユニットの強化 |
| 半導体・電子部品 | ニッコーシ(東京)半導体製造装置部品の一貫生産/有沢製作所(新潟)半導体材料/Kokune(愛知)半導体製造装置向け部素材/旭有機材(宮崎)半導体製造装置向け精密バルブ/フコク東海(愛知)次世代電子基板とワイヤレス給電装置/オジックテクノロジーズ(熊本)表面処理の新工場 |
| データセンター関連 | 日本熱源システム(東京)データセンター用冷却装置/アイベステクノ(兵庫)AIデータセンター向け配電盤/ヤンマーエネルギーシステム製造(福岡)大型非常用発電機の新工場 |
| 食品工場・飲料 | ヤマモリ(三重)レトルトパウチ食品工場/崎陽軒(神奈川)自動化による弁当供給力の強化/春日井製菓(愛知)グミ量産拠点/富岡食品(埼玉)油揚げの新工場と自動化一貫ライン/三和油脂(山形)こめ油の工場能力増強/群馬ビバレッジ(群馬)無菌充填設備 ほか |
| 包装・紙製品 | タイヨーパッケージ(富山)本社工場増設/ダイドー(奈良)高度製袋技術によるワンストップ事業/田中紙管(大阪)高機能紙管の生産体制 |
| 化学・医薬 | 万協製薬(三重)医薬品工場の新設/富田製薬(徳島)透析剤・医薬品原薬の工場再編/三宝化学研究所(大阪)第二製造棟の新設/中京化成工業(愛知)研究開発拠点とAI活用/バイオ科学(徳島)水産用ワクチンの量産 |
| 光学・ガラス | シグマ(神奈川)一眼カメラ・交換レンズの製造/三芝硝材(富山)高機能ガラスの量産 |
| 建設関連 | 竹島鉃工建設(和歌山)BIM連動による鉄骨製作DX |
| 物流・倉庫 | ABCロジテム(栃木)次世代型低温物流倉庫/新鮮便(群馬)冷凍冷蔵倉庫と自動選別機/サン インテルネット(神奈川)冷凍食品EC向け物流拠点/日本栄養食品(北海道)物流センター新設/小野建(福岡)物流・加工機能の増強 |
| 観光・宿泊 | 加賀屋(石川)旅館の新計画/KURASU KANAYA(東京)宿泊DXと拠点展開/クア・アンド・ホテル(山梨)健康ランドのモデル施設/奥原商事(沖縄)商業・宿泊施設の一体開発 |
| 環境・リサイクル | ダイセキ環境ソリューション(静岡)プラスチック資源の再商品化/カンポ(京都)次世代型焼却施設/街クリーン(沖縄)焼却施設の新設 |
※事務局公表の「5次公募 採択者一覧」をもとに当サイトで分類。計画名は要約です。
金属加工・機械加工の企業は採択されやすい?
金属加工・機械加工は、5次公募で10件以上が採択された主要業種の一つです。水道インフラ向けバルブ、防衛・宇宙向け部品、アルミダイカスト(鋳造)への新規参入など、成長市場や国策分野に向けた生産能力の増強を、新工場とロボット・自動化設備の組み合わせで打ち出す計画が目立ちます。単に古い機械を入れ替えるだけの投資は対象外のため、生産能力や付加価値がどれだけ増えるかを数値で示すことが欠かせません。
半導体・電子部品の企業はどんな計画で採択された?
半導体・電子部品関連では、半導体製造装置の部品・部素材・精密バルブ、半導体材料、電子基板、表面処理など、サプライチェーンを支える企業の採択が続いています。データセンター向けの冷却装置・配電盤・非常用発電機も含めると10件近くにのぼります。6次公募では、AI・半導体を含む17の戦略分野に関する事業が加点対象となっており、この分野は引き続き評価されやすいといえます。
食品工場の新設は対象になる?
食品工場の新設は対象になり、5次公募では最も採択件数が多い分野でした。レトルト食品、弁当、菓子、油揚げ、こめ油、飲料など品目は幅広く、「新工場の建設」と「自動化ライン」に、輸出拡大やHACCP対応を組み合わせた計画が典型例です。ただし、農業者が自ら育てた作物を主な原材料とする製造など、補助事業が1次産業にあたる場合は対象外となる点に注意が必要です。
印刷・運送・建設業でも申請できる?
印刷・運送・建設業でも、要件を満たせば申請できます。業種による除外はなく、問われるのは投資規模と賃上げ、生産性向上の中身です。5次公募では、印刷そのものの採択例は見当たりませんでしたが、パッケージ・製袋・紙管など紙加工の拠点増強が採択されています。運送分野では低温物流倉庫や物流センターの新設、建設分野ではBIMと連動した鉄骨製作工場のDXが採択されました。
採択事業に共通する特徴は?
5次公募の採択事業には、次の3つの共通点が見られます。
- 拠点の新設・増設が中心:大半が工場・倉庫・施設の新設や増設を核とした計画
- 省力化と能力増強の両立:自動化・ロボット・DXで人手を抑えつつ、生産量や売上を大きく伸ばす計画
- 成長市場との接続:半導体、データセンター、防衛・宇宙、輸出、インバウンドなど需要が伸びる市場向けの投資
対象にならない事業は?
次のような事業は補助対象外です。申請を検討する段階で確認しておきましょう。
- 補助事業が1次産業(農業・林業・漁業)である事業(植物工場や陸上養殖など、工業的な生産管理による生産は製造業に準じて対象になり得る)
- 老朽化設備の入れ替えなど、生産能力が向上しない更新投資
- 事業の大半を外注・委託し、企画だけを行う事業
- 実質的に労働を伴わない事業や、資産運用的な性格が強い事業
- 主に従業員の解雇によって賃上げ要件を達成しようとする事業
申請要件は?投資額・賃上げ・補助対象経費を確認
申請要件の柱は、投資額20億円以上(100億宣言企業は15億円以上)と年平均5.0%以上(同4.5%以上)の賃上げの2つです。自社が申請候補になるかは、次の流れで確認できます。
申請類型は「一般企業向け」と「100億宣言企業向け」の2つ
100億宣言企業向けでは、投資額と賃上げ率の要件が緩和されます。共同申請(コンソーシアム)の場合の要件も含めて整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 一般企業向け | 100億宣言企業向け |
|---|---|---|
| 対象 | 100億宣言を行っていない事業者 | 申請時までに「100億宣言」がポータルサイトで公表されている事業者 |
| 投資額(単独申請) | 20億円以上 | 15億円以上 |
| 投資額(共同申請) | 1者以上が10億円以上、合算20億円以上(10者以下) | 1者以上が7.5億円以上、合算15億円以上(10者以下) |
| 賃上げ基準率 | 年平均5.0%以上 | 年平均4.5%以上 |
※投資額は税抜きで、外注費・専門家経費を除く補助対象経費で計算します。
スタートアップ(設立20年以内で、公募開始日時点でベンチャーキャピタル等が株主に加わっている企業)のうち、産業競争力強化法上の中小企業者で、公募開始日から3年以内に100億宣言を行う見込みがある場合は、賃上げ基準率4.5%を適用できます。
100億宣言は公表まで時間がかかります。6次公募では、事務局が申請締切の約2週間前(8月17日)までの宣言申請を案内していました。次回公募で100億宣言企業向けを狙う場合は、公募開始前に宣言を済ませておくと安心です。
賃上げ要件はどう計算する?未達成の場合は返還になる?
賃上げ要件は、補助事業完了日を含む事業年度(基準年度)から3事業年度後までの「従業員1人当たり給与支給総額」の年平均上昇率で判定します。計算式は「(最終年度÷基準年度)の3乗根−1」で、3年間の単純平均ではない点に注意が必要です。申請時に基準率以上の目標を掲げ、従業員に表明したうえで達成することが求められます。
目標を達成できなかった場合は、補助金の返還が求められます。
| 状況 | 返還の扱い |
|---|---|
| 年平均上昇率が基準率(5.0%または4.5%)を下回った | 全額返還 |
| 基準年度の1人当たり給与支給総額が、申請時の直近決算期を下回った | 全額返還 |
| 基準率は上回ったが、申請時に掲げた目標を下回った | 未達成率に応じて返還 |
天災など事業者の責めに帰さない理由による未達成は、返還の対象外となる場合があります。また、交付決定額が一部の経費に限られた場合でも、申請時に掲げた賃上げ目標の達成が要件になります。
補助対象経費は?単純な設備更新や土地代は対象外
補助対象経費は、建物費・機械装置費・ソフトウェア費・外注費・専門家経費の5区分です。
| 経費区分 | 主な条件 |
|---|---|
| 建物費 | 単価100万円(税抜)以上。建物の単なる購入・賃貸、土地代、既存建物の撤去・解体費は対象外 |
| 機械装置費 | 単価100万円(税抜)以上。生産能力が向上しない更新投資や汎用品は対象外 |
| ソフトウェア費 | 単価100万円(税抜)以上。自社の人件費による開発は対象外 |
| 外注費 | 外注費と専門家経費の合計は、全体事業費の半分未満 |
| 専門家経費 | 1日5万円(税抜)が上限 |
地域未来投資促進税制、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制、大胆な投資促進税制の適用を受ける設備は補助対象外です。このほか、FIT・FIPを活用する発電設備、価格の妥当性が不明な中古品、グループ会社間の取引も対象外となります。
審査では何が見られる?6つの審査項目と加点措置
審査は「経営力」「先進性・成長性」「地域への波及効果」「大規模投資・費用対効果」「実現可能性」「補助金の必要性」の6項目で行われます。
| 審査項目 | 主な評価ポイント |
|---|---|
| 経営力 | 長期の成長ビジョン、事業戦略、成果目標、経営管理体制 |
| 先進性・成長性 | 市場・顧客の明確化、競合との差別化、労働生産性の抜本的な向上 |
| 地域への波及効果 | 賃上げの水準、地域内の取引先への効果、コンソーシアムの連携意義 |
| 大規模投資・費用対効果 | 収益規模に応じたリスクの取り方、補助金額に対する効果、企業の行動変容 |
| 実現可能性 | 実施体制、財務状況、課題とスケジュール、金融機関等のコミットメント |
| 補助金の必要性 | 自己資金や借入だけでは実現が難しいか |
6次公募で厳しくなった審査のポイントは?
6次公募では、次の3点が5次公募より厳しく評価されるようになりました。次回公募でも引き継がれる可能性が高いため、計画づくりの段階から意識しておきましょう。
- 足下の賃上げ:補助事業期間中の全社の賃上げも審査対象。最低でも物価上昇率(参考:2025年の消費者物価指数は前年比3.2%)を上回らないと審査上大幅に不利になる
- 余剰キャッシュ:投資総額を上回る余剰キャッシュを持つ企業は、補助金の必要性を厳しく審査される
- 計画の実現可能性:事業化報告期間中に計画の達成状況をモニタリングすることが明記され、審査段階でも実現可能性が厳しく見られる
加点を受けられる取組は?
主な加点措置は次のとおりです。原則として公募開始日時点での認定・取得が条件となるため、次回公募に向けて早めに確認しておくことをおすすめします。
- 金融機関・ファンド等による「確認書」または「出資・融資の表明書」(どちらか一方のみ。表明書は大幅加点。表明書を出して融資等が実行されない場合は採択取消の可能性あり)
- 中小企業から中堅企業への移行の宣言(大幅加点)
- AX(AIによるビジネスモデル転換)への取組
- AI・半導体、造船、量子、防衛産業など17の戦略分野に関する事業
- 東京23区から地方への本社機能移転、既存工場跡地の活用
- えるぼし、くるみん、健康経営優良法人、パートナーシップ構築宣言、地域未来牽引企業などの認定
- J-Startup(地域版を含む)選定企業
- ファミリービジネスにおけるファミリーガバナンスへの取組
成長投資計画書はどう作る?必要書類と注意点
申請の中心となる書類は、PowerPoint形式の「成長投資計画書(様式1)」です。様式1に加え、数値を記入する別紙(様式2)、ローカルベンチマーク(様式3)、3期分の決算書などを1つのzipファイルにまとめ、Jグランツで提出します。
| 書類 | ポイント |
|---|---|
| 様式1 成長投資計画書 | PPT形式とPDF形式で提出。独自に追加するスライドは10ページ以内 |
| 様式2 別紙 | 数値は千円単位で記入。基準年度や連結・単体の扱いに注意 |
| 様式3 ローカルベンチマーク | 財務と非財務の両面から企業の状況を示す |
| 決算書等 | 3期分 |
| 金融機関等の確認書・表明書 | 加点を受ける場合に提出(様式4-1または4-2) |
- 様式間の数値の不整合、連結と単体の数値の混在
- 基準年度の取り違え
- 古い公募回の様式や事前公開版の様式の使用
- 様式のシートの改変、ファイル名の命名規則違反
成長投資計画書は、申請者自身が作成する必要があります。外部の専門家から助言を受けることは問題ありませんが、計画の内容を経営者自身が説明できる状態にしておくことが、次のプレゼンテーション審査にも直結します。
プレゼンテーション審査の対策は?経営者本人の説明が必須
プレゼンテーション審査(二次審査)では、代表権を持つ経営者本人によるプレゼンテーションと質疑応答が必要です。経営者が出席・説明しない場合は審査上不利になる可能性があります。審査は地域ブロック単位で行われ、外部有識者が審査員として参加します。
- 経営者以外の役員や事業責任者の同席・補足説明は可能
- 外部コンサルティング会社など、申請者以外の同席は認められない
- 原則として日本語で実施(通訳の利用や役員による補足は可能)
対策として重要なのは、審査6項目に沿って、経営者が自分の言葉で計画を語れるようにしておくことです。特に「なぜ今この規模の投資が必要か(補助金の必要性)」「賃上げの原資をどう生むか(足下の賃上げを含む)」「計画が遅れた場合の対応(実現可能性)」は、質疑で深掘りされやすい論点といえます。想定問答を作り、数値の根拠を即答できるよう準備しておきましょう。
申請支援業者は怪しい?報酬・料金で注意すべき点
申請支援業者の多くは適法にサービスを提供していますが、公募要領でも業者選びへの注意が呼びかけられています。報酬の相場は公表されていないため、金額よりも「法令に沿った支援か」「計画の実現性まで一緒に考えてくれるか」で判断することが大切です。
- 行政書士(行政書士法人)でない者が有償で申請書を作成することは、行政書士法違反に該当する可能性がある。交付決定後に判明した場合は交付決定取消の可能性もある
- 代理申請は一切認められない(申請者が自社のGビズIDで申請する)
- 補助金の獲得だけを目的に計画の実現可能性を考えない業者や、サービス内容とかけ離れた高額な成功報酬を請求する業者に注意
- プレゼンテーション審査に外部コンサルティング会社は同席できない
業者を選ぶ際は、次の点を確認するとよいでしょう。
- 申請書の作成を代行する場合、行政書士の資格を持っているか(助言・壁打ちのみか、書類作成まで行うかを契約で明確にする)
- 着手金・成功報酬・採択後の事務手続き支援の範囲と費用が、契約書で明示されているか
- 採択後の交付申請・実績報告・3年間の賃上げ報告までの体制を説明できるか
- 過去の支援実績を、具体的な公募回や件数で示せるか
7次公募に向けて今から準備すべきことは?
次回公募で採択を目指すなら、公募開始を待たずに準備を進めることが重要です。公募期間は1か月前後しかなく、加点に必要な認定は原則として公募開始日時点での取得が条件になるためです。
- ① GビズIDプライムの取得:Jグランツでの申請に必須。書類郵送で申請する場合は発行まで時間がかかる
- ② 投資計画と賃上げ目標の数値化:5次採択者の目標賃上げ率の中央値7.0%を参考に、足下の賃上げも含めた原資の裏付けを固める
- ③ 金融機関との調整:確認書より加点の大きい「出資・融資の表明書」の取得を視野に入れる
- ④ 100億宣言・加点認定の取得:100億宣言、えるぼし・くるみん・健康経営優良法人・パートナーシップ構築宣言などを公募開始前に済ませる
- ⑤ 見積もりの取得:建物・設備の見積もりは時間がかかる。交付申請時には原則3社以上の相見積もりが必要
- ⑥ 経営者のプレゼン準備:審査6項目に沿った想定問答を用意する
6次公募では、1次〜4次公募の採択事業と「同一の産業分類(日本標準産業分類の小分類)」「対象従業員の重複」「同一都道府県での実施」のいずれかに該当する事業や、5次公募の採択事業者による事業は申請できませんでした。次回公募でも同様の制限が設けられる可能性があるため、グループ内に過去の採択企業がある場合は公募要領で確認しましょう。
投資額が20億円に届かない場合は、他の補助金も選択肢になります。中小企業成長加速化補助金は投資額1億円以上・補助上限5億円、省力化投資補助金(一般型)は補助上限1億円の制度です。
大規模成長投資補助金に関するよくある質問
大規模成長投資補助金の6次公募の採択発表はいつですか?
公募要領では、6次公募の採択発表は2026年11月上旬頃の予定です。プレゼンテーション審査は10月19日〜23日に行われました。採択後は11月中旬以降に交付申請を行い、交付決定は2027年1月中旬以降の予定です。
6次公募には何件の申請がありましたか?
事務局の発表によると、2026年8月31日17時の締切までに163件の有効申請がありました。5次公募の198件から約18%減っています。書面(一次)審査の結果は9月30日に各申請企業へメールで通知されました。
7次公募はいつ始まりますか?
2026年10月28日時点で、7次公募の時期は発表されていません。経済産業省は令和9年度概算要求で本補助金に約1,376億円を要求しています。過去は年2回(春・夏)のペースで公募されてきたため、2027年春ごろの可能性がありますが、公式発表を確認する必要があります。
大規模成長投資補助金の補助上限額と補助率はいくらですか?
補助上限額は50億円、補助率は1/3以下です。申請時に補助率1/4での採択を容認した事業者は、追加採択の対象となる場合があります。投資額は一般企業向けが20億円以上、100億宣言企業向けが15億円以上(税抜・外注費と専門家経費を除く)です。
どんな企業が対象ですか?
日本国内に本社と補助事業の実施場所があり、常時使用する従業員が2,000人以下の会社または個人等が対象です。大企業が実質的に支配する「みなし大企業」は対象外です。最大10者のコンソーシアムによる共同申請もできます。
金属加工や機械加工の企業でも採択されていますか?
採択されています。5次公募では、水道バルブの増産、防衛・宇宙向けの新工場、アルミダイカストへの新規参入、BIM・ロボット連携のスマート工場など、金属加工・機械加工の計画が10件以上採択されました。生産能力の大幅な増強と省力化を組み合わせた計画が中心です。
半導体や電子部品関連の採択事例はありますか?
あります。5次公募では、半導体製造装置の部品・部素材・精密バルブ、半導体材料、電子基板、表面処理の新工場などが採択されました。6次公募ではAI・半導体を含む17の戦略分野に関する事業が加点対象になっています。
食品工場の新設は対象になりますか?
対象になります。5次公募では食品・飲料の製造が約18件と最も多く採択されました。ただし、農業者が自ら育てた作物を主な原材料とする製造など、補助事業が1次産業にあたる場合は対象外です。
賃上げ目標を達成できなかった場合はどうなりますか?
年平均上昇率が基準率(5.0%または4.5%)を下回った場合や、基準年度の1人当たり給与支給総額が申請時の直近決算期を下回った場合は全額返還です。基準率は上回ったものの申請時の目標に届かなかった場合は、未達成率に応じて返還が求められます。
プレゼンテーション審査にコンサルタントは同席できますか?
同席できません。プレゼンテーション審査は代表権を持つ経営者本人の説明と質疑応答が必要で、外部コンサルティング会社など申請者以外の同席は認められていません。経営者以外の役員や事業責任者の同席・補足説明は可能です。
申請支援業者に依頼する際の注意点は何ですか?
行政書士(行政書士法人)でない者が有償で申請書を作成すると、行政書士法違反に該当する可能性があると公募要領に記載されています。代理申請も認められていません。サービス内容とかけ離れた高額な成功報酬を請求する業者にも注意が呼びかけられています。
100億宣言企業向け枠とは何ですか?
売上高100億円を目指すことを宣言し、専用ポータルサイトで公表されている企業向けの申請類型です。投資額要件が15億円以上、賃上げ基準率が4.5%に緩和されます。申請時までに宣言が公表されている必要があります。
税制優遇と併用できますか?
地域未来投資促進税制、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制、大胆な投資促進税制の適用を受ける設備は補助対象外です。同じ設備で補助金と税制優遇の両方を受けることはできないため、資金計画の段階でどちらを使うか決めておく必要があります。
過去の公募で採択された企業は再び申請できますか?
6次公募では、1次〜4次公募の採択事業と同一の産業分類・対象従業員の重複・同一都道府県での実施のいずれかに該当する事業や、5次公募の採択事業者による事業は申請できませんでした。次回公募の条件は最新の公募要領で確認してください。
まとめ:6次公募の採択発表は11月上旬。7次公募に向けた準備は今から
大規模成長投資補助金は、投資額20億円以上の工場新設や大規模設備投資を最大50億円まで支援する制度です。6次公募は163件の申請を受け付け、2026年11月上旬頃に採択が発表される予定です。経済産業省は令和9年度概算要求で約1,376億円を要求しており、次回公募も見込まれます。
5次公募の採択倍率は約2.6倍、採択者の目標賃上げ率の中央値は7.0%でした。食品工場、金属加工・機械加工、半導体・電子部品など製造業の拠点新設が中心ですが、物流や観光の採択例もあります。6次公募で厳しくなった「足下の賃上げ」や「補助金の必要性」への対応、金融機関の表明書、経営者本人のプレゼン準備まで、公募開始前に進めておくことが採択への近道です。
弊社では、大規模成長投資補助金の次回公募に向けて、以下の申請支援を実施しております。
- 無料でのメール相談
- オンライン面談(投資計画の方向性確認)
- 申請支援(※)を通じた、構想段階からプレゼン審査準備、採択後の事務手続きまでの伴走
※書類作成支援の実務から有料となります。
- 投資要件・賃上げ要件の精査:投資額(20億円以上等)や賃上げ率(5.0%以上等)が要件を満たすかを確認します
- 補助対象経費の整理:建物費・機械装置費・ソフトウェア費など、大規模投資に必要な経費を漏れなく整理します
- プレゼン審査を見据えた計画づくりの支援:審査6項目を踏まえ、経営者が自らの言葉で説明できる計画づくりを支援します
- 6次公募の変更点を踏まえた戦略立案:足下の賃上げ、出資・融資の表明書、AX加点など、強化された審査・加点への対応を支援します
「20億円以上の投資を検討しているが、自社が対象になるか知りたい」「次の公募に向けて何から始めればよいか」といったご相談も歓迎しています。お気軽にお問い合わせください。
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